●リプレイ本文
「‥‥それにしても、翔太を犠牲にしてまで花見するか? 普通‥‥」
ポツリと威龍(
ga3859)が呟く。
「龍っち、まだ翔太は死んでないから!」
威龍の言葉に土浦 真里(gz0004)がビシッとツッコミを入れる。
「‥‥‥‥まだ、なんだな」
何故か死亡確定しているようなマリの言葉に漸 王零(
ga2930)が小さくツッコミを入れる。
「早く行った方が良さそうですね」
王 憐華(
ga4039)が苦笑混じりに呟き、ナレイン・フェルド(
ga0506)が「さぁ〜て、翔太ちゃんを急いで助けに行きましょうか」と話す。
「倒した後は――楽しく花見、だな?」
櫛名 タケル(
ga7642)が呟くと鳳 つばき(
ga7830)が「楽しむぞ‥‥おー‥‥」と言葉を返した。
「あ、始めまして、マリさん」
マリに挨拶がてら話しかけて来たのは乾 幸香(
ga8460)だった。
「ども! 始めまして&宜しく!」
「はい、此方こそ。マリさんの事は彼女からよ〜く聞いてます。だからかな? 何か初めて会ったという気がしませんね」
乾は話しながら小鳥遊神楽(
ga3319)へと視線を移す。
どうやら、小鳥遊の友人らしい。
「今日は花見を楽しもうね〜」
マリはニコニコと笑って呟く。
「おいおい、花見の前に邪魔がいるんだろ? まずはそいつを速攻で片付けないとな?」
神無月 翡翠(
ga0238)がマリの前に立ち、苦笑気味に話しかけてくる。
「あ、そうだった。さっきからメールで『助けてええ』とか来てるんだよね」
あはは、と笑ってマリが呟くと「笑っている場合ではないんじゃないの?」とジーン・ロスヴァイセ(
ga4903)が言葉を返してくる。
「大丈夫、大丈夫! うちの記者にキメラから逃げられないような根性ナシはいないから」
どこから来るのかさっぱり分からない自信満々の言葉に『まず、貴方がいますよ‥‥』とナオ・タカナシ(
ga6440)は心の中で呟いた。
「でも、これだけ能力者が揃っているのですからキメラ退治に苦労する事はなさそうですね」
シャレム・グラン(
ga6298)が呟くと「そうですね、後は場所取りをちゃんと出来ているかで彼女の機嫌が‥‥」と夜坂桜(
ga7674)はマリを見ながら言葉を返した。
「‥‥おーい、元気?」
ボーっとしているエイドリアン(
ga7785)にマリが話しかけると「は、はい、元気です」
と照れながら返事をすると「可愛いっ!」とマリが抱きついてくる。
「そういえば、花見の場所に他の一般人の方はいないんでしょうか?」
無髪 萌芽(
ga8549)がポツリと呟くと「いないよー」とマリがエイドリアンから離れて言葉を返す。
「せっかくの花見だから、誰もいない場所でしたいって翔太に希望出しといたから♪」
マリはにっこり爽やかに笑う――が、その影で翔太がどれくらい苦労したのだろうと考えると、素直に喜べない能力者達だった。
「‥‥というわけで! 早速しゅっぱ〜つ!」
〜花見会場、翔太とキメラの命がけ追いかけっこ〜
「うおおおおおおおおおおおっ! そろそろ限界―っ! 足が痛いーーっ!」
花見会場に到着すると、桜の花びらが舞う中で翔太がキメラから必死に逃げている姿が視界に入ってきた。
「おー‥‥翔太さんがキメラに追いかけられておりますね‥‥いつもに増して悲惨な目に‥‥何だか目が潤んできてしまいます」
きっと花粉のせいですね、呟きながらナオは花見をするためにキメラを倒そうと他の能力者達に話しかけた。
