●リプレイ本文
―― お掃除大作戦開始 ――
「よっしゃー! 今日は久々の取材! 頑張って取材しまくっちゃうんだからね!」
拳を強く握り締めながら、週刊個人雑誌・クイーンズの記者である土浦 真里(gz0004)が大きな声で叫んだ。
そのハイテンションぶりに、彼女がいつもよりも暴走しそうな事を感じとり、マリを知る者達は頭を抱えたくなったのだとか。
「‥‥もうマリさんに『無茶するな』というのは諦めたわ」
小鳥遊神楽(
ga3319)は大きなため息と共にマリを見る。
「マリさんからそのバイタリティを取ったら、マリさんじゃなくなるものね‥‥その代わり、いい? マリさん」
小鳥遊は真剣な表情になって言葉を続ける。
「今回はきちんとあたしや玖堂さんの目の届く範囲にいるのよ? わかった?」
「‥‥‥‥おぅ、イェー!」
(その間が激しく心配だわ‥‥)
「まったく‥‥しばらく大人しくしていると思ったらこれですか‥‥今回は人も多いんですから無茶をしないよう、いつも以上に気をつけてくださいね?」
マリの夫でもある玖堂 鷹秀(
ga5346)は黒いオーラ満点の笑顔をマリに向けながら言葉を投げかけた。
「わ、分かってるって! でも能力者が多いのか‥‥ばっちり取材しなくちゃだよ!」
きらんと目を輝かせながらマリは早速取材をしようと周りを見渡す――のだが、玖堂によって首根っこを掴まれ「落ち着きなさい」と窘められてしまう。
「くっ‥‥ついに世に忌むべき存在‥‥三邪神が揃ってしまったか‥‥」
がくりと膝をつきながら紅月・焔(
gb1386)が震える声で呟いた。
「‥‥ん? 忌むべき存在‥‥?」
最上 憐 (
gb0002)はかくりと首を傾げながら紅月に言葉を返した。
「それは‥‥俺! 毒島嬢、かざね嬢の三人‥‥くどい三連星が!!」
ちなみに『くどい三連星』というのは紅月がたった今考えた言葉である。
「あなただけが邪神で結構です」
紅月と被るようなガスマスクを被った少女、毒島 風海(
gc4644)が紅月にばっさりとツッコミを入れる。
「非常に怪しい人っていう視線が痛いですけど、いや、そのガスマスクの中身は分かりませんけど、私は紅月さんが言うような邪神ではありません。中身は可憐な乙女ですから、優しくして下さいね」
緋本 かざね(
gc4670)も毒島と同じくツッコミを返し、邪神疑惑を否定する。
「なんや個性的な人が集まったなぁ」
冴木氷狩(
gb6236)が苦笑しながらマリに言葉を投げかける。
「初めまして〜、あんたが真里ちゃんやね? ウチは冴木氷狩、呼び方は好きにしてええよ。今日はしっかり護衛するさかい、宜しくね」
冴木がマリに挨拶をすると「おおう、綺麗なお兄さんだ! じゃあヒカリンって呼んじゃうからねっ! 宜しく!」とマリも握手を求めながら言葉を返してくる。
「土浦さんは記者なんですね‥‥それでは僕達傭兵の活躍を特等席で見てもらいましょうか。勿論安全は保障しますよ」
ソウマ(
gc0505)はウインクをしながらマリへ言葉を投げかける。特等席で、という言葉がマリの記者魂に炎をつけたのか「今日はキメラに接近して取材しちゃおうかな!」とか叫んでいる。
「人型キメラですか‥‥う〜ん、少々悪趣味ですねぇ‥‥」
エクリプス・アルフ(
gc2636)は資料を見ながら憂いた表情を見せた。彼は人型キメラが存在している事にあまりいい感情を持っていないようにも見えた。
もちろん、キメラそのものにいい感情を持つ能力者はいないのかもしれないけれど。
「ふむ、お仕事を頑張りましょうか。今回は分かりやすい依頼ですからね、護って攻めて、ふむ、実に分かりやすい‥‥」
