●リプレイ本文
事の発端はクイーンズ記者の土浦 真里(gz0004)がさらわれたとメールを寄越してきた事から始まった。
「マリがさらわれた!? 本当か! 早く助けに行かないと!」
マリがさらわれた事を知って、いつもは表情の変化をあまり見せないコー(
ga2931)が取り乱して、叫ぶ。
「‥‥さらわれるなんて、一体何したんだよ、あいつは‥‥めんどくさいな? でも助けねぇとうるさいか‥‥」
ため息混じりに呟くのは神無月 翡翠(
ga0238)だった。
「同感やわ、ほんま毎度毎度余計なことしよるなぁ‥‥」
神無月と同じくため息を吐きながら呟くのはクレイフェル(
ga0435)だった。
「本当に一体何をやらかしたんだろうな‥‥ま、助け出さんことには話にならんか」
須佐 武流(
ga1461)も同じくため息を吐く。
「マリ隊長のおかげで、チホさんの胃に穴が開くのも時間の問題やね‥‥」
苦笑しつつ、今頃は胃薬を大量に飲んでいるであろうチホの心配をしながら篠原 悠(
ga1826)は呟く。
「マリは相変わらずだな、これで懲りて――は無理だろうな、そのうちチホ女史の髪の毛、白髪混じりになるんじゃないのか?」
威龍(
ga3859)もマリの行動改善は諦めたのか、他の能力者と同じくため息を吐く。ちなみにマリに巻き込まれたものでため息を吐かない者はいないのではないだろうかと言うほどのため息の連続である。
「好奇心、猫を殺す‥‥そうならないように急がないと」
勇姫 凛(
ga5063)が呟き、能力者はお騒がせ記者・マリを助けに行く事にしたのだった。
●あれ? 何かおかしくない?
「あんなぁ、救出に向かう前に聞いてもらいたいことがあるんやけど‥‥」
クレイフェルが唸りながら能力者達に話しかける。
「何? クレイ兄やん」
「いやいやいやいや、何かマリ語に悠語が加わっとるから‥‥ってそんなんはどうでもいいんや。マリがいる所周辺に向かった能力者は四人なんやけど‥‥そこまで評判悪い奴らじゃないんや」
「‥‥あ?」
クレイフェルの言葉に沢村 五郎(
ga1749)が呟く。
「‥‥クレイ兄やん、もしかしたらマリ隊長の勘違い――という事も‥‥」
篠原は自分で言って恐ろしくなり、言葉を止める。あのマリのことだ。ありえない話ではないから‥‥。
今回マリを救出するために能力者は班を陽動班と救出班の二つに分けたのだった。
陽動班:クレイフェル・須佐・沢村・コーの4人。
救出班:篠原・神無月・威龍・勇姫の4人。
作戦内容は簡単に言ってしまうと陽動班が騒いで、マリさらった能力者達の気を引きつけ、その隙に救出班がマリを助けるというものだった。
「それではマリを助けに行きましょうか」
コーが呟き、能力者達はマリ救出作戦を開始したのだった。
●陽動班・打ち上げて踊って漫才だ!
