タイトル:週刊記者が‥‥‥‥マスター:水貴透子

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/08 00:33

●オープニング本文


今回は真面目にしてたのに、何でこんな事になってるワケ!?

※※※

「あいたたた、何でこんな事になってるかなぁ‥‥」

崖の下で痛む足を擦りながら、週刊記者である土浦 真里は小さく呟いた。

こんな事――の説明をするには少しだけ時を遡らねばならない。

※※

今回、マリが取材対象としたキメラは小型の龍を模したようなものだった。

「龍ねぇ、色々と言い伝えはあるけど‥‥雨を呼ぶ神様とかも言われてたっけ」

さすがに今回のキメラは一人で突撃すると危ないと感じたのか、マリは前もって能力者に護衛を頼み、現場へと赴いていた。

しかし、それから暫くした頃にキメラと能力者との戦闘が始まり、それに巻き込まれたマリは崖から落ちてしまい、川を流される羽目になってしまった。


※※

「どうしよっかなぁ‥‥足が痛くて動けないし‥‥これじゃ能力者に頼んだ意味ないじゃん」

マリは携帯電話を取り出しながらチホに電話をしようとするが、山の中のため『圏外』という残酷な二文字が表示されている。

「防水携帯も意味ないし」

腹のたったマリは川へと携帯電話を投げ捨てると『ボチャン』という音をたてながら川の底へと沈んでいった。

「もう少し足の痛みが治まったら、歩いてみるしかないかなぁ‥‥誰か探してくれてるだろうし」

マリは『能力者が探してくれている』という考えを持って、自分から行動を起こそうと考えていた。

マリに頼まれた3人の能力者達はキメラに適わず、マリを置いて本部へと帰還している――そんな事は露にも知らずに‥‥。

●参加者一覧

神無月 翡翠(ga0238
25歳・♂・ST
クレイフェル(ga0435
29歳・♂・PN
霞澄 セラフィエル(ga0495
17歳・♀・JG
ナレイン・フェルド(ga0506
26歳・♂・GP
篠原 悠(ga1826
20歳・♀・EP
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
綾野 断真(ga6621
25歳・♂・SN
夜坂桜(ga7674
25歳・♂・GP

●リプレイ本文

「どういう事なの!?」
 本部内に小鳥遊神楽(ga3319)の大きな声が響き渡る。
 彼女が叫んでいる相手は土浦 真里(gz0004)の護衛に失敗し、あまつさえマリをそのまま放置して帰ってきた能力者だった。
「能力者なら、依頼者の身柄の安全を図ってこそでしょ! なのに‥‥マリさんを置いて帰ってきて、よくものこのこと顔を出せたものね!」
 マリとは付き合いの長い小鳥遊は本気で心配しているのだろう、いつものクールな表情を崩し、マリを置いて帰ってきた能力者達に向かって叫んでいる。
「はいはい、そこまで!」
 篠原 悠(ga1826)がスパーンと軽くハリセンで小鳥遊の頭を叩き、小鳥遊の言葉を止めた。
「自分が任務に失敗して、救助要請を出す立場なら、どんな気持ちかな? よく考えんとあかんで?」
 ちらりと篠原はマリを置いてきた能力者達に視線を向ける。彼らがへらへらと笑っているようであれば、小鳥遊に加えて篠原も混ざるつもりだったが、彼らの表情を見る限り、簡単な気持ちで帰ってきたのではないと窺え、止める方へと回ったのだ。
「ぬぅ、今回はマリの過失やないわけやな? ちゅーか、ちゃんと考えて行動するようになったんやなぁ」
 クレイフェル(ga0435)はしみじみと呟くが、彼も『依頼人を置いて帰って来る』という行動はあり得ないと思っていた。
「そんなに大変な相手やったん?」
 クレイフェルが問いかけると「龍みたいな奴で、飛行型とは戦い慣れてなくて‥‥」と申し訳なさそうに言葉を返す。
「まぁ、アイツの事だから無事だと思うんだが‥‥なるべく急いだ方がよさそうだな?」
 神無月 翡翠(ga0238)が呟くと「そうですね、恐らく負傷しているでしょうし‥‥」と霞澄 セラフィエル(ga0495)が言葉を返した。
「そうね、早く助けに行きましょう! グズグズしてる暇はないわ!」
 ナレイン・フェルド(ga0506)が焦ったように呟く。ナレイン自身も能力者達に対して冷めた態度で対応している。
 もちろん、マリの情報を教えてくれた事には感謝しているが、それと同じくらいに『置いて帰ってきたこと』に対して苛立ちを感じずにはいられなかったのだ。
「さて、そろそろマリさんを助けにいかないと‥‥」
 綾野 断真(ga6621)が呟くと「そうですね、急ぎましょう」と夜坂桜(ga7674)が言葉を返し、能力者達は現場へ向かう準備を始める。
「‥‥マリさんに万が一の事でもあってみなさい。あたしがあんた等の息の根を止めてあげるから!」
 去り際に小鳥遊が冷たい声で能力者達に向けて呟き、移動を始めたのだった。


