タイトル:カマとカマキメラマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/03/25 20:07

●オープニング本文


‥‥な、なんて事なの‥‥!

キメラにも、オカマっていたのね‥‥!

※※※

それは能力者たちにとって(ある意味では)衝撃的な事だったのかもしれない。

始まりは小さな町からのキメラ退治要請だった。

しかし、能力者たちは写真に写るキメラを見て、そのキメラ退治に行きたくない衝動に駆られている。

(な、なんなの、このキメラは‥‥!)

(やべぇ、俺行ったら絶対やべぇ気がする!)

言葉にこそしないけれど、能力者たちの心は1つになっていた。

(‥‥気持ちわるー‥‥)

写真に写っているのは、むきむきまっちょの――キメラだった。

しかしただのむきむきまっちょだったら、許せた――かもしれない。

だが、写真に写っているキメラはむきむきまっちょ、しかも顎割れなのにゴスロリ系の服を着ていた。

(だ、誰がこんなキメラを作ったんだよ)

(もしかしたら、バグアはこちらの精神的ダメージを狙って‥‥うぅ、直視できない)

女性能力者は心の中で呟きながら、視線をそらす。

しかし、こんな恰好をしていてもキメラはキメラ。

すでに色んな意味で害はあるけれど、こんなキメラに怪我でもさせられたらある意味で落ち込んでしまいそうな気がした。

乗り気にはなれないけど、能力者たちはキメラ退治のために渋々ながら出発する事にしたのだった。

●参加者一覧

天(ga9852
25歳・♂・AA
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG
海鷹(gc3564
20歳・♂・CA
ヴィヴィアン(gc4610
22歳・♂・GP
月隠 朔夜(gc7397
18歳・♀・AA
晦(gc7695
17歳・♂・ST
ルーガ・バルハザード(gc8043
28歳・♀・AA
スロウター(gc8161
24歳・♀・FC

●リプレイ本文

―― カマと一緒にキメラ退治 ――

「数年ぶりの実戦がオカマキメラか‥‥油断せずに行こう」
 天(ga9852)は小さく呟きながら、今回の任務について渡された資料を読んでいる。彼は傭兵業を一度引退していたが、今回現場復帰する事になった。
(力が衰えているとは思わないが、油断も慢心もせず、初志貫徹を心がけよう‥‥それに)
 天はちらりと他の能力者達へ視線を移す。今回一緒になった能力者達は誰もが彼の後輩にあたる能力者たちばかり。
 そんな彼らの活躍ぶりを見たいという思いも天は強かった。
「おー! 鵺殿、久しぶりなのダ〜! 寂しかったヨ〜!」
 鵺(gz0250)に抱き着きながら話しかけるのは、彼(彼女?)の恋人でもあるラサ・ジェネシス(gc2273)だった。
「きゃあ♪ 今日の任務はラサちゃんと一緒なのね♪ 嬉しいわ☆」
 きゃあきゃあと騒ぎながら鵺が言葉を返す。ラサはそんな鵺を見ながら何か言いたそうにしていたが、結局何も言う事はしなかった。
(鵺殿が気づくまで黙っていよう‥‥自分で言うのも変だし――まぁ、キメラを倒すのだ)
 ラサは心の中で呟きながら、キメラ退治への意欲を見せていた。
「‥‥しかし、一体これは何なんだろうな」
 小さくため息を吐きながら海鷹(gc3564)が呟く。
「まさか、キメラにもオカマが存在しているとはな。人も色々いるようだが‥‥キメラも同じという事か」
 苦笑しながら呟き、海鷹は資料に視線を落とした。
「ふふ、それにしても凄い偶然よネ。依頼でオカマが3人も揃うなんてオカマでも姦しいって言うのかしらん」
 資料を見て、くすくすと笑っているのはヴィヴィアン(gc4610)だった。彼女も鵺と同じタイプの人間であり、オカマであるキメラとも同じ――と言えた。
(晦は大丈夫かしら‥‥)
 月隠 朔夜(gc7397)はちらりと弟である晦(gc7695)へと視線を向けながら心の中で呟いていた。
 そして肝心の晦は(初依頼、頑張りますよ!)と拳を強く握りしめながら、任務への意欲を見せていた。
「でも、カマキメラってむきむきなんですね‥‥気色わりー上にゴスロリとか‥‥気持ち悪‥‥」
 顔色を青くしながら晦が呟くと、その隣でルーガ・バルハザード(gc8043)が「ふむ‥‥」と資料を読みながら呟いた。
「‥‥変わった趣味のキメラだな」
 ルーガは呟いた後に「お世辞にも似合っているとは言えないが」と言葉を付けたし、彼女の言葉に他の能力者たちも賛同したのか頷いている。
 だけど、ルーガ自身は『キメラだから』とか『オカマだから』という偏見はなく、素直な感想を言っただけだったりする。
「しっかし‥‥今回はオカ祭か?」
 スロウター(gc8161)が鵺とヴィヴィアンを見て、笑いながら言う。
「まぁ、何だっていいや、とっととオカマの(ピー)を潰してやるぜ! あ、もちろんキメラの方な!」
 少しだけ顔色を悪くしたヴィヴィアンと鵺を見て、スロウターが「キメラの方」とフォローを入れる。その言葉を聞いて2人は少しホッとしたかのようだった。
「それにしても‥‥今回の任務もイケメン祭でアタシってば嬉しくて踊っちゃいそうよ!」
 ぐぐぐ、と拳を強く握りしめながら鵺が鼻息荒く呟き、男性陣は少しだけ身の危険を感じた――が、ラサがいるので大丈夫だろう、大丈夫だよね? と心の中で呟いた。
「そ、それじゃ‥‥早く任務を終わらせるためにも出発しようか」
 海鷹は口早に呟き、高速艇の方へと向かって歩き始める。
(俺は別にオカマから逃げているわけではない。早く任務を終わらせたいだけなんだ。だから決して逃げているわけではない)
 海鷹は心の中で呟き、他の能力者たちも彼のそんな心境に気付いたのか、苦笑しながら高速艇へと乗り込む事にしたのだった。