あくまで『花見』のためであり『翔太』のためではないという所が哀れ。
「さて、まずは強化を行いますね」
神無月が『練成強化』で能力者達の武器を強化して、その後にシャレムが『練成弱体』をキメラに使用して、キメラの防御力を低下させる。
「先に行きます!」
夜坂は他の能力者に向けて叫ぶと、覚醒して翔太とキメラの間に割り込んだ。
「こんな所に出てきちゃダメよ?」
夜坂が向かうと同時にナレインも動き出し、キメラに向けて妖艶に笑う。
「なるほど、確かにこの程度のキメラなら苦労する事もなさそうね」
ジーンは呟き『メタルナックル』でキメラを攻撃する。
「私も援護を‥‥弓、弓‥‥あら、見つかりませんね」
ナオが呟き、手にしたモノは愛用の包丁(だけどヴィア)と料理用の鍋のフタ‥‥。
「し、仕方がありません。これで戦闘をする事にいたします――ふふ、大人しく私に料理されるが良いと思います」
呟きながらナオは覚醒を行い、途中から少し口調が変わっている。強いて言うなら何処ぞの怪しい料理人のようだ。
「大丈夫っすか?」
櫛名は翔太を保護すると「か、軽く逝った‥‥」と息を激しく切らせながら言葉を返してきた。
「と、とりあえず自分が桜とついでに翔太さんをガードを行いますので」
無髪が櫛名に向けて呟き、櫛名は戦闘へと戻っていく。
そして翔太が心の中で思った事は『俺って何処までいってもついでなんだな‥‥桜に負けちまったよ‥‥へへ』らしい。
そうしている間に能力者達は見事にそれぞれ一撃でキメラを倒したのだった。
〜余興は終わり! これからがメインの花見パーティーっ! 〜
「アンタも災難ね‥‥」
能力者&マリ達から少し遅れて、他のクイーンズメンバーも集まり、チホが翔太に話しかける。
「自業自得、匿名でマリの悪口書くから」
静流はため息混じりに呟き、すたすたと桜の所へと向かう。
少し前に騒ぎになった匿名希望のハガキ、実は翔太が投稿していた事が発覚してしまい、その罰として今回場所取りに来る羽目になったのだ。
「宴会といえば芸――かは分からないが我が一番にさせてもらおう」
漸が用意していた食べ物や飲み物を出した後『演武』を行ってくれるのだという。
最初は無手から始まり、薙刀、大剣、刀、倭刀の順で実践で使える技や儀式用の見栄えを意識した技など織り交ぜて行われ、それはどこか神々しいようなものさえ感じられた。
その後、漸は木を空中に放り投げ、刀で23回切って削って、また空中へと放り投げ、また削る――それを繰り返して木彫りの人形を作り上げた。
「す・ごーいっ! 王ちゃん凄い凄い!」
カメラを構えたまま、マリが感動したと言わんばかりに目を大きく丸く見開いて叫んだ。
「じゃあ、二番手はあたしが行かせてもらおうかしら、幸香」
小鳥遊が呼ぶと乾も前にやってきて、小鳥遊が今回の演奏の為に持ち込んできた軽量のアンプ、そして愛用のギターを取り出した。
「神楽ともう一度こうやって一緒に演奏が出来るなんて‥‥それだけでもラストホープに来た甲斐があった気がする」
「そうね、今夜限りの再結成! Twilightの『音』で一夜限りの夢を見て頂戴!」
小鳥遊が叫び、乾と二人で演奏を始める。クイーンズ記者達は演奏を聞いている能力者、そして演奏している二人の写真などをカメラに収めている。
一方、少し離れた場所ではカセットコンロなどを持ち込んできた威龍がピリ辛の中華スープを作っていた。
彼はこのほかにもから揚げ、エビチリ、酢豚、焼き豚、回鍋肉、チンジャオロースなどを作ってタッパーに入れて持ってきてくれていた。
