●リプレイ本文
―― 忍者屋敷 3F オープン ――
今回はキルメリア・シュプール(gz0278)の知人であるジョセフィーヌが携わっている娯楽施設・忍者屋敷の3Fがオープンしたと各能力者達に連絡が入り、能力者達はモニターとして参加する事になった。
「‥‥1Fと2Fと‥‥来たんだ‥‥3Fも‥‥行かないと‥‥な」
西島 百白(
ga2123)は呟きながら3Fの案内書を見る。今回は武器の使用はOKだが、覚醒&スキルを使用するのは禁止という妙な規則が追加されていた。
「はわわー‥‥なぜこんな結果になってるですかー‥‥」
土方伊織(
ga4771)は自分の所属班を見て目を大きく見開きながら震える声で呟く。
「おかしいのです‥‥キリーさんの班に所属するのを譲った気がしたのに、気がついたら一緒する事になってるのです‥‥」
僕の平穏がー、と言葉を付け足しながら土方は忍者屋敷に入る前から全力で恐怖していた。主に恐怖している内容は忍者屋敷の危険な罠ではなく、同行する危険人物についてだったりするのだけれど。
「ふふ、キリーの招きであれば来ないわけには行かないわよね。さぁ、モニターとして張り切っていくわよ! 不備があればどんどん追求しちゃうからね」
百地・悠季(
ga8270)はどこか楽しそうに呟いた。伊賀出身の彼女としては生半可な忍者屋敷では許せない、と言った所だろうか。
「はぁ‥‥まったくドジを踏んだモンだ、普段ならこの手のアトラクションは望む所なんだが‥‥」
龍深城・我斬(
ga8283)は痛む体を抑えながら壁に背中を預ける。
「‥‥まぁ、死なん程度に気張っていくとしますか」
龍深城は先日赴いた任務で重傷を受けており、今回は大怪我をしながらの参加になっていた。
「大石さん、久しぶり〜♪ 今回はどんな罠が待ち受けてるのかな? ワクワクドキドキだね!」
香坂・光(
ga8414)は大石・圭吾(gz0158)に言葉を投げかけると「褌が沢山の仕掛けがあればいいな!」と妙な方向での言葉を返されてしまう。
「そうだ、今度褌屋敷と言うものを俺も作ってみようか!」
「誰が参加するのか分かんないから止めといた方がいいんじゃない〜?」
大石の言葉に香坂は苦笑気味に言葉を返したのだった。
「久しぶりですねぇ‥‥この企画。相変わらず絶好調ですか‥‥」
リュドレイク(
ga8720)が案内書を見ながら呟く。
「‥‥へー、忍者屋敷。面白そうなの作ったな‥‥」
「そういえば、ユーリは初参加でしたね」
リュドレイクが弟であるユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)に言葉を投げかける。
「うん、まぁね――あ、覚醒禁止? ‥‥ん、まぁ確かにそっちの方が面白そうだな」
(何かどんどん危険のグレードがアップしている、という事はまだ知らせない方がいいんですかね‥‥)
案内書を眺めるユーリを見て、リュドレイクは自分もだけどユーリが無事に通過できる事を祈るのだった。
「さぁー! キリーお姉ちゃんの班のみんなー! 行くぞー、各々方ー♪」
白虎(
ga9191)がバサッと取り出したのは戦士系のミニスカくの一衣装と魔術師系の萌え巫女服だった。
「鵺(gz0250)さんにはこれですにゃー!」
白虎は布地を大幅にカットした格ゲー風・セクシーくの一衣装を鵺に渡す。
「きゃああ! 可愛いわ! アタシ、これを着て忍者屋敷に挑むわ!」
白虎の行動によって鵺班の(一部の)能力者達の視界の悪さが大幅に上昇したのを彼は知るまい。
「ちなみにキリーお姉ちゃんに、とも思ったけど(主に体型的な意味で)可哀想なことにしかならないので止めておいたにゃ(ゴス)ぶふぇっ」
「余計なお世話よ」
白虎は余計な一言のせいで、忍者屋敷に入る前から彼はダメージを負う事になった。
(こうしていれば、後々の恐怖なんか忘れられますかねぇ‥‥)
仮染 勇輝(
gb1239)は「ふふふ」と遠くを見つめながら呟く。彼の頭の中にあるのは忍者屋敷への恐怖ではなく、近い未来にやってくるであろうキリーの母親・リリシア襲撃の恐怖だったりする。
「しかし、妙な事もあるものですね」
仮染自身はキリー班の人数が多かったので大石班に変えようと思っていたのだが、いつの間にかキリー班になっているという摩訶不思議な現象を体験していた。
「にゃー! リュウナ! イン! 忍者屋敷! さんえふ〜!」
リュウナ・セルフィン(
gb4746)は周りをきょろきょろと見回しながら楽しそうに叫ぶ。彼女の目的はただ一つ、忍者屋敷を徹底的に楽しむという事。
「リュウナ様、暴走するのは少し控えてください‥‥」
きゃあきゃあと騒ぐリュウナを見て東青 龍牙(
gb5019)はおろおろとした表情で言葉を投げかける。
(忍者屋敷3F‥‥今度こそ、リュウナ様をお止めしなければ――それと、リュウナ様のコスプレも拝まなければ!)
