タイトル:【PAL】安息の地へとマスター:水乃

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/09 22:07

●オープニング本文


 その日、白石ルミコ(gz0171)は突如切り出された話に目を丸くした。
「今度はパラオをリゾート開発、ですか?」
 ルミコの問いに、建築事務所・所長は「ああそうだよ」とにっこり答える。
 しかも今回はエルニドのようにコテージだけを手がけるのではなく、宿泊施設はもちろんの事だが、アクティビティ等も含め『パラオ・リゾート』を全面的にプロデュースするらしい。
「設計はいいんですけど‥‥それ以外のことは私の手がける範囲じゃないと思います」
 と、率直に疑問を述べるルミコ。仕事は嬉しいのだが、所長の話を聞く限り『建築士』の携わる範囲では無いと思う。
「そうなんだがね、今回のリゾート開発には一つの目的があるらしいんだ。ズバリ『傭兵達が武器を持たずに、気軽に遊びに行けるリゾート』を狙いたい。つまり能力者向のリゾート開発なんだ。もちろん、一般の人が遊びに来ることもあるだろうけどね。開発には傭兵や能力者、皆の意見を積極的に取り入れたいと思っているんだよ」
 やけに意気込みつつ語る所長。その話を聞けば聞くほど、ルミコの眉間に皺が寄る。
「で、目をつけたのがパラオだ。あそこは太平洋上、小さな島々で構成された国。しかも小さな島の殆どは無人島らしい。悲しい過去もあるが、今は滅多にキメラも出没しないような安全な土地らしいじゃないか。周りの海も美しい! ということで、どうだい?」
「‥‥で、何故その話が私に?」
「ん? 君は能力者の知り合いが多いのではなかったのかね。つまり、橋渡し役をして欲しいわけなんだよ」
 ‥‥そういう事か。
 どうやらこの所長は、ルミコが至る所でキメラと遭遇しまくっている為、そっちの知り合いがいると思っているらしい。


「うーん、まさかこんな事を依頼する日が来るなんてねー‥‥」
 仕事から戻り、ルミコは渡された資料にざっと目を通す。
 太平洋上、小さな島々からなるミクロネシア地域。その中の小さな国、パラオ。
 手にした写真には、南国を感じさせる数々の魅力的な風景が広がっていた。
「うわ、すっごい。何このミルキーブルーの海‥‥」
 写真を見てまず惹かれたものは、乳白色がかった美しい海。沈殿した白い泥の影響で、このような色に見えるらしい。
 他にも写真や資料を調べていると、海に沈んだ戦闘機らしき物も――それはかつての戦争の爪痕。海の中だけではなく、島のあちこちに朽ち果てた戦車や通信塔などがあるらしい。
 今こそバグアに支配されてはいないが、かつて様々な国に統治され続けていた国だ。歴史背景を調べていくと、日本人であるルミコにとって興味深い話が山ほど出てくる。
「‥‥こんなことがあった国なのね。武器をもたず気軽に遊びに行ける場所に‥‥ってのは賛成だけど。出来るのかしら?」
 楽しみでもあるが、その反面、自分にプロデュース能力があるのかどうか、疑問も残る。能力者の皆にだって、数度お世話になったくらいだ。
 しかし悩んでいても仕方が無い‥‥引き受けてしまったのだから。
(「まず、何処を拠点にリゾート開発をするか、決めたら良いかな? それともキメラが生息していないか、徹底的に調査すべき?」)
 エルニドと違い、パラオは自然保護地区として開発が制限されているわけでもない。意見をききながら、幅広くリゾート開発出来そうだ。調査の結果、キメラが居ないと分かれば‥‥その後の作業も順調に進むに違いない。
 そしてルミコはその日一晩悩んだ挙句、恐る恐るULTへと依頼を出すのだった。


●パラオについての資料
面積は458平方km。総面積でも日本の屋久島一つに満たない。
200を超える島々で構成された国。
人口約2万人で、人の住んでいる島は10程度。他は無人島。
主な島は
バベルダオブ島‥‥パラオ諸島で一番大きな島。だが大半はジャングルらしい。
コロール島‥‥一番開発が進み、人口が集中している島。
カヤンゲル島‥‥パラオ最北の島。他の島までボートで2時間以上。
カープ島‥‥小さな島だが、周囲にダイビングポイント多し。
ペリリュー島‥‥過去の戦争の激戦地。朽ち果てた戦闘機が見られる。
アンガウル島 ‥‥自然公園がある。南端の島。

