タイトル:ばばたりあんマスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/28 03:24

●オープニング本文


ついに現る?

史上最強(かもしれない?)キメラ!

※※※

ばばたりあんにやられた。

数日前、キメラ退治に赴いた能力者がUPC本部に命からがら帰ってきた時に呟いた言葉だった。

ちなみに『ばばたりあん』というのは誰がつけたか分からないふざけた名前だが、れっきとしたキメラである。

外見はある意味一番恐ろしいものかもしれない。

おばちゃん特有のプチアフロな髪に、おばちゃん特有のフリル付きエプロン。

「どないでっかーっ!」

「ぼちぼちでんなーっ!」

‥‥のように奇声(?)のような声をあげて襲い掛かってくるのだと言う。

「ばばたりあんを甘く見るな。奴は‥‥力はあるし、雄叫びはでかいし、素早いし‥‥俺はあんなキメラと戦うのはもういやだよ」

病院のベッドで布団を頭まですっぽりと被って、ばばたりあん退治に向かって撃沈した能力者は震えながら呟く。

ばばたりあんが出現するのは人の多い商店街。

ばばたりあんが現れるスーパーの特売日にばかり現れるという奇妙なキメラである。

普通のおばちゃんのようだが、きちんとしたキメラ。

能力者の諸君、ばばたりあんとどうやって戦い、打ち勝つ?

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
大山田 敬(ga1759
27歳・♂・SN
真紅櫻(ga4743
20歳・♀・BM
羽鳥・建(ga5091
21歳・♂・BM
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
那智・武流(ga5350
28歳・♂・EL
玖堂 暁恒(ga6985
29歳・♂・PN
クロスフィールド(ga7029
31歳・♂・SN

●リプレイ本文

 今回の仕事はおばちゃん風キメラ『ばばたりあん』の退治というものだった。
「‥‥ついにこんなキメラまで‥‥」
 遠くを見て、呆れるようなため息を吐きリゼット・ランドルフ(ga5171)が呟いた。
「名前が‥‥ばばたりあん!? ふざけたネーミング‥‥誰だよ、こんな名前つけたの」
 那智・武流(ga5350)もリゼット同様に大きなため息を吐いて呟いた。
「‥‥俺にとっては初の実戦だからな‥‥このくらいが丁度いいだろ」
 玖堂 暁恒(ga6985)が『ばばたりあん』の資料を見ながら一人呟く。
「でもキメラはキメラでも、おばちゃん風なら楽な仕事だろうな」
 クロスフィールド(ga7029)が呟きながら、今回一緒に『ばばたりあん』を退治する仲間たちを見やる。
「‥‥キメラも個性的なら、メンバーも個性的だな」
 クロスフィールドが呟くと「けひゃひゃ」と変わった笑い声が響いた。
「我輩がドクター・ウェスト(ga0241)だ〜。宜しく頼むよ〜」
 彼は今回、伊達眼鏡に自作のバグア生体探知機というものを持ってきていた。バグアやキメラの発するフォースフィールドの電磁波を探知する装置なのだと彼は説明した。
「本当にアテになるのか? それ」
 大山田 敬(ga1759)がドクターの眼鏡を指差しながら問いかけると「もちろんだよ〜」と先ほどの笑いと共に答える。
「でも‥‥ばばたりあんですか。何か凄いものを感じますね‥‥おばさんのような外見でもキメラです、頑張って退治しましょう」
 羽鳥・建(ga5091)が拳を強く握り締めながら呟く。
「本物のおばさんと、どっちが強いか確かめてみたいような気はするけどね」
 真紅櫻(ga4743)が可笑しそうに笑いながら呟き、能力者達は『ばばたりあん』を退治する為の準備を始めたのだった。

