●リプレイ本文
「さぁ! ボクの恋を実らせるために山越えだ!」
びしっとキメラがいる山を指差しながらコリオが元気に叫ぶ。
「コリオさんを‥‥見てると‥‥誰かを‥‥思い出すな‥‥」
遠い目をしながら幡多野 克(
ga0444)がポツリと呟いた。
「そういえば‥‥今回は‥‥飛行型の相手ですか?」
神無月 紫翠(
ga0243)が呟くと「そうみたいね」と藤田あやこ(
ga0204)が双眼鏡を片手に持ちながら言葉を返す。
「早く行こう! ジェシーがボクを待ってる!」
そわそわとするコリオを見て「誰かを好きになる‥‥そういう気持ちって大切な事よね」とナレイン・フェルド(
ga0506)がにっこりと微笑みながら呟いた。
「確かにそうですけど‥‥惚れた女性にラブレターを渡したいけれどキメラが邪魔するから退治してくれとは‥‥他力本願な方ですねぇ」
ため息を漏らしながら門鞍将司(
ga4266)が呟く。
「ふふ、でも人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られてなんとやら‥‥昔の方は良い事を言いますわね。私もこの恋を全力でサポートさせていただきますわ!」
握りこぶしをギュッと作りながら白虹(
ga4311)が気合の入った口調で自分に言い聞かせるように呟いた。
(「なーんでラブレターなんざ届ける為に行かなきゃなんねーんだよ‥‥どうせ会うんだから男らしく口でズバッと言っちまえよな‥‥」)
紫煙を燻らせながらクラウド・ストライフ(
ga4846)は心の中で呟く。
「何とか想いを告げさせてあげたいものですね」
結果がどうであれ、ヴァシュカ(
ga7064)は言葉を付け足しながら意気揚々と歩くコリオを見ながら小さく呟いたのだった。
〜索敵・煩いコリオ編〜
依頼人であるコリオがキメラによって攻撃を受けぬように、今回集まった能力者達は班を三つに分けて行動することになった。
索敵・白虹、ヴァシュカ。
前衛・クラウド、幡多野、藤田、神無月。
そしてコリオの護衛として門鞍とナレイン。
はっきり言って今までの様子を見ている限り、キメラと戦闘している時に邪魔をしてきそうなのでコリオを真ん中にして両脇を門鞍とナレインが固めるという形になっていた。
「さて‥‥愛しの彼女に会う前に怪我を負ってしまってはせっかくの機会が台無しですものね、安全に慎重に行かなくては」
白虹は呟き、山に潜むキメラを探す。同じ索敵役のヴァシュカとは少し距離を置いて行動しているため、広範囲でキメラを索敵することが出来る。
そしてヴァシュカは草木の音、羽ばたき音にも警戒を怠る事なくキメラ索敵を行っている。
「‥‥あらゆる状況を考えて、動じぬ心の手練れたれ‥‥Sleight of Mind」
呟きながらヴァシュカは索敵を続けた。
そしてコリオ護衛組といえば‥‥。
「そういえばジェシーちゃんのどういう所が好きになったのか気になるわ♪」
「私も気になりますぅ、どういう所を好きになったのか聞かせてほしいですねぇ」
ナレインと門鞍の言葉を『待ってました!』と言わんばかりの笑顔でコリオが懐から『ジェシーメモ』と書かれたメモ帳を取り出しながら話し始める。
「まずジェシーは優しいんだ! ボクが道路で立ち止まっていたら『危ないですよ』って声をかけてくれるし!」
いや、それは確かに危ないだろう――二人は心の中で同時にツッコミをいれる。もちろん心の中で‥‥。
「そして可愛いんだ! 彼女がいつも連れているブルドッグの可愛さが霞んで見えてしまうくらいに!」
犬と比べるんだ? ――そんなツッコミを二人は(もちろん心の中で)いれる。
「そ、そういえばぁ、どうすればぁ、積極的に女の人とお付き合いが出来るのでしょうかぁ?」
恋愛経験が皆無な門鞍は興味津々にコリオへと問いかけると「砕けるような勢いかな!」と彼は得意げに答えたのだった。
そしてそんな三人と少し離れた前方を歩く前衛組は「うわぁ‥‥」と聞こえるコリオの言葉に少し(かなり)ひいている。
「探し物は何処かな〜?」
前衛組の藤田は定期的に立ち止まり茂った小枝を小銃『S−01』で撃ち、視界を確保しつつ銃声によってキメラが此方へと来てくれれば、と考えていた。
「‥‥てゆうか、何でコリオみたいなキモメンにモテるのよ、ジェシー‥‥だんだん腹がたってきた」
羨ましさからか、それとも別な何かなのか、藤田は低い声で呟きながらトリガーを引く指に力をこめる。
「‥‥今の所は‥‥おとなしくしている、みたいですね‥‥」
神無月はジェシーの魅力について語るコリオを見ながら苦笑交じりに呟いた。
「でも、何でだろう‥‥聞こえてくる話を聞いている限り、なんとなーく一方的に好きなだけのような気がするのは‥‥」
幡多野が呟く。
確かに聞こえてくるコリオの言葉は、彼自身の想いだけであり、ジェシーとどんな話をしたのかとかは一切語られていない。
もしかしたらジェシーはコリオの存在すら知らない可能性が出てきた。
「‥‥どうやらキメラが見つかった、みたいだな」
クラウドは呟きながら武器を構える。
確かにキメラを発見したらしく、索敵役の二人が此方へと戻ってきた。
〜戦闘開始・ジェシーを語るコリオ〜
「あいつだ! あいつがボクとジェシーを引き裂いたヤツだ! さぁ、倒しておくれ!」