同じく資料を見ながら呟いたのは龍乃 陽一(
gc4336)だった。
(どのくらい強くなれたのか、確かめてみましょうか‥‥)
龍乃は薄く微笑みながら心の中で呟いた。
「‥‥噂には聞いた事があったが‥‥例の記者に会えるとは、な‥‥」
國盛(
gc4513)はちらりとマリがいる方向を見ながら小さく呟く。
(どんな人柄なのか。どこまで豪傑なのか‥‥一度会ってみたかった、何にせよ‥‥根性が座った奴ではありそうだ‥‥な)
國盛は心の中で呟く。その時点できっと彼が聞いた噂というのが破天荒とか横暴とか、それに似た単語である事を示している。
「お! そこのシブメン! 宜しくね!」
すちゃっと名刺と共にマリが國盛へと挨拶をしてくる。
「‥‥國盛と言う。宜しく頼むよ‥‥? お転婆な記者さん?」
ふ、と笑みながら國盛が言葉を返すと「ち、違う! マリちゃんはお転婆じゃないし!」と否定するのだが、その姿が既にお転婆を物語っているとはマリ自身もきっと気がついていない。
「さて、仕事といきますか‥‥どんな場所であろうと、誰が一緒にいようと私達は基本キメラの殲滅だけ考えていればいいんですから、楽なものです」
汐咲 蒔絵(
gc4706)が小さく息を吐きながら呟いた。
(面倒だな‥‥さっさと終わらせちまおう! 廃墟が崩れる前に!)
結路帷子(
gc5283)が心の中で叫ぶ。
「んん? カタビラくん? すっごい変わった名前だね! もしかして忍者!?」
今回参加する能力者達の名前を見て、マリが目を輝かせながら結路に言葉を投げかける。
「いーなー! マリちゃんのマリって名前と交換しない?」
「はっ!?」
いきなり予想外の言葉を言われ、結路は間の抜けた声で言葉を返してしまう。
「マリさん、人様を困らせてはいけませんと何度も教えたでしょう」
夫である玖堂がマリを引きずりながら別の方向へと連れて行く。
「い、一体なんだったんだよ‥‥」
残された結路は目を瞬かせながら(世の中には変わった奴もいるな‥‥)と心の中で呟いていたのだった。
「‥‥初任務か、能力者には成り立てだけど、役に立つところを見せなくちゃね」
高坂桐乃(
gc5354)が小さくポツリと言葉を漏らす。彼女以外にも数名、今回が初任務という能力者達が存在しており、どの能力者達も僅かに緊張の色を見せていた。
(最初の任務でまさかキメラと戦う事になるとは‥‥みんなの邪魔にならないようにしないとな!)
宗一(
gc5357)は心の中で呟き、気持ちを落ち着かせる為に深呼吸を行った。
(わたくしの他に、どれくらい今回が初任務と言う方がいるのでしょう‥‥初めから全て上手くいくわけではないと分かっていますが、それでもやはり足手まといにはなりたくないですね‥‥)
みくり(
gc5362)も周りを見渡しながら心の中で呟く。
「私は私が出来る事を‥‥頑張らなくちゃ」
神宮 ナギ(
gc5387)は超機械マーシナリーを持ちながら小さく息を吐いた。回復が出来る能力者がいれば、任務の成功率、そして仲間たちを助けられる確率がぐっと上がる。
その事を考え、神宮は回復役に徹しようと決めていた。
「‥‥初めてなので、何ともいえないですね」
カボ(
gc5392)は周りの能力者達を見ながら小さな声で呟いた。中には戦闘に慣れた能力者、自分と同じように今回が初任務、様々な能力者達がいて、カボは援護をしてキメラ退治に役立とうと考えていた。
「みんな緊張してるのかなぁ? ボクは初陣にわくわくしてるけどな」
キメラ退治も楽しく出来ればいいね、とベルル(
gc5418)は言葉を付け足しながらカボに言葉を投げかけた。