「ほら、出来立てだから美味いと思うぞ」
威龍は能力者達にスープを渡した後、一人で桜を見ている静流にも持っていった。
「ありがと」
「マリに振り回されてご苦労様だな、まぁ‥‥あのバイタリティーこそがマリなんだろうが‥‥」
威龍が呟くと「そうね、あんな破天荒なマリだけど嫌いな人なんていないのよ」と静流はスープを飲みながら答えた。
「そういえば、お前さん、恋人の一人もいないのか? いないのなら――俺なんかどうだ?」
威龍が静流に問いかけると、少し驚いたような顔をして「酔った上での告白なんてだめよ」と笑って立ち上がる。
「‥‥別に飲んでいないんだがな」
後ろ姿の静流を見ながら、威龍は小さく呟いた。
「そういえば、場所取りは成功しているみたいで‥‥お仕置きを見れずに少し残念ですね」
夜坂が絵画道具に桜や能力者の姿を描きながらポツリと呟くと「お、お前怖いんだぞ!?」と翔太が泣きそうな声と表情で夜坂に言葉を返した。
「マリさんのアレは‥‥アレを喰らったら‥‥考えただけでも恐ろしい!」
震えながら翔太はグイッと酒を飲み、ふらふらとした足取りで能力者達の輪の中に入っていく。
翔太があっちに行ったのを確認し、夜坂は止めていた手を動かして再び絵を描き始める。
「綺麗だ‥‥いったいどれだけの想いが込められてきたのだろう‥‥」
桜を描きながら夜坂は呟き、上を見上げると――カメラを構えたマリの姿があった。
「っ!?」
慌ててスケッチブックで顔をガードするのだが、スケッチブックがマリの顔にバシッと当たってしまう。
「いぃったぁ〜っ!」
鼻を手で押さえながら叫ぶマリに「す、すみません!」と謝り、スケッチブックを顔から退けようとしたのだが――カメラを構えているマリの姿が見え、それを止めた。
「‥‥‥‥ちっ」
マリは舌打ちをすると「写真は撮らないから、絵を次のクイーンズで使わせてもらっていい?」と問いかけてきた。
「次のクイーンズは、今回の花見のことを特集しようと思ってるんだ、だから絵を提供してもらえると助かるなー‥‥なんて、だめ?」
「わ、私はかまいませんけど‥‥」
夜坂が言葉を返すと「やった! ありがとね!」と言って、走って去っていく。
「楽しい人ですね」
去っていくマリの姿を見て、夜坂は花見を楽しむ能力者達の絵を描き始めたのだった。
「ゴォーッド! 楽しんでる〜?」
片手に酒瓶を持ち、けたけたと笑いながらマリが神無月が近寄っていく。
「まぁな――って大丈夫か? 結構な量を飲んでいるみたいだが‥‥」
神無月が少し心配そうに話しかけると「大丈夫! まだマリちゃんは素面ですともさ」
酒瓶を振り回しながら答える姿を見て、いったい誰が素面だと言い張るマリの言葉を信じられるのだろうか。
「そ、そうか‥‥まぁ、飲み過ぎないようにな?」
きっと今言っても遅い、神無月は心の中で呟きながらマリに話しかけると「あいあいさー」と言いながら何処かへと行ってしまった。
「‥‥‥‥本当に大丈夫なのか?」
「これ、美味しいから持参しちゃった♪ 皆もどうぞ」
ナレインが荷物の中から取り出したのは『柿ピーチョコ』だった。勧められた能力者達は柿ピーチョコを取り、それぞれ口に運んでいる。
「うぃーっす、マリちゃん宅急便ッス。お酒持ってきやしたぜ、姉御」
酔いがいよいよ回ってきたのかマリの口調がどんどんおかしな事になってきている。
「あらあら、飲みすぎじゃない――っと、私はチューハイをいただくわ」
ナレインはマリからチューハイを受け取り、マリは柿ピーチョコを少しずつ食べている。
