タイトル:赤い夕陽の下でマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/04/23 04:02

●オープニング本文


鬼さんこちら、手のなる方へ‥‥。

※※※

「子供、ねぇ‥‥」

 女性能力者はため息を吐きながら、資料を見てポツリとぼやくように呟いた。
 彼女が見ている資料には、今回のキメラや被害などが書かれていた。

「素早いキメラなのか‥‥って新人傭兵が失敗した依頼なんだな」

 男性能力者が女性能力者の持つ資料を覗き見ながら、彼女に話しかける。

「そうよ、でも新人傭兵が油断した結果だもの。彼らにも責任はあるわよ」

 女性能力者がぴしゃりと言い放つように厳しい言葉を呟く。
 この任務に赴いた新人傭兵、死人こそ出ていないけれど、キメラを退治できずに帰還してきたと資料にも書かれている。

「外見に惑わされたり、己の腕を過信したりする者こそ一番怖いのよ。たとえ子供の姿をしていようと、キメラはキメラなんだから」

「まぁ、新人なんだからそうなるのは仕方ない‥‥って言い方も変だけどさ‥‥」

「人間の姿をしていれば、やっぱり惑わされるもんだと思うよ、少なくとも俺は‥‥まだ、そうだからさ」

 男性能力者の言葉に、女性能力者は何も答えず、再び資料に視線を落としたのだった。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
クラーク・エアハルト(ga4961
31歳・♂・JG
セイン(ga5186
16歳・♀・SN
ジャック・クレメンツ(gb8922
42歳・♂・SN
獅堂 梓(gc2346
18歳・♀・PN
レインウォーカー(gc2524
24歳・♂・PN
イスネグ・サエレ(gc4810
20歳・♂・ER

●リプレイ本文

―― キメラ退治のために ――

「新人の失敗の尻拭い‥‥ね。まぁ、報酬出ますしね」
 クラーク・エアハルト(ga4961)は苦笑しながら呟く。
「なんともまぁ、無様だねぇ」
 資料を読みながらレインウォーカー(gc2524)が苦笑交じりに呟いた。
「敵が子供だったら殺せないなんて、中途半端な覚悟で戦場に出るから醜態を晒す事になる」
「まあ、撃ち辛いってのは分かりますよ。自分にも娘がいますしね。しかし、子供の姿だから倒せなかった‥‥じゃ、この先やっていけませんよ」
 レインウォーカーの言葉を聞き、クラークも賛同するように呟いた。
「新人の気持ちも間違いではないですが‥‥力を持つ事の覚悟が必要ですね」
 終夜・無月(ga3084)が小さくため息を漏らしながら呟く。
(今回は子供の姿だけどキメラなんだよね? キメラなら何やったっていいよね!? 退治って依頼だけど捕獲してもいいよね! 少年少女型だし! 捕獲したら研究だなんだで人類の為になるよね!)
 セイン(ga5186)は資料を読みながら、ハイテンションになりながら心の中で叫んでいた。
 しかし表向きは『人類の為』と謳っている彼女だが、捕獲してペットにしてしまおう、という間違った考えを持っている事に気付いている能力者はまだいない。
「やれやれ、ガキだからって甘く見るからこんな事になるんだ」
 ため息交じりに呟くのはジャック・クレメンツ(gb8922)だった。
「ガキだからって甘く見ねぇ方がいい。俺だって10を超えた頃にはライフル持って大人を殺してた」
 だから、俺は子供だろうが殺す時は躊躇わねぇ――ジャックは言葉を付け足す。戦争という厳しい子供時代を生き抜いてきたからこそ言える言葉であり、そんな重い過去を持つ彼が言う言葉には、それなりの説得力があった。
「いつかの依頼ぶり? 今回もよろしくねっ!」
 獅堂 梓(gc2346)がレインウォーカーに軽く挨拶を行う。
「やぁ、今回はよろしくねぇ。間違ってもボクには当てないでくれよぉ?」
 軽く言うレインウォーカーに「うーん、気を付ける!」と獅堂は笑いながら答えた。
(子供の姿のキメラに惑わされて不覚を取った新人たちと、慣れてきて結構普通に倒してる自分‥‥どっちが人間らしいんだろうね‥‥)
 イスネグ・サエレ(gc4810)は資料を読み、自嘲気味に笑いながら心の中で呟く。
(まぁ、かといって放置するわけにもいかないんだけど。被害が出る前に退治しないと)
 イスネグは小さくため息を吐き、資料ファイルをパタンと閉じた。
「遅くなってもやりづらいですし、そろそろ行きましょうか」
 終夜が呟き、能力者たちは高速艇に乗り込み、キメラが闊歩する森へと向けて出発し始めたのだった。