「さて‥‥救出班は先に入ったし、そろそろええかな」
先にマリが監禁されている工場跡地に救出班が入り、時間を置いて陽動班が動き出す。
「俺はラジカセ持って来たから、得意のブレイクダンスを披露してやる」
「俺は花火持って来た」
クレイフェルがにやりと笑い、ねずみ花火や打ち上げ花火などを見せる。
「‥‥クリスマスの前祝にしちゃ派手だな、おい」
沢村が苦笑しながら呟く。そして此処で沢村は陽動班から離れ、一人物陰に隠れる事にする。男が四人もいたらマリをさらった能力者達が警戒するかもしれないと考えての事だ。
「警戒をお願いします。俺は‥‥踊ります」
コーは呟くと呼笛を見せる。つまり呼笛で演奏しながら踊るというのだろう。
「た〜〜まや〜〜!」
最初に行動を起こしたのはクレイフェル、続いて須佐がラジカセを大音量で流し、得意のブレイクダンスを始める。
そして、須佐が踊る隣でコーも踊り、クレイフェルにツッコミを入れる。
「ちゃ、ちゃうて! そこはツッコミ入れる所やない!」
コーと一緒に漫才の練習をしていたクレイフェルだったが、何も言ってないうちからツッコミをいれられてしまい、クレイフェルは慌てて止める。
「はぁ、そうですか。次は気をつけま――」
コーの言葉が途中で止まる。何故なら能力者と思わしき男性が三人出てきたからだ。彼らが出てくると同時に沢村が一人の男性に突進し、斬りかかる。もちろん峰打ちで。
「お前等、何者だ?」
突然の沢村の攻撃にマリをさらった連中は驚いたのか、反応が遅れる。
「さぁ、こっちも派手に喧嘩を楽しもうぜ!」
須佐が拳を鳴らし、楽しげに叫んでひるんでいた男に殴りかかる。
「‥んー、完全に出遅れてしもたんやけど、こういう場合ってどないすればええんやろ」
「そうですね、とりあえず巨大ハリセンで応戦すればいいんじゃないですか?」
コーの提案に「そやな」と二人で巨大ハリセンを装備し、べしべしべしべしと能力者たちを叩いていく。
「これである程度の時間は稼げるな‥‥」
沢村は救出班が入っていった方を見ながら、一人小さく呟いた。
●救出班:マリさん、勘弁してください。
「陽動班は無理してなきゃいいけどな‥‥同じ貴重な能力者同士、無駄な争いで怪我人でも出たら、それこそ馬鹿らしい」
威龍が陽動班の事を考えながら小さく呟く。
「うーん、そうはいってもなぁ‥‥人をさらうような奴らだし、油断も出来ないと思うぜ」
神無月が威龍に言葉を返す。
「そうですよ、どんな理由があるにせよ、女性をさらうなんて許せない」
勇姫が怒ったように呟くと「‥‥うん、本当ならね」と篠原が言葉を返す。どうも彼女は嫌な予感がばしばししているらしい。
「そろそろマリ隊長の携帯に電話してみるね、ドンパチ聞こえたらマナー解除してくれるって話やったし」
そう言ってマリの携帯に電話をしてみると、着メロが近くで聞こえる。
「あ、近くにいるっぽいですね」
勇姫が呟くと同時に人の気配がして、能力者達は戦闘態勢を取る。
「勇姫凛。参る! 跳ね飛ばすけど死ぬなよ?」
「さぁっ! ライブの始まりやっ!」
現れたのは少し負傷した能力者だった。
その能力者に向けて、篠原と勇姫が攻撃態勢を取る。
そして篠原はハンドガンを能力者に向けて構え、能力者を撃つ素振りを見せる。もちろん弾丸は実弾ではなく、赤のペイント弾である。
「お前がマリをさらった奴か」
威龍が能力者に問いかけ、距離を詰めていくと‥‥いきなり能力者がぶわっと泣き出した。
「うわあああああん、助けてええええっ」
「えええええっ!?」
いきなり助けてと言われ、救出班は驚きで大きな声を出す。篠原は驚きでペイント弾を発砲し、能力者の顔は血まみれのように真っ赤になってしまう。
「助けてとは‥‥?」
威龍が能力者に問いかけると、その能力者は涙混じりに話し始める。
此処で結論だけいうと篠原の嫌な予感は見事に的中したという事になる。
〜回想〜
『A・あのキメラ、結構強いな‥‥今は隠れてられるけど‥‥俺たちだけじゃ無理っぽくね?』
『B・うん、無理無理、応援呼んでこようぜ』
『C・じゃあ一寸待っててくれよ。荷物をあっちに置いてきちゃってさ』
『D・全く‥‥早くしろよ。キメラに見つかっちまうだろ』
『C・オッケ、ちょっと待――『何してんの! 助けなさいよ!』―――は?』
『A・わ、馬鹿! 騒ぐな! 見つかっちまうだろ!』
『あんた達! それでも能力者なの! 人を見捨てるなんてサイテーね!』
『D・だから‥‥『ほら! 喋ってる暇あったら助けろ!』‥‥人の話を聞けえええ!』
かっこーん‥‥
『C・げ、何してんだよ!』
『D・だ、だって騒ぐと見つかるし‥‥』
『B・とりあえずその女連れて工場の中に隠れとこうぜ』
〜回想終了〜
「キメラは通りすがりの能力者がさっき倒してくれたんだけど‥‥あんたらも能力者なんだろ!? 早くあの女を連れて帰ってくれよ! 金なら俺らが払うからさ!」
がたがたと震えながら話す能力者に救出班は互いの顔を見合わせる。
「‥‥あ、クレイ兄やんたち‥‥ボコってなければいいんだけど‥‥」
「と、とりあえずマリを助け(?)に行こうぜ」
神無月が呟き、能力者をその場所に置いたまま、マリのところへと向かった。
●初めてマリに勝った?
