タイトル:りあるきもだめしマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/04/05 22:46

●オープニング本文


き、きゃああぁぁぁぁぁぁぁっ!!

何でこんな所にマリちゃんが来なくちゃいけないわけ!?

無理無理無理無理無理!

絶対無理だってば!!

※※※

週刊個人雑誌・クイーンズの編集長兼記者、土浦 真里(gz0004)にも怖いものはあった。

キメラがいる場所に突撃するという無茶な事をするくせに、お化けが苦手らしい。

「何でキメラは平気なのに、お化けが苦手なのよ‥‥」

クイーンズ記者のチホがため息混じりに呟くと「キメラは生き物! 幽霊は生き物じゃない!」とマリが叫ぶ。

害がある分、キメラの方がたちが悪いという事にマリは気づいていないのだろうか?

「うぁぁぁ‥‥いくらキメラがいるとはいえ、こんな場所に取材しに行きたくないよぅ」

今回、キメラが現れたと報告があったのは山奥にある廃病院だった。

街からかなり離れており、不便なせいで病院自体も潰れてしまったのだろうが、
今はその廃病院にキメラが住み着いている。

街から離れているとはいえ、住人は不安らしく、今回能力者要請の連絡が入ったのだ。

「‥‥今回だけはパスしようかなぁ」

「ダメよ。場所を選ぶ記者なんて話にならないでしょ。さっさと行ってらっしゃい」

「いつもは止めるくせに! こんな時ばかり爽やかに見送るなんて酷い!」

ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、マリは自宅から追い出され、能力者たちと合流する事になった。

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
椎野 のぞみ(ga8736
17歳・♀・GD
吉田 友紀(gc6253
17歳・♀・HA
ルーガ・バルハザード(gc8043
28歳・♀・AA

●リプレイ本文

―― 週刊記者と廃病院取材 ――

「うぁー、嫌だぁ!」
 ぶつぶつと独り言のように文句を言い続けるのは土浦 真里(gz0004)だった。
「今回は廃病院なんですね。キメラ退治‥‥ですけど、何だか肝試しみたいな雰囲気、ですね」
 石動 小夜子(ga0121)が資料を見ながら「不謹慎ですけど、ちょっと楽しそう、です」と言葉を付け足すのだが、今回同行するマリとしては楽しい気分にはなれない。
「けっひゃっひゃ、我輩はドクター・ウェスト(ga0241)だ〜」
 彼は白衣をバサリと翻しながら挨拶を行う。今のマリにとってはその音ですらも恐怖でしかないらしく、大げさに肩を震わせていた。
「土浦さん、初めまして♪ 一応今日のために調べていたんだけど‥‥」
 弓亜 石榴(ga0468)は調べてきたメモを見ながら、マリに教え始める。
「えーと、この病院は昔の野戦病院だったり、火災で大勢の人が‥‥っていう過去があるみたいだね。あ、古戦場跡地に建てられたって話もあるみたい。でも安心してね!」
 弓亜の言葉を聞き、更にマリが叫び始める。今の情報を教えられて、どこをどう安心しろというのか、と叫びたいのだろう。
「‥‥素敵で無敵なマリさんにも思わぬ弱点があったものね。まぁ、安心してちょうだい。親友であるあたしと玖堂さんでマリさんはきっちりと守ってみせるからね」
 小鳥遊神楽(ga3319)がマリの肩を軽く叩きながら言葉を投げかけるのだが、マリに彼女の言葉は届いていない。いや、むしろ人の話を聞く余裕が今のマリにはないのだろう。
「久々のデート、もとい取材ですね? さぁ、張り切っていきましょう!」
 爽やかに微笑むのはマリの夫でもある玖堂 鷹秀(ga5346)だった。
「楽しい楽しい取材の時間ですよ。素晴らしい記事にするために頑張りましょう!」
 玖堂はこれ以上ないくらいに爽やかな笑顔でマリに言葉を投げかける。
「鷹秀の馬鹿ァ! こんな時ばかり取材を勧めるなんて鬼だぁ!」
「‥‥まぁ、覚醒すると角が出ますけどね」
 苦笑しながら玖堂が呟く。
「マ〜リさん‥‥こんにちわ〜‥‥」
「ぎゃあっ」
 後ろからマリを驚かせて挨拶をするのは椎野 のぞみ(ga8736)だった。
 しかも首筋に冷たい缶ジュースを当てながら挨拶したため、マリは大きく叫ぶ。そんな様子を椎野は楽しそうに見ており、今までの鬱憤を晴らしているかのようにも見えた。
「お化けって本当にいるのかな? いるんなら会ってみたいなー」
 吉田 友紀(gc6253)がわくわくしたように呟くと「いない! 会わない!」とマリが鬼のような形相で吉田に言葉を返した。
(‥‥今のあの人の方がお化けよりも怖いような気がするのは何でかな‥‥)
 吉田は心の中で思ったけど、あえて口にする事はしなかった。
「夜の廃病院‥‥くくっ、おあつらえ向きのシチュエーションという奴か! ほうら、怖かったらお姉さんに抱き着いてもいいんだぞ!」
 ルーガ・バルハザード(gc8043)がガバッと大きく両手を広げながらマリに言葉を投げかけるが、マリは「だだだだだ大丈夫。ま、まだ大丈夫!」と大げさなくらいに怯えながら言葉を返した。
「さて、マリさんの弱点を知った所で‥‥廃病院に向かっちゃいますか」
 椎野が呟き、能力者たちは嫌がるマリを引きずりながら高速艇へと乗り込んだのだった。


