●リプレイ本文
「偽マリかぁ。なんや自分、えらい有名人になったもんやん?」
クレイフェル(
ga0435)が土浦 真里(gz0004)を見ながらため息混じりに呟く。
「まったくね、マリさんの姿を真似るなんて‥‥バグアも何を考えているのかしら。でもマリさんの名誉がかかっている以上、きちんと対処しないといけないわね」
小鳥遊神楽(
ga3319)が呟くと「そうですよね‥‥キメラ、ですものね」と王 憐華(
ga4039)が言葉を返した。
「でも、最初にこの話を聞いた時‥‥マリさんならやりかねないと思いました」
王が苦笑しながら呟くと「俺もや」とクレイフェルが答える。
そして少し遅れること玖堂 鷹秀(
ga5346)も合流し「ついに土浦さんが犯罪者に‥‥」とため息混じりに呟く。
「‥‥これ以上、罪を重ねる姿は見たくありません、せめて安らかに眠らせてあげることが私たちの役目でしょう」
わざとらしくさめざめと泣き真似をしながら玖堂が呟くと、背後からゴスとマリがグーで殴りつけてくる。
「だ・れ・を! 安らかに眠らせてやるのよ! 七代先まで祟るわよ!」
マリがふるふると手を震わせながら叫ぶと「暴力はんたーい」と玖堂は棒読みで言葉を返す。
そして――ピコーン、と音がしてマリは後ろを振り向く。すると自分の頭をピコピコハンマーで叩くキョーコ・クルック(
ga4770)の姿があった。
「――――キョーちゃん、理由は分かってるけれど、一応、念のために聞くね? 何をしてるの?」
マリが淡々とした口調で問いかけると「え〜っと‥‥一応用心ということで」とキョーコは苦笑しながら答えた。
「んがあああっ! どいつもこいつも俺様を疑いやがってええええ!」
「ちょ! 落ち着くッス! しかもキャラ変わってるッス!」
暴れそうな勢いのマリを宥めたのは六堂源治(
ga8154)だった。
「マリさんはふんどしーちょ祭を企画してる人っス! 悪い人なワケがない! 絶対に誤解を解いて見せるッスから!」
六堂がマリに話しかけると「そうよね♪ 私は無実よ! 無実!」とマリは高らかに笑う。
「‥‥結構疲れるなぁ、でも悪い事をするような人とは思えないし」
櫛名 タケル(
ga7642)がころころと表情を変えるマリを見てため息を吐く。しかし彼はマリが『能力者を襲う』などあり得ないとマリを信じている。
「初めまして、ですね。今回が初実戦のパディ(
ga9639)といいます。今回は宜しくお願いします」
パディはぺこりと丁寧に頭を下げて挨拶をする。
「それじゃ、ぼちぼち向かうとしますか」
キョーコが伸びをして呟き、能力者達は目的の場所へと向かい始めたのだった。
〜偽者マリを探せ!〜
今回、能力者達は偽者マリを倒すために班を二つに分けて行動をする事にしていた。
まず、偽者マリを退治する班としてクレイフェル、櫛名、小鳥遊、王の四人。
そして本物マリの護衛を行う護衛班として六堂、玖堂、パディ、キョーコの四人。
「ええええええ! 私も行く〜! 私も偽者殴る〜〜〜!」
まるで小さな子供が駄々を捏ねるように地団駄を踏みながら叫ぶ。
「マリじゃフィールド破れないんだから抑えて」
ね? とキョーコが宥めると「えええ‥‥」とマリは不満気な声を出しながらも渋々了承した。
「んじゃ、コレを被るッスよ」
六堂が持ってきた『うさぎマスク』をかぶせる。愛らしくも憎らしいマスクを被るマリを見て、能力者達は心なしかイラッとした気持ちが湧き上がったとか‥‥。
〜護衛班〜
「マリ〜〜、いないのかーい?」
護衛班はマリにうさぎマスクを被せて本物だと分からないようにして、マリを探すフリをして偽者を探していた。
「ほーい!」
うさぎマスクを被ったマリが手を挙げて、キョーコに向けて返事をする。
「‥‥キメラを探してるのに、本人が反応してどうするんだい?」
呆れたように言葉を返すと「あ、そっか」と頭を揺らしながら呟いた。
「そうですよ、もしキメラに土浦さんが此処にいるって分かったら‥‥ともかく単独行動は慎んでくださいね」
玖堂はマリの頭の上(正確にはうさぎマスクの上)に『こねこのぬいぐるみ』を乗せる。
「‥‥うぉい、これは何さ」
こねこのぬいぐるみを指差しながらマリが問いかけると「目印ですよ、目印」と玖堂はにっこり爽やかに笑む。
