●リプレイ本文
今回はクイーンズ記者・土浦 真里(gz0004)が能力者に『記事を書いて♪』と話を持ちかけたことが始まりだった。
●記事を書く人&チェックする人!
今回、記事を書く為に集まった能力者はクイーンズ記者の自宅兼編集室の一番広い部屋に通された。
そこは本棚で埋め尽くされた部屋であり、色々な資料が机の上に山積みになっていた。
「とりあえず、適当な机と椅子を使っていいよ〜」
マリが机の上の資料を片付けながら能力者達に向けて話しかける。
「じゃあ、私は此処に座らせてもらうわね」
ナレイン・フェルド(
ga0506)は窓際の机に持って来た物を置き、他の能力者に話しかける。
「私はこの机を使わせてもらうわ」
小鳥遊神楽(
ga3319)はナレインの隣の机、そして小鳥遊の隣の机を威龍(
ga3859)が使う事になった。
「じ、じゃあボクは此処に‥‥」
レア・デュラン(
ga6212)は入り口から一番近い机を使い、ナオ・タカナシ(
ga6440)がその真向かいの机を使う事になった。
「あれ?」
マリが能力者の人数を数えながら首を傾げ、
「はっかいさんがいな――」
マリが小さく呟きかけた時、八界・一騎(
ga4970)が慌てて編集室に入ってくる―――狸姿で。
「‥‥覚醒していた方が、絶対集中出来る‥‥はずだ! と思いまして」
八界は可愛らしい狸姿で呟く――が手に何か違和感を感じ、視線を落とすと‥‥肉球をもふもふと触るマリの姿があった。
「マリちゃん‥‥」
ナレインが苦笑気味に呟くとマリは「はっ!」と我に返り咳払いをして「き、記者の紹介をするね」と話題を変えるようにしゃべり始めたのだった。
マリの言葉と同時に入ってきたのは女性二人に男性一人の合計三人の記者だった。
「えっと、私の事は知っている人がいるんじゃないかな? 飯倉 千穂、記事を書いている時は『チホ』で書いているわ。ヨロシクね」
チホはペコリと丁寧に頭を下げて自己紹介を行った。チホの事はマリといつも一緒にいる事から知っている能力者も多いだろう。
「二番目は俺、相川 翔太ッス。クイーンズで唯一の男記者ッス。どぞ、よろしく」
翔太は勢いよく頭を下げ、机にガツンとぶつけて「あいたぁっ!」と額を押さえ「‥‥馬鹿じゃない?」とマリから言われていた。
「‥‥最後はあたしだね。あたしは長沢 静流‥‥どーぞよろしく」
静流は簡単に手を上げ、挨拶を終えた。
「‥‥という事で記者紹介も終わった所で記事添削に移りたいと思いまーす。此処にチェック担当の名前を書いといたから各自で見てね」
マリはホワイトボードを取り出し、それを能力者達が見える場所に置く。
マリ
・お姉様
・はっかいさん
・ナオぴょん
チホ
・小鳥遊さん
シヅ
・威龍さん
翔太
・レアちゃん
‥‥上記のような組み合わせになったのだが、一番ほっとしているのは何故か翔太だったりする。
(「‥‥良かった、俺の所に誰も来なかったらどうしようかと‥‥」)
ちなみにレアが『記者は誰でも』的なことを書いていたのは翔太が知るすべもない。
●始めは翔太担当・レア!