「これで全員かなぁ? それじゃ楽しく取材&キメラ退治にしゅっぱーつっ!!」
マリが楽しそうに叫び、能力者達は高速艇に乗り込んで、今回キメラが現れた廃墟へと出発していったのだった。
―― キメラ捜索&それぞれの戦い ――
今回、廃墟に現れたキメラは10匹。
そして、今回は一般人であるマリが同行する為にマリの護衛のことも考えなければならない状況にあった。
色々な作戦を出し合う中、2つの班に分かれて行動しようという事になり、能力者達は2つの班に分かれてキメラ退治を行う事になっていた。
A班(マリ護衛)・小鳥遊、冴木、ソウマ、龍乃、玖堂、宗一、カボ、ベルル、マリ。
B班(遊撃)・毒島、エクリプス、緋本、紅月、結路、汐咲、國盛、最上、高坂、みくり、神宮。
「何かあったらお互いに連絡しあうという事で大丈夫かしら?」
小鳥遊が確認すると「そうですね、キメラの数のこともありますし」とエクリプスが言葉を返す。
「それじゃ、任務達成の為に頑張りましょうか」
小鳥遊の言葉を合図にしたかのように、能力者たちは別方向へと歩き始め、キメラ捜索を開始したのだった。
※A班※
「‥‥この周辺には敵のいる気配がありませんね。もう少し歩いてみましょう」
ソウマは『探査の眼』を使用し、敵からの不意打ちなどに警戒を強めていた。
「キメラは合計で10体もおるんやね。注意しておかんと‥‥」
冴木も周りを見渡しながら小さく呟く。
「うっわー! 何かいかにも今から出そう! って感じの廃墟じゃん! 早く取材したいなー!」
マリはきゃあきゃあと騒ぎながら忙しなく動いて、そのたびに夫である玖堂から諌められている。
「マリさん! そこから離れてください!」
ソウマが突然叫び、獣の姿をしたキメラが勢いよくA班の方へと向かってくる。
「不意打ちとは‥‥卑怯、ですよ! っと」
龍乃は竜斬斧・ベオウルフを振り回し、接近してきたキメラへと攻撃を仕掛ける。
「あ、ありがと‥‥さすがに今のはマリちゃんもビビってしまったぜぃ‥‥」
「後ろで守ってもらっていてください。1匹ではすまなさそうですから」
え? とマリが問いかけようとしたけれど、龍乃が視線を移した方向を見て納得した。更に4匹の獣型キメラがA班へと勢いよく突進してきているからだ。
「群れで動いていたのかしら? どっちにしても、倒すのみね」
小鳥遊が呟き、スキルを使用しながらドローム製SMGで攻撃を行う。
「わ、私も‥‥!」
カボもまだ遠くにいるキメラに向かってライフルで攻撃を仕掛ける。初任務、そして緊張しているという事もあるのか、最初は狙いが外れていたけれど、戦いに集中していく中で段々と狙い通りに射撃を行っている。
そしてカボと攻撃をあわせて宗一もマーシナリーボウでキメラを狙い撃つ。
「はいはい、敵ちゃん! 勢いよく来てくれてる所をごめんね」
ベルルは楽しげにマーシナリーガンで攻撃を行う。
「さぁ、久しぶりに暴れさせてもらうぜ?」
覚醒を行い、雰囲気が変わった冴木がグラジオラスを構え、射撃によって動きの止まったキメラに対して攻撃を行っていく。
「ほら、旦那にしっかり守ってもらえよ?」
マリを後ろへと下がらせ、冴木は再び剣を振るう。
「えー! マリちゃんももっと前に出ないと取材が出来ないんだけどっ!」
「‥‥マリさん?」
「は、はぁい。マリちゃん今回は我慢して後ろにいきまーす‥‥」
背後から感じた悪寒にマリはいそいそと、そして文句を言いながら後ろへと下がる。
(本来、支援役のリンカーとしては向こうの班に入ったほうが良かったんでしょうけど‥‥猛獣の世話係となったからには、小鳥遊さん一人に猛獣の世話を任せるのは申し訳ないですからね‥‥)