●参加者一覧

鯨井起太(ga0984
23歳・♂・JG
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
諫早 清見(ga4915
20歳・♂・BM
メティス・ステンノー(ga8243
25歳・♀・EP
佐倉・咲江(gb1946
15歳・♀・DG
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
レイチェル・レッドレイ(gb2739
13歳・♀・DG
冴城 アスカ(gb4188
28歳・♀・PN
夢姫(gb5094
19歳・♀・PN

●リプレイ本文

●集合
 バベルダオブ島に到着した移動艇。
 一歩踏み出すと、壮大な自然が能力者達を迎えてくれた。
「ふぅ、さすがパラオね」
 メティス・ステンノー(ga8243)は呟く。
 飛行場では「ようこそ、パラオへ!」と白石ルミコ(gz0171)が能力者達を迎えた。
 ルミコを見て、佐倉・咲江(gb1946)は謝罪と共に挨拶。
「前回名前間違えてごめんなさい。もう間違えない‥。えっと‥‥ミルコさん‥」
 速攻「ルミコよ!」とつっこみが入ったのは言うまでも無い。
「るみちょんはお久しぶりだね」
「タイでお会いして以来ですね☆」
 と言うのは鯨井起太(ga0984)と夢姫(gb5094)だ。
「ん、オッキーも夢姫ちゃんもドリアンぶりね」
「開発の責任者だなんて‥。やっぱりルミコさんは、すごい建築士さんなんですね! 素敵☆」
 キラキラした瞳の夢姫が尊敬の眼差を送る。それはプレッシャーとなりルミコを襲う!
「そうよ〜建てるのはまだ先だけどね☆」
 照れ笑いしつつ、なんとかはぐらかすルミコであった。

「白石さん初めまして、今回はよろしくね♪」
 明るい話題は大歓迎だと、諫早 清見(ga4915)は笑顔で挨拶。
 ルミコは初めて会う皆の名前を聞き覚えていく。
「またお会い出来て嬉しいです。慣れない事なのでお役に立てるかわかりませんがよろしくお願い致します」
 ワンピースの女性、白雪(gb2228)がお辞儀をする。
「え〜!? 洋服とか珍しい! でも似合ってる!」
 目を丸くして驚くルミコだった。

 そして能力者達は各島の調査を開始する。
 ・コロール島:清見、白雪
 ・カープ島:起太、メティス
 ・ペリリュー島:三島玲奈(ga3848)、夢姫
 ・アンガウル島:咲江、レイチェル・レッドレイ(gb2739)、冴城 アスカ(gb4188
 ――以上のメンバーだ。

「今回はよろしくね。咲江さん、レイチェルさん」
「よろしくね♪」
 アスカはレイチェルらに挨拶をし、早速3人で島へ。
 そして玲奈は制服の裾からブルマの脚を覗かせつつ、
「観光収入を見込むならオプションツアーの開発だね。構想は盛り沢山だ!」
 と、気合を入れていた。



●調査
 まず地図を見ながらコロール島へ歩いていく清見と白雪。
「この辺りは、人が多いね」
「人口が集中しているらしいです」
 清見の言葉に白雪が答え、扇子で扇ぐ。
 メインストリートには家や店があり、活気があった。二人はまず街中へ入り、現地の人々から周辺の情報を聞き出していく。
「交渉してできるだけあちこち見たいな。キメラはこっちの都合は考えてくれないし」
「そうですね‥‥頑張りましょう」
 島を縦断しつつ交渉。やがて誠意が伝わったのか、私有地へ入る許可も得た。二人は余り拓けていない島の南部へも足を運んでいく。
 白雪は双眼鏡を取り出し、森の中を観察。動く物体もいたが動物のようだ。
「崖もある、気をつけて」
 集中する白雪に、清見が声をかける。島の南では、森を抜けたら崖だったという事も珍しくない。