「ど、どうも‥‥週刊誌の記事ですよね? お、お料理のレシピっていかがでしょうか?」
レアは翔太の部屋に移動し、持って来た記事を見せる。彼女は料理のレシピを持って来ており、記事内容も細かく書かれていた。
「やけに詳しく書かれてるけど、レアちゃんは料理とか得意なんだ?」
翔太が問いかけると「はい、凄く好きです」とレアは可愛らしい笑顔で答えた。
「こ、これは喫茶『ルーアン』の名物料理なんです‥‥それを大公開しちゃいます」
レアが呟くと「へぇ‥‥」と翔太は呟きながら記事に目を通し始めた。
翔太が読んでいる間、レアはどきどきしながら待っていた。
「‥‥うん、悪くはない――というより俺が書く記事より断然いいね! 後は写真か何かある?」
一通り記事に目を通した翔太の言葉にレアは首を傾げて「写真?」と聞き返す。
「出来れば完成形の写真付きで掲載したいからさ、持ってない?」
レアが首を横に振ると「そっか、しょうがない」と言ってマリに「台所借りるよ〜」と叫ぶ。
「いいよー」
マリの了承を貰った後「材料は運よく揃っているから今から作ってもらっていい?」とレアに問いかける。
レアは目を瞬かせて「分かりました」と答えて翔太とレアの二人は台所へと移動した。
「ほ、本当に何でも揃ってますね‥‥」
台所に移動したレアが驚いたように呟くと「マリが料理好きだからね」と翔太が答える。
「ミルリトンを作るには『練りパイ』『リンゴのソテー』『ソース』の三つを作る必要があります」
呟きながらレアは材料や配分などを書いたメモを取り出す。
『材料
※練りパイ※
バター 70グラム
薄力粉 90グラム
水 20CC
塩 少々
※リンゴのソテー※
林檎 1.5個
バター 20グラム
グラニュー糖 40グラム
※ソース※
生クリーム 80グラム
粉糖 80グラム
全卵 2個
アーモンド粉 50グラム
溶かしバター 50グラム
バニラエッセンス』
そのメモを見ながら「結構大変そうだね」と呟く。
「そ、そうでもないですよ。始めは『練りパイ』から作っていきますね」
レアがミルリトンを作る間、翔太が料理を作っていくレアの写真を撮っていく。彼女はパットに振るった薄力粉を入れ、その中でバターをスケッパーで切り、粉をまぶしつけるように細かく刻んでいる。
「この後に塩を加えて、手のひらでよくすり合わせます」
レアは言いながらすり合わせたものをボールに入れて水を加え、練り合わせている。
「何か手伝おうか?」
翔太が問いかけると「大丈夫ですよ」とレアが笑って答える。
そして彼女はめん棒を取り出し、台に打ち粉をして生地を平らにしていく。
「この時に底にピケをしましょう」
レアが呟き、平らにした生地を別の場所に置く。
「これで練りパイは終わりです。次はリンゴのソテーですね」
呟くとレアはリンゴを四つにして、いちょう切りに切っていく。リンゴを切った後は中火で暖めたフライパンでバターを溶かしながらグラニュー糖を混ぜ、アーモンド粉を加えていく。
「あとはこの中にリンゴを入れて強火でソテーしていけば出来上がりですね」
「へぇ、見た感じでは結構簡単そうにソテーってできるんだなぁ‥‥」
「そ、そうですね。ソテーは結構簡単にできますから」
これまでに出来た物は『練りパイ』と『リンゴのソテー』で、これから『ソース』を作っていく。
「えっと‥‥生クリームと粉糖をボールに入れて、全卵を1個ずつ混ぜていきます。その後にアーモンド粉を加えましょう」
レアは慣れた手つきで、ボールに溶かしバターを加え、バニラエッセンスも混ぜる。
「それで練りパイに冷ましたリンゴを敷いて、ソースを八分めくらいまで流しいれます
その後に粉糖を振って、200度で焼き上げ、最後に粉糖をもう一度振って出来上がりです」
オーブンに入れた後、レアが呟くと「凄いね」と翔太がレアに話しかけ、カメラを置く。
「色々な写真も撮れたし、いい記事に仕上がるよ」
こうしてレアの記事チェックは終わっていった。
●2番手はチホ担当・小鳥遊!
「素人だし、悪い所は指摘してね、チホさん」
小鳥遊が苦笑しながら呟くと「もちろん、私は少し厳しいわよ」と笑ってチホは答えた。
彼女は能力者になる前にしていた音楽関係の記事を書いてきていた。
『巷ではこんな歌が流行っています。
何時にだってあるたわいのないラブソングなのかもしれません。
でも、そこに込められた想いというのは何時の時代にだって変わらないモノではないでしょうか?