「いやいやいや、うさぎマスクだけで十分じゃないの?」
「念には念を‥‥ですよ」
納得いかず、頭の上でこねこのぬいぐるみを固定しながら『偽者マリ』を探すために歩き出した。
「マリさん、キメラが現れると狙われてしまいますから‥‥少し下がりましょう」
パディが前に出すぎたマリに下がるように言うと「はいはーい」と素直に大人しく後ろへと下がる。
「それにしてもいないなぁ、クレイやん達の方に出たのかなぁ?」
マリが呟いた時にクレイフェル達の班から「見つけたで!」と連絡が入ったのだった。
〜退治班〜
退治班の能力者達は、マリが食いつきそうな話題を話しながら偽者マリを探していた。
「マリの好きそうな話題‥‥ふんどしーちょとか、栗とかサンマとか‥‥か?」
クレイフェルがぶつぶつとマリと話した記憶を遡りながら呟く――が、記憶を遡りすぎてマリとの出会いにまで遡ってしまった。
マリを助けたはずなのにセクハラ扱いをされてしまい、挙句の果てには記事にまでされてしまったのだ。
「偽者って言うとやっぱりアレかしら? 本物より目が釣りあがっていたり、肌の色が違ったり‥‥話のネタに会ってみるのも悪くはないわね――ってクレイフェルさん?」
小鳥遊がクレイフェルの方へ視線を向けると、一人ぶつぶつと呟いている。
「‥‥恨みが‥‥いろんな恨みが‥‥これはもう、この恨みをキメラにぶつけるしかあるまいて」
ふふふ、と邪笑を浮かべながら呟くクレイフェルに「‥‥何か自分の世界に入っちゃってるわ」と小鳥遊は少し距離を置きながら呟く。
「‥‥いろんなストレス、あるんスね」
櫛名がしみじみと呟くと「一番被害被ってるのはクレイフェルさんですものね」と王が苦笑気味に言葉を返した。
「―――ってアレ、もしかして」
櫛名が呟きながら、前方を指差す。その方向には笑顔のマリが立っている。
「本物はうさぎマスク被ってるわよね、じゃあアレは‥‥」
「偽者、やな」
クレイフェルが目を輝かせながらハリセンを手に持ち、護衛班へと偽者を発見した事を知らせたのだった。
〜合流・戦闘開始・積年の恨み思い知れ! 〜
連絡を取り合った能力者達は、合流してから戦う事にして偽者マリキメラを後ろから追いかけさせるような形で逃げるようにしていた。
偽者マリの手には、ドルル‥‥煩いほどに音を鳴らすチェーンソー。
「何やあれはああああっ、何であんなモン持ってるん?」
少し走る足を速めながら後ろから追いかけてくるマリ(もどき)をちらりと見る。
「‥‥楽しそうッスね、マリ(もどき)さん」
そう、確かにマリ(もどき)は楽しそうに重いチェーンソーを振り回しながら能力者達を追いかけてきている。
最初に櫛名が普通に話しかけようとしたのだが、満面の笑顔でチェーンソーを出され、くるりと踵を返して逃げる事を選んだ。
そして逃げ始めて十分が経過しようとした頃に別班と合流する事が出来て、ようやく能力者達は戦闘を開始する事が出来たのだった。
「人に迷惑かけるヤツぁ! 一辺シんで人間やり直してこいやああ!」
覚醒を行った事で口調が変わった玖堂が『エネルギーガン』で連射攻撃を行いながら叫ぶ。
突然の攻撃にマリ(もどき)は動きを止める。その隙に玖堂は『練成強化』と『練成弱体』を使用して、能力者達の武器を強化して、マリ(もどき)の防御力を低下させたのだった。
「OKだ! クレイさんよ! 積年の恨み、晴らしてきな!」
玖堂が叫ぶと同時にハリセンを構えたクレイフェルがマリ(もどき)の前に出て、スパコーン! と大きな音をたてながら攻撃を行ったのだった。
「‥‥‥‥うらみ?」
マリが眉間に皺を寄せながらポツリと呟くが、戦闘中のために誰もマリの言葉に気がつくものはいなかった。
そして――ハリセンで倒せるほどマリは‥‥もといマリ(もどき)は甘くはなかった。ハリセンが効果ないと判断すると、クレイフェルは『ルベウス』へと持ち替えて攻撃を行う。
「マリさんは二人も要りません。そんなに居たら私が参ってしまいます」
覚醒状態のクレイフェルが呟くと「‥‥参る?」と再びマリの眉間に皺が寄る。
「マリさんの名誉を傷つけた罪、万死に値するわね。あたしがきっちり始末してあげるから、がたがた震えながらあの世にいくのね」