〜作戦開始〜

 今回、能力者達は班を二つに分けて行動を開始する事になった。
 A班に所属するのがクレイフェル、小鳥遊、綾野、神無月の四人で川下の方から落下地点まで捜索するという役割を受けている。
 そしてB班に所属するのは霞澄、ナレイン、篠原、夜坂の四人でマリが落下した地点から上流側に向けて捜索するという事になっている。

〜A班〜

「マ〜〜〜リ〜〜〜ィィ! 何処や! いるんやったら返事せぇ!」
 クレイフェルがメガホンを使用しながらマリに呼びかけをするが、返事はなく川の水が流れる音しか耳に入ってこない。
「‥‥‥‥まさか、海まで流されてへんやんなぁ‥‥?」
 クレイフェルが小さく呟くと「それは流されすぎでしょう」と綾野が苦笑気味に言葉を返した。
「早く見つかってちょうだい‥‥」
 小鳥遊は頭の中に浮かんでくる嫌な想像を振り払うように首を振り、焦る気持ちを落ち着かせるように深呼吸をする。
「おい‥‥これ‥‥」
 神無月が地面を指差しながら小さく呟き、能力者達は指先の方へと視線を落とす。そこには確かにスニーカーの足跡のようなものがある。しかも片足を引きずって歩いているのか、足跡が不自然になっている。
「歩き方が、少しおかしいですね‥‥此処まで引き摺るという事はそれなりに痛みもあるでしょうし‥‥」
 綾野が足跡を見ながら、マリを探すように周囲を見渡す。
 すると、少し離れた場所の岩陰のところで倒れているマリの姿を発見し、能力者達は慌てて駆け寄る。
「おい、マリ、大丈夫か? しっかりせぇ」
 クレイフェルが話しかけると「‥‥‥‥ラーメン、大盛り‥‥ギョーザはサービスで」とワケの判らない寝言を言っていて「おぉい!」とクレイフェルは持っていた『ピコピコハンマー』でピコーン! とマリの頭を叩く。
 その音で目が覚めたのか、マリは「何するのよ! 怪我人にー!」と大きな声で叫ぶ。怪我、という言葉で能力者達がマリの足に視線を落とすと左足に巻かれたハンカチが真っ赤になっていた。恐らく落ちた時に岩か何かに足を引っ掛けてしまったのだろう。ハンカチの下には抉るような切り傷があった。
「傷を見せてみろ、まったく‥‥怪我してるなら動くなよな、ひどくなったら、どうするつもりだ?」
 神無月がマリの傷を見て『練成治療』で傷を癒していく。
「とりあえず、B班に連絡はしておいたで。キメラと遭遇したらしいよってに、早いとこ合流して戦う事にしよか」
 クレイフェルが通信機で連絡をしたらしく、ポツリと呟いた。

〜B班〜

「マリちゃ〜ん!」
「マリ隊長〜〜!」
 ナレインと篠原は大きな声でマリの名を呼ぶが、返事はない。
「‥‥悠ちゃん、久しぶりに会ったからゆっくりお話したかったけど‥‥マリちゃんが無事に帰ってからね‥‥終わったら皆でお茶しましょう」
 ナレインが呟くと「もちろん、マリ隊長のおごりで」と篠原は笑って言葉を返す。
「止まってください」
 霞澄がポツリと呟く、それと同時に覚醒を行い『隠密潜行』を使用して「待っていてください」と少し先の方を確認するために歩き出した。
「‥‥何かあったんでしょうか‥‥」
 夜坂が小さな声で呟くと「マリちゃんが見つかればいいんだけど‥‥」とナレインが表情を曇らせながら言葉を返した。
 霞澄が行ってから数分が経過した頃に戻ってきて「この先にキメラがいます」と小さな声で知らせてきた。
 その時にA班から『マリを見つけた』という連絡が来たので、一時A班と合流する事になったのだった。


