●リプレイ本文
―― 倒すはキメラ、探すはカマのぱんつ ――
今回、能力者達はキメラ退治という任務を受けたというのに、何故かオカマ‥‥鵺(gz0250)のバッグ(ぱんつの入った物)を探さなければならないというオプションまでついてきていた。
「何で下着の色までカミングアウトする! 里中 竜三氏ィ――! 誰得な性癖なんか暴露されて‥‥ぐはっ!」
村雨 紫狼(
gc7632)が鵺を指差しながら叫ぶのだが、彼は言葉を最後まで言う事なく鵺によって叩かれてしまった。
「それ以上言うと‥‥例えイケメンでも許さないわよ? アタシは竜三なんて勇ましい名前じゃないの、鵺よ、ぬ・え! はい、繰り返して!」
鵺が村雨に言葉を投げかけるが「しかし野郎にはサービスしないっ! マジ避けスルーだ! しかもパンチはロリっ子限定でしか受け付けない!」と叫ぶ。僅か数秒前に鵺からパンチを受けていた事はとりあえず置いておこう。
「わぁ、綺麗な方なのです‥‥」
レーゲン・シュナイダー(
ga4458)が鵺を見ながらポツリと言葉を漏らす。その言葉にいち早く反応した鵺が「きゃあ♪ 嬉しい事言ってくれるわ!」と村雨に対する態度とは真逆の態度で言葉を返した。
「レグ、鵺嬢はラサ嬢の彼氏(?)なんだよ」
エイミー・H・メイヤー(
gb5994)がレーゲンに鵺を紹介する。その隣ではラサ・ジェネシス(
gc2273)が少し顔を赤くして照れていた。
「レーゲンです。レグって呼んで下さいね☆」
ほんわかと柔らかい笑顔で鵺に自己紹介をする――と「きゃあ☆ 可愛いわ!」と鵺がまるでイケメンでも見つけた時のようにきゃあきゃあと騒ぎ立てる。
「‥‥う、浮気は駄目ですヨ」
ぽつりと呟いたラサの言葉に鵺はきょとんとしながら「や〜ねぇ、そんな事あるわけないでしょう!」とけらけら笑って言葉を返した。
「これは、相変わらずのラブラブっぷり‥‥って事でいいのかな?」
苦笑しながら夢守 ルキア(
gb9436)が呟くと「うん、そういう事でいいと思う」とエイミーが言葉を返した。
(通りでオペレーターの反応がおかしいと思ったんだ‥‥今回は、女に間違われても気にしない事にしよう)
ミコト(
gc4601)は鵺を見ながら心の中で呟いていた。男として女に間違われるのも嫌な事この上ないが、健全な男として『男に言い寄られる』という事態は心の底から避けたい事だった。
「おはよう、今回は宜しく」
ミコトが少し素っ気なく挨拶をすると「あら、女の子はもっと愛想良くした方がいいわよ?」と鵺が言葉を返してきて、ミコトは「はぁ‥‥」と曖昧に言葉を濁した。
(完璧に女と間違えられてるな‥‥それはそれで悲しいけど、最悪を回避する為には仕方ない事か‥‥)
「今回は宜しくお願いします。なるほど、とてもユニークなカップルですね。私も貴女方の幸せを願わせてもらいますよ」
音桐 奏(
gc6293)がラサと鵺に言葉を投げかける。
「今回はキメラ退治の他に鵺さんのバッグを探す事も大切ですね。キメラはともかく、バッグが見つかりやすい場所にあるといいんですけど‥‥」
月隠 朔夜(
gc7397)が資料を見ながら小さな声で呟いた。もちろんの事ではあるが、資料にキメラの事は書かれていてもバッグの事は書かれていない。
「里中兄さんの危険物満載のバッグ、どんな形してんだ? 落とした場所とか‥‥」
村雨が問い掛けるが(もしかしたら『よほどの事』用の勝負下着とかだったら‥‥うわぁ、即ゲロるわ)と考えてしまった自分を殴りたい衝動に駆られていた。
「バッグはキラキラしてるのよ。一目惚れして買ったバッグだから余計に見つけたいのよねぇ‥‥」
はぁ、と鵺はため息を吐きながら言葉を返した。
「それじゃ、鵺嬢のバッグを見つける為にも早く出発しようか」
エイミーが呟き、能力者達は高速艇に乗り込んで目的地へと出発し始めたのだった。
―― 街に潜むキメラ ――
今回、キメラが現れたのは街の中だが、住人達は既に避難していて街の中はシンと静まり返っていた。
「避難は完了しているみたいですね。でも逃げ遅れた人がいるかもしれませんし、気は抜けないですけど‥‥」