 まずは偽バーゲンをする為の品物を探す事から始めた。真紅は繊維工場に赴き、品物にならないジャンク品を安価で譲ってもらい、羽鳥は営業マンに見えるようにスーツを着て、商店街の人や不動産屋を回って、人が多く入りそうなテナントがないかを聞きまわっている。
 その間にリゼットは『ばばたりあん』の情報を集め、羽鳥がテナントを借りてきた後は彼の作るポップ作業の手伝いを行う。
 この時リゼットが作っていたポップは商品の値段を書いたものが中心。
 そして羽鳥とリゼットがポップを作っている間に、借りたテナントの清掃を那智が行う。ちなみにテナントの中にある不可動式ワゴンは那智が商店街の人からいらなくなった物を引き取ってきたのだ。清掃が終わった後、那智の仕事は不可動式ワゴンを新品のように修理する事だ。幸い、彼は手先が器用なので修理を任せて大丈夫だろう。
 他の能力者が店作りをしている時、玖堂がドクターに話しかける。
「なぁ‥‥キメラってのは‥‥こんなケッタイなの‥‥ばっかなんか?」
 玖堂の問いかけにドクターは少し考え込み「今回が特殊じゃないかねー?」と答えた。
 玖堂が動揺するのも無理はない。彼が聞いた『キメラ』というものは神話に出てくるものや妖怪のコピーだと聞いていたからだ。
 初めての実戦が『ばばたりあん』なのだから‥‥どんな能力者でも驚くものだろう。
「そうなのか‥‥ありがとう」
 教えてくれたドクターに礼を言い、玖堂は店の改装を手伝う為に他の能力者の所へと歩いていった。
 店の改装を行っているのは主にクロスフィールドで、清掃&修理を終えた那智も手伝っている。
「今まで傭兵やってて、こんな作戦は初めてだ」
 クロスフィールドが改装をしながら呟くと「確かに」と他の能力者も首を縦に振る。
 店を借りたりなどの大作業を終え、翌日のバーゲンに現れるであろう『ばばたりあん』との決戦を待つのみだった。


