●リプレイ本文
今日は土浦 真里(gz0004)が企画した『クイーンズ祭』だった。
クイーンズ‥‥とは言ってもマリが騒ぎたい一心で計画したモノなのだが‥‥。
「よーっす。久しぶりやなぁ」
ポニーテールに着物といった服装で挨拶をするのはクレイフェル(
ga0435)である。
「おー! クレイやん、久しぶりぃ!」
パンダの着ぐるみ(頭だけ)を着用して挨拶をするのは、マリだった。
「初めまして‥‥ってその頭は一体‥‥」
ロジー・ビィ(
ga1031)が少し驚きながら問いかけると「体の方は間に合わなかったんだよー‥‥」とガクリとうな垂れながらマリは言葉を返す。大きな頭をつけているせいでうな垂れ方にも勢いがあった。
「マリ隊長―――――っ! 久しぶりぃ!」
どーん、とマリに体当たりをしながら叫ぶのは篠原 悠(
ga1826)だ。
「おひさしゅー! 今回はたくさん祭に来てくれる人がいるから嬉しいな〜♪」
マリは頭をぐらぐらさせながら呟く、ちなみにその際に頭が大きいためクレイフェルにごすごすと当たっていたがマリは気にすることもない。
「ここが祭の会場か‥‥」
真面目な顔で仁王立ちをしている男性――‥‥アフロカツラ、サングラス、チョーカー、メイド服、サンタ靴、両肩にはぬいぐるみをテープで固定し、手には鍋の蓋、もう片方の手には扇子、そして頭のてっぺん、もっさりとしたアフロからはレインボーローズが覗いている。
街中を普通に歩いていれば警察のお世話になるであろう人物――翠の肥満(
ga2348)は一歩、また一歩とゆっくりと会場に足を踏み入れていった。
「やぁ、土浦さん! マジワキさんがやってきまし――ぐふぁ!」
マリ、と名札がつけられている怪しいパンダに翠の肥満はパンチを食らわされる。
「あー、マジワキさんか‥‥びっくりしたなぁ。変質者かと思っちゃったじゃん!」
倒れる翠の肥満に「ま、いいや。楽しんでいってね〜」と言葉を残し、マリはすたすたと歩いていった。
「‥‥このパンチがいい‥‥」
翠の肥満は呟き、祭の会場へと向かっていったのだった‥‥。
そして翠の肥満から遅れること少し、小鳥遊神楽(
ga3319)と乾 幸香(
ga8460)の二人も会場へと到着する。
「今回はパンダの頭をつけてる‥‥マリさんて面白い人だね、神楽」
乾が問いかけると「楽しいことが好きなマリさんらしいわね」と小鳥遊も苦笑しながら言葉を返した。
今回、賑やかしの為のバンドを行おうと祭に参加した二人は、簡単な舞台を作るために準備を始める。
「もういくつかの屋台は出来上がってるんだな」
仕事の気晴らしをするために祭に参加したカルマ・シュタット(
ga6302)は会場を見渡しながら小さく呟いた。
「こんにちは、今回は楽しくなりそうですね」
同じく会場に到着したナオ・タカナシ(
ga6440)が挨拶をする。
「まだ出来上がっていない屋台もありますから、私はそちらを手伝ってきますね」
ナオは言い残し、まだ準備途中の屋台へと足を動かし始めた。
「さて、俺はどうしようかな」
カルマは周りを見渡し、出来上がっている屋台の方へと歩いていく。
「何やら、懐かしいな‥‥」
炎帝 光隆(
ga7450)が呟きながら会場に入ってきて、屋台をゆっくりと見て回る。途中で怪しげな格好をしている友人、翠の肥満を見かけたが、とりあえず見てみぬ振りをしてみた。
「はー、結構人がいるんだなぁ」
番 朝(
ga7743)は呟く。番は夜坂桜(
ga7674)に作ってもらった浴衣を着て、首の後ろに狐のお面をかけた祭王道の格好をしている。
「とりあえず皆の手伝いをしましょうか」
クイーンズ記者達が作っている屋台の所へと二人は足を運び「これよかったら使いますか?」と色々な飾りが入ったダンボール箱を手渡した。
「お、ありがと! ちょうど飾りが足りなかったんだよ」
クイーンズ記者の翔太がダンボール箱を受け取りながら足りなかった部分に飾りつけを行う。
そして「ふっふっふ‥‥遊ぶぞぅ」と目を輝かせながら現れたのは鳳 つばき(
ga7830)だった。
彼女は桜色の着物を着ており、大きめのリュックに大小の打ち上げ花火や手持ち用の花火などを用意してきていた。
