●リプレイ本文
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知り合いの傭兵に会うのは恥ずかしい。
けど、女らしくなりたい‥‥と思って、はじめて女性専用エステサロンに来てみたけれど。
朧 幸乃(
ga3078)はエステの姉さんにある物を渡され、ガックリと項垂れた。
彼女の手の中には‥‥『紙製で何だか透けまくっている使い捨てショーツ』。
つまりオイルで自前の下着が汚れちゃったら不味いよね!ということなのだが、戸惑っちゃうのも仕方ない。
立ち尽くす訳にも行かず、幸乃はバスローブと共に受け取る。
幸乃が躊躇いつつもそのスケスケショーツに足を通したとき、男の野太い声が響く。
「なんで男性が‥‥!?」
彼女の初エステは、波乱の幕開けとなる。
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変態の笑い声を聞き、春野・若葉(
gb4558)が瞼を開く。
ティーンズ誌の現役モデルでもある彼女は、雑誌撮影後の至福の一時を邪魔され眉を顰めた。
「あたしの至福の時間を‥‥何事?」
若葉はタオルで瑞々しいボディを隠すと個室外へ。そして廊下に撒かれたオイルに足をとられ、つるっと転倒。
「やだぁっ! ぬるぬるベトベトじゃん‥‥」
その日は偶然にも、居合わせた能力者がさらに数名。
佐倉・咲江(
gb1946)は湯浴み着一枚、ヘッドマッサージを施されつつまどろんでいたが、
「ZZzz‥‥はっ、寝てません‥。‥って、何か騒がしい‥」
咲江がハッと目を覚ます。この騒々しさは何事。
お湯から上がるとそのまま更衣室へと歩く‥‥ここの床もぬるぬるじゃないか。
「‥この香りは‥‥」
ふと鼻腔を擽る良い香りに気づく‥‥そう、この更衣室に漂う香りはラベンダー! リラックス効果があり、安眠へと誘うあの香りだ!
「もうっ! 休暇中だっていうのになんなのよっ?!」
エステ中だったイリス(
gb1877)は慌しくバスローブを羽織ると発育途中の体を隠す。
良い気持ちだったのにこの騒動。折角休み中に羽を伸ばしてたのに邪魔をするとは万死に値する! 怒も露に個室のドアを開ける、すると‥‥
「グアァァ!」
「きゃあ!? ‥‥アヒル?」
一羽のアヒルがイリスに飛び掛った――何故こんなところにアヒル。それより何故バスローブを引っ張ってそれを脱がそうとする!
「‥‥さては、バグアの仕業ね!?」
大当たり! イリスはすぐさま覚醒を遂げると不埒な振る舞いをするアヒルの首にチョップ!
だが流石に武器無しではどうにもならない。武器を求めてイリスは滑る廊下をスケートの如く滑走する。
そしてここにも休暇を台無しにされた女、遠石 一千風(
ga3970)の姿が。
すぐさま戦闘モードに切り替えて覚醒を遂げると、一般人を避難誘導しつつ自分も廊下へと急ぐ。
(「しかし何故銭湯に続いて裸で戦うハメに‥‥」)
傍らにあったバスローブは纏ってはいるが‥‥心は裸同然、ちょっと心許ない一千風である。
一方
「私は傭兵よ! 大丈夫だから落ち着いて!」
メティス・ステンノー(
ga8243)はスタッフルームの女性達を落ち着かせようとしていた。
しかし女性スタッフ達は、迫り来るメティスの威圧感あるバストに圧倒されていた。その大きさ正にメロン級。それは措いて‥
「ありがとう、分かってくれたのね。‥‥それで、更衣室に武器があるの、取りに行きたいんだけど最短ルートってわかる?」
ルートを聞いたメティス、丸腰の自分を敵に見つからぬよう物陰に隠れつつ進んでいく。
「ったく、何でエステでスニーキングミッションが得意な蛇の称号持つ伝説の兵士の真似しなきゃならないのかしら」
流石にダンボールは無かったけどね。
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中が大混乱に陥っている頃。
別の依頼に参加していた鳳(
gb3210)が丁度サロンの近くを通りがかった。
「なんや?」
そこが女性専用エステとも知らず、中の様子を伺う鳳‥‥。
「な‥‥まるまる太ったうまそうなアヒルや!」
鴨なん、鴨鍋、北京ダック‥‥鳳の脳裏を料理映像が横切っていく。
(「何の店かは判らんけど、暴れとるキメラをほかすわけにはいかんやろ」)
アヒルを持ち帰る気満々で飛び込む鳳、しかし、第一歩を大量のオイルにツルっともっていかれ‥‥
派手に頭から床につっこみ、おでこを擦りながら顔をあげると‥‥そこでは布一枚の姉さんたちが犇めき合っていた。眼前に広がる肌色の海‥‥。
しもた!