東青は心の中で今回の目標を呟く。最後の方は目標というにはちょっと違うような気もするが、そこは気にしてはいけない。
「とうとう3F‥‥ですか。何かどんどんパワーアップしてるような‥‥」
びくびくした表情で案内書を見るのはハミル・ジャウザール(
gb4773)だった。
「今回は罠を作動させたらどんなだったか、感想を忘れないうちにメモする事にしましょうか」
ハミルは呟きながら猫さんダイカットの可愛いメモ帳を取り出しながら忍者屋敷に挑む事にした。
「キリーさん、お久しぶり。だいぶ大きくなったでしょ? もう動くんだよ? 触ってみる?」
諌山美雲(
gb5758)は大きなお腹を抱えながらにっこりと笑ってキリーに言葉を投げかけてくる。
「もう! 美雲さんは身重なんですから、少しは自重して下さいよ!?」
春夏秋冬 立花(
gc3009)が腰に手を当てながら諌山に話しかけると「りっちゃん、このくらいなら平気ですよ」と笑って言葉を返した。
「ようやく3Fか‥‥、随分と時間がかかっただけあって、危ねぇ仕掛けがされてんだろうな‥‥っていうか武器可っておかしいだろ」
テーマパークじゃねぇのかよ、と案内書に書かれている内容を読みながら相賀翡翠(
gb6789)はツッコミを入れる。
(思えばこちらの1Fの時を切欠に翡翠さんとの距離が縮まった気がいたしますね‥‥どのような仕掛けになっているのか、怖いですけど‥‥翡翠さんと一緒なら大丈夫な気がします)
ぽ、と頬を赤く染めながら沢渡 深鈴(
gb8044)は心の中で呟く。
「モニターなのに有料なんですね‥‥何だか納得できませんが、噂は聞いてますからね。精々期待させてもらいましょうか」
ソウマ(
gc0505)は唇を吊り上げ、不敵な笑みを浮かべながら小さな声で呟いた。
「まず大石さんをどん底に落として〜、忍者屋敷を楽しんで〜、うん、いっぱい頑張っちゃうよ!」
ぐ、と拳を強く握り締めるのはフロスヒルデ(
gc0528)だったが彼女も天然な体質だったりするので「頑張る」の一言でいったいどのようなカオスになるのか、と彼女を知る能力者達は心の中で呟いていた。
「キリーと一緒に入れないのは残念ですが仕方ありませんね」
南 十星(
gc1722)は小さく息を吐き「一緒には行けませんが頑張ってくださいね」とキリーに声をかける。
「言われなくても頑張るに決まってるでしょ? あんたは大怪我しちゃうくらいに頑張りなさいよ、ヘタレ」
相変わらずの毒舌っぷりに十星は苦笑し「はい、頑張りますよ」と言葉を返した。
「ニンジャヤシキ‥‥ジャポネの神秘ネ‥‥正に未体験ゾーン! そして何より鵺殿と一緒!」
ラサ・ジェネシス(
gc2273)はドキドキ乙女モードに入りながら鵺をちらりと見る。今回は鵺と一緒の班と言う事でラサはちょっとお洒落をしてきている――が、現段階で鵺はまだその事について触れてくれない。
「見るからに危険度が高そうなアスレチック‥‥しかも有料テスターか‥‥」
和泉 恭也(
gc3978)がため息を吐くと「勿論! 今回は終わった後にお金を頂くからちゃんと用意していてね!」とジョセフィーヌが言葉を返した。
「私は弟に誘われて参加したんだけど‥‥案外面白そうじゃない」
南 星華(
gc4044)はくの一の服装をしており、楽しむ気満々だったりする。
「さぁ、楽しんでちょうだいね! 後始末とか面倒だから死んだりしたら駄目よ!」
ジョセフィーヌの不吉な言葉を背に受けながら、能力者達は忍者屋敷にあるそれぞれの扉に入っていったのだった。
※大石班※
扉の中に入ろうとした瞬間、バイク音が響き渡り大石を派手に吹っ飛ばした人物がいた。
「ふぅ、どうやら間に合った、ようだね?」
