●リプレイ本文
―― オカマの友達を助けに行きましょう ――
「何て事なの! アタシの友達が巻き込まれてるなんて‥‥!」
さめざめと泣いているのは鵺(gz0250)、どうやら資料に書かれていた取り残されている人物が自分の友人だと知り、ぎゃあぎゃあと喚きたてている。
「ボクは荒巻 美琴(
ga4863)、ヨロシクね〜♪」
荒巻は鵺に「皆で助けるから大丈夫だよ」と苦笑しながら言葉を投げかける。
「なんとしても取り残された人を助けませんと‥‥でも、なんで2人だけ取り残されてるんでしょ?」
佐倉・拓人(
ga9970)が首をかくりと傾げながら呟くと「新しい服に夢中になっていたら逃げ遅れたらしいわ」と鵺がさらりと呟く。
(‥‥どれほど夢中になっていたんでしょうか)
ふと思い浮かんだ疑問だったが、恐らく鵺にそれを言っても何も分からないという事で佐倉は言葉をぐっと飲み込んだ。
「さて‥‥無粋なキメラには早々にご退場頂いて、祝宴に移ろうじゃないか」
エイミー・H・メイヤー(
gb5994)がちらりとラサ・ジェネシス(
gc2273)を見ながら呟いた。
「祝宴?」
その言葉を疑問に思ったのか鵺が目を瞬かせながら聞き返すと「な、何でもないヨ!」とラサが慌てて鵺に言葉を返してきた。
「それはそうと、2人の写真とかあるのかな? 捜索だから出来れば2人の顔を知っておきたいんだけど‥‥」
シクル・ハーツ(
gc1986)が鵺に問いかけると「あるわよ!」と自信満々に手帳から写真を能力者達へと見せた。
その写真を見た後「何となく、分かった」と能力者達は短い言葉しか返すことが出来なかった。恐らくは何かのパーティーをしている最中の写真なのだろうが、一体素顔はどうなってるの? と問いかけたいほどの化粧だったからだ。
「ぬ、鵺殿! 我輩達が頑張って鵺殿の友達を助けるよ!」
ラサが鵺の手をしっかりと掴みながら言葉を投げかける。
(こういうトキ頼れる我輩を鵺殿にアピールしていきたい!)
心の中でラサは呟く。普通ならば『男』が『女』に頼れる所をアピールしなければならないはず‥‥というツッコミはとりあえずナシにしておこう。
「賑やかだねぇ‥‥退屈しなくていいけどよ」
苦笑しながら呟くのは巳沢 涼(
gc3648)だった。ラサの知り合いらしく、巳沢としてはラサの彼氏に頼まれては手を貸さないわけにはいかない、という気持ちで今回の任務に参加していた。
「‥‥ふぅ」
ルミネラ・チャギム(
gc7384)が周りの状況を見て、他の能力者達に分からないように小さくため息を吐く。
(彼女? 達の為に頑張りますか‥‥しかし、あまりお近づきになりたくないですね)
ルミネラは何故か悪寒を感じて、鵺を見る。
(何か嫌な予感がするのは、気のせいでしょうか)
身の危険を感じるルミネラとは反対に「‥‥私は誰なんでしょうか?」と首を傾げながら呟く少女、weiβ Hexe(
gc7498)がいた。
「あれ‥‥? 何でココに居るんでしょうね‥‥まぁ、気にしなくても大丈夫でしょう。仕事をちゃんとすればいいんですから‥‥」
クスクス、と笑いながらweiβは言葉を付け足したのだった。
「これで全員だよね? そろそろ出発しようか。助けを待ってる人もいる事だし、急がなくちゃね」
荒巻が呟き、能力者達は高速艇に乗り込み、キメラが現れた町へと出発したのだった。
―― キメラとオカマの現れた町 ――
能力者達はそれぞれ車両を使って、キメラ捜索や鵺の友人探しをする事にしており、戦闘、救助、その両面で班を3つに分けていた。
救助班・ラサ、鵺の2人。
前衛班・weiβ、エイミー、荒巻、巳沢の4人。
後衛班・ルミネラ、佐倉、シクルの3人。
捜索時、ラサと鵺はジーザリオに乗って、巳沢は自身のバハムート、3人以外の能力者達は佐倉のランドクラウンに乗ってキメラ、そして保護対象人物を捜索する事になっていた。
「避難が済んでいるという情報に間違いはなさそうだね」
エイミーが町を見渡しながら小さく呟く。キメラの襲撃により、色々な所が壊れている場所はあるけれど人の気配は全くしなかった。
「しかし、結構町の中は壊されてる部分が多く見られますね」
ルミネラが町の様子を見ながら呟く。中には血痕混じりの場所も見られ、状況判断でしかないが、重傷ではないにしろ負傷者が出ている事が伺えた。
「大きな町だったら2〜3人で行動して捜索っていう手もあったけど、見た所そんなに大きな町じゃないし、これならすぐにキメラを見つける事が出来るかな?」