「そういえば‥‥マリちゃ〜ん♪ あなた好きな人いないのー? 浮いた話を聞いた事ないのよね〜。教えなさい♪」
ナレインが振ってきた話にマリは口に入れていた柿ピーチョコを噴き出してしまいそうになる。
「確かに興味ありますね」
「私も興味あります、マリさんの浮いた話って聞いた事、本当にないですし‥‥」
「意外と翔太さんみたいな人が好きだとか?」
上から順に鳳、ナオ、櫛名がそれぞれマリに視線を集中させながら興味津々に話している。
「そろそろ、結婚とかしてもおかしくない年齢だしね」
「でも、マリさんのような無茶‥‥ゴホン、豪快な方が好きになる人って‥‥どんな人なのか想像出来ませんね」
「で? 白状しちゃいなさい」
ジーン、無髪が呟き、ナレインが詰め寄ると「う〜ん」とマリは考え込みながらお酒を飲み始める。
「恋人とかは知っての通りいないなぁ〜。好きな人は‥‥いないよ? うん、いない」
意味深な言葉を残して「もうすぐ王様ゲーム始めるよ!」と叫んだ後、逃げるように能力者達の前から去っていった。
「‥‥‥‥あれはいるわね、間違いなく」
ナレインがポツリと呟く。
「いますね、マリさんがああいう風な態度を取るときは必ず何かある時ですし」
ナオがナレインに言葉を返す――とちょうど翔太が入れ替わりでやってきた。
「あ、翔太さん、今回はお疲れ様です。お酌をしましょうか?」
鳳が翔太を隣に座らせると「サンキュ」と言って翔太はグラスを前に差し出す。
「そういえば翔太ちゃん、マリちゃんの好きな人って知ってる?」
ナレインがさり気なく問いかけると「知ってるッスよ」となんともさらりとした表情で答えてきた。
「マジっスか!」
櫛名がいち早く食いつくと「知りたい?」と翔太がにやりと笑って呟く。
「すみません。好奇心には勝てないのです」
ナオが申し訳なさそうな言葉を呟き「教えてください」と付け足す。
すると、翔太は一枚の写真を能力者に見せてきた。その写真には今より若いマリと、顔がマリと似ている背の高い男性が写っていた。
「マリさんの兄貴の草太さんスよ」
マリの兄はキメラによって殺されている、恐らくその傷はまだ癒えないのだと翔太は語った。
「翔太さんは真里さんの事をどう思っているんですか?」
もしかして、とナオが話すと「無茶ばかりするケド嫌いにはなれないんだよな」と苦笑して答えた。
「そうなんですか! マリさんとの恋、応援しますよ! マジカルパワーで!」
突然、鳳のテンションがあがり始め、何事かと思えば彼女の隣には酒の空き缶が放り投げられていた。
「きたきたーっ! 回ってきたーっ! いつもより多く回っております!」
ぐるぐると回る鳳に「回っているのはキミだよ」と教えてあげる能力者はいない。
きっと、彼女も酒を飲んで酔っ払えばマリと同じような事になってしまうのだろう。
「‥‥‥‥その前にキミは未成年! これ以上は飲んじゃダメだろ!」
次を飲もうとする鳳に翔太が慌てて酒を取り上げる。
「櫛っちーーーーっ! ナオぴょおおおおんっ! プロレスするぞーーぃ!」
マリの大きな声が響き渡り、指名された二人はマリの所へと移動を始める。
「おうしっ! 燃えるっす!」
櫛名が拳を握り締めながら気合を入れて呟く。
「前回では不甲斐ない姿を見せてしまいましたので、出来れば汚名返上したいところですね」
マリに殴られた経験のあるナオは「ふふふ‥‥」と怪しげな笑みを浮かべている。他の能力者たちも面白そうだということで見物をしていた。
「じゃあ、いっくよーっ! うりゃ!」