 数時間の調査後、陸地にキメラはいないと判断し、続いてカヤックを借り島の外周を調査していく。
「お飲み物でも如何ですか?」
 と、白雪は清見へと水筒の冷茶を差し出した。
「日差しも心地いいですし、何より景色がいいですね‥‥ちょっと暑いですけど」
 次第に海の碧が濃くなり、白雪は目を細め呟く。そして氷刀『Februa』を抱き、「涼しい‥‥。冷たくって気持ちいい〜」と涼をとる。
「ここはほんとに、このままでも素敵な場所だね」
 清見も同意した。街から少し南下しただけでこの自然――岩肌と緑で囲まれた海が、美しい青を湛えているのだ。
「ダイバーがあんまり潜らないようなとこはかえって見ておきたいし、潜ってくるよ」
「はい。海中の調査、よろしくお願いします」
 飛び込む清見を見送り、白雪は舟の上で安全を見守った。



 そしてカープ島では。
「やっぱりパラオといったら海、そしてダイビングなのは間違いないね」
 と起太の言うとおり、この島周囲のダイビングポイントの多さはパラオ随一だ。
 陸の調査を終え、水中用装備へと換え潜る準備も万全に。
「本当、周辺のダイビングスポットだけでもかなりの物だわ」
 同じくカープ島調査のメティスも、地図を広げポイントをチェック。

 ブルーホール、ブルーコーナー、ドロップオフ‥‥どこもダイバーにとっては魅力的な場所であり、キメラの有無を徹底的に調査したいところ。
 もちろん、海の生物の為でもある。海棲キメラが存在した場合、人間なら潜らなければ良いだけの話だが、そこに棲む海の生き物たちはそうはいかない。
(「今まで見られた魚たちがいなくなってしまいました、じゃあリゾートどころじゃないしね」)
 怒濤の群れを成すバラクーダの魚影に、起太は目を奪われた。
 そのまま珊瑚礁を進み、逃げる小さな魚達とそれを捕食する巨大な魚影を発見‥‥弱肉強食の世界だ。
 けれど、キメラでは無い。確認しながら進むと、やがてブルーコーナーという有名なドロップオフに差し掛かる。泳ぐ起太に擦り寄ってくる魚もおり、ダイバーに人気があるというのも納得できる場所であった。

 一方メティスは一泳ぎし、魚の種類や地形、潮の流れ等のデータをとっていく。このデータを図鑑などと照らし合わせてみれば、キメラか魚かの判別もつくだろう。
 そして再び潜って北東へ進み、ジャーマンポイントへと辿り着く。マンタが泳ぐ人気の場所だ。
(「透明度は文句無し、生息してる魚の種類も豊富ね」)
 濃淡が美しい海を優雅に泳ぐメティスだった。



「今までロシアで寒かったけど‥‥。やっぱり南国のほうが好き♪」
 ペリリュー島のオレンジビーチを歩き、夢姫は大きく伸びをする。
「綺麗な海‥‥気分あがるなぁ♪」
 カメラに風景を収め、夢姫は楽しみながらキメラの調査を開始した。
 グラスボートで海底を覗くと、そこで生活する魚達がはっきりと見える。――そして、沈んだ戦闘機も。
「あんなところに、キメラが居たりして?」
 怪しい場所へはシュノーケルを装備し、潜って調べに行く。沖縄出身の夢姫にはお手の物だ。
 ――海底で夢姫が見たものは、朽ちた戦闘機。そしてそこに住む魚。
 海底の風景に感動しつつ、調査結果を地図に書き込んでいく夢姫。彼女の純粋な瞳には、いろいろな物が映ったようだった。

 その頃、玲奈は。
 服の隙間から体操服の襟や水着の肩紐を覗かせつつ、セルフ撮影会。
 カメラに向けて可愛らしく敬礼し制服姿で微笑んだり、ブルマ姿で釣竿を握りポーズを取り、ビキニ姿で海にダイブする玲奈が居たが。
 はて、何か違うような‥‥。
『調査の依頼では?』
 ‥‥残念ながら皆が別々行動で、そうつっこむ人間はその場に居なかった。