―― 今回、敵にも味方にもオカマがいるんです ――

 今回の能力者達は囮班と奇襲班の2つに班を分けて行動する作戦を立てていた。
 囮班・天、海鷹、晦の3名。
 奇襲班・ラサ、月隠、ルーガ、スロウター、ヴィヴィアン、そして鵺の6名。
 何故か囮班に男性陣が固まっているのは、今回のキメラ対策――という事なのだろう。
「これを渡しておくよ」
 天は受け取ってきた地図を他の能力者達にも渡す。地図を見る限り、資料にも書かれていたように小さな町であることには間違いない。
「一応、地元警察には避難誘導を優先するように連絡していたけど、もしかしたら残っている住人がいるかもしれないから、気をつけていこう。特にイケメン男子が残っていたら、キメラからの被害を受ける可能性がある」
 凄く馬鹿馬鹿しい事なのだが、今回のキメラに限ってはありえない話ではないので、能力者達の表情にも緊張が見えた。
「奇襲班は予定通り、空き地で待機していてもらって、囮の俺たちの前にキメラが現れたら空き地に誘導していけばいいんだな」
 海鷹が呟くと「そうだな、その前に色んな意味で気をつけろよ」とスロウターが言葉を投げかけてきた。
(晦が何かしそうで不安だけど、頑張ってもらうしかないよね)
 月隠は心の中で呟き、囮班に向かう弟に向かって「頑張って」と言葉を投げかけたのだった。
「何かあったらトランシーバーで連絡を取り合おう。こちらも異常があったら、すぐに連絡を入れるようにする」
 ルーガが囮班に言葉を投げかけ、それぞれ自分の役目を果たすために行動を開始したのだった。

※奇襲班※
「鵺さん、先ほどは挨拶が遅れてしまいましたが‥‥お久しぶりです」
 目的地である空き地を目指しながら月隠が鵺へと言葉を投げかける。
「うふふ、確かにお久しぶりね! しかも今回は弟君まで紹介してくれるなんて‥‥!」
「え? いや、別にそういうわけじゃ‥‥」
 あからさまにはしゃぐ鵺を見て、月隠は弟が帰って来た時、果たして無事にいられるのか不安になってしまう。
「でも、同じオカマとしてこのファッションは許せないわッ」
 ヴィヴィアンが資料にあったキメラの写真を見ながら、怒り混じりの声で呟いた。
「ネタや余興ならまだしも街中を歩くんなら、ちゃんと似合う服装をしなさいっ」
「いや、ちゃんとした服装でもキメラが街を歩いたらマズイだろ。あれ? 何か俺様、真面目な事を言った!?」
 ヴィヴィアンの言葉にスロウターがツッコミを入れる。
「マッチョなのはともかく、顎が割れているのが‥‥ぐぬぬ!」
 ラサはキメラの写真を見ながら、怒りに肩を震わせている。オカマの恋人を持つ彼女にとって、顎割れのオカマは許せないのだろうか。
「それにしても、もうすぐ空き地に到着しますけど‥‥住人らしき人は誰もいませんね」
 月隠が周りを見渡しながら呟く。
 確かにここに来るまで、彼女たちは住人と出会う事はなかった。先に連絡をして避難させていた事が能力者達にとって有利に働いているのだろう。
「これなら、まぁあんまり気にせず戦えるな! 空き地だから家を壊す心配はねぇ‥‥と思うし!」
 スロウターが呟き、奇襲班は空き地へと到着した事を囮班へと告げたのだった。

