●リプレイ本文
「これがUPC本部から貸し出してもらった通信機と現地のMAP」
白鐘剣一郎(
ga0184)がバッグから通信機とMAPを今回一緒にユイとサエの捜索、そしてキメラを殲滅する為に集まった仲間たちに渡していく。
「これが初仕事‥‥か。好きで能力者になった訳じゃない‥‥けど頑張ってみる‥‥」
幡多野 克(
ga0444)が呟き、白鐘から二つの道具を受け取る。
「私は純粋にペガサスという名のキメラと戦うのが楽しみね、もちろん二人を助ける事を忘れているわけじゃないけど」
鯨井昼寝(
ga0488)が少し偉そうに呟く、彼女は強い者と戦う事を楽しみにしている、その相手が強ければ強いほど良い‥‥と公言しているほど。
「聞いた話じゃ、今回のキメラはかなりの素早さを持った奴だとか、スピード勝負なら望む所よ」
「戦ってキメラ殲滅もいいが、まずは二人を探して無事に保護しなくてはね」
崎森 玲於奈(
ga2010)が苦笑しながら呟く。
「でも‥‥バグアが跋扈する中で笑顔を忘れないというのも珍しいけど‥‥まぁ、それはいい」
玲於奈は呟き、隣の御山・アキラ(
ga0532)に視線を移す、アキラは掌のエミタを眺めながら「復讐という過去に決着をつける機会が得られるのは、存外に幸運なことだな」と自嘲気味に呟いている。
彼女、アキラは両親をバグアに殺され、未だ果ての見えない復讐という名の道を歩んでいるのだ。
その彼女からすれば、ユイという少女が羨ましいのかもしれない。
「とりあえず、作戦はさっき立てたもので問題ないよな?」
須佐 武流(
ga1461)が紙をメンバーに見せながら問いかける。今回は二人を保護し、尚且つキメラ・ペガサスを殲滅するという至ってシンプルな仕事なのだが、如何せん場所が広すぎる。
そこでメンバーは二人一組になって二人を探すもの、ペガサスの索敵と役割を分担したのだ。
第一班・北方面の捜索を白鐘と鯨井の二人が担当。
第二班・南東方面の捜索を幡多野と御山の二人が担当。
第三班・南西方面の捜索を崎森と須佐の二人が担当。
そして、最後の第四班のエスター(
ga0149)と大山田 敬(
ga1759)の二人はユイとサエの捜索ではなく、ペガサスの索敵&牽制係を担当する事になった。
「何かあったら通信機で連絡する事、以上‥‥散!」
●北方方面の二人は‥‥。
白鐘と鯨井の二人はその場を動かず、ユイとサエの特徴や行きそうな場所を探る事から始めた。
「それなら‥‥この写真に写っている二人がユイちゃんとサエさんよ」
一人の女性が二人が写った写真を白鐘に渡した、それを後ろから鯨井も覗き込んでいる。
「それで‥‥行きそうな場所に心当たりは? 家、遊び場‥‥そして両親の殺害現場も教えてもらえると助かる」
白鐘の言葉に「一番行きそうなのは両親の殺害現場かしらね」と鯨井が小さく呟いた、キメラが現れた途端に何処かへと行ってしまったのだから、両親の殺害現場に向かった可能性も高い。
「こうしてても仕方ないし、行きましょ、剣一郎」
鯨井は呟くと、自分達が担当する北方面のエリアへと向かい始めた。
●南東方面の二人は‥‥。
「ユイは声が出ないらしいから、此方が感知する他ないですね」
幡多野が小さくため息混じりに呟く、十分置きに仲間達と通信をしているのだが、他の場所でも二人は見つかっていないらしい。
「何か――聞こえないか?」
ふと、アキラが呟く。その言葉に幡多野も耳を澄ませてみると、確かに人のうめき声のようなものが聞こえてくる。
その声の方へ近づいてみると、女性が一人蹲っていた。様子を見る限り、どうやら足を痛めたらしい。
「あ、あなた方は‥‥?」