「着物の着付けをする人は此方までどうぞ」
櫻杜・眞耶(
ga8467)が用意された簡易テントの前で能力者達に話しかける。テントの中には全身が見れるように全身鏡が置いてある。
「あ、宜しくお願いします」
御崎緋音(
ga8646)が櫻杜の所まで歩いて行き、丁寧に頭を下げながら着付けをお願いした。
それから慣れた手つきで櫻杜は着付けを行っていく。京都の祇園で舞妓をしていただけあって、着付けは素早く行っている。
「キツめに締めておきましたから、苦しくなったり逆に着崩れてしまったら、いつでも直しますので言ってくださいね」
櫻杜が話すと「分かりました、ありがとうございます」と御崎は礼を呟き、自分の屋台の場所へと向かい始めた。
それぞれの準備が終わりかけた頃に『ビーッ』と笛のような音がして能力者達は音の方へと視線を向ける。
「それでは! 祭を始めまーーーっす! 合言葉は『ふんどしーちょ!』で宜しく!」
〜クレイやん、フルーツ飴を売る〜
「はいよー、クレイやんのチョコバナナ&フルーツ飴売りやでー」
クレイフェルは自分の屋台で『チョコバナナ』と『フルーツ飴』を売っていた。
「クレイやーん! タダでくれ!」
目の前に現れたパンダ頭、もといマリが手を差し出しながら叫ぶとクレイフェルは「はぁ‥‥」とため息を吐いて「マリにはサービスなしな」といってあんず飴を差し出す。
「ええええ‥‥って4本?」
「クイーンズの皆に持っていってあげ。野郎にサービスはあらへん――と言いたいけどしゃあないわ」
「あら、あたしにも貰えるかしら?」
ロジーがクレイフェルににっこりと笑顔で問いかけると「ほい、あんず飴」と1本手渡した。
「もし良かったら、店番をしてましょうか? クレイも屋台回りをしたいでしょう?」
ロジーの申し出に「お、いいん? せやったらもう少ししてからお願いするわ」とクレイフェルは「さんきゅ」と言っておまけとしてチョコバナナを渡す。
「では、私ももう少し屋台を見てきますわね」
チョコバナナを受け取りながら、ロジーは別の屋台の所へと歩き出したのだった。
〜露天居酒屋 霧雨亭〜
「ふむ、買い込んだ酒を一人で飲むのもアレだし‥‥酒の販売でも行おうかの」
霧雨仙人(
ga8696)は持ってきた酒を並べながら一人呟く。
ちなみに霧雨は既に呑んでいるため、少し酒臭いのは気のせいではないだろう。
「あぁ、良い酒だ」
最初に露天居酒屋にやってきた客は、炎帝とロジーだった。
「仙人の酒は不老長寿の源、きっと生命力も上がるはずじゃ」
「はは、ありがたくいただくよ」
炎帝とロジーが乾杯をしながら飲んでいると「マリちゃん参上!」とパンダ頭がやってくる。
「おお、マリちゃんもどんどん行ってくれぃ。せっかく祭を主催していただいたんじゃ」
「仙人さん、これはお礼よーん」
マリがどーんと霧雨に渡したのは――酒が沢山入った箱。
「‥‥‥‥や、わしは自分の酒を持ってきているからいいのじゃが‥‥」
「堅苦しいことは言いっこなしよぅ! 仙人さんもたくさん飲んでねー!」
マリはぶんぶんと手を大きく振りながら次の屋台へと走っていってしまう。
「人の話を聞かぬ女子じゃのぅ‥‥」
目の前にある酒の入った箱と遠ざかっていくマリの後姿を見ながら霧雨はため息混じりに呟いたのだった。
〜Twilight in festival! 〜
「こうやって準備していると、みんなで初めてライブをした時の事を思い出すわね。大変だったけど、楽しかったよね」
ライブの準備をしながら乾が小鳥遊に話しかけると「そうね」と言葉を返した。
準備が終わった頃、乾はマイクの電源を入れて「このライブの為に新曲を作ってきました!」と大きな声で叫んだ。
「曲のモデルは皆さんもよ〜く知っている人です。 じゃあ聞いてください――『素敵で無敵な彼女』――Lets sing KAGURA!」
「花見の宴に続いて再結成! 神楽&幸香の『Twilight』の音で一夜限りの夢を見て頂戴!」
小鳥遊の言葉と同時に音楽が流れ始め、演奏が始まる。
色々な屋台を見て回っている能力者達もライブの音に引き寄せられ、簡易ライブ会場の前で立ち止まる。
「ああいうライブを見ていると、祭って感じがしますね」