希代の歌姫と呼ばれる彼女がどんな想いでこれを歌っているのか分かりません。
でも、歌の中の彼女のような、こんな悲しい想いをする女性を少しでも少なくする為にも皆で戦っていきたいものですね』
「これが冒頭文ね、最初に名前を書いておくといいかもしれないわ」
チホの言葉に「名前?」と小鳥遊が聞き返す。
「そう、例えば『今回記事を書く事になった小鳥遊です』とかそんな感じかしら。もちろんクイーンズ雑誌に名前は掲載されるけど、小さく名前掲載だから」
「そうなの、じゃあ後で書き直すことにするわ」
小鳥遊の言葉に「お願いね」とチホが呟き、記事の続きを読んでいく。
≪Hold me again≫
作詞作曲 M・フォルケン
『ある日届いた小さな小包。
入っていたのは、壊れた時計と短い手紙。
昨日のお酒が残っているのかしら?
それとも、まだ悪い夢の中にいるのかしら?
戻ってきたのはたったこれだけなの?
正義のためとか、平和のためとか、偉い人は口にするけれど。
頭の悪い私にはそんなもの、もうどうだって良い。
ただあなたに傍にいてほしいのに‥‥
今すぐ私を抱きしめて、愛しているともう一度だけ囁いて
ねぇ、強く強く抱きしめて。
お願いだから!
あなたの傍で笑っているのが、私のただ一つの望みなのに‥‥』
「悲痛な気持ちが伝わってくる歌詞なのね‥‥」
チホが小鳥遊の記事を読みながら呟くと「そうね。メロディもいいのよ」と短く言葉を返す。
「何処か他にも悪い所はあったかしら‥‥?」
難しい顔で記事を読み続けるチホに小鳥遊が戸惑い気味に話しかける。
「悪い所はないんだけど、この歌に対する小鳥遊さんの気持ちの文を付け足すのはどうかしら? 最初の文もいいんだけど、この歌を紹介するからには小鳥遊さんに思い入れがあると思うの。それを書いたらもっといい記事になるんじゃないかと思うんだけど‥‥どうかしら?」
チホの言葉に小鳥遊は少し考え込み「書いてみるわ」と言葉を返し、渡された記事の変更を行い始めたのだった。
●3番手は無口なシヅ担当・威龍!
「此方は素人だし、悪い所があるのなら指摘してくれればいい、静流。餅屋は餅屋だしな。頼むぜ」
威龍が静流に話しかけると「分かった」と短く言葉を返し、静流は威龍の記事を読み始めた。
威龍の書いてきた記事は『誰でも簡単に出来るメニュー』というものについてだった。
油揚げと葱を少量のごま油で炒め、味を調えたものや薬味葱とツナ缶で作るつまみなどのレシピが詳しく書かれていた。
これは料理の苦手な人、男性でも簡単につまみなどで作れるメニューを中心にしており、料理が得意な威龍の配慮が行き届いている記事だった。
「‥‥何で簡単なメニュー?」
シヅが短く問いかけると「んー‥‥」と威龍は考えながらぽつりと話し始める。
「俺達傭兵は身体が資本だしな。いつも外食ばかりじゃ飽きるし、大げさなものを作るのも面倒だからな。手間をかけずに美味い物を自分で作れるのならそれに越した事はないだろ?」
威龍の言葉に「そうね」とシヅは短く答える。
「そういえば、あんたはどうなんだ? 彼氏とかに手料理を作ってやったりするんだろ?」
威龍が問いかけると「つくらない」とシヅが答えた。
「あたし、料理苦手だから‥‥作らない」
見た目は結構美人第一印象は何でも出来るような女性に見えた威龍は「意外だな」と呟いた。
「うちには‥‥マリがいるし、料理には困らないから」
シヅがマリを指差しながら呟くと「なるほど」と威龍は納得するように呟いた。
「これ」
シヅは威龍に記事を返す。返された記事には赤ペンで見事に『駄目』と書かれていた。
「簡単なメニュー、確かにいいんだけど‥‥もう少し手を加えればこうなる、とかあればもっといい‥‥と思う」
シヅに言われた事を威龍は素直に受け取り「じゃあ、もうちょっと書いてみるか」と呟き、記事の書き直しを始めたのだった‥‥。
●4番手! マリちゃんに記事添削!