しかし幸い華麗な容姿の鳳は男だと気づかれていない‥‥
見ない、気にしない、気づかせない! と覚悟を決め、アヒルちゃん用のパン耳を取り出すとキメラ退治に加わる鳳だった。
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「なんでこんなときに、こんなことに‥‥」
呟きつつも、傭兵という職業柄かテキパキと一般客を避難させていく幸乃である。
手にした鉄扇とナイフでキメラをばっさり倒しつつ、更衣室の扉をあけた。すると‥‥。
「大丈夫‥?」
「ZZzz‥‥はっ」
ラベンダー効果で寝入っている咲江に出会う。事情を説明する幸乃。
「え、‥‥アヒル連れの変態‥? 変態アヒル魔人に決定」
咲江、言いたい放題である。
「ターゲット、ロックオン!!」
イリスは『女性』以外のものに手当たり次第石鹸を全力投球。
石鹸で隙の出来たキメラを『青龍』と名づけた三節棍で打ち倒していく鳳、微妙に連携攻撃が成立していた。
しかし手元の狂ったのかイリスの石鹸は鳳をも直撃する。
「痛いやんっ!」
「あ、ごめんごめん」
間違えちゃったと悪びれず謝るイリス。
‥誰か鳳は男の子だって、気づいてあげて。
無事に武器を回収したメティスもキメラを撃つ。
そして、廊下に血溜りを作り倒れている少女を発見する‥‥若葉だ。
「あ‥やぁ! 痛ッ‥で、でも気持ちイイ‥‥」
アヒルに突付かれながら、熱く湿った吐息と共に喘ぐ。
「今助けるわ!」
メティスの小銃が火を噴き、アヒルキメラを撃ち抜く。
「大丈夫?」と若葉に駆け寄るメティス、ここにきてツルっと転倒!
――むぎゅ。
メティスの豊かな胸が若葉の背中に押し付けられ‥‥
(「ス‥‥ステキ!」)
助けられたはずなのに、再び血溜りを広げる若葉であった。
「む、指圧されたいか?」
そして、変態と遭遇したのは一千風であった‥‥まだ避難誘導の途中であるのに、と、彼女は唇を噛む。
「貴様にだけは指圧されたくないな」
一千風はそういい捨て、指圧魔人を睨む‥‥筋肉質の体にピッチリナース服が目に入り、ガクリと膝をつきそうだ。
「まあ遠慮するな!」
「変態に関わっていられるか!」
一目で半分以上奪われる戦意を何とか奮い立たせ、逃走を試みる一千風。
だが一千風は、逃げ遅れた一般人を放っておけなかった。
「‥逃げて、足止めはする」
廊下で出会った少女を出口へ誘導しようとした、その時‥‥
「!?」
バスローブの襟元を引っ張られ、男の体重が背中にかかり床へと押し倒された。
「ふはははは、良いなこの体勢は!」
変態は一千風をうつ伏せに組み伏せると、彼女の上半身のバスローブを勢いよく剥ぎ取った‥‥乱れた髪から覗く白い項に、すらりと伸びたしなやかな背筋が変態の眼前に露わになる。
「‥くっ!」
「その『辱めには屈しない』という強気な表情がたまらんなぁ! さあ今から痛気持ちよくしてやるから覚悟せいっ」
覚醒の為、紋様の現れた一千風の白い背中に男の無骨な指が迫る。
(「こいつの指圧なんかで、声ひとつ上げてやるものか‥‥」)
と、一千風が覚悟したその時。
「とうっ!」
変態の顔面に長い美脚から繰り出された蹴りが直撃する!