レーゲンは周りを見渡しながら呟く。
「アタシのバッグ、何処にあるのかしら‥‥」
はぁ、とため息を吐く鵺に「私だって大事な工具箱を落としたら、暫く立ち直れないでしょうし‥‥心中お察しします」とレーゲンが言葉を返した。
(しかし、バッグの中身がぱんつだと‥‥? 我輩には刺激が強イ‥‥いやしかし、恋人の好みを知る事も大事な事ではなかろうか)
ラサは心の中で葛藤を繰り返し(わ、我輩はいったいどうすればー!)と心の中で叫んでいた。
「鵺君、探査の眼とGoodLuckの使用をお願いできるかな?」
夢守が言葉を投げかけると「分かったわ、戦闘では役に立てないものね。任せて!」と言葉を返し、鵺がスキルを使用する。
「状況を見る限り、あんまり被害は出てないみたいだけど‥‥」
ミコトが周りを見渡しながら呟く。確かに彼の言う通りあまり被害は見られない。どちらかと言うと住人が避難をする時の方が被害は多かったのではないか、と問いたくなるくらいのものだった。
「バッグの捜索も忘れないようにしないといけませんね」
音桐が呟くと「きゃあ♪ アタシの事を気にかけてくれてるのね!」と鵺が激しく反応を示した。ちなみに音桐が気にしているのは鵺ではなく、鵺のバッグである。
「まぁ、独特のオーラを放ってるカバンだろーしすぐ見つかるな、うん」
村雨がボソッと呟くと「失礼ね! 人のバッグをイロモノにしないでちょうだい!」と鵺が騒ぎ立てる。
(存在がイロモノっぽいって言ったら怒るんだろうか)
村雨は心の中で呟いたが、口にしてしまうと大変な事になりそうな予感がして慌てて口を閉ざした。
それから暫くの間、能力者達が街の中を捜索して行き、街のほとんどを見回りかけた時に「おや、おいでなすったか?」とレーゲンが冷たく微笑みながら前方を見た。釣られるように能力者達が前方を見ると、刀を持った男性が立っていた。
「流石にキメラか人間か分からない状態で、いきなり斬りつけるのもマズいよね」
夢守が呟き、持っていたトリュフチョコを男性に向けて投げつける。本当は石でも良かったのだが、もし相手が人間だった場合相手が痛い思いをする事から夢守はトリュフチョコにしていた。
「ダウト!」
トリュフチョコを投げてFFが発生したのを確認すると夢守が叫ぶ。夢守が投げる前から能力者達は戦闘準備を行っていた為、FFが発生した直後に攻撃を仕掛ける事が出来たのだった。
―― 戦闘開始・キメラ VS 能力者達 ――
資料には『男性型キメラ(イケメン)』と書かれていたが、確かに良く見ればイケメンの類に入る顔をしているのかもしれない。
「‥‥一般的な、イケメンの類ですかね〜?」
月隠が苦笑しながら呟いて雷槍ターミガンを構えてキメラへと攻撃を行う。
「きゃああああ、イケメンが! イケメンが! って血!? うぅ〜ん‥‥」
一人でツッコミをしながら血が苦手という鵺はその場にバタンと倒れてしまった。
「おい! 戦線離脱すんの早いな!」
びしっとツッコミを入れながら村雨が叫ぶ。
「ラサ嬢! 鵺嬢を頼んだよ!」
エイミーが倒れた鵺をラサへと頼み、キメラの気を引きつける為に小銃S−01で射撃を行う。
「ま、まさしく眠り姫ダッ! はっ、そういう事を言ってる暇はないですネ」
ラサは呟いた後、慌てて鵺を安全な場所へと運び、キメラが鵺の所へ来ないようにと警戒を強める。
「ねぇ、さっきから気になってるんだけど‥‥キメラが背負ってるのって‥‥」
ミコトが眉を顰めながら呟き、他の能力者達もキメラの背中を見る。
すると確かにキメラは不似合なキラキラのバッグを背負っている。
「キラキラ‥‥どうやらアレが探し物のようだねぇ」
レーゲンが呟き「そうみたいですね」とエイミーも言葉を返す。
「‥‥私‥‥恋人いますので‥‥恋人以外の男なんてどうでもいいです‥‥だから、顔を潰す事にも躊躇いはありません‥‥」
月隠は呟きながらスキルを使用し、キメラの顔面を狙いながら攻撃を繰り出す。
「行くぜっ!」
月隠の攻撃が終わった後、村雨が叫び覚醒変化で黒衣の装束へと変化する。
「‥‥イケメン? 笑わせンじゃないよ‥‥私の恋人には断然劣る!」