―― キメラというオプション付きの肝試し ――

 今回の能力者たちは効率よく任務を遂行する為、班を3つに分けて行動するという作戦を立てていた。
 A班・マリ、小鳥遊、玖堂の3名。
 B班・吉田、ルーガ、ドクター・ウェストの3名。
 C班・石動、椎野、弓亜の3名。
「何でわざわざ離れ離れになるのかマリちゃん的に理解できないんだけどォォォォ!」
「効率よくするためには仕方ないんですよ、真里さん」
 嫌がるマリを引っ張ろうとする玖堂だが「お黙り!」と鳩尾を殴られ、戦闘も始まっていないのに何故かダメージを受けてしまう。
「さて、キメラ退治と行くかね〜」
「いやぁぁぁぁ、待って待って! 呪われる! 憑りつかれる! マリちゃん置いてったら呪ってやるぅぅぅ!」
 最後は自分がお化けになるような言葉を吐きながら、マリは小鳥遊と玖堂によって引きずられていったのだった‥‥。

※A班※
「無理無理無理無理マジ無理」
 班行動を開始してからも、マリはお経を唱えたり悪霊退散と叫んでみたり、正直言って小鳥遊と玖堂も彼女を持て余す形になっていた。
「まさかここまで酷いとは‥‥」
「こんな状態でキメラが来たら、いつも以上に危ないかもしれないわね‥‥」
 小鳥遊と玖堂は互いに苦笑しながら呟いていた。
「大丈夫よ、マリさん。いざとなったら、あたしがきちんとカバーするから。その時は玖堂さんと逃げたらいいわ。逃げる時間くらいは稼げるから」
 小鳥遊が苦笑しながらマリに言葉を投げかけると「今、逃げてもいいですか」と震えるマリが答えてくる。
(かなりの重傷ね‥‥)
 今までのマリなら、取材と名前がつくものだったらここまで嫌がる事はなかった。その彼女が取材を投げ出そうとしているのだから余程お化けが怖いのだろう。
「真里さん、あんまりうるさいと口を塞ぐ事になりますよ」
「ぎゃっ! な、なんて事を!」
「‥‥手で、ですよ?」
 顔を真っ赤にして言葉にならない言葉を言うマリに玖堂がため息を吐きながら答える。
「まぁ、冗談は置いといて‥‥亡き者の思いや念、あるいは幽霊などの存在が生ある者に干渉する事が本当に出来るのなら、バグアとの戦争も随分と楽になりそうなんですがね‥‥」
 少し遠くを見るような表情の玖堂を見て、小鳥遊もマリも何も言う事が出来なかった。
「おや、少し大人しくなりましたね。あれ以上騒ぐならチョークスリーパーでもかけて落とそうかと思っていたんですけど」
 さらりと怖い事を言われ、マリは慌てて手で口を覆う。
「それにしてもキメラはどこにいるのかしら。まだそれらしい奴は見かけないけど‥‥」
 小鳥遊は支給された地図を見ながらため息交じりに呟く。
「他の班も見つかっていないみたいですし、もう少し探しましょうか」
「そうね」