小鳥遊も『ドローム製SMG』でマリ(もどき)に攻撃を仕掛けながら冷たく呟く。彼女の心の中は、大切な友人であるマリの偽者を作られた事で腸が煮えくり返っていた。今は覚醒状態で感情が表に出るが、覚醒状態にないときはポーカーフェイスで、沸々と湧き上がる怒りを抑えていたのだ。
「‥‥やはり、マリさんそっくりだという事でやりにくいですけど‥‥紅天弓姫参ります‥‥退散神射くらいなさい!」
王が叫び『狙撃眼』と『影撃ち』を使用してマリ(もどき)を攻撃する。
そして――肝心のマリはといえば‥‥。
「危ないッスよ!!」
六堂に体を押さえられながら暴れていた。
「は〜な〜せ〜〜ぇ! 好き勝手言いやがってええ! クレイやんめええ!」
持っていた石をクレイフェル目掛けて投げようとしているマリを六堂は顔を青ざめながら必死に止める。
「噂を本当にしてどうするんスか!」
「むがーーーっ! セクハラ〜〜!!」
「セクハラで結構! マリさんが怪我するよりはマシっす!」
セクハラ発言をされても六堂は挫けずにマリを抑える。
「おやまあ‥‥噂が本当になりつつありますねぇ」
パディが『刀』を構え、マリの方を見ながら可笑しそうに笑う。
「やれやれ、本物が暴れだす前にケリをつけなきゃだね」
キョーコも苦笑しながら『蛍火』を構えて攻撃を行う。キョーコの攻撃が終わった後、一度マリ(もどき)がチェーンソーを振り回したが、キョーコはうまく避けて後ろへと下がる。彼女が下がると同時に櫛名が「―――もういいだろ?」と呟き、マリ(もどき)のところまで駆け寄ると、高くジャンプを行って二刀で突きと薙ぎの二段攻撃を行う。
「―――狼牙鷹爪」
マリ(もどき)の背中を蹴って地面へと着地すると同時にポツリと呟く。
その後、背中を強く打ったせいか、マリ(もどき)の動きが極端に鈍くなり、能力者達は総攻撃を仕掛けて、見事マリ(もどき)を倒したのだった。
〜気分は晴れ晴れ、明日からもまた頑張ろう〜
「やー、倒したな」
額の汗を拭いながら、晴れ晴れとした表情で呟くのはクレイフェル。積年の恨みを晴らし終わったようで輝いて見えるのは気のせいだろうか。
「クレイやん! クレイやんの気持ちはよく分かったわ! 私に対して恨みがあったんだね!」
(「いや、ないと思うてるマリの方が凄いわ」)
クレイフェルは心の中で言葉を返すが、これを言おうものならマリの神経を逆撫でするだけにしかならないと思って口にする事はなかった。
「まぁまぁ、これでも食べて落ち着いてください」
王が持ってきたゴマ団子や吉備団子を渡すと「んむ、食べる」とマリは一つ口に入れて食べ始める。
「全く、土浦さんも気をつけてください、日ごろの行いって結構大切なんですよ?」
玖堂が呟くと「‥‥それは遠まわしに私の日ごろの行いが悪いといいたいのね?」と団子を頬張りながら言葉を返す。
「いや、俺はマリさんを信じてたッスよ?」
櫛名がフォローを入れるように呟くと「そうよね!」とマリは言葉を返す。
「あ、コレも食べますか?」
パディが手渡したのは、自家製木苺のケーキだった。
「食べる!」
パディからケーキを奪うように受け取ると、団子を飲み込んでケーキを食べ始める。
「あ! 俺も聞きたい事があったッス! ふんどしーちょ祭なんスけど、どんな感じになるんスか?」
六堂が手を挙げて質問すると「そうね〜、教えたいケド秘密よん♪」と悪戯っぽく笑ってマリは言葉を返した。
「オレ、スゲー楽しみにしてるんスよ!」
六堂の言葉に「私も楽しみ!」と言葉を返し、能力者とマリは本部へと帰還していったのだった。
そして後日――発売された『クイーンズ』を見て、能力者は絶句する事になる。
えー、実は噂されている私の暴力なんだけど‥‥私のキメラがやっていた事みたい!
付属DVDに一部始終の映像があるから、じっくり見て私の無実を見て頂戴な!
だけど‥‥一つだけ納得いかない事があるんだよねぇ。
私のキメラを攻撃している時の皆‥‥躊躇う事もなくボコ殴り!
しかも! クレイやんに至っては楽しそうに私のキメラを攻撃してたね‥‥。
でも、実際に私そっくりのキメラを見たんだけど、私の方が数段可愛いし! 綺麗だったね! 腕も足も私の方が微妙に細かったし!
全く‥‥バグアもいい度胸してるじゃないの!
次はもっと面白い取材になるといいなー♪
END