女性が少し怯えたような表情で二人を見ると「サエとユイの救助、そしてキメラ殲滅にやってきた」とアキラが呟く。
「わ、私がサエです! ユイは‥‥ユイは見つかったんですか!?」
足を引きずりながらサエが幡多野に詰め寄ると「いえ、残念ながらまだ‥‥」と申し訳なさそうに言葉を返す。
「きっと‥‥あの子は両親が殺された場所に向かっているはず‥‥どうか私も連れて行ってくださいっ‥‥」
サエの申し出に幡多野とアキラは顔を見合わせながら、どうするかを考え始めた。
●南西方面の二人は‥‥。
「何事も無ければいいにせよ、事は急ぐ必要があるらしいな‥‥」
崎森が小さく呟く。
先ほど入った連絡で二人のうち、サエの方は無事に保護できたという連絡を受けた。
しかし、肝心のユイの消息はまだどの班からも受けていない。
「サエの話だと、ユイは両親の殺害現場に向かっているんじゃないかって話だ」
須佐は通信機を崎森に見せながらため息混じりに呟く。
「何とか索敵係の二人がペガサスを発見してくれるといいけどね」
いつもの崎森なら、我先に‥‥という所なのだが、相手は俊敏な身のこなしと広域視界というかなり有利な武器を持つキメラだ。
「しかし‥‥この南西方面に人の気配はしねぇな」
須佐がため息を吐いた数分後に通信機から『ユイが見つかった』という連絡を受けるのだった。
●索敵係の二人は‥‥。
「オレ泣けてきた。気が散ってタマラン‥‥」
動くたびに揺れるエスターの胸を横目で見ながら、大山田は鼻を押さえながら呟く。気を抜けば鼻血がブーッと出そうな勢いだ。
「ペガサスってもっと綺麗なイメージがあったッス〜〜」
エスターは先ほどからちらちらと見えるペガサスを見ながら残念そうに呟く‥‥というより叫ぶ。
「‥‥キメラに綺麗さを求める方が‥‥」
大山田は苦笑して「裏切られたッス〜〜」と叫ぶエスターを見ていた。
二人は町の中心付近にある巨大な建物の屋上に陣取り、ペガサスの警戒をしていた。
「南東方面にはサエがいて、南西方面には人はいなかった‥‥残るは北方面‥‥か?」
騒ぐエスター(と胸)を見ながら大山田は呟いた。
●ユイの発見、そして戦闘開始!
「キミが‥‥ユイちゃんか?」
北方面担当の白鐘、鯨井の前には震える少女が一人蹲っていた。
「あー、こちら北方面の昼寝よ、ユイを無事に保護したわ。そっちの様子はどう?」
鯨井が通信機の向こう側にいる仲間たちに問いかける。
すると――‥‥。
「此方、索敵係! ペガサスが攻撃を仕掛けてきた! これより迎撃に向かう」
索敵係からの連絡に白鐘と鯨井は互いの顔を見合わせ、白鐘がユイを抱きかかえ、街のほうへと急いだ。
街に戻ると既に他のメンバーも集まっていて、ペガサスの攻撃を必死に避けている。
ペガサスの姿を見た途端、ユイが動こうとしたが鯨井にそれを制止した。その手を振り払い、ユイはキッと鯨井を強く睨みつけた。
それを見て、鯨井は「ふぅ‥‥」と呆れたようにため息をもらす。
「親の仇を討ちたいというあんたの心意気は買うわ、だけど気持ちだけじゃバグアは倒せないのよ」
鯨井の言葉にユイはぽろぽろと涙を零し始める。
「キミのお父さんとお母さんの仇は俺たちが討つから、キミはサエと一緒に大人しくしているんだ」
白鐘がユイと同じ目線までしゃがみ、言い聞かせるように話しかける。それをユイは理解したのか、首を縦に振り、サエのところへと走っていった。
「さて、これからが本番‥‥か」
白鐘が刀を手に持ち、標的であるペガサスをじっと睨むように見つめる。
「援護はあたしらに任せるッス〜〜」
エスターと大山田‥‥スナイパーコンビがそれぞれの武器を構える。
「しかし‥‥今回は市街戦です」