ふふ、と玖堂は心の中で呟く。マリと結婚=猛獣使いという方程式が彼の中ではしっかりと出来上がっていることをマリ自身だけが知らない。
「もう少し下がりましょう」
龍乃がマリを気遣い、戦闘の影響を受けないように後ろに下がることを提案するのだが‥‥「ばかぁ!」と龍乃はマリからチョップを受けることになる。
「な、何で!?」
「もっと下がりましょう、じゃないのよ! もっと下がったら取材が出来なくなるでしょ!」
マリがぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる横で、玖堂は「すみませんすみません」と何度も頭を下げてくる。
(‥‥す、凄い夫婦ですねぇ‥‥)
龍乃は心の中で呟き、近くによってきたキメラに向かいスキルを使用しながら攻撃を仕掛けた。
「‥‥強さ自体はさほどでも無いわね」
小鳥遊は射撃を行いながら呟き「でもキメラには違いないし、さっさと片付けましょうか」と言葉を付け足したのだった。
「これから奏でられる曲は君達への鎮魂歌。人に危害成す前に疾くと黄泉路へ行くがいい!」
ソウマはスキルを使用し、キメラへと斬りつける。
「そろそろですかね‥‥」
玖堂は現在の状況を見ながら、練成強化を使用して能力者達の武器を強化、そして練成弱体を使用してキメラの防御力を低下させ、後衛、前衛で戦う能力者達はトドメを刺すために動き始めたのだった。
「‥‥今です!」
「今ならすぐに倒れちゃうかも!」
カボがライフルを、ベルルがマーシナリーボウを撃ち、キメラの足を止めたところで大きな声で叫び、冴木がトドメを刺し、A班の能力者たちは獣型のキメラ5匹を退治する事に成功したのだった。
「向こうの班に連絡を入れておきましょう。残りのキメラは人型のみ、こっちも十分に注意をして動くことにしましょう」
龍乃がトランシーバーを使い、B班へ連絡をいれ、残る人型キメラの捜索へと行動を移したのだった。
※B班※
「そういえば、ボスとは依頼で初めてですね。フフ‥‥私がただの可愛いウェイトレスでない所をお見せしましょう」
怪しげに呟くのはガスマスクにレオタードという格好をした毒島。
「‥‥その格好を見れば『ただのウェイトレス』じゃないことは分かるがな‥‥風海にかざねも、か。頼もしい、な‥‥」
「わ、私はただの可愛い乙女ですよ!」
緋本が言葉を返すのだが、彼女もまた格好からして怪しさ満点だった。何故ならガスマスクにコスチューム・アリスを着ているのだから。
きっとうさぎさんもびっくり! なアリス格好の緋本を見て國盛は苦笑する。
「それにしても、こっちの班は結構普段からつるんでいるメンバーになってますね」
全員じゃないですけど、と言葉を付け足しながら呟くのはエクリプスだった。
「マスター‥‥こっちの班は女の子がいっぱいでおらわくわくしてきたぞ! ‥‥どうしよう! 見放題だ! ‥‥マスター、カメラくれカメラ!」
紅月は自分が所属する班に女性が多いことにはしゃいでいるらしく、そわそわとしている。
「‥‥いや、落ち着け。っていうか焔はガスマスクじゃないんだな」
「よ、よくぞ気づいた! マスター君!」
國盛からツッコミを受けたが「マスター君って何だよ‥‥」と苦笑して國盛も言葉を返した。
「あー、さっさとキメラ退治して帰ろうぜ。寒ぃし」
結路は欠伸をかみ殺しながら他の能力者達に言葉を投げかける。依頼が面倒そうな印象を受けるが、彼は依頼を受けたことが面倒なわけではない。
依頼が始まる前から既に面倒だと考えている人物だったりする。