最初の相手は櫛名、マリは二本指で思い切り目潰しをくらわそうとして、櫛名は紙一重でそれを避ける。
「ストップ! ぷ、プロレスじゃなかったんスか!?」
「え? プロレス技でしょ? 目潰しって。後は椅子を投げたり‥‥」
悪役レスラー!? 櫛名は心の中で叫び、身の危険を感じる。
だが、彼も能力者、本気を出せばマリの目潰しなど喰らうはずもないので最初に予定していた通りに半旋回するシューティングスタープレス『B×Bスタープレス』をキメ技に魅せる戦いをしてみせた。
もちろん攻撃は真っ向から当てず、ダメージがないように心がけていたのでマリに怪我はない。
「くぅー、結局一回も目潰しくらわせられなかったー‥‥」
悔しがるマリを見て『くらったら無事じゃいられないよ、俺』と櫛名は安堵のため息と共に吐き出したのだった。
「次はナオぴょんかぁ、カモーン!」
シュッシュッとパンチを繰り出そうとするマリにもはや『プロレス』という言葉は通じない。
「‥‥ぱ、パンチ‥‥うわっ」
「隙ありだよ、ナオぴょん」
マリは砂をナオにかけて、鬼のような表情で迫ってくる。
「ひぃ‥‥鬼が来るーっ‥‥」
ナオは本気で思っていたのだが、今回は汚名返上という事もあり、余計にマリの攻撃をくらうわけにはいかない。
「はっ‥‥は?」
ナオが避けるが、マリはそのままナオの腹目掛けて突進してくる。
「ごふぅっ!」
マリの頭がナオの腹に見事にヒットし、今回の勝負もマリの勝利となった――‥‥のだが「きもちわる‥‥」とマリの呟きを聞いて、ナオは別な意味でも「きゃー」と叫びたかったらしい。
「やー、危なかった‥‥飲んだ後に激しく動き回るといけないよね、やっぱりさ」
あはは、と笑ってすっきり呟くマリにナオは腹を抱えながら「そ、そうですね」と言葉を返した。
「あれ、エイドリっちもこっちくればいいのにー‥‥」
一人、桜を見上げるエイドリアンを見てマリがポツリと呟く。
「先ほどから誘っているのですが、無反応でして‥‥」
無髪がマリに言葉を返す。
今の彼女の中には能力者達もマリの姿も確認できない。彼女の中に存在するのは白い世界と自分と桜、魅入っているという表現が正しいのだろうか。
だけど、彼女の心は安らぎ、これ以上ない安心を与えてくれていた。
「そっかー、じゃあそろそろ王様ゲーム始めちゃいましょう!」
じゃーん、とマリが王様ゲームに使う割り箸を用意しながら天高く掲げてみせる。
「じゃ、皆ひいていってね♪」
「‥‥これはやめようぜ?」
神無月がマリのポケットから見えている『王様』と書かれた割り箸を取り上げながら苦笑しつつ呟く。
「げ、バレた――面白い事を思いついたのになー‥‥ロープなし逆バンジー」
いやいや、死んでしまいますよ、マリさん――とノリのいい能力者ならジェスチャー付でツッコミをいれてくれるのだろう。
「ズルはナシよ〜?」
ナレインが言いながら最初に割り箸を引いていく。
そして他の能力者達も割り箸を引いて‥‥王様に見事当たった人は。
「あたしだ」
鳳が手を上げ喜びながら答えた。
「ふふ。じゃあ、3番と2番の二人にポッキーゲームかマジカルケミカルフードの味見♪」
3番は櫛名、2番はナレインだった。
「あら、マジカルケミカルフードってどれの事かしら?」
ナレインが問いかけると鳳は嬉々として紫色であわ立つゲル状の物体を見せてきた。
「‥‥‥‥ぜ、ゼリーというよりゲル状‥‥でもポッキーゲーム‥‥あぁ、どうすればいいッスか」
櫛名が頭を抱えながら悩んでいると「折角だからマジカルケミカルフードに挑戦してみましょ」とナレインが呟き、二人は『マジカルケミカルフード』を口にした。