 島の殆どが緑に包まれたアンガウル島は、地図にカメラ、メモ帳を手にしたアスカが陸部を調査。
「うーん‥‥あてもなく探すのも一苦労ね」
 調査前、咲江やレイチェルと一緒に島民達に聞き込みをしたが、キメラに結びつくような情報は無い。
 しかしワニのような動物は普通に生息していて、遭遇する度にキメラではないかと警戒してしまうのだ。
「さすが自然公園ね」
 トレッキングコースを重点的に調べ、美しい風景をカメラに収めながら、アスカはよくここまで自然が残っていた物だと感心する。
 そして更に奥地へ入る――そこでは、未知の光景がアスカを待っていた。
 ‥‥陽の光を受け輝く緑の葉、風に揺れる木々には黄や青の鳥達が群がり、まるで花が咲いているよう。
「すごい‥‥こんな綺麗な場所が地球にまだ残っていたのね」
 自然と、生命の織り成す神秘的な光景。
 アスカは思わず心を震わせ、声を押し出すように呟いていた。

 一方聞き込みの後、レイチェルは咲江と共に島内を巡る。
「何か2人で歩いてるとデートみたい‥‥」
 咲江の言う通り二人は仲良く手を繋ぎ、呼笛を手にキメラの誘き寄せを試みつつ公園から浜辺を目指した。
「あ、綺麗な景色♪」
 観光スポットとして使えそうな場所はバシバシと写真をとるレイチェル。陸地では何度か小動物と会ったが、キメラの気配はないようだ。
「キメラ、大丈夫そうかな‥? 今のところいないような‥」
「目撃情報も無かったからね。‥にしても暑いねぇ。服が汗でベタベタになってもヤだし、脱ごっか」
 パタパタと服の裾を引っ張り風を送るレイチェルの、白磁の肌に汗が滲んでいた。
「ん、確かに暑いね。私も脱ぐ‥‥」
 咲江がワンピースのファスナーを下ろすと、その下に隠れていたのは紐水着。
「あ、レイチーの方が大胆‥‥」
「そう?」
 水色チューブトップビキニ姿のレイチェルは、圧された胸が柔らかく形を変えていて際どい。しかし、咲江の紐水着もかなり際どい。
 そして海の調査へと向かう二人が辿り着いた先は、東部のブルービーチ。近くに林があり、キャンプに良さそうな浜辺だ。
 レイチェルは海水に素足を浸し、温度と深さを調べる。
「ついでに泳いじゃおっか♪」
 そして遊び心を出したレイチェルが、咲江の背中に抱きついた。豊かな胸を押し付けつつ、抱きしめた腕は咲江のお臍の辺りをさわさわと。
「‥‥ん、レイチー‥‥それ泳ぎじゃない」
 微妙に触れてくるレイチェルの手の感触で息のあがる咲江。
 こうして二人は海辺で戯れつつ、島の調査を終えるのでした。



●報告
 カヤックを借りていた清見と白雪が、浜辺へと帰着。
「砂浜も綺麗ですね。どこまでも薄いブルーが続いてて幻想的です」
 白雪が水辺に素足を浸し、笑みを浮かべ。そして最後に浜辺を調べ、ここの調査も終了だ。
「怪我されてないですか?」
「お陰様で、傷一つないよ」
 ――後は報告するのみ。