―― 赤く染まる森の中で ――

(環境破壊になっちゃったら、ごめんなさい)
 目的地へと到着し、生い茂る木々を見ながら獅堂は心の中で呟いていた。
「でも、今回はちゃんとキメラに対する情報があって良かったかも」
 キメラを捜索しながら獅堂が苦笑交じりに呟いた。
「何でですか?」
 セインが首をかくりと傾げながら問いかけると「それは‥‥」と獅堂が呟き、言葉を続ける。
「情報無しの初対面で遭遇していたら、反応遅れて攻撃を受ける自信があるから!」
 無駄に威張りながら答える獅堂に「やれやれだねぇ」と友人であるレインウォーカーも肩を竦めてみせた。
「今の所、センサーに引っかかるような対象はありませんね。不自然な振動は感じられない」
 スキルを使用して、尚且つ自身も軍用双眼鏡で周りを警戒しながらイスネグが呟く。
「少なくとも100m以内にはキメラらしき奴はいねぇって事か‥‥油断は出来ないがな」
 ジャックはいつでも戦闘に入れるようにM−121ガトリング砲を構えながら呟く。
「戦闘の際、邪魔になるようなら木々も銃撃でなぎ倒させてもらうしかない、か」
 クラークは木の枝を避けながら呟いた。
(どこにいるのかなー、私のペットちゃん! 絶対にペットにしちゃうんだから!)
 セインはわくわくとした気持ちを抑えながら、少年少女のキメラをペットにする夢を見ながらキメラ捜索を行っている。
「たとえ、どんなキメラが来ようとも‥‥この子がいる時なら負ける気はしないね」
 獅堂はM−121ガトリング砲に視線を落としながら、不敵に微笑む。
「久しぶりに見たな、黒梓。相変わらずで安心、かなぁ?」
 獅堂の不敵な笑みを見て、レインウォーカーが苦笑気味に呟く。黒梓と呼ばれる彼女の事を知っているが故に、安心していいのか、それとも安心してはいけないのか、レインウォーカーは判別をつける事が出来なかった。
「‥‥皆さん、気をつけて下さい」
 ピタリとイスネグが足を止め、能力者たちに言葉を投げかける。
「何か不審な音でも?」
 終夜が問い掛けると、イスネグは頷き「2つの足音が聞こえます」と言葉を返した。
 バイブレーションセンサーを使用している能力者には、動く物の大体の大きさ、距離、数を知る事が出来る。
「数は2、子供が走っているような感じの振動ですね。恐らくキメラで間違いないと思います、距離は――60、55、50‥‥そろそろ目視できると思います」
 イスネグの告げた方向に能力者たちが視線を向けると、少年と少女が1人ずつ少し遠くから能力者たちを見ているのが分かる。
「こんな所に一般人がいるとは思えないけど、一応FFを確認しないとね」
「もう少し近づいてきたら、ボクがするよぉ」
 レインウォーカーが地面から石ころを2つ拾い、子供たちが近づいてくるのを待つ。
 そして石ころを当てられる範囲に入った時、レインウォーカーが軽く石を投げつける。
「‥‥やはり、キメラか」
 レインウォーカーが投げた石に反応してFFが発生したのを確認すると、ジャックがため息交じりに呟き、ガトリング砲を子供――いや、キメラに向ける。
「俺は前に来た連中みたいに甘ったれた事は考えてねぇからな」
 ジャックが少女型キメラにガトリング砲を発砲するのを合図に、能力者たちとキメラの戦闘が開始したのだった。