※囮班※
「住人の避難は済んでいるみたいだね」
 天が周りを見渡しながら呟く。
「確かに人の気配は全くしないし、向こうの班からの連絡もないな」
 海鷹も天と同じように周りを見渡しながら言葉を返す。
「つまり、みんな避難してるって考えても大丈夫ですかね?」
 かくりと首を傾げながら晦が呟くと「うーん、多分大丈夫だと思うけど‥‥」と天が言葉を返して「でも、万が一の可能性もあるから油断はしないで行こう」と付け足した。
「‥‥そういえば、オカマキメラってどんな攻撃を仕掛けてくるんだ?」
 海鷹が疑問に思ったのか、ぽつりと呟く。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
 天と晦はそれぞれ凄い攻撃を想像したのか、さぁっと顔色が引いていく。
「‥‥オカマキメラが何かしでかす前に、奇襲班の方に行って欲しいものだな」
 ぼそりと海鷹が呟いた時、3人は背後で何か音がしたのを聞き逃さなかった。
 勢いよく3人が振り返ると、まだ少し遠くに――ゴスロリ系の服を着たキメラが自分達を見ている事に気づく。
「写真と現物では、また‥‥ちょっと違うね」
 天が苦笑しながら呟くと「うわー‥‥想像以上に気持ち悪‥‥」と晦が率直な感想を漏らした。
「こちら囮班、キメラを発見――これより、誘導に入る」
 海鷹はトランシーバーで奇襲班へと簡単に報告を入れた後、ライオットシールドとカミツレを構える。
「あんまり派手にすると、建造物への被害も考えて行動しないと‥‥」
 天が呟くと海鷹と晦は頷いて答える。
 そして、肝心のキメラと言うと‥‥目の前に現れたイケメン3人に、鼻息を荒くしながら猪のように3人に向かって走り出してきた。
「こわっ!」
 その様子を見ていた晦が呟き、超機械・鎮魂を構えてキメラへと牽制攻撃を仕掛ける。
「‥‥オカマと言えど、キメラだから色んな意味の心配は無用かなと思ってたんだけど、もしかしたら、これって‥‥色んな意味の心配が必要なのかも‥‥」
 天は苦笑しながら呟き、3人はキメラから着かず離れずの位置を保ちながら、奇襲班が待ち伏せている空き地への誘導を開始したのだった。