UNKNOWN(
ga4276)はバイクから降りた後、倒れている大石に気づき「くっ、バグアめっ! しんゆうのおおいしになんてひどいことをっ!」と言いながら何処かへと行ってしまう。
「あんのんめぇぇぇぇぇぇぇぇっ‥‥」
大石は起き上がって追いかけようとしたのだが、既にそこにUNKNOWNの姿は無かった。
「まぁまぁ、そんなに気にする必要はないのだ! お約束ってのは必要だしね!」
香坂がフォローにならないフォローをするのだが、大石はBAKAなのでその言葉で全く問題なかったりする。
「おお、そういえばキミは怪我をしてるんだな! 大丈夫だ、俺が守ってやるからな!」
きらんと歯を輝かせながら大石が龍深城に言葉を投げかけるのだが「いや、その気持ちは嬉しいんだけど‥‥俺のためを思うなら、もうちょっと離れてくれ」と顔を逸らしながら彼は言葉を返した。
「そろそろ入ろうよ、どんな仕掛けがあるのかな〜♪」
フロスヒルデが呟き、大石班は扉を開き――忍者屋敷の中へと入ったのだった。
「なぁ‥‥1つ聞いてもいいかな?」
「どうしたの?」
忍者屋敷に入った後、ユーリがポツリと呟く。
「忍者屋敷には忍装束でって言われたんだけど、案内書見てもそんな事書いてなかったよな」
ユーリの言葉に「あぁ、一部にだけ定番化してるけど普通の格好で参加OKだよ?」と香坂が言葉を返し「だまされた‥‥」とどんよりユーリは落ち込む事になったのだった。
「まぁ、気にするなよ! 俺なんかいつも褌なんだぜ!」
フォローにならない言葉を大石がユーリに投げかけるのだが、ユーリは「‥‥褌と一緒にされても‥‥」と更に落ち込んでしまう。
「ねぇ、このスイッチって何かなぁ?」
フロスヒルデが壁につけられているスイッチを指差しながら呟く。
「何だろうねー、押すなって書いてあるけど普通に押すよねー!」
香坂がフロスヒルデと一緒にポチっとスイッチを押し、「あ! 押しちゃ‥‥」とユーリが止めに入ろうとしたが時既に遅し‥‥。
ガコン、と言う音と共に天上から鋭く研ぎ澄まされた竹槍が落ちてくる。
「うわっ!」
ユーリは機械剣で防ぎ、龍深城はライガークローで防ぐ。
「‥‥これ、真面目に俺‥‥死なないよね?」
龍深城は苦笑しながら再び天上にあがっていく竹槍を見ながら呟いたのだった。
「い、一応‥‥これから気をつけような? 頼むから気をつけてくれ」
ユーリがげっそりとしながらフロスヒルデと香坂に言い聞かせ、止めていた歩みを再び動かし始めたのだった。
※七海班※
「なぁなぁ、今回はどんな仕掛けがあるのかなー」
七海・鉄太(gz0263)はぴょんぴょんと跳ねながら一緒の班の能力者達に言葉を投げかける。
「あんまり、危険なトラップがないといいですね‥‥」
ハミルが呟くが「それは‥‥無理じゃ‥‥ないか」と西島が言葉を返す。
「え?」
「今回は‥‥武器の使用も許可‥‥されてる、から‥‥それなり、に‥‥危険なんじゃ‥‥ないか?」
西島が呟くと「え、武器の使用可だったんですか‥‥?」とハミルは少し驚いたように言葉を返す。
ハミルは今まで同様に武器の使用は不許可だと思っていたらしく武器を持ってきていない事を能力者達に告げた。
「それじゃ、進みましょ。男の子が先に行ってね♪」
百地は西島を先頭にして扉の中を進み始めたのだった。
「にゃ! あそこに怪しいスイッチがあるなり! 怪しいスイッチは片っ端から押してみるのら! とつげきにゃー!」
「あ、リュウナ様!」
リュウナが突撃を開始し、東青が止めようとしたけれどするりと避けられてしまい、リュウナはポチっとスイッチを押してしまう。
「‥‥ヌウォ!?」