「な‥‥何奴!?」
壁にふっとばされ、変態は睨みつけた。
―そこにはマントを靡かせ、戦闘用メイド服を纏い、ナイト・ゴールドマスクで素顔を隠した謎の女性が!?
「我が名はメイド・ゴールド、女性の至福の時を邪魔する輩に制裁を加えるために参上した」
女は名乗りを上げた。
メイド・ゴールド‥‥その正体は、人手が足りない依頼をうけたけどコミレザ帰りでコスプレ衣装しか無かったというキョーコ・クルック(
ga4770)――! あ、言っちゃった!
「この変態はわたしが抑える、早く安全な所に避難を!」
変態の拘束が解けた一千風に避難を促すメイド・ゴールドは、数時間前に「手持ちの装備がコスプレ用しかないけど‥‥他に受ける人もいないし」と悩んでいたとは思えないほどノリノリである。
「感謝する」
「ん? 君も能力者か? ならば手を貸してくれ」
一千風の体の紋様が覚醒によるものだと悟ると、メイド・ゴールドは携帯品のナイフを渡した。
それを手に一千風はキメラ退治へと走り出す――さらば、変態!
「メイドが乱入とは面白い!」
立ち上がった変態、フンっと力を入れると体中の筋肉が隆起した――膨張するマッシブな体! そして、既にパツンパツンだったナース服は体格の変化についていけずビリッと裂けてしまった!
ナース服が散り、その下から現れたのは裸の男の上半身と、嫌な感じに股間の盛り上がった紺色のブルマー。
「ふっ、ブルマの変態か‥‥君の相手はこのわたしだ、しばらく付き合ってもらうよ?」
こうして、メイドvsブルマという夢の(?)対決が実現した。
「はっ」
蛍火の間合いを維持し、変態に斬りつけるメイド・ゴールド。
「なんの!」
しかし変態はその細腕に掴みかかる――! 細腕に加わる指圧。
それを豪力発現を発動させ振りほどくが、予想以上に相手の力は強力だ。
「ぐっ‥‥お返しにあたしの1撃をくれてやるよ!」
仮面の下から鋭い視線でにらみつけると、紅蓮衝撃を発動させる。
変態とメイドが対峙する中。
現れた金髪の少女、諸悪の根源を討つべく疾走する。
「見つけた! この変態!! ‥‥きゃっ」
決闘の間に入るイリス選手‥‥おおっと、ここでまさかの転倒か!? しかし何とか体勢を整え、変態の顔面を蹴り飛ばす。
「ぐばぁ!?」
「指圧の心は母心。変態が語ろうだなんて100年早いわ!」
決まった。
イリスは華麗に着地し胸を反らす‥‥そこがちょっと乱れてようが気にしちゃいない。
‥‥傍で若葉が鼻血を噴く音がした。
いつのまにか下着一枚になっていた若葉‥‥紙ショーツはたっぷりオイルを吸い込んで透けまくっており、さながら薄消しモザイク状態だ。
オイルまみれでテカテカに光る健康的な若い体は、とても先刻までティーン誌の撮影をしていたとは思えない、まるで別の物を撮影した後のようだった!
「バグアめ‥‥ありがとうっ! ‥じゃなかった、成敗っ!」
裸体だらけの女の花園を堪能してつい本音が出ちゃう若葉さん。同性に興味があって何が悪い!
「この(鼻)血の代償‥‥高くつくよ‥? 感謝の意を込めてーっ!」
手にした愛剣、タッキ・ラージャが唸りを上げる!