ナレインと門鞍の後ろに隠れながらコリオがキメラを指差して叫ぶ。
「ち、ちょっと‥‥少しおとなしくしてましょうね? コリオさん」
人の後ろに隠れながらキメラを挑発するような発言ばかりを繰り返すコリオにナレインが多少引きつった笑みで話しかける。
「少し黙っててください! 私は貴方を守ります! ジェシーさんにご自分の思いを伝えたいのでしょう?」
門鞍の言葉にコリオは首を縦に振り、口を硬く閉ざした。
「さて! おね〜さん、支援頑張るからね」
藤田が呟き『練成強化』を使用し、能力者の武器を強化した。さらに続いて門鞍も『練成強化』を行う。
「そして――人の恋路を邪魔する奴は‥‥」
藤田がキメラの方を見ながら『練成弱体』でキメラの防御力を低下させた。
「すごいね! お姉さん! ボク、ジェシーがいなかったらお姉さんに惚れてたよ!」
藤田になぜか尊敬のまなざしを向けながらコリオが叫ぶ。
「さて‥‥とりあえず煩いのは‥‥放っておいて、当てづらいというのに‥‥厄介だな」
神無月は長弓『黒蝶』を構え「だが、いい気になるのも‥‥そこまでだ」と低く呟きながら矢を放つ。
神無月が放った矢はキメラの翼に命中し、片翼を失ったキメラは無様に地面へと落ちてくる。
「そして――此処からは俺たちの仕事っ!」
幡多野が『月詠』を構え『急所突き』を使用しながらキメラへと攻撃を行う。
だが、反撃に転じたキメラが爪で幡多野を攻撃しようとした時――「危ない!」とコリオが石を投げつけてくる。
恐らくコリオ自身はキメラに向けて石を投げたかったのだろう。
しかし、コリオから見てキメラと幡多野は重なって立っていたため、投げた石が幡多野に当たるのは摂理というわけで‥‥。
「いたぁっ!」
背中に当たった石のせいで、幡多野が苦痛の表情でその場に屈む。
そしてラッキーと言うべき所は、屈んだおかげでキメラの攻撃を避ける事が出来た、ということだ。
「コリオさん、おとなしくしててくださいと言ったばかりなのにぃ‥‥」
門鞍が慌てながら石を再度投げつけようとするコリオを諌める。
「‥‥あまりオイタが過ぎると頭に余計な穴が増えますわよ‥‥?」
白虹が笑顔でコリオに話しかける。笑顔なのだが、その笑みは静かで怒りに満ちているのは誰が見ても分かるほどだった。
「でも、ボクだって役に立ちたいから‥‥」
話すコリオの言葉を遮るようにヴァシュカがコリオの頬を軽く打つ。
「想いを告げる事は大事です。ですが、想いを告げた‥‥が、キミが死んでた、じゃその想いは何処に還ればいいんですか?」
ヴァシュカは一度言葉を区切り、深呼吸をしながら再び言葉をつむぎ始めた。
「残された人は何処に想いを返せばいいんです? 返せない想いほどツラいモノはそうそうありませんよ! 自重なさってください!」
ヴァシュカの言葉を聞いた後、コリオはぽかんと口を開け「‥‥ごめん」と素直に謝る。
それから後はコリオもおとなしくなり、能力者達は戦闘に集中することが出来た。
幡多野は『豪破斬撃』を使用し、キメラに攻撃を仕掛ける。元が飛行型のせいか、地上に降りた後は苦労することなく戦闘を行う事が出来た。
しかし、能力者達の戦いを見て『自分も何か役に立ちたい』と考えているのか、コリオの動きが少し怪しげである。
「いきなり飛び出しちゃダメよ? 余裕のある男性の方がかっこいいんだから♪」
ナレインがさりげなく牽制しながらコリオに話しかけると「わ、わかってる」と言葉を返してきた。
そしてキメラとの戦闘を大きく変えたのは白虹が『ライフル』で攻撃を行った時だ。
運よく白虹の攻撃がキメラの目を撃ちぬき、苦しんでいる時に能力者達は総攻撃でキメラを倒したのだった。
その後、藤田の提案によりキメラの死骸の前でガッツポーズを取っているコリオの写真を撮る。
最初は断っていたコリオだったが、ジェシーとの愛を応援しているのか「手柄はコリオさんのモノにしちゃいなさい」と笑って藤田は言葉を返した。
〜愛の告白・コリオとジェシー、愛の逃亡〜
あれからジェシーがいる街に到着し、コリオが『らぶれたあ』を渡すのを能力者達は見守っていた。
最初は「どうしよう、緊張する」と情けない声でおろおろとしていたコリオだったが「お前、それでも男か! 男ならびしっとキメてこい!」とクラウドから背中を押され、コリオはジェシー宅まで来ている。
ぴんぽーん。
「はーい、どちらさまですか?」
コリオがインターホンを押すと、家の中から綺麗な女性が現れた。
そして、見守っていた能力者達があるモノを見つけて嫌な汗を流す。
ハミュッツ・ハーレイ
ジェシー
マチルダ
明らかに家族の名前が書いてある。
そして能力者達の嫌な予感は見事に的中し、ジェシーは人妻という立場にあった。
そんな事に気がついていないコリオは想いを綴った『らぶれたあ』をジェシーに渡す――のだが、結婚している事を告げられ石のように固まる。
「ノーーーーーーーーーーン! 人妻だなんて! ボクのジェシーーーーーっ!」
人の家のまえで叫び、喚き散らすコリオを能力者達は引っ張ってきて「次の恋を探せ」という慰めの言葉を送ったのだった。
結局、本部に帰還するまで「ジェシー、ジェシー」とウザいほどに呟くコリオに能力者達は余計に疲れ、げっそりとした表情で帰還したのだった。
END