天上からぼたぼたと落ちてきたのはコンニャク。西島の頭に直撃してしまい、彼はバックステップで避ける――のだが、二個目のスイッチを鉄太が押してしまっており、運悪く西島が避けた場所に金タライが落ちてくる。
「ガッ‥‥」
「だ、大丈夫ですか‥‥!?」
金タライの直撃した西島にハミルが声をかけるが「ハミル、ごめん‥‥代わりに宜しくよ」と百地に突き飛ばされ、ハミルも金タライを受ける羽目になってしまった。
「いっ‥‥」
「ほら、いい加減にしないと怪我人が増えていくわよ?」
百地が鉄太とリュウナに声をかける。
「リュウナ様! 他の人達にご迷惑をおかけしてはなりません! 押したい気持ちは分かりますが! ここは抑えてください!」
東青の言葉に「むー‥‥分かったのら」とリュウナは押しかけていたスイッチから手を放した。
「あ、おれ、押した」
「リュウナ様! 危ない!」
リュウナの暴走を阻止して安心していたのだけれど、鉄太という暴走車がまだ残っていた事を忘れ、金タライがリュウナに向かって落ちていく――が東青が身を挺して守り、リュウナに怪我はなかった。
「鉄太、ちょーっと大人しくしていられないのかな?」
「ご、ごめんなさい‥‥」
黒い笑顔で微笑む百地が怖かったのだろう、鉄太はすぐに大人しくなり、以降はスイッチを押すことはなかった。
※キリー班※
「にゅ、慎重に行かねば‥‥そろそろ大きな怪我をする仕掛けがあってもおかしくないのにゃ‥‥!」
そう呟きながら白虎は匍匐前進で進んでいくのだが‥‥「ノロすぎてイライラするわよ!」とキリーによって踏みつけられてしまう。
「あ、駄目ですよ。キリーさん! もし白虎さんが別の危ない道に目覚めちゃったらどうするんですか」
「はわわ‥‥もう既に目覚めてるとしか思えないですぅ」
何気に諌山と土方は失礼な事を言いながら言葉を返すが、白虎は諌山が身重であるという事から耐えた――が。
「わんこぉ! わんこには耐える理由がないのにゃあ!」
「わ、お、おーぼーですぅ!」
「きゃ!」
諌山の小さな悲鳴が聞こえ「だから言っただろおおお!」と春夏秋冬が手を伸ばし、諌山が転ばないようにするのだが――間に合わず、諌山は近くにあったレバーを掴んで踏ん張った。
「あ、このレバーって何ですかね」
ガコン、と音が響き――天上から数々の落下物が落ちてきてキリー班はキリーを含め、諌山を守ることに徹していた。
「‥‥な、何で私までこんな事を‥‥」
キリーが引きつった表情で呟く。彼女の頭にはタライが降ってきており、直撃する際に凄く痛そうな音が響いていた。
「そ、そうだ‥‥何か楽しい話題でもしながら進みましょう。皆さんの好きなタイプってどんな人ですか?」
にやぁ、と春夏秋冬は黒い笑顔を浮かべながら「仮染さん、白虎さん、土方さん」とご指名までしてみた。
「き、聞かれても困るのです!」
「‥‥」
「ぼ、僕はまおー様みたいな人と違って、優しい人がいいのです」
白虎はエラー状態を起こし、仮染は何があったのか『orz』のポーズでその場に崩れ落ちる。
土方に関してはキリーの逆鱗に触れたのか平手打ち三連発を受けていた。
「‥‥か、仮染さんは何があったのかしら‥‥そうだ、キリーさんはどうですか?」
春夏秋冬の言葉に白虎も仮染も耳だけは其方に向けて答えを待つ。
「私の理想? 色々あるけど、これだけは譲れないってのがあるわね――――私に逆らわない人」
(はわわわ、やっぱりまおー様はまおー様にしかなれないのですぅ)
「わんこ、失礼な事考えてる顔してんじゃないよ!」
土方は心の中で思っただけなのに、八つ当たりのような感じでラリアットを受けてしまい、既にちょっと他の能力者より怪我が多いような気がする。
「あ、あんな所にスイッチが‥‥」
