●リプレイ本文
「蛇女か‥‥うむむ、嫌な女もあったもんや‥‥」
クレイフェル(
ga0435)が呟く。
「うわぁー‥‥私、にょろにょろ・ウネウネしたのって苦手なンだよねぇ〜‥‥」
聖・真琴(
ga1622)がため息混じりに呟き、橘・朔耶(
ga1980)が聖に言葉を返す。
「人間ってさ、感覚的に手足の多い生物か手足のない生物に拒絶感が出るように思考が出来てるんだってさ♪」
橘の言葉に「へぇ‥‥」と月影・透夜(
ga1806)が呟く。
「そうそう、紹介っと。ボクは荒巻 美琴(
ga4863)。グラップラーだよ! 今回は大好きなお義兄さんと一緒に仕事が出来て嬉しいな♪」
はしゃぐように自己紹介をする荒巻は「今は仕事に集中しなさい」と義兄である篠崎 公司(
ga2413)から注意を受けた。
「へへ、とにかく頑張ろうね♪」
「そうですね‥‥『蛇』の類はちょっと苦手なんですが、先の方々の為にも頑張りましょう」
真剣な面持ちで話すのは櫻小路・なでしこ(
ga3607)だった。
「古代神話のラミアは魅了の能力を使うみたいだから、今回のキメラにも注意しなくちゃいけないわね」
マリア・リウトプランド(
ga4091)が呟き、能力者達は挨拶もそこそこに現場へと向かい始めたのだった。
●荒廃した街に現れたラミア――尾の秘密を探れ!
街に到着した能力者達は、その有様に絶句した。建物は崩れ落ち、草木は枯れ、とても人が住めるような場所ではなかった。
バグアやキメラと戦う能力者達、その光景には何度も見慣れている――けれど、何度見てもその悲惨な光景に慣れることは出来なかった。
「‥‥此処もきっと、人が沢山いて、色々な幸せがある場所だった筈なのに‥‥」
聖は街の有様を見て、苦しそうに表情を歪める。
「‥‥キメラを倒しましょう、それで人が返ってくるとは思えないけれど――このままよりは断然マシな筈よ」
マリアの言葉に聖は頷き、能力者達はこの街をこんな風にしたキメラを探し始めた。
「さて――いつキメラが来るか分からんから覚醒しておいた方がええやろな」
クレイフェルは呟き、覚醒を行う。
「あれ――?」
呟いたのは櫻小路だった。
「どうしたんだ?」
月影が問いかけると「教会があるんです」と少し離れた場所を指差す。遠くに見えるその教会は街に残っている建物と比べて、まだしっかりとしていて、教会の前の方は広い広場のようになっていた。
「戦いの場をあそこに出来れば、街の被害も最小ですむんだが‥‥」
月影の言葉に能力者達は首を縦に振る。いくら荒廃している街だからといって壊すことには抵抗がある。
「―――? 何か向こうから音がしませんか?」
篠崎の言葉に能力者達は耳を澄ませる。確かに何かを引き摺るような音がしている。
「もしかしてキメラはあそこにいるんじゃないですか?」
クレイフェルが教会の近くを指差して小さく呟く。ちなみに彼が標準語なのは覚醒中だからだ。
能力者達は攻撃態勢を取りながら、教会の方へと向かう――が、誰もいない。
「気のせ――‥‥」
荒巻が呟いた瞬間、地面がボコリと割れ、割れた場所からラミアと呼ばれるキメラが姿を現した。
ラミアに攻撃を受けようとしていた荒巻の代わりに攻撃を受けたのが、クレイフェルだった。クレイフェルは荒巻を突き飛ばし(もちろん怪我をしない程度に)ラミアに攻撃を受けると同時に反撃を繰り出す。
「―――ったく。油断も隙もありませんね」
攻撃を受けた部分を見ながらクレイフェルは呟き「クレイフェルさん、大丈夫?」と聖が駆け寄ってくる。見る限り軽症のようで、戦いに支障が出るほどではなかった。
「確かに‥‥蛇なんですけど――尾に気をつけろって‥‥」
櫻小路は呟きながらラミアの尻尾を見る。だが、特に変わった所はなく『気をつけろ』の意味が理解できなかった。
「まぁ、アレだ‥‥本当に見えている部分だけが、真実の姿とは限らないって事だろ?」
橘は呟き、援護射撃をする為にコンポジットボウを構える。それに続き、スナイパー達も自分の武器を構えて、援護射撃を行い始める。
前衛として戦うのは頭部側をクレイフェル・聖の二人、尾部側を月影と荒巻の二人で攻撃し、スナイパーたちはそれぞれの援護射撃を行う――という作戦だった。
相手の特徴がはっきりしない以上、的確な作戦を立てることが出来なかったのだ。
「その尾がどれだけ動くかは分からんが、縫い止めてしまえば関係あるまい! 狙うは一点のみ――っ!」
月影は呟き、尾の部分を切り落とすように攻撃する。
「仕事に集中して、無事に帰りましょうね」
篠崎が攻撃に向かう荒巻に話しかけると「じゃあ、家に帰ってから甘えさせてね♪」と答えてラミアの方へと走っていった。
「家にって‥‥」
荒巻の言葉に篠崎は絶句したあと、苦笑しながら長弓『鬼灯』を構えて援護射撃を行う。
「何か――おかしくない‥‥?」
マリアがラミアの様子を見てハンドガンでの射撃を行いながら小さく呟く。