―― 戦闘開始・オカマキメラ VS 能力者達 ――

 囮班が奇襲班の待つ空き地へとキメラを誘導してきたのは、奇襲班に連絡が入ってから10分後の事だった。
「‥‥気のせいか? やけに疲れているように見えるんだが‥‥」
 ルーガが首を傾げながら問いかけたが、戦闘が開始された事で彼女の疑問に答える者はいなかった。
「日本で言うとこの男の娘って奴か? あんなんに興奮するとは度し難いな、日本」
「ち、違います! あれは決して男の娘ではないと思います‥‥!」
 スロウターがキメラに攻撃を仕掛けながら叫ぶが、月隠がそれを否定する。日本人の彼女としては日本が誤解されるのは本意ではないからだろう。
「来いよ、オカマ野郎! ゴスロリなんか捨ててかかって来い!」
「オカマですってぇ!」
 スロウターの言葉に反応したのは、何故か鵺だった。
「いや鵺ちゃんじゃないよ? いやホントホント。落ち着けって竜三! ほら向こうで彼女とチュッチュしてろ!」
 興奮気味の鵺を宥めながらスロウターはキメラへと攻撃を繰り出す。
「ふむ‥‥無意味に華美な服装だな。高い美意識を持つキメラなのか?」
 スロウターが攻撃をした後、ルーガが追撃しながら呟く。ここまで冷静に分析されるとはキメラの方も予想外であろう。
「ぎゃー! こっち来たァ! 出番です、鎮魂! 今すぐ出番!」
 晦は自分の方に向かってくるキメラに怯えながらも超機械で攻撃を仕掛け、晦の攻撃の後に月隠がスキルを使用しながらキメラへと仕掛けた。
「敵は滅殺‥‥カマキメラ‥‥覚悟‥‥」
 呟く月隠の表情は、覚醒後の変化のせいか先ほどまでのおっとりした物ではなかった。あるのは、ただキメラに対する残忍な性格を持つ彼女のみ。
「こっちをお向き! このおブス!」
 ヴィヴィアンがキメラへと攻撃を仕掛けた――が、その拍子にカマキメラのスカートの中身がヴィヴィアンの視界に入ってくる。
「‥‥女装するなら、下着までしなさいよネ‥‥」
 げんなりした表情でヴィヴィアンが呟き、他の能力者達は汚らしい物を見てしまったヴィヴィアンに同情していた。
「そのアンバランスさは、もはや犯罪ダ‥‥! それだったら、まだふんどし傭兵の大石殿の方が似合っているような――ゴメンナサイ、ちょっと大げさに言いましタ」
 ラサは想像して、思わず首を振って想像上の大石を吹き飛ばし、キメラへと攻撃を仕掛ける。
「攻撃力は確かに見た目通りの見事な物だが――それも当たらなければ意味がない」
 天はキメラの攻撃を避けながら呟き、スキルを使用して反撃を行う。
「さぁ、そろそろ終わらせてやろう」
 ルーガが呟き、スキルを使用しながらキメラへと攻撃を行うが、キメラが見境なく拳を振り回し、晦に攻撃が直撃――かと思われたが、海鷹のシールドとスキルで晦は直撃を免れた。
「‥‥さっさと苦しんで息絶えなさい」
 月隠の冷たい視線と言葉をキメラは浴びながら攻撃を受け、天とヴィヴィアン、そして晦による一斉攻撃でオカマキメラは無事に退治されたのだった。

―― 戦闘後 ――

 キメラ戦が始まり、血を見て気絶していた鵺が意識を取り戻すと、既に戦闘は終わり、それぞれが傷の手当てなどを始めていた。
「きゃあ! アタシってばイケメンの前で爆睡しちゃってたわぁ!」
 きぃぃ、と叫ぶ鵺を見て海鷹がぼそりと呟く。
「オカマとは敵にしても味方にしても油断出来る存在ではないという事だな」
「もうカマキメラは見たくないです。気色悪すぎます‥‥」
 げっそりとした表情で晦が呟く。
「晦、お疲れ様」
 月隠が苦笑しながら弟にねぎらいの言葉を投げかける。
「そういえば鵺ちゃんってあたしと同類なのに彼女がいるのねぇ、不思議だわ」
 ヴィヴィアンが鵺とラサをからかうように問いかけると「あげないわよ」と鵺がラサを抱きしめながら言葉を返す。
「別に横取りとかしないし」
 鵺の言葉にヴィヴィアンも苦笑しながら言葉を返した。
「あ、そうダ。依頼が終わったらこれを鵺殿にあげようと思っていたのダ」
 ラサが呟きながら鵺に差し出したのは【OR】ピンクの薔薇の花束だった。
「あらあら、アタシは凄く嬉しいけど今日の主役はラサちゃんなのに」
「え?」
「今日、誕生日でしょ。美味しい所を予約してあるから、一緒に行きましょ」
 誕生日を覚えていてくれた事に感激したラサは「ぬ、鵺殿〜!」と思い切り鵺に抱き着く。
 他の能力者たちはそんな2人の様子を見て、微笑ましく思っていたのだった。

 そして、能力者達は依頼を達成した報告を行う為にLHへと帰還する事になった。
 その高速艇の中で今回大変な役目を負った男性3名にスロウターが飲み屋のサービス券を渡した。男性陣は「ありがとう」と言って受け取っていたが、この時点で彼らはまだ気づいていない。
 スロウターの渡したサービス券――実はオカマバーのサービス券だったと言う事に。


END