「ま、マリ姫様、ご無事ですか? 白馬の王子やないけど助け‥‥? にきましたよ」
マリが監禁されている(ある意味猛獣の檻)部屋の前まで行く。
「‥‥き、気のせいか? ドアに鍵がかかってないような気がするのは‥‥」
威龍がドアノブをまわし、開く扉にツッコミを入れる。
「あ〜〜! 助けに来てくれたんだね! ありがとう!」
嬉々として話すマリだが、助けに来た能力者達は顔色が優れない。
「‥‥マリ隊長のお馬鹿ーーっ!」
すぱこーん、と巨大ハリセンで篠原はマリを叩く。
そして、救出され、工場入り口付近で鬼のような顔で待つ陽動班がいた。
「や・やぁ♪ どうも私の勘違いだったみたいで☆ てへ、マリのドジっ子♪」
自分の頭を軽くコツンと叩き、そのまま帰ろうとする――が須佐の持っていた手錠であえなく御用となる。
「怪我は、ありますか? あるなら見せてください」
神無月はせめてもの償いか、覚醒して傷ついた能力者の傷を治療していく。
「早とちりは悪い癖や、報道に関わる人間としては致命的やで? 俺の記事とかな」
何気に少し前に書かれた記事の事を持ち出すクレイやん。
そしてマリはといえば‥‥珍しくシュンと俯いて能力者たちの話を聞いていた。
(「‥‥俺は無実の能力者に峰打ち‥‥真面目に凹みそうだ‥‥」)
物陰で沢村は罪悪感に苛まれていた。
「あかん! 皆! マリ隊長は耳栓して寝てる!」
篠原の言葉と同時にハリセンを持っている能力者は全員ですぱこーんと叩き、本気で怒りたくなったのだとか‥‥。
●意外に美味しい? マリの手料理。
「えへ、今回はごめんねー」
あれからボコった能力者達には皆で誠心誠意で謝り、許してもらうことができた。
そして、今はマリの自宅に来ている。自宅‥‥とは言ってもクイーンズの記者たちが皆で暮らしているせいもあり、結構大きな家だ。
そこで現在マリの手料理を食べている。
「マリ隊長、今回に限らずあんまり無理しんといて‥‥大好きなマリさんいなくなるの嫌だよ!」
篠原の言葉に「ぐはっ」とマリが叫び、膝を折る。
「ど、どうしたんですか!」
勇姫が慌てて駆け寄ると「のっちの言葉にトキめいた‥妹にしたい」とふらふらしながら呟いている。むしろ怪しい。
「そういえば、初めて会うよね? 取材させてもらっていい?」
マリが勇姫に問いかけると「写真は駄目」と申し訳なさそうに言葉を返す。
「事務所がうるさいから」
「そっか、可愛い女の子だから写真栄えすると思ったんだけどなぁ」
「り、凛は男だ!」
女に間違えられたことに勇姫は軽くショックを受け、赤くなっている顔を隠した。
「それにしても‥‥まぁいい。良い写真は撮れたか?」
小言を言ってやろうとマリを呼び止めた沢村だったが、和気藹々と話している姿を見て、それも気が失せた。
「しかし毎回無茶ばかりしますね‥‥」
コーはマリお手製のフォンダンショコラを食べながら呟く。
「ふふ、でもそれが私だしねー♪」
「ん、それにしてもマリって料理得意やったんやな‥‥めっちゃ意外やわ」
クレイフェルの言葉に「いつでも嫁にいけるのさー!」と得意げに話す――が「え! マリ隊長結婚するん!?」と篠原が驚いたことで、マリは泣きながら自室に篭ってしまう。
どうやら相手はいないようだ。
そんなこんなで、マリの騒動に巻き込まれた能力者達の長い任務期間が終わったのだった‥‥。
END