●リプレイ本文
今回、能力者達は『破壊の天女』と呼ばれるキメラを退治しにやってきた。
「どんな美人さんか知らないけど‥‥これ以上の犠牲は出させないよ!」
月森 花(
ga0053)が拳を強く握り締めながら呟く。
「美人さん‥‥ですか、たまに言われますので‥‥美人には興味ないですねぇ?」
神無月 紫翠(
ga0243)がクスと笑みながら呟く。
「ふふ、私は美人も嫌いじゃないけれど、可愛い子の方が好きなのよね♪ 再生し続けるのなら刻みに刻んで再生出来ないくらいに壊してあげましょう♪」
楽しげに呟く羅・蓮華(
ga4706)を見て、他の能力者は苦笑して「そ、そうだね」と答えたのだった。
「そういえば‥‥キメラの特徴は金髪の女性‥‥金髪?」
ベル(
ga0924)は羅の方をチラリと見ながら首を傾げて呟く。
「金髪の美人‥‥さては蓮華! お前さんだにゃーっ!?」
フェブ・ル・アール(
ga0655)がビシッと羅を指差しながら叫ぶ。
「あら、美人というのは嬉しいけれど生憎キメラじゃないのよね。狐ではあるけれど」
にっこりと笑う羅に「じょ、冗談だにゃー」とフェブは言葉を返す。
「さて‥‥そろそろ廃墟に向かおうか‥‥人型だが――今更躊躇う理由はない」
終夜・無月(
ga3084)が自分を奮い立たせるように低く呟き、他の能力者に「人型だけど‥‥大丈夫?」と問いかける。
「問題ないわね、遠慮なく叩き潰させてもらうだけよ」
緋室 神音(
ga3576)が終夜に言葉を返す。
「我も問題ないな、美しき天女だろうと‥‥相手がキメラなら遠慮する事なく消せるな」
漸 王零(
ga2930)も言葉を返すと「そうか‥‥さぁ、皆行こう」と能力者たちは『破壊の天女』がいる廃墟へと向かい始めたのだった‥‥。
●2つの班に分かれ『破壊の天女』を探せ!
「ここからは班行動で動いた方が良さそうね」
緋室が呟き、能力者達は予め決めておいた班で行動する事にした。
A班→月森、神無月、漸、終夜の4人。
B班→フェブ、ベル、緋室、羅の4人。
「いくら廃墟と化した街とはいえ、一般人がいるかもしれないしね‥‥」
月森が廃墟の方角を見ながら小さく呟く。
今回のキメラは人型で『美人』という噂が立っているため、男性一般人などが面白半分で見に来ている可能性があるのだ。
「それじゃあ‥‥早く任務を終わらせましょうか‥‥」
神無月が呟き、A班とB班、それぞれ動き出したのだった。
〜A班〜
B班と別れ、少し歩いた所に男性一般人がいるのを見かける。恐らくは『破壊の天女』を見に来た命知らずな一般人なのだろう。
「汝、此処に何しに来た? 此処にキメラが現れるのは知っているだろう?」
漸が男性一般人に話しかけると「もちろん」と答える。
「美人なキメラなんだったら見てみたいと思ってさ」
「すぐに帰ることを勧める。死にたくはないだろう?」
漸が男性一般人を諭すように話しかけると「えぇ〜‥‥」と不満そうに声を漏らした。
「戦う術を持たない貴方が襲われたら‥‥討伐に来た自分達の邪魔になります‥‥それが望もうと望むまいと結果としてそうなるんですよ?」
神無月が男性一般人に話しかけると、その男性は自分がしている愚かさに気づいたのか「‥‥ごめん、すぐ帰る」と申し訳なさそうに答えた。
「この道をまっすぐ行けば広い通りに出るから、気をつけてね」
月森が来た道を教えると、男性は教えられた通りに戻っていった。
「まだ男の人だから良かったけど‥‥金髪女性には要注意だね‥‥」