「う〜ん、文章書くのって難しいわ‥‥マリちゃん、あなたって凄いのね!」
ナレインが感心したようにマリを見ながら呟く。
「そんな事ないよ〜。私から見たら戦えるお姉様の方が凄いし」
マリが照れたように言葉を返す。
「一応書いたんだけど見てもらえるかしら〜」
ナレインが書いた記事を「お手柔らかにお願いね」と言いながら渡す。
「じゃあ、早速読ませてもらうね」
マリは呟き、ナレインの記事に目を通し始めた。
『TACネームの由来。
私は『BlueRose』って名乗ってるの』
「BlueRoseって確か‥‥」
マリが考えながら呟くと「青い薔薇って事」とナレインが言葉を返してくる。
「青い薔薇は自然界には存在しないもので、人の手によってのみ作られるのよ、薔薇には青い色を作る遺伝子がないので、人が手を加えないと出来ないらしいの」
ナレインの説明に「へぇ、そうなんだ〜」とマリは感心したように説明に聞き入っている。
そして記事の続きには『バイオテクノロジー技術で、別の花の青色を作り出す遺伝子を薔薇に組み込んだり、何度も交配を繰り返す事で青色に近づける』と続いていた。
「青い色って簡単じゃないのね」
マリが呟くと「一筋縄じゃいかないもの」とナレインが苦笑しながら言葉を返す。
「青い薔薇の花言葉は当初『不可能』だってHちゃんが教えてくれたの。でも、青い薔薇は人の手によって、作り出された」
ナレインの言葉の意図が分からず「どういう事?」とマリが問いかける。
「だから今は『不可能を可能にする』に変わったんだって。素敵な話じゃない? だから私もこの花のように、不可能を可能にする人になりたいの!」
力説するナレインに「そんな意味がTACネームには込められているんだね」とマリがにっこりと答えた。
そして、記事の続きにはナレインの悩みのようなものが書かれていた。
『もう一つの理由はね?
違う目線で見た私と青い薔薇の関係♪
とっても貴重な青い薔薇‥‥人種的に少ない女装キャラ♪
体は男でも心は女性だもの♪
そして、最近の悩み‥‥私って男性に恋をするのかしら?
女性にも男性にもドキドキしちゃうから、わかんないのよ‥‥。
でも男性にドキッとする方が‥‥』
「う〜ん、内容は悪くはないんだけど〜‥‥」
マリがペンを取り出しながら添削を始めていく。
「まず、最初に名前を入れるのがいいと思う。TACネームの事も一般人は分からないからどんな風につけているのか、実際に私も気になってたから、お姉様の記事内容はクイーンズにとっては有難いんだけど♪」
あと、とマリは続ける。
「Hちゃんっていうのも『私の友人が』とかにした方がいいかもしれないね。最後のお姉様の悩みは悪い所はないと思うわ」
やはりマリは記者なのだと、ナレインは心から思う。今のマリは普段のマリとは少し違った印象を与え『記者』の雰囲気が出ているのだから。
「‥‥というわけでお姉様書き直し♪」
ずいっと記事を渡し「えぇ〜‥‥」とナレインが落ち込んだように呟く。
「大丈夫よ、お姉様なら♪ 私も手伝うし、一緒にガンバろ」
ね? とマリは呟き、ナレインは記事の書き直しを始めたのだった‥‥。
「次ははっかいさん?」
狸姿で記事を持ってくるのは覚醒状態の八界だった。
ちなみに彼は『能力者にしか書けないような記事とは何か?』を考えて記事を書き始めていた。
能力者に出来る事、キメラと戦う事、覚醒、ナイトフォーゲルの操縦などを八界は考え、最終的に出た答えは『覚醒の体験談』を書くというものだった。