レーゲンは叫びながらスキルを使用してキメラの防御力を低下させる。その後、エイミーがスキルを使用しながら攻撃を行う。
「‥‥攻撃して、そのバッグ傷つけたらうるさいんだろうなぁ」
バッグと気絶している鵺をちらりと見ながらミコトが盛大なため息を吐いた後、バッグに傷をつけないよう攻撃を仕掛ける。
「近付かないで‥‥気持ち悪い‥‥」
攻撃を受け、よろめいたキメラを見ながら月隠が呟き攻撃を行う。その際に音桐が援護するように射撃を行っており、音桐の射撃でバランスを崩したキメラは月隠の攻撃をまともに受けてしまう。
そして倒れる間にもラサがスキルを使用して射撃をしており、キメラは既に立てない状況にまで追い詰められていた。
「一撃必中と行きたい所ですが‥‥どうですかね」
音桐は攻撃を行いながら呟き、キメラを振り返ると強力な一撃を繰り出したものの、退治するには到らなかったようだった。
「それを返して、きみのモノじゃない」
夢守は呟きながら攻撃を行い、キメラが背負っているバッグを奪う。
「舞え! 我が双牙、天照! 月詠!」
村雨が叫び、スキルを使用しながら攻撃を行い、ラサ、夢守も射撃を合わせ、無事にキメラを退治する事が出来たのだった。
―― 戦闘終了後、乙女のバッグの中身は ――
戦闘が終了した後、レーゲンが負傷した能力者を治療している時に夢守が意識を取り戻した鵺にバッグを渡していた。
「きゃああ! これよコレ! アタシのお気に入りのバッグ!」
大事そうにバッグを抱きしめながら鵺は何度も「ありがとう!」と能力者達にお礼を言っていた。
「な、中身は大丈夫カナ? キメラが背負ってたカラ‥‥」
ラサが問い掛けると鵺がバッグの中身を見て「大丈夫! ピンクのぱんつも無事だわ!」と安心したように言葉を返した。
「なにやらパンドラの箱を思い浮かべてしまいますね‥‥」
鵺のバッグを見て、苦笑しながら音桐が呟くが鵺のバッグに希望なんてものは入っていない。
「そうそう、これはこの間の写真だよ。綺麗に撮れているだろう?」
エイミーが先日撮った写真をラサと鵺に渡すと「ありがとう!」と鵺は嬉しそうに受け取る。
「ちょっとそこのイケメン君! アタシの写真見てみて〜! 可愛いと思わない!?」
写真を受け取り、男性陣の所へ向かう鵺を見てエイミーと夢守、ラサは苦笑する。鵺の『イケメンにアタック☆』はもはや鵺専用のスキルのような物である事は承知しており、それが本心ではないと分かっているからこそ見守る事が出来るのだろう。
「うおっ! 俺に抱き着こうとするな! 俺に抱き着くのはロリっ子しかダメなんだぞ!」
「おやおや困った方ですね‥‥鵺さん、貴女の相手は私ではありませんよ」
村雨と音桐が困ったように(迷惑そうに)鵺を回避する。
(‥‥俺に抱き着きに来なかったって事は、本当に女として見られてるんだな‥‥)
眉間にしわを寄せ、引きつった表情でミコトは心の中で呟く。本当ならば声を大にして「俺は男だ」と叫びたいのだが、それを言ってしまえば新たな脅威が自身を襲う事が目に見えているので口に出来ないでいた。
「ふふ、ラブラブはぴはぴは良い事です♪」
レーゲンは男性陣と鵺、そしてラサのやり取りを見ながら小さな声で呟いた。
「鵺君、今は幸せ?」
男性陣との追いかけっこを終え、鵺が1人になった所を見計らって夢守が問い掛ける。
夢守は鵺の家の事で色々あったのを、そして現在もそれが続いている事を知っているからこそ『幸せ?』と問いたいのだろう。
「もちろん、幸せに決まってるじゃない!」
鵺は即答し、夢守は「良かった」と短く言葉を返した。
その後、能力者達は帰還する為に高速艇が停まっている所へと向かい、歩き始めたのだが、ラサはこっそりと鵺を呼び止め、あらかじめ用意していた『【OR】オレンジのバラの花束』を渡し、鵺の頬に『ちゅう』をして顔を赤くしながら高速艇へと走っていったのだった。
もちろん、高速艇の所に現れた鵺が顔を真っ赤にしていたという事は言うまでもなく、理由を知った能力者達は何故オカマがリア充なのかと心の中で問う者もいれば、温かい目で見守る能力者、と様々なのだった。
END