月森は呟き、キメラを見つける為に他の能力者と歩き出した。
〜B班〜
「それにしても‥‥同族嫌悪というわけじゃないけれど、似たのばかりに首を突っ込んでしまうわね‥‥」
羅がため息混じりに呟き「どういう事?」と緋室が問いかける。
「この前は狐退治の仕事だったし、今回は金髪美人の女性キメラ――」
(「あぁ、自分で認めちゃうんだ、凄いですね‥‥」)
ベルが羅の言葉を聞きながら心の中で呟く。
「あ、A班の方で一般人がいたらしいから、こちらの方でも一般人がいる可能性があるわね」
羅は無線機でA班と連絡を取り合っていたのか、B班の能力者に向けて話す。
「人間型という事はある程度の知恵を持っていると考えていいのかな?」
フェブが首を傾げながら小さく呟く。『人間型』とは言っても知能が全くない場合と人間と同じだけの知能を持っているのかで対応の仕方が変わってくるのだ。
「確かに戦い方は変わってきますが‥‥要は再生させる前に倒せばいいだけです――相手の再生速度か俺の射撃速度か‥‥速さなら負ける気はないです」
キッと前を見据えて呟くベルに「そうね」と緋室も短く言葉を返す。
「それにしても金髪美人見つからないにゃー‥‥」
フェブが周りを見ながらため息混じりに呟く。辺りの建物はキメラに襲われたせいか崩れ落ち、きっと立派な建物だったであろう家も見る影がない。
「あれ――‥‥」
羅が指差した方向には教会があり、その教会の前には腰までの長い金色の髪を持つ女性が佇んでいた。
「此処までに一般人はいなかった、もしかしたら――キメラ‥‥?」
ベルが呟き、無線機でA班に連絡を入れる。
もし、あちらの班がまだキメラを見つけていないのなら教会の前に立つ女性がキメラの可能性が高くなる。
「ちょ――‥‥」
緋室が驚きに満ちた声で呟く。それと同時に響く大きな音。
女性は華奢な腕で教会の壁をぶち抜いている。
「‥‥キメラの可能性高いにゃー‥‥っていうかキメラじゃん?」
フェブは呟き、攻撃態勢に入りA班への連絡を急ぐように言う。
その後、B班はキメラを誘導して分かれる前に決めておいた場所へとキメラを誘導し始めたのだった。
●対決! 破壊の天女
最初、金髪の女性一般人が紛れ込んでいる可能性もあるので能力者達は、金髪女性に近寄り傷を付ける作戦を立てていた。
もし傷が治らなかったら普通の一般人という事で保護し、再生をするようだったらキメラという事で攻撃を仕掛ける――というものだった。
しかし、教会の前に立つ女性は能力者が考えた作戦で確かめるまでもなく怪力で教会の建物を崩している。冷たい笑みを湛えながら。
一般人がいない事からB班はA班が到着するのを物陰で待っていた。再生能力という厄介な能力を持っているのだ。生半可な攻撃で倒すことは出来ないとわかっているから。
B班からの連絡から十分もたたないうちにA班が合流し、それぞれの役割を果たす為に動き出す。
スナイパーである月森、神無月、ベルは後衛に下がり、それぞれの武器を構える。
そして前衛で攻撃をするフェブ、漸、終夜、緋室、羅はスナイパーたちの援護を受けながらキメラに近づき、攻撃をする。
最初に攻撃を当てたのは月森だった。彼女はキメラの頭部に向けて貫通弾を込めた強弾撃で攻撃する。キメラの頭部には後ろの景色が見えるほどの大きな穴が開いた。
「ごめんなさい、綺麗な顔に穴があいちゃったね」
目の上辺りを撃ちぬいた月森は感情の篭らない声で短く呟く。戦闘前と様子が違うのは月森が覚醒しているからだろう。