仮染が見つけたのは床に取り付けられたスイッチ。看板が立っており『押すなよ! 絶対に押すなよ!』と書かれている。
「踏まないように気をつけないといけないですね‥‥あっ!」
諌山のドジ発動で転びかけ「やっぱりか――――!」と能力者達は叫ぶ。
「端に避けてください!」
春夏秋冬が叫び、先頭にいた白虎と仮染を前へと突き飛ばし、転がり落ちてくる大玉をせきとめ、土方、春夏秋冬、諌山、そしてキリーは横道に入って大玉をやり過ごした。
「にゅ、にゅうう‥‥あ! 危ないのにゃ!」
頭上から落ちてくるタライが再びキリーを襲いかけた為、白虎は身を挺して庇う。
「‥‥わぁ、大胆!」
「白虎さん、今度は俺が貴方のためのせくはら係にならなくちゃいけないみたいですね」
「はわわ、白虎さんってばー、なんて事をー‥‥」
「にゅ?」
現在の状況――それは確かに最初はキリーをタライから守るためだったのだろう。
しかし、中途半端に突き飛ばした為、二人一緒に倒れてしまい『押し倒し状態』になってしまっているのである。
「ぱ〜〜い〜〜ふぅ〜〜〜‥‥」
おまけにキリーは倒れこむ際に頭を打っており、タライを受けた方がまだマシという状況だったりする。
「にゅ、にゅああああ‥‥べ、別に抱きつけてラッキーとか思ってないんだからね!」
「へぇ、思ってたんですか? 白虎さん――いや、せくはら魔とお呼びした方がいいですかねぇ」
「ゆ、勇輝さん、怖いのにゃー‥‥」
「やだ、何この展開‥‥見てる分には楽しいわ」
春夏秋冬が呟き「もっとやれー」的なエールを送りながらキリー班は先へ進み始めたのだが、ここで合流する人物がいた。
「あら、貴方達だったの」
クレミア・ストレイカー(
gb7450)であり、自由班を抜け出して此方の扉を通ってきたのだと彼女は語った。
「大変だったわ、壁がどんどん狭まってくるトラップがあって‥‥ほら、こんな感じでぎゅーってなったのよ」
クレミアはキリーをぎゅーっと抱きしめながら言葉を続ける。
「ちょ、は、放しなさいよ! この乳魔人! そんなにそのお、お‥‥大きな胸が自慢なの! 胸が大きいからって何よ! 私だって成長すればその倍くらいになるんだからね!」
きぃ、とキリーはちょっと妬み半分で叫んでいたのだが‥‥そのうち静かになって他の能力者達が「どうしたんですか、キリーさん?」と覗きこむと‥‥。
「はわわ、ま、まおー様が気を失ってるですぅ!」
「あら、私に押しつぶされて気絶しちゃったわね‥‥」
(クレミアさん、というよりクレミアさんの胸に押しつぶされて‥‥だよね)
春夏秋冬はジーッとクレミアの胸を見ながら心の中で呟き、先を進みはじめたのだった。
※鵺班※
「鵺さん、貴方は強くて美しくて‥‥惚れてしまいそうです」
南は鵺にトラップから守ってもらおうと持ち上げれるだけ持ち上げる作戦を実行していた。
「あら、十星‥‥貴方は男の子なんだから鵺くんを含む女性陣を守ってくれるんでしょう?」
星華が十星に言葉を返すと「姉さん‥‥」と苦笑気味に呟く。
「ぬ、鵺殿‥‥この帽子、この前貰った帽子ネ!」
ラサが鵺に言葉を投げかけると「あら、やっぱり似合うわね」と帽子越しだったけれど鵺はラサの頭を撫でてやる――とラサは照れたように「あ、ありがとゴザイマス」と俯きながら言葉を返した。
「鵺殿‥‥危ないから手を繋「きゃあ、可愛いわぁ」――デスヨネー」
鵺は和泉を見て「可愛い」を連呼し、和泉の方はといえば「鵺さんは前回参加してらっしゃるのですよね? 頼りにさせていただきます」とにっこりと笑顔で言葉を返し、鵺変態度を上昇させてしまっている。
「そういえば、噂で聞いたんですが‥‥鵺さんは1F、2Fとロクな目に遭っていないようですね‥‥」