荒巻がキメラを見逃すことがないように、しっかりと外を見ながら呟く。
「どこにいますか!? 聞こえていたら返事をして下さい!」
佐倉が大きな声で鵺の友人2人に聞こえるように叫ぶが、反応はまだ返ってこない。
「色々な店が集まってるのはこの辺しかないから、この辺りだと思うが‥‥声でも聞こえればいいんだけど」
シクルも外に向けて声を出しながら小さく呟く。
その時、一緒についてきていた巳沢が「何か聞こえないか?」と佐倉達に言葉を投げかける。巳沢の言葉に能力者達が耳を済ませると‥‥。
「きゃあああああああっ、何でお洋服見てたらこんな事になってるのかしらああああ!」
「だめよ! ジャスミン! 今は叫ぶより逃げるのよ!」
「いた‥‥あの2「いやああああ!」なるほど、確かに鵺の友人のようだな」
シクルをはじめ、キャサリン&ジャスミンの声を聞いて能力者達は苦笑する。
「救助はあちらに任せて‥‥私達はあのキメラを何とかすればいいのね? クスクス‥‥」
weiβが呟き、能力者達の車両はキメラと鵺の友人の間を割って入るようにし、ラサ達は救助を、佐倉達、そして巳沢はキメラとの戦闘を行う為に車両から降りたのだった。
―― 戦闘開始・キメラ VS 能力者達 ――
「キャサリン殿、ジャスミン殿、ご無事で本当に良かっタ」
ラサのジーザリオに2人を乗せた後、戦闘場所から少し離れ――‥‥ようとしたのだが、キメラはラサ達を標的にしているらしく、ラサ達の方向へと向かっていく。
「鵺殿! 我輩が食い止めるカラ安全な場所ニ!」
ラサは車から飛び降り、小銃・WI−01をキメラへと向けて発砲しながら叫ぶ。
「分かったわ! すぐに戻ってくるからね!」
鵺は運転席へと座り、2人を安全な場所に連れて行く。
「大人しくやられてください!」
ルミネラが小銃・バロックを構え、スキルを使用しながらキメラへと攻撃を行う。キメラは逃げようと地面を転がって横へと避けたが「そう簡単に逃がすと思うか?」とシクルが弓を構えながら呟く。
「剣しかないのなら不必要に近づく事もないな」
弾頭矢をつがえ、キメラへと向けて放つ。
「皆さん、今ですよ」
佐倉はスキルを使用しながら能力者達の武器を強化していく。
「よーし、いっくぞー!」
後衛の攻撃で怯んだキメラへと向かって荒巻が駆け、ロエティシアでキメラを攻撃する。
「そちらばかりを気にしていていいのですか?」
エイミーはキメラの背後から逃げられないようにと足を狙って斬りつける。
「悪いがちゃっちゃと片付けさせてもらうぜ」
巳沢はエアストバックラーでキメラの攻撃を受け流しながら雷槍・ターミガンでキメラの足や手を狙って攻撃を行う。
「shall we Dance?」
weiβは愛用の斧を構えながらキメラへと近寄り「さぁ、一緒に踊りましょう」と妖艶な笑みを浮かべて見せた。
そしてまるでダンスでも踊るかのうように攻撃を仕掛ける。
「案外、ソードダンスって簡単なのね。まぁ、斧ですけどね」
クスクス、と笑みを浮かべたままweiβは攻撃を続ける。
そして、キメラに近づいた巳沢がスキルを使用してキメラのバランスを崩す。
「シャドウボルト!」
佐倉が攻撃を仕掛け、その攻撃に続くように能力者達が攻撃を仕掛け、大きな傷もなく能力者達はキメラ退治を終わる事が出来たのだった。
―― ハッピーバースデー ――
能力者達がキメラ退治と本部への報告を終えた時、鵺にとって予想もしていなかった出来事が起きた。
「誕生日のお祝い? 誰の‥‥ってアタシか! そういえば誕生日だったわ!」
鵺自身も忘れていたようで「ヤダ! どうしよう! 凄く嬉しいわ!」ときゃあきゃあ騒いでいる。
「ボク、料理は得意だから料理の準備に行くね。材料さえあれば色んなリクエストにも応えてあげれると思うよ」
荒巻はキッチンに向かう途中で能力者達に言葉を投げかけた。
「私はケーキを作る手伝いをさせていただきます。シクルさん、行きましょうか」
鵺の誕生日という事でシクルはケーキを作る事にしていた。普通の料理は作らないのか、と誰かが問いかけたのだが‥‥「ふふ‥‥死人が出るよ?」と黒い笑顔で返されてしまい、それ以上何も言う事が出来なかったとか‥‥。
「誕生会とかって楽しいですよね」
ルミネラがキッチンでお菓子を作りながら佐倉に言葉を投げかけると「そうですね、こういう雰囲気は好きです」とケーキを作りながら佐倉も言葉を返す。