しかし、撃ちぬいた場所がすぐに再生を始める。恐らくキメラには自身の弱点となる場所が存在するのだろう。それを攻撃しない限り、この戦いに終わりは見えない。
「援護はしてやる――だから前衛は任せるぜ‥‥」
覚醒した神無月が前衛組に向けて低い声で呟く。神無月の武器・長弓『黒蝶』でキメラの腕を射抜いた後、フェブが『流し斬り』でキメラを攻撃する。
しかし、攻撃の後キメラからの反撃をくらいフェブは教会の壁だったものに激突する。
「‥‥大丈夫ですか?」
近くにいたベルが問いかけると「平気平気」とフェブは背中を押さえ、再び戦線へと入る。
フェブが攻撃に向かった後、ベルは『フォルトゥナ・マヨールー』でキメラを攻撃する。
休む間なく与えられるダメージにキメラの再生が追いつかなくなってきている。
それを見た漸は「狂いし仮面よ。我が元に」と呟き、覚醒を行った後『蛍火』を構えてキメラへ攻撃に向かう。
「さぁ‥‥我を恐れ、死にゆくがいい!!」
言葉と同時に漸は能力を使い、キメラの右腕を斬り落とす。
「キメラの分際で‥‥人の格好をするもんじゃないよ‥‥」
終夜は『豪破斬撃』と『流し斬り』で攻撃した後、連撃で『紅蓮衝撃』で攻撃する。
しかし、トドメまではいかなかったのかキメラからの反撃を受け、腹を思い切り殴られる。
「ぐは―――っ」
終夜は衝撃に目を見開き、それでも離れ際にもう一撃与える。
「アイテール‥‥限定解除、戦闘モードに移行――」
緋室は呟き『月詠』を構え、キメラの前に立つ。
「抜く前に斬ると知れ――剣技・桜花幻影(ミラージュブレイド)」
緋室は呟き『豪破斬撃』と『紅蓮衝撃』を使用した後で『二段撃』を使ってキメラを攻撃する。
「あらあら、美人が台無しね」
緋室の攻撃の後、間髪いれずに羅が『流し斬り』で攻撃をする。能力者達と戦う『破壊の天女』はもはや名前通りのような美しい外見ではなかった。
血に塗れ、腕は落ち、そして何より美しかった顔を憎悪と憎しみ――まるで般若のような表情に変えて攻撃してくる。
「そこ!」
月森が叫び、キメラの心臓を打ち抜く。正確には月森だけではなく、スナイパー達全員がキメラの心臓を撃ちぬいたのだ。
人間の姿をしていたためか、それは定かではないが『破壊の天女』の弱点となる場所は心臓の部分だった。
「どんなに美しかろうと所詮はまがい物だ。そんなもの、我には関係ない――それに‥‥我にとっての天女は間に合っているんでな、汝など目障りなだけだ」
迷わず終わりなき闇へと消えるがいい、そう言って漸はキメラの首を斬りおとし『破壊の天女』退治は無事に終わった。
「美人薄命って言葉もあるし‥‥ボクは羨ましくなんか思わないよ」
月森が武器をしまいながら小さく呟く。
しかし、その言葉はキメラには届く事はなかった。
●そして――‥‥
「お疲れ様でした‥‥しかし、人型とは――キメラも段々やりづらくなってきていますねぇ」
神無月の言葉に能力者は首を縦に振る。
今回は一般人の女性が紛れ込んでいなかったから良かった。
それにキメラに大した知識がなかったから勝つ事が出来た。
もし、知識あるキメラが現れ、一般人を人質にするような真似をしたら能力者達はどうなるのだろう?
「それはその時考えるしかないにゃー‥‥今は破壊の天女を倒せたことを喜ぼう」
フェブの言葉に「‥‥そうですね」とベルが呟く。
きっと、能力者達ならどんなに強いキメラが現れても大丈夫なのではないかと思う。
それは確信ではないけれど、キメラとは違う『心』があるのだから――‥‥。
END