「覚醒の体験談かぁ、確かに私達一般人には覚醒ってどんな感じか分からないからなぁ」
「そうそう、覚醒は能力者にしか出来ない事だし、いいかなぁって」
そんな彼が書いた記事はこの通りだ。
『覚醒の体験談
覚醒した時の変化は人それぞれだが、自分の場合はまず外見が完全に狸になる。
これはビーストマンだからなのだが。
正直、この姿はなかなか困る。
まず、こういうもの(肉球とか)に弱い人間が襲い掛かってくる。
もう一つに、人間からかけ離れるので、逆に一般人からは失神されたり。
あと最後に『鮭が無性に欲しくなる』のだ』
「‥‥はっかいさん、何で涎?」
マリが声を出して読み返していると何故か八界の口からは大量の涎。
「はっ、ご、ごめん! ボクに構わず添削続けて」
八界は口を拭い、大人しく座る。狸姿で。
それを見ながらマリは記事の続きを読み始める。
『それはそれとて、性格の変化というものもあるらしい。
自分の場合は、熱血漢になる‥‥らしい。
身体能力は、体が軽く感じる。
これは能力向上が原因だが。
顔の形が変わるので、人間そのままの動きをとると失敗する事もある』
「へぇ、はっかいさんの覚醒状態のことが詳しく書かれているね。でも鮭が欲しくなるのは皆なのかな?」
「多分?」
マリの言葉に八界が言葉を返す。
「記事自体に問題はないけど、覚醒しても怖がらないで、とか書いたらどうだろ? やっぱりはっかいさんは一般人の代わりに戦ってくれてるようなものなんだから、失神とかされたら気分悪いだろうしさ」
マリの言葉に「なるほど」と呟き、八界は記事の途中に怖がらないでという言葉を付け足した。
「じゃあ、私はナオぴょんのところにいってきまっす」
「私は能力者に聞いてみたものを纏めてみました」
ナオはそう言ってアンケート用紙と記事をマリに渡して椅子に座る。
「ラスト・ホープ広場でアンケートしてきたんだ〜‥‥偉いね〜」
呟きながらマリはナオの記事に目を通し始めた。
『能力者についてのアンケート
最近話題の能力者ですが、一般の方にとっては得体の知れない印象が強いようです。
そこで今回は能力者の事をよく知ってもらうべく、アンケートをとってみました。
実施日は2/14 バレンタイン。
場所はカップルで賑わうラスト・ホープ広場です。
50人の能力者に協力していただきました』
「へぇ、第一位はバグア軍と戦える――なんだぁ」
マリが第一位の『バグア軍と戦える 60%』の結果を見て納得するように呟いた。
「えぇ、やっぱり理由は復讐だったり、何かを守るためだったり人それぞれのようですけれど‥‥」
ナオがマリに問いかけ「あれ?」と第二位『怪我や病気になりにくい 20%』を見て顔をあげてナオに問いかける。
「能力者って怪我や病気になりにくいの?」
「そうみたいですね、やっぱりエミタと適合しているからだと思いますけど‥‥」
「そっかー、だったら私も能力者なりたかったなー」
さり気にマリが恐ろしいことを呟き『マリさんが能力者になったら‥‥』とナオは頭の中で想像していた。
「ねぇねぇ、この第三位の『肉球万歳 6%』って何?」
肉球万歳、マリはその意味が分からずナオに問いかけると、ナオは苦笑してその理由を答える。
「多分お散歩中のビーストマンが多かったせいかと‥‥」
ビーストマンは覚醒すると獣化するので、肉球がある能力者も出てくるのだろう。
「もふもふいいよねぇ‥‥」
マリは八界のもふもふを思い出し、顔を弛ませナオを怖がらせる。
「そ、そういえば少数意見として三つほど」
ナオの言葉に、マリは記事の続きを読むと少数意見として確かに三つの意見が書かれている。