ソウマが呟くと「そうなのよう!」と鵺はぷくーっと頬を膨らませながら言葉を返す。ちなみに頬を膨らませるというのは可愛い女の子がするから可愛いのであって、身長が190を超えている鵺がしてもちっとも可愛くないのだ。
「鵺殿‥‥可愛いデス」
約一名を除いては。
「わっ!」
突然ラサが叫び、ガコンと足元が崩れ落ちて下に仕掛けられている竹槍の群に落ちそうになる。
「危ない!」
十星がラサの手を引っ張り、落ちないようにしたけれど「‥‥竹槍! これを作った人は本気ダ」と顔色を真っ青にしながら呟いた。
「ほら、危ないわよ」
「え?」
鵺がラサに手を差し出し「手を繋いでいれば大丈夫よ」と鵺が言葉をつけたし、ラサの乙女モードが一気に急上昇した。
「あ、すみません‥‥躓いてスイッチを押しちゃいました‥‥」
和泉が苦笑した次の瞬間、壁がガコンと入れ替わりムサいオッサンがチューを強請っているようなキモい石像が幾つも現れ、それらが追いかけてくる。
「いやああああああ! 何これ!」
「さ、さすがにこれはちょっと‥‥精神的に重傷になりそうです‥‥」
「でも、これって女性向けのトラップですよね‥‥」
上から鵺、十星、和泉の言葉であり、鵺班は全力で駆け出して次の部屋へと向かおうとする。
「大丈夫よ、こんなもの‥‥壊してしまえばいいんだから。武器使用がOKって事は何があってもいいって事よね?」
星華が怪しく微笑み、愛用の武器を構えて石像の幾つかを叩き壊す。
「乙女の唇を奪おうとするなら、それなりの覚悟をしてから来る事ね」
ふ、と星華は武器をしまい、それを見ていたソウマは「これは‥‥僕にとってのキョウ運発動になるのかな?」と小さく呟いた。
「あの、何となくですけどそこの壁は嫌な感じがしますよ」
ソウマが壁の方を指差しながら和泉に言葉を投げかけると「あ」と和泉も気がついたように小さく声をもらした。
「壁の色と同じに塗ってあるスイッチがありますね‥‥気がつかなければ押してましたよ、これ‥‥」
和泉は呟き「この他にもあるかもしれませんね」とこと言葉を付け足しながら、次の部屋へと向かい始めたのだった。
※自由班※
「そういえば忍者屋敷なのに、今までどんでん返しが出てきたって話はねぇな。いい加減今回くらいはあるかもな」
相賀が呟いた瞬間「きゃあっ」と沢渡が可愛い悲鳴をあげながら壁の中へと吸い込まれる。
「言った傍からどんでん返しのご登場かよ‥‥」
沢渡が巻き込まれたどんでん返しの所を見るが、リュドレイクと一緒に周辺の壁などを見てみたけれど何も解除するようなスイッチは見当たらない。
「‥‥おわっ」
そうしている間に別のどんでん返しに巻き込まれ、相賀も沢渡がいる場所へと行く事になった。
「え、ちょ‥‥ちょっと俺一人でこんな所に残されても!」
リュドレイクが消えた相賀に向けて言葉を投げかけるのだが、相賀と沢渡にはその声は届いていなかった。
「ひっ‥‥! こ、こっちに来ないで下さい!」
どんでん返しの中は真っ暗になっており、暗闇の中で沢渡は多少パニックに陥っていたのか相賀が来ても誰が来ているか分からなかったようだ。
「こ、このままただでやられる私ではありません!」
「お――(ガッ)――おぉぉ‥‥」
沢渡は涙目で持っていた機械本を振り回しながら少しでも現れた『敵』に対して攻撃を試みた――それが、彼女を助けにきた相賀だとも気がつかずに。
「手ごたえありです‥‥」
「深鈴‥‥」
「あぁ! その声は翡翠さん!? どうしたんですか、何があったんですか、怪我してるんですか? 誰がそんな事を!?」
慌てた沢渡は一気に捲くし立てるのだが、心配する彼女の声を聞いて「お前だ」とは相賀も言い出す事が出来なかった。