「え?」
櫻小路が聞きなおすと「何で‥‥動かないんだろう」と答える。その言葉に篠崎、橘、櫻小路が能力者と戦うラミアの姿を観察する。
確かにラミアは現れて、能力者と戦っている今も最初の場所を動こうとはしない。
「やはり尾が複数あるのでしょうか‥‥?」
櫻小路が呟いた瞬間、地面が揺れ、地面から突き上げるようにラミアの尾が3本現れた。
「な――っ‥‥」
橘が驚いたように目を見開く。確かに『尾に気をつけろ』の言葉で尾が複数あるのかもしれないという事は予想していた。
しかし――多すぎるのだ。地面から突き上げる尾は槍のように尖っていて刺されば命はないものだろう。
「これは‥‥」
月影が一旦退き、状況を見ながら呟く。この状況では前衛も後衛も関係なくなってくる。地面から突き上げる攻撃型の尾は再び地面の下へと潜ってしまったのだから。
「これじゃ避けるのに精一杯で、とてもじゃないけど攻撃に専念出来ないよっ」
聖が呟きながら尾を避ける。敵の狙いを固定させないように戦っていた能力者達だが、ラミアの尾はそれぞれに意思があるかのように予想もしない場所から攻撃をしてくる。
これまでか――そう思ったときだった。篠崎が「美琴! 避けなさい!」と荒巻の方へ向けて叫ぶ。
「え? あ、う、うん!」
荒巻はすぐさま横に飛ぶ。それと同時に3本の尾が地面の下から攻撃を仕掛けてきた。
「何で分かったの?」
マリアが問いかけると篠崎は地面を指差しながら「割れるんですよ」と呟いた。
「割れる――?」
橘が首を傾げながら尾の攻撃をよく見る。
「あ」
確かに攻撃が来る瞬間、地面が割れ、その数秒後に尾が突き上げてくる。反応さえ遅れなければラミアの尾を避けることが可能だ。
これを出来るのは前衛にいる素早い能力者達だけだ。荒巻は他のグラップラーに比べて多少能力が落ちるが、ラミアの攻撃を避けれないほどではない。
「対策が分かったところで早く倒しちゃおう!」
荒巻が叫び、前衛で戦う能力者達はそれぞれが担当する部分で戦いを再開した。
クレイフェルと聖は瞬天速を使用し、ヒット&アウェイで戦う。
「よっくも、仲間を傷つけたなぁ! あの世で懺悔でもしなっ!」
戦いの最中で負傷した能力者を見て、聖が叫ぶ。
クレイフェルは戦いながらもスナイパー達と連絡を取り合い、援護射撃をしてくれるように頼んでいた。
一方、尾側で戦う月影は迫り来る尾を避けながら自嘲気味に呟く。
「伝説通り、上半身が女性でないだけマシか。人の形をしたものを攻撃するのは躊躇う者もいるからな」
月影は攻撃しながら呟く。
「そうだねっ、人の姿をされてたら――きっと今以上に厄介だったと思うし!」
荒巻もファングで攻撃をしながら月影の言葉に答えた。
「蛇ってさ、普通なら寒くなると暖かい場所に行くか冬眠するかなんだけどね? キメラにそれを求めても意味はないけどな」
橘は呟き、鋭角狙撃と急所突きの能力を使い、攻撃していく。
「広い場所での戦闘になってよかったですね、住宅街での戦いでしたら此方が不利になっていましたよ――」
篠崎も呟きながら前衛で戦う能力者に攻撃を仕掛けようとするラミアの瞳を撃ち抜く。櫻小路は地面の下から突き上げてくる尾に注意し、スナイパーたちは突き上げてくる尾の攻撃を受けないように常に動き回る形を取った。
「ラミアよりミドガルズオウムとかの方が合ってそうな見てくれね‥‥いい加減お休み――――Buona notte」
巨大な蛇、女性の顔のような模様があるとしてもミドガルズオウムの方が確かに合っている。
その後、月影がラミア真っ二つに切り裂き、尾・頭の部分で戦う能力者は動くことのないようトドメを刺した後、スナイパーたちのところへと戻ってきた。
「あー‥‥疲れた、それにしても尾が複数あったのは予想してたんやけど、3本あるとは思わんかったわ」
クレイフェルが覚醒を解除し、肩を叩きながら呟く。
「オネェ〜様♪ 援護射撃ありがとネ」
聖がマリアに擦り寄りながら笑って話しかける。
「そうだ、これから骨折された能力者の方に報告がてらお見舞いに行きませんか?」
櫻小路の提案に、能力者達は賛成して入院している病院へと向かったのだった。
●報告――お見舞い
「倒した――のか? あの蛇を‥‥」
「もちろん♪ 尾に気をつけろって教えてくれたから何とか勝てたよ」
聖が入院している男性能力者に話しかけると「そうか‥‥」と安心したように表情を緩めた。
「そうだ、キメラも無事に倒したし約束通り甘えさせてくれるよね?」
にっこり満面の笑みで篠崎に荒巻が問いかける。
ちなみに約束なんてしていない。
「約束やったら、そら仕方ないなぁ」
クレイフェルが楽しそうに呟く。
「そうですね、約束していたのなら仕方ないです」
櫻小路もおっとりとした口調で答える。
「えぇ‥‥約束なんてしてましたか?」
篠崎の困るその姿を見て、他の能力者達は和やかに笑っていたのだった――‥‥。
END