「ぐぼあぁー!」
感謝の一撃を受けて、変態が鼻血を噴いた。そこへメティスの追撃が入る。
「人の楽しみを良くも邪魔してくれたわねこの(ピ―――)野郎!」
艶やかな口からとてもお聞かせできない言葉を発し銃撃するメティス――変態のブルマに穴が空く。
「ぎゃあああぁ! 我のぶるまーがっ」
そこを嘆くか。微妙に戦意喪失した変態に、駆けつけた咲江が接近戦を仕掛けた。
「変態アヒル魔人は‥狼に代わってお仕置きです‥‥? 覚悟‥」
何故疑問系。鳳からナイフを借りた咲江が狙うは男の急所である。
「強化人間は急所も強化されているのかな‥‥」
咲江の視線が、変態が装着したブルマの隆起した部分に注がれる‥‥。それより脱げてますよ、咲江さん。
「みんな! あたしの攻撃に合わせて!」
変態の周りに集まった能力者達に、メイド・ゴールドが呼びかける。
「私も一発殴りたいね」
キメラ討伐を終えた一千風も加わって武器を構えた。
「判決‥‥男としての尊厳を奪って死刑」
メティスが狙うは男の急所――!
強弾撃が撃ち込まれ「あんぎゃあああー!」と情けない悲鳴をあげる変態、股間を押さえてのた打ち回った。
「今だ! 必殺――緋龍!!」
メイド・ゴールドの蛍火からソニックブームが放たれる。それを皮切りに、次々と飛び込む女性達!
変態を取り囲んだ女性能力者達の怒りの一撃を受け、とうとう変態は討伐されたのだった――。
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「終わったみたい‥」
鳳と協力して、最後のキメラを倒した幸乃が呟いた。
「どーもおーきに♪ ‥って、ほんまうまそなアヒルやなぁ」
6羽のアヒルキメラをしっかりと縄で縛り笑顔の鳳の姿を、幸乃は首を傾げてじっと見た。
「あなたも、エステはじめて?」
「エステ? せやな、興味あるんやけど俺男やし‥‥」
ついポロっと言っちゃう鳳。
それでやっと違和感に気づいた幸乃はボッと火がついたように赤くなる。
「ごめんなさい、私てっきり‥」
「あ、あかん謝るのは俺や!」
お互い混乱しつつ、謝罪しまくる二人。
その後他の客が戻ってくる前に、さっさとお掃除をしちゃう鳳。
しっかりサロンの掃除をする良い子にはご褒美を、鳳は疲労回復の『ラベンダー』と店長オススメのアロマオイル『ネロリ』もGETしてご機嫌で帰っていくのだった。
スタッフと能力者の手によりそれなりに使えるようになったサロン。
「エステ途中だったからまたお願いしなきゃ‥‥」
「そうよね、変態の相手で疲れちゃったし」
と、全身マッサージに流れ込む咲江とイリス。
お肌ぴちぴちで若々しい二人にエステは必要なのか!?
「え、かえっちゃうの? 勿体無いわよ、キレイにしてもらいましょ」
初エステを断念して帰りかけていた幸乃を引き止めるメティス。
メティスは余裕の表情で台の上にうつ伏せになり、背中へのマッサージを受ける――押されるたびに柔らかく形をかえる双球が凄い。
一方幸乃はフットマッサージ‥‥太腿の内側とか際どいところを這う女性の手につい緊張してしまったとか。
そして変態を倒した謎の女、メイド・ゴールドは‥‥キョーコという普通の女の子に戻っていた。
「あたしも綺麗にしてもらおうかな」
やはり美への興味は尽きない。更衣室前をウロウロしていると、ばったりと一千風に出会う。
「‥‥? ‥あなたは」
メイド・ゴールド‥‥と言いかけて、一千風はハッと口を噤んだ。いくら夢中だったとはいえあんな格好みられて恥ずかしい!?
「気のせいよ‥‥」
キョーコも微妙に照れつつはぐらかし‥あれだけノリノリだったのに。
仮面をつけてただけなのに正体がバレないのは、最早お約束である。
一方、捕縛された指圧魔人は‥‥
個室に閉じ込められていた。
――亀甲縛りで。
「んーんんーっ」
しかり猿轡までわれちゃって、何て言ってるのか分かりません。
そこへ、「いい子にしてた?」とやってきたのは若葉であった。
覚醒して頬を染め、モップの先で縄の食い込んだ変態のブルマーをつんつんしちゃう。
「んーんー」
「ん? 違うだろ? 『痛っ‥でも気持ちイイ‥』だろ〜? ん〜?」
指圧魔人を監視しつつ、感謝の意も込めてひたすらツンツンしてあげたのでした。