「とりあえず、出ねぇと‥‥この辺にスイッチがあったような‥‥お、開いた」
相賀が見つけたスイッチを押すとどんでん返しが再びくるりと回り、リュドレイクがいる場所まで戻ってくる。
「‥‥翡翠さん、正直に答えてください‥‥もしかして、その怪我――私がしたんですか?」
「あー、まぁ‥‥でも大丈夫だから気にするな」
「すみません、本当に‥‥いきなり真っ暗になってて‥‥」
しょんぼりとする沢渡に「気にするな」と再び言葉を投げかけ、リュドレイクと3人、再び歩き出した。
「うーん‥‥モニター役と言うことを考えれば、少しくらいはトラップに引っかかって体験してみた方がいいんでしょうけど‥‥」
リュドレイクはちらりと壁の方を見ながら「でも、やっぱり‥‥」と首を緩く振りながら言葉を続ける。
「ここ、たまにとんでもなく危険なトラップがありますからねぇ‥‥色んな意味で」
――ガコン。
「‥‥‥‥ごめんなさい」
考え事をしながら歩いていたせいで、リュドレイクは床に仕掛けられていたスイッチを押してしまい、ぎこちない動きで後ろを歩いていた相賀と沢渡に謝罪する。
「別にいい――つめてぇ!」
「きゃあっ、こ、氷水!?」
リュドレイクがスイッチを押した後、一瞬の間が空いて天井から大量の水が落下してくる。
「いたっ! 何でタライまで落ちてくるんですか‥‥!」
リュドレイクは水に紛れて落ちてきたタライが頭に直撃し、少し涙目になりながらガラガラと音を立てるタライを恨めしげに見る。
「うぅ、早く出口までいかねぇと‥‥風邪引いちまうな、深鈴――大丈夫か?」
「な、なんとか‥‥リュドレイクさんは‥‥」
「俺も大丈夫ですよ、俺の場合は自業自得ですし‥‥」
それぞれ会話をしていたのだが「なぁ、あれなんだ?」と相賀が前方を指差す。
そこに立っていたのは頭に矢の刺さった(演出をしている)武者の姿。
「‥‥‥‥」
武者姿の男性はスイッチをガコンと押し、落とし穴を開いた後――そのまま落ちていった。
「‥‥‥‥‥‥まさか、落ち武者――とか言うんじゃねぇだろうな‥‥」
妙な物を見た3人だったが、とりあえず見なかった事にして先を進むことにしたのだった。
その頃、一人別行動をしていたUNKNOWNはスタッフ専用入り口から壁をよじ登り、先にゴールにたどり着いていたりするのだった‥‥。
―― 楽しんだ(?)後の打ち上げ ――
「人数分あるから皆どうぞ召し上がれよ」
百地はにっこりと微笑みながら待合室に集まった能力者達に持ち込んできたご飯を振舞う。
ちなみに彼女が持参してきたご飯は山菜おこわと赤飯のおにぎり、串差ソーセージの炙り焼き、コーンスローサラダ、肉じゃがだった。
「俺はおにぎりを持ってきたな、中身は梅干オンリーな。あと、ポテチに板チョコ、ポップコーン、とにかくお菓子を色々と持ってきた」
龍深城もバッグの中からお菓子をどっさりと出しながら能力者達に「食べてくれよな」と言葉を付け足した。
「あ、俺もお菓子を持ってきたよ」
そう言ってユーリはジャック・オ・ランタンの顔の形をしたカボチャパイ、チョコチップクッキー、バニラクッキー、シナモンクッキーを取り出した。
「僕は‥‥ハーブティーを色々持って来ました‥‥疲れた時には普通のお茶よりハーブティーの方がいいかな、と思いましたので‥‥」
ハミルは呟きながらラベンダー、カモミール、レモングラス、ローズヒップティーの入った水筒を取り出す。
「お砂糖と蜂蜜も完備ですよ」
「ペパーミントティーはあるかしら?」
クレミアがハミルに言葉を投げかけると「‥‥え、ペパーミントですか? ああ、はいあります」と言ってこぽこぽとコップに注ぎながらペパーミントティーをクレミアに渡す。