・何かモテる。
・猫が寄ってくる。
・俺がKVだ。
「こ、個性的な意見ばかりね‥‥最初のは分かるような気がするけど、猫とKVって‥‥」
「きっと、このアンケートをしたときに猫が寄ってきたり『I am KV!』な気分だったんじゃないかと‥‥」
そ、そうなんだ。そう言ってマリは『後悔したこと』のアンケート結果の方へと視線を移す。
「70%が後悔はないって答えているのね」
「えぇ、その答えを言った方のほとんどが即答していたのが印象的でしたね」
やはりそれぞれに望む理由があるのだから後悔はないと言い切れるのだろう。
「第二位は――覚醒すると性格が病的になる―――か」
「覚醒する事で普段とは正反対の性格になったり、冷酷になったりなどさまざまですからね。その変わり様を嫌う方が多いみたいです」
しかし第三位は『何かしめってる 6%』という謎の結果が出ている。
そして少数意見として‥‥。
・でも心は乾いている。
・モテナイ、話が違う。
・夜に虫がよってくる。
「これもまた突っ込み所が満載な少数意見ね‥‥何処から突っ込んでいいのやら‥‥」
マリが呟くと「そういえば‥‥」とアンケートを取っている時の事を思い出したように呟く。
「カップルを見て目が血走る一部の能力者(♂)も印象的でした」
「アンケート日時がバレンタインだものね‥‥そりゃ独り身は血走っているわ‥‥むしろ私も血走るわよーーーーっ!」
マリが暴れそうな勢いで叫ぶ。
「お、落ち着いてください! そ、それより何か悪いと事はありましたか?」
ナオが話題を変えるように問いかけるとマリはにっこりと笑って「OK」と答えた。
「‥‥うちの翔太が書くより立派な記事になってるわ‥‥アンケート結果もきちんとまとめられてるし‥‥」
マリはふるふると記事を見ながら目を瞬かせていた。
「特に問題はないからOKでいいかな。後は簡単なプロフィールでも書いてくれる? 記事掲載時に一緒に載せるから」
こうしてクイーンズ記者たちの能力者が書いた記事チェック時間は過ぎていった‥‥。
●全てが終わり、お腹も空いたでしょう。
全てが終わり、後はクイーンズ記者たちに任せるだけになった能力者達はリビングで休憩をしていた。
「結構ハードなのね」
小鳥遊はジュースを飲みながら疲れたように呟く。
この時、出されている料理・お菓子はレアと威龍が記事掲載の為に作ったもので、写真を撮り終えたから能力者の皆で食べている所だった。
「本当ね〜‥‥まさかこんなに大変とは思わなかったわ‥‥」
ナレインも肩を叩きながら呟く。
「でも貴重な経験をさせてもらいましたし‥‥私はよかったかなと」
ナオが呟くと「そ、そうですよね」とレアが言葉を返す。
「ちょ、ちょっと! 何してるの!」
チホの声が響いたかと思うと、リビングの方まで二人が走ってくる。
「何かあったんですか?」
八界がチホに問いかけると「あったわ! とんでもないことが」といつもの穏やかな表情ではなく般若の面のような表情でチホが答え、狸さんは毛を逆立てた。
「マリったら‥‥クイーンズのロゴマークを狸に変えるとか言い出したのよ!」
え、と八界が呟き、マリの手元を見ると‥‥恐らく自分でデザインしたのだろう可愛らしい狸のイラストが表紙になっていた。
結局、チホが全力を持って表紙を差し替えたのだが、能力者に渡す見本だけは狸の表紙になってしまっていたのだとか‥‥。
ちなみに表紙の隅っこには『クイーンズマスコット・はっかいさん』という文字が書かれていた‥‥。
END