「私もピッツァ・マルゲリータとタンシチューを作るわね」
weiβも料理を始め、キッチンからは常に良い匂いが漏れてきていた。
そして、料理も完成して鵺の誕生日パーティーが始まった――と同時に今回の保護対象だったジャスミン&キャサリンも乱入してきていた。
どうやら鵺の誕生日パーティーと聞いて慌ててプレゼントを持ってきたらしい。
「さぁ、レディ達はこちらへどうぞ」
エイミーが騎士のように丁重に2人をエスコートして、パーティーが開始される。
「そうだ、誕生日おめでとう、鵺嬢‥‥良かったら貰ってくれ」
エイミーがコサージュを鵺を渡すと「きゃあ! ありがとう! 嬉しいわっ!」と喜んでさっそく髪につけていた。
「ね、拓人さん、甘さ――あれくらいで大丈夫だったかな? 甘い物が苦手だから普通の甘さがよく分からないんだよね‥‥」
シクルが佐倉に問いかけると「大丈夫ですよ、この中にも甘い物が苦手な人がいるかもしれませんし、甘さ控えめでちょうど良いと思いますよ」と笑顔で言葉を返す。
「やだー! イケメーン!」
「ちょっと、鵺ちゃんったらこんなイケメン達とお仕事なの!? 私達も能力者になりたいわぁ!」
「ダメよ! ここにいるイケメンは全員アタシの婿なんだから!」
「な、なぁ‥‥気のせいか? 俺達の隣で物騒な会話が‥‥」
「奇遇ですね‥‥僕も全く同じ事を考えてました」
嫌な汗を流しながら巳沢とルミネラがジュースを飲んでいた。もちろん、その隣では「イケメンイケメン」とうるさいオカマ3人が座っている。
「ねぇ、貴方は私たちの事をどう思うのかしら!」
(わ、私に来ましたか‥‥)
心の中では逃げたい思いに駆られながらも笑顔を崩さず「外見が普通の男性なら大丈夫です」と言葉を返す――がわずか1秒後にはその言葉を後悔する事になる。
佐倉は後に語る。
「あの時の3人の目、マジでした」
‥‥と。
「すみません、嘘つきま「男が嘘ついてんじゃないわよ!」返す言葉もございません」
佐倉がオカマ3人に絡まれている間「佐倉さんには悪いですが、今のうちに逃げましょうか」とルミネラがいい、巳沢も激しく首を縦に振り、こっそりとパーティー会場を抜け出すことにした――が、オカマセンサーを甘く見てはいけない。
「そこぉっ!」
いきなり皿が飛んできて、間一髪で巳沢がキャッチする。
「この出会いは運命なのよ、分かった? もう鎖でガッチガチに固められた運命なのよ」
「う、運命なんて信じません! ごめんなさ――――いっ!」
「あ、ちょ、俺を置いて逃げるなぁぁぁぁ!」
ルミネラが逃げ、巳沢が置いていかれ、目の前にはオカマ3人組。
「だ、誰か助けてくれ――――――ッ!」
巳沢の悲痛な叫びを誰もが聞いているはずなのに、誰も助けようとはしなかった。
「いいのかい? ラサ嬢」
苦笑しながらエイミーが鵺をチラリと見ながら問いかけると「まぁ誕生日ダシ」とラサは至って平常心を装おうとしていた。
(でもラサさんと鵺さんはいい雰囲気になるんだろーなー‥‥ボクも帰ったら、お義兄さんに甘えさしてもらおうっと)
その隣で料理を食べていた荒巻は鵺とラサを見ながら心の中で呟いていた。
「そうだ、ラサ嬢。これを‥‥鵺嬢とおそろいだよ」
エイミーが取り出し、ラサに手渡したのは鵺にプレゼントであげたコサージュと同じもの、それをエイミーはラサの頭に飾ってやる。
「あれ‥‥そういえばweiβは‥‥?」
エイミーが周りを見渡すのだが、会場内のどこにもweiβの姿はなかった。彼女は外へと出て、星空を見る為に空を見上げていた。
「楽しい人ばっかりだけど、そこに私の居場所はないわ‥‥宴が終わるまでゆっくりしておきましょう‥‥クスクス‥‥」
「鵺殿、ちょっとコッチに来テ」
ラサがこっそりと鵺を呼び、鵺がやってくると「‥‥ハッピーバースデー!」と言いながら赤いバラの花束を手渡した。
「まぁ‥‥ありがとう、今日もらった物で一番嬉しいわ」
鵺はラサをギューッと抱きしめながらプレゼントのお礼を何度も言った。
そして会場内では‥‥。
「頼む! 俺をここに匿ってくれ!」
ようやく逃げ出してきた巳沢がシクルに助けを求め、シクルの座るソファの後ろへと隠れる。
「ねぇ、巳沢ちゃん知らない?」
シクルは暫く考え込んだ後――‥‥。
「うん、ここにいるよ」
とても気持ちの良い笑顔でソファの後ろを指差し、巳沢は「う〜ら〜ぎ〜り〜も〜のおおお!」と叫びながらオカマ2人に連行されていったのだった。
END