※B班※
「そういえば、お化けにもセンサーに反応あるのかな?」
 吉田がスキルを使用しながらキメラ捜索をしていると、ふと疑問に思ったのか、歩く足を止めてぽつりと呟いた。
「それは無理じゃないかね〜? 地面や壁に伝わる振動をとらえ、その原因を知るのがバイブレーションセンサーだろう? お化け‥‥にも振動があるとすれば、あるいは可能じゃないかとは思うが〜」
 ふむ、とドクター・ウェストは呟きながら吉田に言葉を返す。
「確かに」
 ルーガも納得したかのように呟く。
「そういえばルーガ姉は怖くないの?」
 吉田が首を傾げながらルーガに問い掛け、彼女はその問いに対して「ふん」と鼻を鳴らす。
「きゃあ、こわーい☆ などとかわい子ぶって男に抱き着くような年はもう過ぎた。それに怖がっているからこそ何でも怪奇に見えるのだ」
「確かにそれはあるかもしれないね〜」
 ドクター・ウェストも頷きながら呟く。
「そっか。ウェスト兄って科学者? それなのにお化けを信じてるの?」
 先ほど、ルーガに問い掛けたように首を傾げながら吉田がドクター・ウェストに問い掛ける。
「本当の超常現象を捕えた瞬間というものはないね〜。どれもこれも疑わしいものばかりで、ちゃんと科学的に実験を行うと確率以上の成果は出た事がない。霊能力も、誰も見えないものばかりなのだから言ったもの勝ちだね〜」
 科学者らしい言葉を返すドクター・ウェストに「そっかあ」と吉田は言葉を返した。
「それにしても、暗闇と言うのが厄介だね〜」
 廃病院と言う事もあり、今回の能力者たちは各自で光源を確保してきていた。
「まぁ、廃病院だから電気が通っていたら、それはそれで怖いような気もするんだがな」
 ルーガが呟くと「確かに、それは怖いね」と吉田も苦笑しながら言葉を返した。
 その時だった。
 C班から通信が入り、キメラを発見した――という連絡が入ったのは。

※C班※
「さすがに幽霊が出られては対処に困りますけど‥‥ここにいるのはキメラですものね」
 まだキメラを発見する前のC班、暗がりの中、キメラ捜索を行っていた。
「だねー‥‥でも、廃病院って場所のせいか、雰囲気満点だなぁ」
 椎野は周りを見渡しながら呟く。何が原因で廃病院になったのか、それは分からないけど、ドアの軋む音、廊下にはシーツや医療器具が散乱しており、普通の原因ではない事が伺える。
(きっと、今頃マリさんは大騒ぎなんだろうなぁ‥‥)
 廃病院に着く前からあんなに騒いでいたんだから、と椎野は心の中で呟き、苦笑する、
「‥‥隙ありっ!」
 しゅぱっ、と弓亜が椎野のスカートをめくり、恒例となりつつあるパンツの色確認を行う。
「きゃあ!」
 慌ててスカートを押さえる椎野を見て、弓亜は心の中で(しまった)と呟いている。
(こんな暗闇じゃパンツの色が確認できない)
 光源があるとはいえ、元々不気味な場所、おまけに夜なのだ。そのせいか、弓亜が望んでいたような結果は得られなかった。
「な、何するんですか!」
「いや、怖いから気分を和ませようかなって」
 あはは、と苦笑しながら弓亜が呟くと「僕のスカートをめくって和まないで!」と椎野は顔を赤くしながら答えた。
「もう、弓亜さんは‥‥」
 そんな弓亜と椎野の様子を見ていた石動は小さくため息を吐いた――が、すぐに険しい表情になった。
 カツン、カツン。
「‥‥この辺って、私たちしか捜索してない、よね?」
 作戦を立てる時、それぞれの捜索する場所が被らないようにしていた。
 もしこちらに向かってくる足音の持ち主が仲間であるなら、何らかの連絡が入っていてもおかしくない。
 むしろ、連絡が入っていないとおかしいのだ。
「‥‥お医者さん?」
 かつん、と月明かりを浴びながら3人の前に姿を見せたのは――白衣を着た男性。両手にはメスのような物を持っていた。
「あの――‥‥」
 石動が言葉を投げかけようとした時、男性が持っていたメスを3人に向けて投げてくる。
 いつでも戦闘出来るように準備をしていた3人は投げられたメスを弾き落とす、避ける、それぞれの行動で攻撃を避けた。
「‥‥やっぱり、こんな廃病院に一般人がいるわけないよね」
 椎野が苦笑しながら呟き、バスタードソードを構える。
 そして、A班とB班の両方に連絡を行い、戦闘を開始するのだった。