「私も色々食べ物持ってきたよ〜♪」
フロスヒルデもお菓子やフライドチキンなどを取り出して能力者達に差し出す。
「あ、これはキリー用に作ってきたんですよ」
十星が特製うさぎさんクッキーをキリーに差し出し「ふん、仕方ないから食べてあげるわよ」とキリーは少しだけ嬉しそうにクッキーを受け取った。
「あー! 私もマフィンを作ってきたんですよ!」
春夏秋冬がマフィンをキリーに渡しながら抱きつく。
「キリーさん、キリーさん、もう少しあの二人を上手く操る為にデレをですね‥‥」
「いやよ、何で私がデレてあげなくちゃいけないのよ。金取るわよ」
駄目だ、この人は――春夏秋冬は心の中で呟きながら苦笑するしか出来なかった。
「団長、お疲れ様でした――団長、何かありましたか?」
和泉が白虎に問いかけると「にゅああああ‥‥」と嘆いており、ちょっと暑苦しい。
(まぁ、あのメンツで行って何もないってのがおかしい事なんですけどね)
「あら、もしかしてキリーちゃんと何か進展があった?」
和泉が心の中で呟いていると星華が白虎に言葉を投げかける。
「えぇ、ありましたよね。白虎さん? はれんちな出来事がありましたもんね」
ちくちくと棘で刺すかのような仮染の言葉に「にゃああああ」と白虎は頭を抱えながら転がりまわっている。
「あらあら、何があったか分からないけど‥‥お姉さんが慰めてあげるわ」
星華が白虎をギューッと抱きしめていると「あんたって、女なら誰でもいいのね」とキリーから冷めた目で見られ、冷たい言葉を吐き捨てられてしまう。
「違うのにゃああああああ! うおおおお、放せ、放すのにゃあああ!」
「‥‥なんか‥‥向こうは、騒がしいが‥‥何か、飲むか?」
西島が能力者達に言葉を投げかけると「にゃ! 飲むのら!」とリュウナが大きく手を挙げる。
「伊織君は大丈夫ですか?」
仮染がぐったりとしている土方に声をかける――土方はキリーの八つ当たりを存分に受け、すでに打ち上げを楽しむ余力が残っていなかったのだ。
「お――いしさ――んっ!」
香坂が跳び蹴りと共に大石に声をかける。
「な、何だ何だ何だ! いきなり蹴られる理由があったのか!?」
「いや、別に? 何となく跳び蹴りで大石さんを呼んでみたくなっただけなのだ!」
えへん、とふんぞり返りながら香坂が言葉を返し「あ、大石さん」と仮染が大石を呼び止める。
「‥‥この前はすみませんでした」
仮染は赤褌を差し出しながら大石に言葉を投げかけるのだが――大石は目をきらりと輝かせて「おおおう! 褌じゃないか! 俺にくれるのか!? も、もしやキミは俺のことが‥‥!?」とぶっちぎりでとんでもない方向へ話が突き進み始めてしまった。
「ユーリ、ちゃんと通過できたみたいで良かったよ」
「濡れてる姿でこっちに寄らないでくれ。俺まで濡れる」
心配したリュドレイクをユーリはばっさりと斬り捨てる。
「にゅあー! お姉ちゃんの隣は譲らんぞー!」
白虎がキリーの隣に陣取りながら叫ぶ。
「白虎さん、キリーさんの隣に陣取って『今度は』『何を』するつもりですか?」
仮染の言葉に周りのしっと団員達も「やっぱり何かあったのか」とか「何をしたんだ」と桃色総帥――もとい白虎の周りに集まり始める。
「楽しそうですねぇ、ここらで一つ僕も芸を見せるとしましょうか。そうですね、鵺さんの物まねとかどうです?」
ソウマは呟きながら目の前の能力者達に鵺やキリーの物まねを披露する。
「フムフム、せっかくなのデ、レポートを書かねば! ニンジャヤシキはデートにお勧め――と!」
ラサがレポートを書きながら「何で!?」と周りからツッコミを受け、能力者達は騒ぎながらもまだまだ打ち上げは続くのだった。
END