「そうですね。A班が獣型キメラを退治したと報告してきましたから、残りは人型‥‥個人的には人型希望だったから、良かったわ」
汐咲が呟く。
「‥‥ん。早くキメラ倒すの。お腹がすいたら。バナナ。あるからね」
もう半分ないけど、と最上はバナナを食べながら言葉を付け足した。恐らくこのままでは『バナナ。あるからね』から『バナナ。もうないからね』に変わるのは時間の問題だという事だろう。
「わたくしにとっては初めての依頼‥‥きっとご迷惑おかけすると思いますが‥‥がんばりますので」
みくりは能力者達に言葉を投げかける。
「そうですね‥‥」
神宮も同じく初任務の為、やや緊張した表情を見せている。
「まぁ、能力者の皆、全員が『初めての任務』を行ってきたわけですから。それに今回は人数も多いですし、きっと大丈夫ですよ」
エクリプスが言葉を返し、能力者達はキメラ捜索を開始する。
國盛が探査の眼を使用して、不意打ちや罠などに備えながらB班はキメラ捜索を行っていた。
「‥‥さすがに廃墟と言うだけあって、瓦礫の山だな‥‥瓦礫の下にも十分に警戒しておかないとな」
「そうですね。もし瓦礫の下にキメラが潜んでいて、いきなり襲い掛かってきたら、初動が遅れて不利になりますし‥‥」
國盛の言葉に神宮が言葉を返す。B班が捜索を行う付近は特に瓦礫が散乱しており、気をつけないと瓦礫に足を取られて転んでしまいそうなほどだった。
その時だった。
「‥‥敵を発見した」
國盛が呟き、他の能力者たちに視線を促す。瓦礫に寄りかかりながら、B班の能力者達を見据えた後、襲い掛かる為に駆け出してくる。
「‥‥目標確認、視界が狭いですね。私は側面から回りこみます。汐咲さん、一緒にいきましょう」
毒島が汐咲に言葉を投げかけ、2人は側面へと向かい、B班から少しだけ離れた。
「さてと、敵さんが来てくれたことだし、さっさと退治させてもらって、さっさと帰るとするか。こんな今にも崩れそうな所からさっさと帰りたいんだよ」
結路は呟き、機械爪・ラサータを構えながら攻撃態勢へと入る。
結路とほぼ同時に他の能力者達も戦闘態勢に入り、戦闘が始まったのだった。
「とりあえず、現れたのは3人‥‥」
「そうですね。ですが正面と側面、一気に攻撃を受ければ、たとえキメラとて怯むはず」
汐咲は呟き、毒島と一緒に側面からキメラへと攻撃を仕掛ける。
「なるべく射線上には立たないようにしますので遠慮なくどうぞ」
正面から出迎える能力者達に汐咲は言葉を投げかけながら、キメラへと攻撃を仕掛ける――が、潜んでいた4人目のキメラが矢を放ち、汐咲は多少ながらもダメージを受けてしまう。
「弓、遠距離タイプ‥‥私達はあちらを担当しましょう」
毒島が足を一旦止め、汐咲も首を縦に振って、遠距離タイプのキメラの方へと向かい始める。
「さて、早々に終わらせてしまいますか」
エクリプスは呟きながら、和槍・鬼火を構え、剣を構えているキメラへと攻撃を仕掛けたのだった。
「美少女ガスマスク戦士の力を侮ってもらっては困ります!」
緋本は釘バットを両手に持ち、ある意味ではキメラよりもインパクトの強い姿になってしまっている。
「二人とも行くぞ! って毒島嬢がいない!?」
紅月はガスマスク3戦士の力を見せる時、と叫びながら後ろを振り向くのだが、毒島は遠距離タイプの迎撃に向かっており、現在のガスマスク成分は緋本と紅月の2人しか存在していない。
「こういう時こそ、頑張るとき! 大丈夫、俺たちはやれば出来る! やれば出来るんだ!」
紅月は能力者達を励ますように言葉を投げかけるのだが、視線は女性をガン見しており、全く励まされている感がしない。