―― 戦闘開始、能力者 VS キメラ ――

 C班の連絡を受け、A班とB班がC班に合流したのはそれから数分後の事だった。配置的にもキメラを囲むような事になり、偶然ながら能力者たちが有利になっている。
「仔細不明との事でしたし‥‥もしかしたら特殊能力を持っている可能性もあります。慎重に行きましょう」
 石動は呟きながら、スキルを使用し、キメラへと攻撃を仕掛ける。キメラは彼女の攻撃を受け止めようとしたが、メスのような小型のナイフと石動の持つ蝉時雨では武器の大きさの差もあり、キメラが力負けする事になった。
「さぁ、キメラ退治と行こうじゃないか〜」
 ドクター・ウェストは呟きながら、スキルを使用して能力者たちの武器を強化する。
「マリさんは下がってて!」
 ドローム製SMGでキメラを狙い撃ちながら、小鳥遊がマリに言葉を投げかける――が、既にマリは安全な場所へと避難していた。
(自分が嫌だと思う場所なら、ちゃんと言う事を聞くのね‥‥)
 少し複雑な心境になりながら、小鳥遊は目の前のキメラを退治する事に専念する。
「こんな場所からはさっさとお暇したいからね、ちゃちゃっと終わらせちゃおう」
 弓亜が呟きながらキメラへと攻撃を仕掛ける。その攻撃に合わせるように石動も再びキメラへと攻撃を仕掛ける。
「さぁて、久々の取材だ! 全力で行かせてもらうぜ!」
 玖堂がスキルを使用して、キメラの防御力を低下させながら叫ぶ。
 その遥か後ろでは「がんばれー‥‥」とこっそりと応援する妻、マリの姿があった。
「こういう時は何て言うんだっけ? あたしの刀の錆にしてくれる〜! なーんちゃって!」
 吉田は楽しそうに呟いた後、スキルを使用しながらキメラの背後へと周り、攻撃を仕掛ける。
 情報こそ能力者たちに渡らなかったけれど、今回のキメラはそれほど危険視するような相手ではなかった。
「ただ、場所のせいか情報がうまく入ってこなかっただけ‥‥という事か。それならそれでも構わない。精々楽しませてもらおう、肝試しとやらにも飽きてきた頃だからな!」
 ルーガは呟き、烈火を大きく振り上げてキメラへと攻撃を仕掛ける。
「その程度で人を脅かそうなんて、おこがましいにも程があるな」
 ふん、と鼻を鳴らしてルーガが呟く。
「確かにちょーっとだけ期待外れ? っぽい感じがするね」
 ルーガの呟きを聞いていた吉田が言葉を返す。
 それから玖堂、ドクター・ウェストの2人が他の能力者たちの武器を強化し、能力者たちは、それぞれの力を出し切るようにしてキメラへと攻撃を行う。
 さすがに全員からの攻撃を受け、元々囲まれていたキメラは避ける事も出来ず、退治される事になったのだった‥‥。


―― キメラ退治後 ――

「あぁ〜、怖かったよ〜!」
 叫びながら椎野と石動(のお尻)に抱き着くのは弓亜だった。抱き着いてその感触を楽しんでいると、他の能力者たちから(一体何事なんだ‥‥)という視線が3人に注がれていた。
「ふむ、大した強さも能力もなし。多少素早かった事くらいかね」
 ドクター・ウェストはサンプルを採取しながら冷静にキメラを分析していく。
(このキメラより、能力者の方がよほど化け物じみていたような気がするね〜)
 戦闘中、能力者たちすらも冷静に分析していた彼は心の中で呟く。
「あ、そういえばマリさん。ここに人の顔が‥‥」
「ぎゃあああああっ!」
 捜索途中に撮った写真を弓亜が見せると、マリは叫びながらばたりと倒れてしまう。
「‥‥あれ? そんなに怖かったのかな?」
 弓亜は目を瞬かせながら「あ、あはは」と笑うしか出来なかった。
「‥‥つまり、今後マリさんが暴走した時には暗い部屋の中でたっぷりと怖い話を聞いてもらえばいいのかな?」
 面白い事を見つけた、椎野はにやっと黒い笑顔を浮かべながら今後のマリ対策を見つけ、心から楽しそうに笑っていた。
「あ〜ぁ、結局お化けには会えず終いかぁ」
 吉田が残念そうに呟く。
(何故、彼女があそこまで幽霊を怖がるのか分からんな。明確に存在し、人間を殺すキメラの方がよっぽど怖いと思うのだが‥‥それに)
 ちらりと倒れているマリを見ながらルーガは心の中で言葉を続ける。
(幽霊を怖がって男に抱き着くには気恥ずかしい年頃だと思うのだが)
 そんな事をルーガが考えていたなど、マリは予想もしていなかったのだった。


END