「ふむ、微弱だが反応があるね〜‥‥」
 決戦当日、能力者たちはそれぞれの持ち場へと行き、いつでも『ばばたりあん』との戦闘が行えるようにしていた。
 那智が借りてきた無線機で、真偽の程はさておきドクターが『ばばたりあん』の反応があると知らせる。
 そして、店の前に並ぶおばちゃん達に紛れて、彼――大山田は女装しておばちゃん達と一緒に並んでいた。
(「なーんか、腰から下がすーすーするぜい」)
 口に出してしまうと、他のおばちゃん達に女装しているのがバレてしまうので大山田は心の中で呟いた。
 現在の時間は夕方――他の商店には早めに店仕舞いをしてもらって、当然この時間にいる客すべてが能力者達の偽店に集まっているわけだ。
 大特価バーゲン! などののぼりも他の店から借り受け、店の前に目立つように並べられている。
「皆さん、もうじきバーゲンを始めますのできちんと並んでください」
 店員に扮した羽鳥が整列をさせながら後ろの方へと歩いていく。羽鳥は整列をさせた後、ドクターが隠れている場所まで行き、二人で『ばばたりあん』がやってきているかを見張ることにした。
「もうすぐバーゲン開始になりますが混雑が予想されますので押したりなどはしないでくださいね」
 きっと無駄になるであろう言葉を羽鳥と同じく店員に扮したリゼットが少し大きな声で話す。
「そんなの無理よねー?」
「ねー?」
 リゼットの言葉におばちゃん達はげらげらと笑いながら叫んでいる。
「さー、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! 本日限りのバーゲンセールだよ〜! 全品50%OFFでっせー!」
 メガホンを片手に持ち、大きな声で宣伝しているのは那智だった。
 そして開店と同時に何十人ものおばちゃんが我先にとワゴン目掛けて走り出す。
「む、ばばたりあんが来たようだね〜」
 無線機から聞こえてくるドクターの言葉に能力者たちは客としてやってきたおばちゃん達を見る。
 しかし、どのおばちゃんも『ばばたりあん』のような勢いで品物を奪い合っているので、どのおばちゃんを攻撃していいかが分からない。
 その時だった。
「どないでっかああああっ!!!」
 他のおばちゃん達より一際大きな声で叫び、品物を奪うおばちゃんを発見した。
「キメラ生体反応あり! 破壊!」
 ドクターが店内に入ってきて「それがばばたりあんだよ〜」と叫んでいる。
 そして、他の能力者は一般人のばばたりあん、もといおばちゃん達を予め作っておいた裏口から逃がしていく。
 最初は出て行くのを渋っていたおばちゃん達だったが、キメラが現れたこと、そして退治した時にはバーゲンの続きをするということを聞くと、おとなしく出て行った。
 ちなみに本物のばばたりあんは大山田がひきつけている。
「コレはアタシのよーーーっ!」
 ばばたりあんが掴んだ品物を大山田が奪うように引っ張る。
 すると「ぼぉちぼちでんなあああっ!」とばばたりあんが大山田に頭突きを食らわしてくる。
「ぐふっ、アフロと頭突きが妙にマッチング――じゃねぇ‥‥じゃないワ。これは渡さないわよーーーっ」
 そして他の能力者が一般人を逃がしたのを確認すると「わりぃがバーゲンはここまでだぜい」と忍ばせておいたスコーピオンを取り出し、ばばたりあん目掛けて撃つ。
「どないでっかーーーっ!」
 ばばたりあんが大山田に反撃しようとしていると「この半額言うんが見えへんのか!」とツッコミを入れながら真紅がハリセンで攻撃する。
「我輩も研究の為に〜〜!」
 ドクターもそう叫んでポーズをした後にエネルギーガンで攻撃しようとしたが、そのポーズの分の時間が余計だったらしく、ばばたりあんからぺいっと攻撃されて吹き飛ばされた。
 幸いにも店の中に散乱した品物などのおかげでダメージを受ける事はなかったが。
「さてと‥‥お客様、いい加減暴れてもらうのはやめていただきます」
 羽鳥は呟き、ファルシオンでばばたりあんに攻撃を行う。
 ばばたりあんはバーゲンの邪魔をされた事に腹を立てたのか、顔を真っ赤にして「ぼちぼちでんなああっ」と叫びながら特攻してくる。
「私の言いたい事は拳で語らせていただきます」
 リゼットはメタルナックルを装備し、ばばたりあんの腹部に攻撃をする。ばばたりあんは倒れそうになりながらも反撃しようとしたが「何やっとんねん!」という那智のツッコミ攻撃により、リゼットに攻撃が命中する事はなかった。
「‥‥開店記念の‥‥スペシャルプレゼントだ‥‥地獄への旅! 進呈してやるぜ‥‥っ!」
 覚醒しながら玖堂が呟き、ばばたりあんに攻撃を仕掛ける。ばばたりあんは玖堂の攻撃を避け、その際にふわりと宙を舞うフリルエプロンが彼の攻撃によって破かれた。
「全く、こいつを作ったバグアもいい趣味してる――見た目はおばさんでも中身はしっかりキメラか」
 クロスフィールドがアサルトライフルで攻撃をすると、ばばたりあんの足に弾丸が貫通した。
 その後も能力者たちが攻撃して、ばばたりあんからの攻撃を避けて、という地道な作業を行っていた――のだが、閉められたドアを叩きながら「戦いで品物傷つかさへんでや!」と野次るリアルばばたりあんの声が響いてくる。
「そうそう、本物のオバはんやったら、アレみたいに気合入れてこんかい!」
 真紅はドアの外を親指で指し、攻撃を行う。
「けひゃひゃ! あの程度の攻撃では我輩の眼鏡すら壊せはしないよ〜」
 いきなり現れたドクターが弱ったばばたりあんにエネルギーガンで攻撃を行い、さらに弱らせる。
「しかし探知機は壊れてしまったようだね〜」
 同じ言葉を繰り返す探知機を見て、ドクターは残念そうに呟く。
 その時にばばたりあんがドクターに攻撃をして、彼はそのまま倒れてしまった――のだが、何故か眼鏡だけは本当に無事であったという。
 その後、能力者達の総攻撃によりばばたりあんは見事退治されたのだった。


「なーんか‥‥お袋さん撃つみたいで寝覚め悪ぃ相手だったな〜‥‥」
 ばばたりあん退治後、大山田がため息を吐きながら呟いた。
「確かに――キメラだと分かっていても気分がいいものではありませんね」
 羽鳥も散らかってしまった店内を片付けながら呟く。
「‥‥確かに、化け物と分かって‥‥いるんだがな‥‥やっぱり‥‥妖怪型とかの方が‥‥やりやすいかもな‥‥」
 玖堂も羽鳥の考えに賛同するかのように答える。
 ちなみに、何故片付けているかというとこの後のバーゲンを行うためだ。キメラは倒したが、バーゲンなしという事になると、外に待つ数十体のばばたりあん(一般人のおばちゃん)から総攻撃を受けそうだと考えたからだ。
「‥‥なんて言うか、まぁ‥‥何事も経験だな」
 クロスフィールドが呟き、片付けを終えた能力者たちは再度バーゲンを続行するために閉めていたドアを開けたのだった。
そして、すべてが終わった後『ばばたりあん』を研究するためにドクターがサンプルとして遺体を持ち帰ったのだった。



END