タイトル:【PAL】魅力を伝えてマスター:水乃

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/10 01:13

●オープニング本文


 パラオに能力者達と造るリゾートを。
 その開発計画の段階で、何故か白羽の矢が当たった建築士・白石ルミコ(gz0171)は最初の企画書・計画書などを会社へと手渡した。それは能力者達にコロール島、カープ島、ペリリュー島、アンガウル島を調査してもらい、彼等の調査報告と意見を元にしたものだ。
 結果、巨大なリゾートホテルはコロールの北に既存のものがあるので、島の南に新たにコテージ数棟とゲストハウスのような中規模宿泊施設を作ることとなった。その他意見を参考に、他の島にも自然を壊さないように配慮した小規模施設やキャンプ場等が計画されていく。


 そしてルミコは再び、能力者達の協力を得たリゾート造りを考えていく。
「まだ早いかもしれないけど、パラオの宣伝になるようなポスターを作りたいわね」
 建物は着工したばかりだが、パラオに興味を持ってもらうために今からアピールしておくのも手だろう‥‥と、続いて出した案は『宣伝ポスター作り』である。
 能力者達でも武器を持たず、気軽に遊びに行ける場所にするのが今回の目標。バグアの手に汚されぬ綺麗な場所があるのだと、この星を大切にしたいという気持ちを再び持ってもらう為にも、ここは一つ能力者自身に被写体となってもらい素敵な宣伝ポスターを作ろうじゃないか。
「ということで、モデルさん募集〜もちろん男も女も関係ナシね♪」

●参加者一覧

鯨井昼寝(ga0488
23歳・♀・PN
メティス・ステンノー(ga8243
25歳・♀・EP
佐倉・咲江(gb1946
15歳・♀・DG
レイチェル・レッドレイ(gb2739
13歳・♀・DG
ファーリア・黒金(gb4059
16歳・♀・DG
今給黎 伽織(gb5215
32歳・♂・JG

●リプレイ本文


 パラオは本日も快晴である。
「再びやってきましたパラオ! うーん、いつ来ても気持ちの良いトコだよねー♪」
 麦藁帽子を片手で押さえてレイチェル・レッドレイ(gb2739)は胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
 コクリと頷く佐倉・咲江(gb1946)。
「レイチー一緒に撮ろうね‥‥?」
「うん。イイ写真撮れるよーに頑張ろうね、サキ♪」
 ――彼女らがやってきた訳は、パラオの魅力溢れる写真を撮る為だ。調査の為前日入りした白石ルミコ(gz0171)の姿を見つけると、咲江はペコリとご挨拶。
「今度こそ名前間違えない。‥ルミルミよろしく」
 ‥何度も『ミルコ』と間違えた末、ついに愛称へ。
 ルミコは笑いつつ挨拶をかえした。再会できて嬉しいし、初めての人にも興味を持ってもらえた事に感激している。
 圧倒的に女性能力者が多い中、ジーンズ姿で上背のある今給黎 伽織(gb5215)がルミコに爽やかな笑顔を向けた。
「白石さん初めまして。女性陣の中で唯一の男になるけど‥‥どうぞよろしく」
 流石元俳優というべきか、女性の心を捉える笑顔が上手い。
「水着姿は女性のほうが美しいけれど‥。男も1人はいたほうがいいかな、と思ってね」
 その言葉に、ルミコも「頼もしいわ!」と歓迎だ。
 そして新人アイドルもこのパラオへやってきている!
「アイドルの端くれとしてがんばりますね! ‥まだ、ちゃんとデビューしてませんけど」
 語尾は小声で呟いた少女はファーリア・黒金(gb4059)。『新人ブルマアイドル』だけあって、その姿はブルマ体操服‥‥尤も撮影は水着で行うらしいが。
 ――ここは腕の見せ所、頑張って欲しい。



 挨拶を終えた能力者達は撮影希望の島へ、専属のカメラマンと共に移動開始する。

 まずコロール島で、メティス・ステンノー(ga8243)は、早速撮影を始めた。
 チューブトップで豊かな胸を覆い、ジーンズを穿き、キャップを被った彼女の手には小さな荷物。その姿でコロール島の港へ降り立つ。武器は外し、平和で安全なパラオをアピールする。
 カメラを向けられて、柔らかく笑むメティス――その時シャッターが切られた。
「もう少し自然体の方がいいかしら?」
 笑顔やポーズが不自然でないか、カメラマンと打ち合わせするメティスの表情は、真剣そのもの。
 青い海と白い船を背景に従え、ポスターモデル・メティスの作品がカメラに収められていく。