「こんな所で死んでたまるかよ! モテ期も来てねぇのに!!」
結路は大きく叫びながら機械爪・ラサータでキメラへと攻撃を仕掛ける。彼が攻撃を仕掛けたキメラは爪を武器としており、彼と似たようなタイプの敵だった。
「ムエタイ時代に鍛えたこの脚力‥‥入らんとは言わせん‥‥!」
國盛は低く呟きながらステュムの爪を装着した靴で攻撃を仕掛ける。上から結路、下は國盛、と両方から攻撃を受け、キメラはどちらの攻撃も防御、避ける事が適わず、大ダメージを受けてしまう。
「‥‥ん。そんな武器。危ない。手ごと。斬るね」
最上は呟きながら大鎌・ハーメルンでキメラの手を斬り落とす。剣を持っていたキメラは手ごと自分の武器を失ってしまい、続いて攻撃してきたエクリプスによってトドメを刺された。
「剣を持ったキメラを1人倒したようですね」
汐咲がちらりと視線を移しながら呟き「早くこちらも終わらせましょう」と毒島が言葉を返した。
「‥‥っ!」
キメラの矢を汐咲はひらりと避け、忍刀・颯颯でキメラを切りつける。近くによられては弓を構えることも出来ず、キメラが距離を取ろうとすると、すぐに毒島が距離を詰め、超機械・シリンジでキメラのお尻を狙って突き刺す。
「これがホントのシリンジ‥‥なんちて」
ふ、とお茶目な言葉を口にする毒島だったけれど、苦しみもがくキメラの姿を見て汐咲は多少同情してしまった。
(あ、あれは痛そうです‥‥)
「おらぁっ!」
マーシナリーナックルで攻撃を仕掛けたのは高坂。2匹目の剣を持つキメラに対して攻撃を行っており、爪、剣、弓を持ったキメラを退治した能力者達が集まって総攻撃を仕掛け、退治をする。
「さすがにこれだけの人数でかかると、心強いですね」
みくりがポツリと呟き、安心したように息を吐いた。
「危ない!」
その時、A班の能力者達の声が聞こえ、B班のいる場所からは死角となっている場所から拳銃を構えたキメラが現れて、狙いを定めていた。
「油断大敵、ね」
だが小鳥遊のドローム製SMGがキメラの頭を狙い撃ち、冴木が斬り捨てるという行動に出たため、B班の能力者たちは攻撃を受けることはなかった。
「5人目がいないと思ってたら、やっぱり潜んでいたのか‥‥」
國盛が「ありがとう」とA班の能力者達に言葉を投げかけ、倒れたキメラを見る。
「おおう! さすがだね! あんまり大きな怪我してる人いないじゃん!」
マリが能力者達を見渡し「とりあえず、少し休んでから帰る事にしましょう」とソウマが言葉を投げかけ、能力者達は休憩できる場所へと移動していったのだった。
―― お掃除完了 ――
「ねぇねぇ! ちょっとだけ取材いいかなっ! いいよね!? いいよー!」
マリは休憩が始まると、相手に拒否の言葉を言う暇を与えずに取材を始めた。
「マリリン! 俺はキミにお願いがあるんだ!」
取材をしている間、紅月が真剣な表情でマリに言葉を投げかける。
「戦闘中、きっと『イヤン♪』な写真もあったことだろう。それを俺に現像してくれ!」
紅月の言葉に能力者達は目を丸くして、何も言うことができなかった。煩悩の固まりでしかないと思われていた紅月が本当に煩悩の固まり、むしろ煩悩の化身だったのだから。
「ぎゃあああ!」
突然、紅月が叫び、倒れる。
「はいはい。次はガチ注射しますよ?」
毒島が巨大注射器で紅月にカンチョーしたからだ。
「やだ! 面白い写真が撮れそう!」
マリは楽しそうに写真を撮り始め、紅月の悲痛な叫びが聞こえるのだが、能力者達はあえて聞こえない振りをした。
むしろ、多少の制裁を加えた方が良い、という優しさの現われなのだろう。