夜坂が自分の屋台『紐引き屋』の所からライブを見ながら小さく呟く。
「ほぇー、美味しい!」
番はクレイフェルの屋台にあるチョコバナナを食べながらライブを見ていた。
その後も暫く二人のライブは続き、終盤になると他の能力者がライブ前に集まって盛大な拍手をしていた。
〜御崎の屋台・鬼饅頭〜
「お、鬼饅頭?」
御崎の屋台を訪れ、旗に大きく『鬼饅頭あります』という文字を見て櫻杜が目を丸くしていた。
鬼饅頭、名前は結構怖いモノだが『芋饅頭』とも呼ばれる東海地方でよく見られるお菓子の事だ。
作り方としては簡単なもので、薄力粉と砂糖を混ぜ合わせた生地に角切りのさつま芋を加えて蒸す――という決して難しいものではない。
「美味しいですよ。お一つどうぞ」
御崎は篠原の屋台で購入してきたたこ焼きを食べながら、櫻杜に『鬼饅頭』を勧めた。
「揚げたての味噌カツ串も美味しいですよ〜」
「鬼饅頭と味噌カツ串を一つもらえますか?」
櫻杜がにっこりと笑顔で話すと「了解です」と御崎は鬼饅頭と味噌カツ串を一つずつ手渡したのだった。
〜のっちの出張たこ焼き屋台・なんでやねん〜
「合言葉はふんどしーちょ! たこ焼きいかがですかー!」
なんでやねん、と書かれた旗が目印の屋台で篠原が大きな声で客引きをしている。
売れ行きは好調で、先ほども御崎が買っていってくれた。
「おいーっす、たこ焼きうまそうだな、一つ貰っていっていい?」
クイーンズ記者の翔太が篠原の屋台へとやってきた。
「翔太さん、お疲れ様♪ ここだけの話やけど、うちのたこ焼きの‥‥」
悪戯入りのたこ焼きを渡し、篠原は翔太に見分け方をレクチャーしていく。
「おお! これで普段の鬱憤晴らしが出来る! ありがとう! のっち!」
意気揚々として翔太は悪戯入りのたこ焼きを持っていき、マリへの復讐をしようとしている翔太の姿を見て――篠原はにやりと笑う。
「わーい、チョコバナナ! わーい、たこ焼き! わあい、美女が多い!」
そのとき、目の前を楽しげにスキップしながら翠の肥満が通り過ぎようとしていた――が篠原は襟首を掴み「ふんどしーちょ! 店番宜しくね! マジワキさん!」と半ば強引に店番をお願いして、篠原はクイーンズ記者達が集まる場所へと小走りで向かっていった。
「マリ隊長! 大変大変、翔太さんがうちの屋台の所から悪戯入りのたこ焼きを持って言ったんだよね。だから気をつけてね」
「は? 翔太が? 翔太の分際で? 私に悪戯たこ焼きを食わせようとしているのね、分かった。のっち隊員、ありがとねぇ」
くくくくく、とパンダの頭の中から邪悪なオーラが立ち込めている。
その時、運悪く翔太が戻ってきて「マリさーん! たこ焼きっすよ!」と叫びながら差し出してきた。
「じゃあ、俺はこれを――マリさんはこっちを食べればいいんじゃ――」
「お待ち。翔太、ちょい口を開けて」
「?」
翔太は言われるがまま口をあけるとハバネロ入りのたこ焼きが翔太の口の中にin!
「あ、あ、あ、あ、ああんぎゃああああああっ!」
「ごめんねぇ、翔太さん。うちは『マリ隊長』の『隊員』やから〜」
少し子悪魔風に笑いながら言うと「う、うらぎりものおお」と叫んで水を探すために走り回る。
「私は夜っちの屋台見てくるから続きしててね♪」
マリは篠原を引き連れて、夜坂がしている『紐引き屋』へと走り出したのだった。
「‥‥ま、マリ隊長、パンダが頭にごすごすと‥‥」
気にしない、気にしない、マリは叫びながら途中で鳳とも合流して屋台へと向かった。
〜夜坂の紐引き屋さん〜
「夜っちー! 遊びに来たよーん!」
屋台の前で叫ぶパンダ――マリに「いらっしゃいませ」と夜坂は穏やかな笑みで接客をしてきた。
「この紐を引けば、下の景品のどれかが落ちるようになっています」
まず最初に紐を引いたのは鳳で「えぃっ」とかわいらしい掛け声と共に紐が引かれ、ぶら下がっていた景品の一つ『ラムネ』が落ちてくる。
「ちょうど喉が渇いていたから嬉しいかも」
ぶしゅ、とラムネをあけてゴクゴクゴクゴクと一気飲みする鳳に「‥‥す、すげーな」と番が少し目を丸くして見ている。
「次はうち!」
篠原が呟き、紐を引くと『四季の花が描かれた王冠バッジ』と書かれていて、桜の花が描かれた王冠バッジを篠原は受け取った。