 コロールホテルの一室を貸切にして、調査結果の報告会は始まった。
 テーブルにはヤシガニ、マグロやブダイの刺身、南国フルーツなどが所狭しと並び、腹を空かせた者は目を輝かせる。
「みんな、お疲れ様でした! 無事で良かったわ」
 まず全員が無事な姿に安堵し、ルミコは食べながらでいいからね、と、報告をお願いする。
 最初に、コロール島。
「何度でも来たくなる様なよいところでした。キメラもほとんど居ないみたいです」
「自然がそのまま生きる開発にしてもらえたら嬉しいね」
 と、白雪と清見が調査結果を提示。
 ‥‥続いてカープ島。メティスと起太から『キメラは棲息していない』との報告だ。
 メティスはデータを纏めたファイルをルミコに渡し、
「パラオの魅力を生かすなら、自然へのダメージは最小限に抑えるのが大事だと思うのよ。あそこは周りの島を見る限り、桟橋を作るのが精々って感じね」
 そう言い添えた。
「確かに、どこもかしこも開発っていうんじゃ、パラオの魅力を失ってしまうことになると思う」
 と、起太。二人は自然に触れ、その大切さを知ったのだろう。
「僕はリゾート開発の候補地にコロール島を挙げておくよ。他は極力手を入れず、本来もっている良さをそのまま楽しんでもらえれば良いかな」
「‥‥なる程、参考にするわ〜」
 メモをとるルミコ。提案された水中アスレチックのような遊戯施設も、書き留めておく。
 続いてアンガウル島。
「動物は沢山居たけれど、キメラは居なかったわね」
「自然も豊かだし海も綺麗‥。キメラもいないならいい観光地になるね‥」
 キメラはいないと、アスカ達の報告だ。
「ここはキャンプ場にするのはどうかな? のんびり出来る自然っていいよね♪」
「今回調査した4島をメインに行くのがいいんじゃないかと‥‥」
 レイチェルはアンガウルにキャンプ場を提案し、咲江はコロールメインの開発を推す。
 そしてペリリュー島。
「海が綺麗でした♪ 戦車や戦闘機の残骸はあったけれど‥キメラは大丈夫!」
 夢姫が笑顔で報告する。それからホテルは南国デザインに、ペリリュー島には歴史資料館も提案してみる。「知的好奇心を満たしたい人もいるだろうし」とは夢姫の言葉。
 そして最後に、玲奈が分厚い束を机にでん! と置いた。
 書類は、写真とパンフの草稿を纏めたもの――それを日に焼けたブルマ姿で発表する玲奈。
「観光の基本は名勝とサービスのタイアップ!」
 立ち上がり、熱弁。
「例えばTVモニタで模擬依頼を選択して貰う形式はどうよ。仕掛けた品物を回収するダイビングツアー『沈船調査』、ガイド役を募り時間制で順番に歴史遺跡など解説してもらう『観光船のガイド』‥オタクな傭兵は喜びそう」
 玲奈の発表したものは、『傭兵向け』を意識した数々のアイディアである。
 写真の出来映えも中々良い。だが、島の調査の方は‥?
「時間を忘れさせるパラオを最高の癒しにしたいと思って」
 ‥と玲奈は言う。その心意気は良し、だが。
「調査依頼なんだから、それを忘れちゃだめじゃない」
 苦笑するルミコ。
 しかし、提案された案は今後役に立ちそうだ。たこ焼の型に青いゼリーを流し、中央に抹茶クリームを乗せてカスタードクレープで包んだ『銘菓ブルーボール』はちょっとウケた。

「みんな、調査有難う。お疲れ様!」
「今回はお誘いありがとう、ルミコさん。この次もよろしくね」
 お礼を言うルミコに対し、アスカが微笑む。
 ――そして後は、談笑しつつ料理に舌鼓を打つのだった。



●夕暮
 報告会は終わり、迎えの移動艇を待つ中。
「そうねぇ‥ルージュはそのままで良いとして‥‥目元を目と同じ色の青系のシャドウで‥」
 何故かメイク談義に花を咲かせるメティスとルミコ。そんな年頃だ。
「衣服のデザインもやってるんですって? もしファッションショーとかやるならモデルをやってあげるわよ」
 と言うメティスはダイナマイトボティ。そんな彼女の服を考えるのも面白そうだが。
「いいわね♪ でもショーは夢の又夢‥‥そうだ、キャンペーンガールとかどう!?」
 モデルの話で何か思いついたらしい。

 その頃オレンジ色に染まる海辺では。
「ずっと安らぐ場所であって欲しいな」
 海に浮かぶ夕日が美しく‥‥清見はそれをゆったり眺めていた。
 いつのまにか、浜ではパラオダンスの練習も始まっている。
「私も踊りたいな♪」
 踊る人々を見つけ、夢姫は同じリズムで体を揺らしていた。

 そしてメティスがレイチェルらとバーへ向かった頃。
「マモル君とニキちゃんはお元気ですか?」
「うん、元気よ。相変わらず能力者になりたがってる」
 問う白雪に、苦笑してルミコが答えた。
 しばらく夕暮れの浜辺を歩き、ふと何かを思いついた白雪は巾着袋から携帯電話を取り出して。
「折角なので、もし宜しければ写真でも一緒に取って頂けませんか?」
「夕暮れがバックなんて素敵ね!」
 早速スタッフを呼ぶルミコ。とりあえずピースをしてみる日本人だった。

 ――パラオの夕暮れは美しい。


 一日を終え、企画書はなかなか纏まりそうになくて、ルミコは笑う。
 けれど皆に手伝ってもらって、パラオの良い所を知って、笑顔も貰ったから。
 頑張ろうと思う、ルミコだった。