〜戦闘&マリ節絶好調! 〜

「オイーッス! ご心配おかけしました〜〜!」
 B班が合流した時、マリから言われた言葉がそれだった。神無月から治療してもらったおかげでだいぶ良くなったのか、足をまだ引き摺ってはいるが、そこまで痛くはなさそうだ。
「座ってろって‥‥熱があるんやから」
 クレイフェルがため息を吐きつつマリを座らせる。
「熱?」
 B班の能力者が疑問を投げかけると「川に落ちた事、濡れた服をそのまま着てた事が原因かなー、結構ふらふらする」とマリは苦笑気味に言葉を返した。
「マリ隊長‥‥行方不明になって心配したんやから!」
 篠原が少し怒り気味に話しかけると「‥‥行方不明?」とマリは首を傾げながら聞き返してくる。
 どうやらマリは能力者達に置いていかれた事に気がついていないらしい。
「詳しい事は後で説明するわ、キメラがいたんでしょう? まずは片付けないとね」
 小鳥遊が呟き、ナレインがマリをおんぶする。
「うぇぇ! お、お姉さま!?」
「あら、お姫様抱っこがいいならやってあげるわよ?」
 ナレインがクスと笑いながら言うと「え、遠慮する!」とマリは首を振りながら答えた。
 その後、マリと能力者はキメラのいる場所へと移動する。
 マリは怪我と熱があるので、少し離れた場所に待っているようにと言い聞かせた。マリは渋々だったが、足手まといになるから――と考えたのか大人しく言う事を聞くようだ。


〜戦闘開始! 小型龍を打ち倒せ! 〜

「それでは、始めましょう‥‥お仕置きも必要ですが、くれぐれも無理しないように」
 神無月が呟き「せやな、さっさと片付けてしまお」とクレイフェルが小型龍キメラに向かって走り出す。
 そして『ルベウス』で攻撃を仕掛ける。
「クレイフェルさん、右に避けてください」
 霞澄が呟き、クレイフェルが指示通りに右へ避けると霞澄が洋弓『アルファル』で攻撃を仕掛けた。彼女が放った矢は小型龍キメラの右目を正確に射抜き、キメラは苦しげに叫びだす。
「大切な親友を危ない目に遭わせたあなたを赦さないわ‥‥良い事と悪い事の区別がつく頭があればよかったのにね!」
 霞澄の攻撃の後にナレインが叫び『瞬即撃』で攻撃を仕掛ける。今回ばかりは温厚なナレインも怒っているのか、攻撃に迷いは微塵も感じられない。
「次はうち! 七つの玉をプレゼントしたる!」
 鉛玉やけどな! 篠原は叫びながら『急所突き』『強弾撃』『二連射』を使用して小型龍キメラを攻撃する。
「まだ隠し攻撃を持っているかもしれないので、油断は出来ませんが‥‥」
 綾野が『ライフル』で援護射撃を行いながら、一人呟く。
 そして、夜坂は綾野の援護射撃が終わったと同時に前へと走り出して『ファング』で攻撃を仕掛ける。
 奇襲とも取れる突然の能力者達の攻撃、それに対応できなかった小型龍キメラはたいした攻撃を見せることはなく、能力者達の攻撃によって倒れていったのだった‥‥。


〜そして、無事に保護されたマリは‥‥〜

「災難でしたね、取っておきのチョコレートですよ♪ 温まって早く帰りましょう」
 霞澄はポットセットに持ってきていた『紅茶』と『リネーア手作りのチョコレート』をマリに差し出しながら話しかける。
「ありがと〜〜♪ だいぶ暖かくなってきたからといってずぶ濡れじゃ、さすがに寒いねぇ」
 マリはけらけらと笑って、紅茶を飲み干す。
「マリさん、出来るなら‥‥あなたを置いていった能力者たちを許してやってほしいです‥‥無茶なお願いとは分かっているんですけど」
 綾野の言葉に「何で〜? 許すも何も怒ってないし」と困ったように笑って答えた。
「最初は『何で真面目に頼んだのに〜〜!』とか思ったけど、結果的に私は助かってるんだし、別にいいやぁって感じ?」
「あなたらしいですね」
 そう言い残して夜坂はキメラに焼香をするために、能力者達の所から離れていく。
「疲れた‥‥とっとと帰るぞ? 心配している人がいるだろうしな?」
 神無月はマリの頭に手を置きながら小さく呟いた。
「全く‥‥マリ隊長は人騒がせなんだから‥‥」
 ぐす、と涙混じりの声で篠原が呟き「のっち‥‥」とマリも申し訳なさそうに言葉を返した――が、ポケットから落ちた目薬が視界に入り「‥‥のっち?」と低い声でマリは呟く。
「あらん、バレた? あはは、でも言葉は本音だし許して、マリ隊長」
「マリさん、次からはあたしやナレインさん、クレイフェル達、信頼出来る仲間を最初から頼って? こんな想いはこれっきりにしたいから」
 小鳥遊の言葉に「うん、そーする」とマリはにぱっと笑って言葉を返したのだった。


 そして‥‥後日発売されたクイーンズには‥‥。
 大スクープ!
 クレイやんの新かくし芸は『ハリセン』じゃなくて『ピコピコハンマー』という事が判明!
 これからは『ピコハンのクレイやん』と呼んであげましょう。
 ま、それはさておき‥‥今回、助けに来てくれた能力者の皆! ありがとね!
 またよろしく〜♪


END