「可愛い〜♪ 私は何かなぁ」
ごそごそと紐を引きながら呟き、マリは一本の紐を引く。
すると『似顔絵券』と書かれた紙が落ちてきた。
「あ、似顔絵描いてくれるんだ? 今は忙しいから後からでいい?」
「もちろん、では後でお描きしますね」
夜坂は呟き、マリたちに手を振って次の客のために準備をし始めた。
〜そしてクイーンズ射的! 〜
昼も過ぎ、色々な屋台も片付けに入った頃に『クイーンズ屋台始めます!』とマリがマイクを使って大きな声で叫んだ。
クイーンズが用意した屋台――というより催し物なのだが、チホと翔太が射的をして、静流が占い、そしてマリは‥‥。
「射的かー、グラップラーやけど出来るかな、俺」
クレイフェルがおもちゃの銃を構えて標的を狙う――が横に逸れてしまう。
「な、何で!? 今のは命中したはずなんやけど」
んん? と篠原が目を凝らして見ると「にいやん、バリアしてある‥‥」とため息混じりに呟いた。
「ふふ、景品はすごくイイモノだから簡単には渡せなくてね♪ 頑張ってね」
チホは楽しげに呟くと「そんなんアリ?」とクレイフェルが少し嘆く。
「ふっふっふ、スナイパーの僕に不可能はない!」
てやっ! と的を狙って翠の肥満が発砲(もちろんおもちゃの銃)する。
そこはさすがにスナイパーというべきなのか、僅かな隙間を縫って見事に的を倒した。
「ありゃー‥‥こりゃチホさんの宝物を渡すしかないっすね」
翔太が言うと、チホは泣きながら「あれを渡しなさい!」と叫んだ。
そして、翠の肥満に手渡されたモノ――それは、チホの彼氏の写真だった。
「‥‥‥‥イラネ」
翠の肥満はポツリと呟く、すると「何だって? ゴルァ!」と半分キレてチホが翠の肥満の胸倉を掴む。
そこで能力者達が思ったこと――、チホもマリに似てきたな、という事。
「うち、やっぱり遠慮‥‥」
遠慮しようとした篠原はチホに捕まり、無理矢理射的をやらされる羽目になった。
そしてめでたく『チホの彼氏写真』をゲットする。
ちなみにここでナオも彼氏写真をゲットしたが、鳳に押し付けるという行動に出た。
そしてチホ&翔太の射的が終わった後は、静流の占いコーナーにいってみる事にした。
『事実なら千円、嘘ならタダ――』
そんな看板が掲げられ「いらっしゃい」と静流が黒いローブを纏って怪しげに出迎えてくる。
「で、では私が‥‥」
ナオが椅子に座ると「何を知りたいのですか?」と静流が問いかけてくる。
「い、いつかマリさんに勝てるでしょうか?」
目の前の水晶に手を掲げながら静流が占いを始め「出来ますとも」と言葉を返してきた。
「本当ですか」
ナオがお金を出そうとした時「お代はいりません、タダです」と静流が言葉を返す。
つまり、静流の言葉は嘘だという事になる。
「そこの貴方、ふんどしーちょになりますか」
静流はカルマに問いかけると「は? やらないよ」と苦笑しながら言葉を返した。
「‥‥ふんどしーちょにならないと不幸になります」
静流の低い声に「えええ」とカルマは驚きながら言葉を返す。これは占い師という立場を利用した職権乱用である。
「はいはいはいはい、職権乱用はいいから、次はマリちゃんの出し物!」
そういってマリはようやくパンダを脱ぎ、能力者達に真っ白な紙を渡していく。
「私の催し物は、これに今回の感想を書いてね♪ 次のクイーンズに載せるから♪」
何かあるぞ、と思わせておいて実際は何もなかったマリの催し物に能力者達はがっくりと肩を落とし、紙とペンを受け取り、今回の祭についての感想を書き始めたのだった。
その後、能力者達は片付けにクイーンズ記者達から馬車馬の如く働かされ、帰る頃にはへとへとになっていたそうな‥‥。
「皆様に告知ーぃ! 次は『ふんどしーちょ祭』をやるわよぅ!」
いつになるかは分からないけどね、マリはそういって満面の笑みで叫んだのだった。
「‥‥やだなぁ、誰だよ、ふんどしーちょなんて言葉を教えたのは‥‥あぁ、もうあの顔は絶対やりますって顔だ‥‥」
がっくりとうな垂れる翔太に「ファイトです」と慰めの言葉をかける。
しかし、彼氏写真を人に押し付けたことがバレて、ナオはチホから追いかけられることになってしまったというオチつきである。
「合言葉はふんどしーちょー!」
END