大山田がちらりと街に並ぶ建物を交互に見ながら呟く。こういう市街戦で一番厄介なのは、建物の影を迂回して飛び回り、四方八方から飛び出して攻撃、そして建物の影にすぐ隠れるというヒット&アウェイを繰り返されること。
そうなれば下手に攻撃ができない。街には人が住んでいる、その中で派手に戦闘を繰り広げて街を破壊、そして街の人に被害が出てしまえば救助に来た意味がなくなるのだ。
そこで大山田が考えた作戦はペガサスが『馬』であることを考慮した上で、ペガサスが盾として使うであろう建物の位置に移動潜伏をし、迂回しているペガサスを撃つ‥‥欲を言えば上から攻撃をしたいのが本音だ。
「馬は構造上、上への視界がほとんどありませんからね」
「じゃあ、あたしが上から攻撃を仕掛けるッス、だから大山田は誘導するように撃ってくれッス」
裏切られたので容赦しねぇッス〜〜、と何故か勝手に裏切られたと叫ぶエスターを横目に作戦を他のメンバーにも伝える。
「獲物が目の前にいるというのに、スナイパーの援護を待たねばならないとは‥‥折角の私の飢えと‥‥渇きを癒せるいい機会だというのに」
崎森は少し納得のいかないような口ぶりだったが、人命優先ともなれば仕方ない、とため息混じりに了承した。
「俺達が仇を取るから、此処で大人しく隠れていてくれよな?」
幡多野がユイに向けて言うと『気をつけて』とまだ下手な文字で書かれた紙を目の前に出した。二人が隠れるのと同時にスナイパーの攻撃する音が響き始める。
しかし、ペガサスは思い通りに動いてくれない。
どうしたものか、と考えていた時「私が行く」とアキラがペガサスに向かって走り出した。
「お前の行く道は其方ではない」
アキラはペガサスを進路に誘導するように攻撃を繰り出す。
「御山! 避けて」
アキラの行動のおかげか、ペガサスを目的地点まで誘導し、エスターが上からの射撃を繰り広げる。
「あっはっはっはっは〜〜! 訓練以外でぶっ放すと色々なものが吹き飛ぶッスよ〜〜」
楽しげに、そしてけたたましく笑うエスターの攻撃が止むと同時に他のメンバーが攻撃に入る。
「自慢の素早さも、だいぶ落ちたものだわね」
鯨井がペガサスの背後を取り、疾風脚で素早さ向上を図った後、両手のクローで強く殴り、スピードの落ちたペガサスの素早さがさらに下がっていく。
「フフフ‥‥さあ、この飢えと‥‥渇きを癒せ!」
崎森が待ちわびた、と言わんばかりの歓喜の声でペガサスを攻撃していく。
「とどめだ、退いていろ」
白鐘が低く呟くと同時に、刀とナイフの二刀流十字斬+豪破斬撃、白鐘の決めの一撃だ。
「‥‥天都神影流、双翔閃・十字星。天馬を騙る異形よ、無に還れ」
白鐘の言葉が終わると同時にペガサスは、この世のものとは思えないほどの悲鳴をあげてズン、と大きな音をたててその場に倒れた。
「終わった‥‥」
大山田が呟き、他のメンバーもホッとしたような表情を見せる。
その中でアキラはペガサスに近寄り、その首を撥ねた。それを見ていた街の人間からは「ひっ」と小さな悲鳴があがる。
血の滴るその首を持ってユイのところへ赴き「怖いか?」と問いかけた。
アキラの問いかけにユイは震えながら首を縦に振る、それを見たアキラは「‥‥それで良い」と小さな笑みを浮かべる。
「私のように怖がらなくなったら‥‥もうまともじゃない」
アキラの呟きは少しだけ悲しそうなものに聞こえた。
「キメラを倒せるのは‥‥能力に覚醒したものだけ――これって結構‥‥残酷だよな」
幡多野の言葉を聞いて、ユイはアキラの前に立ちはだかる。
そして‥‥両親が殺された時に消えたはずのユイの笑顔が今、甦り「ありがとう」と声を発する事のできない口でお礼を述べたのだった。
END