「‥‥いつも、今日くらいだったら、あたしの苦労も減るんだけどね‥‥。また取材の際にはちゃんとあたし達に声をかけてね。可能な限りは同行するようにするから」
小鳥遊の言葉に「おぅいぇー!」と親指をぐっとたてながらマリは言葉を返したのだった。
「‥‥ん。バナナ。残ってるよ」
最上がマリにバナナを差し出すと「え! 貰っていいの!? わぁい!」とバナナを貰って喜ぶ姿がある。
(‥‥ん。とても。大人の人には見えない)
最上はバナナを食べる姿を見て、心の中で呟いていた。
「どうや? 良い絵が撮れた?」
冴木がマリに言葉を投げかけると「うん、もっちろん!」と言葉を返す。
「そうや。これをキッカケに友達にならへん?」
「友達? いいよ!」
冴木の言葉にマリもにっこりと笑って「改めて宜しくね!」と言葉を付け足した。
「キメラ退治も終わりましたし、任務としてはこれで終わりですね‥‥どんな記事にになるか、楽しみではありますね」
ソウマは小さく呟く。無表情なので少し分かりづらい彼だが、内心はとてもドキドキしている事を他の能力者達は知らない。
「とりあえず、無事で何よりです」
エクリプスがマリに向かって言葉を投げかけると「うん。皆のおかげだね」と笑って言葉を返してくる。
「でもこれからが記者さんの仕事ですもんね」
龍乃が笑って呟くと「そうなの! これから記事に使う写真選んだり、記事書いたり、マリちゃんの戦闘はこれから始まるのよぅ」と大変ぶりを言うのだが、何故か楽しそうな表情なので大変そうには全く見えない。
「‥‥噂よりはおとなしい印象を受けた‥‥気がするが‥‥「ちょっとそこの人! マリちゃんの取材を受けなさいっ!」‥‥やはり気のせいだったか」
能力者に取材を求める為にラリアットを食らわしている姿を見て、國盛は苦笑するしかなかった。
「そういえば、コーヒーを入れるのだけではなく、戦闘も凄いんですね」
緋本が國盛に言葉を投げかけると「そ、そうか? ありがとう」と少しだけ照れたように言葉を返した。
「何とか崩れる前に終わったなー。高速艇の近くのここなら、もし崩れても被害はないだろうし。何にせよ、無事に終わってよかったぜ」
「カタビラくん! 名前交換してよ!」
「げ、ま、まだ言ってんのかよ!」
結路は引きつった表情で、マリから後ずさり始める。
「マリさん、人に、迷惑を、かけては、い・け・ま・せ・ん!!」
玖堂がマリの背後にたちながら言葉を強調して話しかける。
「やだなぁ。カタビラくん、冗談に決まってるじゃーん!?」
あははは、と今度はマリが引きつった笑みを見せながら後ずさりを始めた。
「とりあえず、無事に退治できてよかった‥‥いてっ」
宗一がほっと安堵したように呟き、怪我をしたところが痛んで表情を歪める。
「大丈夫ですか? 少しジッとしていてください」
神宮がスキルを使用して、宗一の傷を治療する。
「あ、ありがと」
少し離れた所ではカボが煙草で一服していた。
「ふぅ‥‥仕事を終えた後の煙草は何でこんなにおいしいんだろ?」
空を見上げ、紫煙を吐き出しながら小さく呟いた。
「んー! 今日は楽しかったな」
今日の戦闘のことを思い出したのか、ベルルは大きく伸びをしながら呟いた。大きな怪我もなく、無事に依頼を遂行することが出来た喜び、敵と戦えたことなどが色々頭の中を巡っているのだろう。
「さて! この後、マリちゃんによるクイーンズのための取材を遂行しちゃうからね! みっちりと色んなことを取材させてもらうんだから!」
拳を強く握り締めながら、能力者‥‥初めて会った能力者たちにつめより、何で能力者になったのかなど色々取材――もとい、問い詰めていたのだった。
END