―― 戦闘開始・能力者 VS キメラ ――

「頭下げろオラァ!」
 スキルを使用しながらジャックが少女型キメラに攻撃を仕掛ける。彼が少女型キメラを足止めしている間に、クラークが少年型キメラにスキルを使用しながら攻撃を仕掛けた。
「離れて!」
 イスネグが能力者たちに声をかけ、2体のキメラにスキルを使用して眠らせ、連携を妨害しようと試みた。
 幸いにもイスネグのスキルはキメラに効果があったようで、がくりとキメラの動きが止まるのが他の能力者たちにも見えた。
「すぐに目が醒めるかもしれないから、気をつけて!」
「そんな暇など、与えさせませんよ‥‥」
 終夜が呟き、拳銃・ジャッジメントと拳銃・ケルベロスを構えてキメラの足を狙い撃つ。
「さて、こちらも弾幕パーティーとしゃれ込みますか?」
 クラークがおどけたように呟き「悪いが、最初のやつら程甘くはないぞ?」と冷たい言葉をキメラに投げかけ、M−183重機関銃でキメラを狙い撃つ。
(あぁ〜〜、私の少年少女ペット計画がぁ‥‥)
 攻撃されていく2体のキメラを見ながら、セインは心の中で悲痛な叫びをあげていた。
(ペットにしたいってみんなに言っておくべきだったのかな‥‥でも、その場合、きっとみんなから反対されるだろうし‥‥うう、どうすればいいの!)
「ほらぁ、早く逃げないとハチの巣にしちゃうよ!」
 獅堂は楽しそうにガトリング砲を発砲しながら叫ぶ。
「避ける暇なんてないくらいに撃ちこんじゃうけどね」
「壮観だねぇ、この射撃量はぁ‥‥というか、ボクが頑張る必要はあるのかぁ?」
 レインウォーカーが苦笑しながら呟き、射撃が止んだ瞬間を狙ってキメラとの距離を詰めて「嗤え」と短く、そして冷たく言い放つ。
 レインウォーカーは夜刀神を構え、スキルを使用しながら攻撃を行い、キメラがバランスを崩した所にすかさずSMG・ターミネーターで至近距離から射撃を行う。
「残念ながらぁ、お前らが子供の姿をしていても‥‥この道化には何の感情も湧かないのさぁ」
「子供の姿だからと、哀れみを持つような時期は過ぎましたよ」
 終夜はスキルを使用しながら、キメラへと攻撃を仕掛ける。その思い切った攻撃に自身で呟いているように遠慮や戸惑いは一切見られなかった。
 そして終夜が攻撃を終えた後、クラークが「次は鉛玉をたっぷり食らいな」と呟き、キメラへと射撃を行う。
 今回の能力者たちは射撃を行う者が多いせいか、キメラは中々能力者たちに近づく事も出来ないようだ。
 何人もの能力者たちから射撃を受け、2体のキメラは既に瀕死の状態だった。
「これで終わらせます」
「さぁ、お終いさぁ」
 終夜とレインウォーカーがほぼ同時に呟き、能力者たちは2体のキメラを無事に退治する事が出来たのだった。


―― キメラ退治を終えて ――

 キメラ退治を終えた後、能力者たちはそれぞれで傷の手当てを行っていた。さすがの能力者たちも無傷ではキメラ退治を終える事は出来なかった。
(敵に対して驕りや慢心を持てば、こちらに待っているのは死のみ‥‥たとえどんな相手であろうと、格上に対する心持を持たなくては‥‥)
 終夜は空を仰ぎながら、心の中で呟く。
「この任務に失敗した新人傭兵たちが、これ以降の任務に従事できるかが心配ですね」
 クラークが思い出したように呟くと「あぁ‥‥確かに」と終夜が呟く。
「ケアが必要かもしれませんが‥‥まぁ、そこはどこかの誰かに任せましょう。とりあえず目的であるキメラ退治は成功しましたから、良しとしましょうか」
 クラークは治療を行いながら、小さくため息を吐いたのだった。
(はぁ〜‥‥せっかくの少年少女ペット計画が‥‥)
 がっくりと項垂れているのはセインだった。
「任務は成功したっていうのに、浮かない顔してるじゃねーか」
 ジャックがセインに言葉を投げかけると「いえ、何でもないんです‥‥」と元気なく言葉を返した。
 まさか自分のペット計画が失敗したから元気がないんです、とはさすがの彼女も言えなかったのだろう。
「まったく手間掛けやがって‥‥」
 ジャックは今はもう動かないキメラの死体を見ながらため息を吐き、持参していたスブロフを呷り始める。
「ぷはぁ、ガト砲掃射気持ちいいよねぇ♪」
「‥‥楽しそうで何よりだよ‥‥」
 楽しそうに笑う獅堂にレインウォーカーが苦笑しながら言葉を返す。
「まぁ、でもハチの巣にされる方に同情しなくもないけど‥‥」
 獅堂はガトリング砲を見ながら苦笑して見せる。
(やれやれ、それにしても子供の姿をしているからって同情する奴もいるんだねぇ‥‥。ボクには無理な事さぁ‥‥敵なら殺すだけ、今さら迷うなんて無様な真似は出来ないだろぉ、道化)
 心の中でレインウォーカーは呟く。その言葉通り、彼が自分で決めた道なのだからその瞳に迷いは一切見られなかった。
「それにしても悪趣味ですね」
 イスネグはキメラの死体を見下ろしながら呟く。
「‥‥誰がこんなキメラを作るのかな? ある意味、本当に悪趣味だよ。まぁ、相手が何であれバグアなら倒すのが能力者の役目だけど‥‥こういう事に慣れてくるのが割り切れない物を感じるな‥‥」
 イスネグは自嘲気味に呟く。
「でも、割り切らないと‥‥被害が増えて行くだけですものね」
 獅堂がイスネグに言葉を返すと「そう、ですよね」とイスネグも力なく笑って答えた。
「さぁ、そろそろ帰りましょう。今回の任務が成功した事を知れば、新人傭兵たちも安心するでしょうし」
「そうだな、さっさと帰って任務成功の報告をしよう」
 ジャックも賛同するように呟き、能力者たちは高速艇へと向かって歩き始める。

 その後、能力者たちはラストホープに帰還し、任務が成功した事を報告したのだった。


END