〜〜しばらくお待ちください〜〜
「な、何スか! あれは! 今、いったい何が‥‥」
「見た目はアレでも、もしかしたら美味しい――とか期待してたんだけど‥‥」
二人とも大型キメラと戦闘したかのようにげっそりとした表情でコメントした。
「次は誰が王様になるのかしらね」
小鳥遊が呟き、王様ゲーム二回戦を開始した。
「今度の王様はあたしだね」
ジーンが王様割り箸を見せながら呟く。
「では、1番と5番にコレを食べてもらおうかしらね」
そう言ってジーンが取り出したのは持参してきたシュークリーム。
「な〜んだ、安心した!」
マリがほっとしたように呟く。今回はマリとナオが当たったらしく二人は安心しながらシュークリームを食べた――のだが。
「うぼぉっ! な、な、黄色い何かが潜んでる!」
涙目でマリが叫ぶ、ジーンが持参してきたのは確かにシュークリームなのだが、からし入りの特別なものだった。
「た、確かによく考えたら普通のシュークリームなワケないですよね‥‥」
王の持ってきた桜団子を食べながらナオは苦しそうに呟いた。
ちなみにもちろんこれらの写真は他のクイーンズ記者達がカメラに収めていた。
「さて、そろそろお開きの時間かしらね」
チホが呟き、能力者達も片付けをするために動き出した。
「むにゃむにゃ、もう食べられないナリよ‥‥」
「あー‥‥大丈夫か?」
神無月がすっかり寝てしまった鳳に毛布をかけて寝かせておく。
そして、少しだけ出た悪戯心、白いハンカチで顔を隠し誰かが驚くのを見ていようとしていた。
「傭兵はキメラを倒すのが仕事‥‥だけど、あの子達だって大切な一つの命‥‥」
片付けをしながら、ナレインは一人苦しそうな表情でポツリと呟いていた。ナレインはバグアに作られたキメラも被害者だと感じていて、キメラを倒すたびに罪悪感で胸が押し潰されそうになるのだ。
「やはり、お前と静かに桜を眺めるのも良いものだな‥‥」
漸は王に話しかけると「そうですね」と王は照れたように笑い、地面に散らかったゴミを拾っていた。
「ほんと、いろんな人がいるんだね、神楽」
乾が小鳥遊に話しかけると「そうね」と言葉を返す。
「ねぇ、また一緒にバンドをしようね。そして何時か皆と一緒に私たちの『Twilight』を作り上げたいね」
乾の言葉に「そうね、いつか‥‥必ず」と小鳥遊は笑って言葉を返したのだった。
「花見の季節も終わりましたね、また綺麗な桜を咲かせてください」
シャレムは桜を見上げながら穏やかに笑う。
「やっぱ、桜は人間の心だよな」
シャレムに櫛名が話しかけると「そうですね」と言葉が返ってきた。
「王様ゲームで王様になれなかったから、誰も弄れなかった‥‥」
ゴミ拾いをしながら無髪はショックを隠しきれない表情で呟いていた。
「でも、綺麗な桜が見れたから、いいかな‥‥」
もう散り始めている桜を見上げ、無髪は穏やかな笑みを浮かべて呟いた。
そして、数日後に夜坂の絵が表紙にされたクイーンズが発行された。
ども! クイーンズ記者の土浦でーっす。
今回は能力者と一緒に花見に行ってきました♪
うちの記者がキメラに追いかけられたおかしな写真があるから、掲載するけど、良い子の皆は真似しちゃダメだよ?
色々な写真が掲載されているから、楽しんで見てもらえると嬉しいな♪
次のイベント特集は海、かなぁ?
でもまだまだ先だから、どうなるか分からないけど、これからもクイーンズを宜しくね!
クイーンズ記者・土浦 真里
END