 一方鯨井昼寝(ga0488)は舟に乗り、様々な機材と共にカープ島へ到着した。
「うん。風も穏やかだし、絶好の撮影日和ね!」
 黒地に真っ赤なハイビスカス柄のビキニ水着を着用し、ヤシ木の下で太陽を見上げた後早速準備に入る昼寝。沢山の機材は、実際に海に潜って水中写真を撮るためのダイビング機材だ。
 ポスター一枚とバカにしたもんじゃない。パラオの海の青さをダイレクトに感じることができるような、そんな一枚を目指す為、一切の手を抜かぬつもりだ。
「じゃあ、まず撮影場所を探してくるわ」
 とカメラマンに言い残し、ゴーグルとシュノーケルを着け海の中へ。
 カープ島付近のブルーコーナーは、平均水深20mの中級者向ダイビングポイントだ。
 外洋に向ってドロップオフがV字型に張り出した場所は、潮流が存分に当たる為魚が溜まる場所になる。その中でもブルーコーナーは、数、種類、共に豊富だ。
 コーラルリーフの壁沿いに底の見えぬ海へと潜っていく昼寝は、メアジの大群を横切り螺旋を描くバラクーダの群れへ。
 ‥この魚達に囲まれながら、ゆっくりと海面を目指す‥‥次第に、撮影の方向性も決まっていった。奇を衒った演出等は、ここでは全く必要ない。


 そしてコロール島で水着を現地調達する、体操着のファーリア。
「選ぶのはやはり、ビキニでしょうね‥‥南国にスク水は変ですし」
 確かにスク水だと学園のイメージが拭えない。かといって、自分のセンスに自信がない。
 店を回りながら、店員にオススメの水着を選んで貰う。
「これから撮影なんですよ。 ‥‥はい、頑張ります!」
 店員さんと談笑し水着を受け取ると、ほくほくとした表情でファーリアは頭を下げた。白い砂の輝く綺麗なビーチの情報も手に入れ、いよいよ撮影に。

 伽織も同じ島で、撮影へと取り掛かる。
 彼は素肌にシャツを羽織り、アクアブルーとネイビーの水着にビーチサンダル。
「こんなものかな」
 現地調達した衣装を身に着け、鏡の前でチェック。その姿に納得すると、サングラスをかけビーチの方へ歩いていく。
 ‥‥パラオといえば、マリンスポーツを楽しむ者には楽園である。しかし伽織はあえて『癒せるリゾート』を推す写真を撮ることに。
 セッティングされたビーチチェアにパラソルも広げて、傍にはトロピカルドリンク。
 伽織は寝そべってドリンクを手に、
「ありきたりだけど、こんな感じかな」
 女性カメラマンへ微笑んで見せた。
 甘く深みある声にぽうっとなりつつ、コクコク頷くカメラマン、がんばれ。



 前回調査したアンガウル島で、レイチェルと咲江は水着になる。
「透けない白水着は邪道。‥‥でもこれは透けません」
 という咲江の水着は白のビキニでパレオ付き。透けそうな部分はガッチリガード。
 一方、三角ブラにTバックという赤系ビキニをつけるレイチェル。
 『親に見守られつつボートで遊ぶ娘達』というテーマで写真を撮るらしいが、Hカップにその水着は刺激的過ぎはしないか。カメラマンもにやけ顔。
「背景は、海の色が分かるような角度でね。あと、他の島が入るようにアングルを調整して欲しいな、南国の群島地域だってコトが分かるようにね」
 レイチェルは軽く打ち合わせ、最後に
「後は‥‥ボクらの一番可愛いトコを撮ってね♪」
 上目遣いにキュートな顔をしてみせると、カメラマンは鼻下伸ばして頷いた。
 早速ボートを浮かべ、撮影開始。
 調達したボートは『バナナボート』。南国では定番の、跨って乗るタイプの少し変わったボートだ。イルカの背に乗ったような格好をイメージするといいかもしれない。
「えっと‥‥笑顔で手を振る‥。‥何か恥ずかしいです」
「仕事だからね、頑張ろう♪」
 前に咲江が、後ろにはレイチェルが。二人乗りでボートごと海に出て、浜を向き『お父さん〜♪』と呼びかける子供のような無邪気な笑顔で手を振る。
 家族と来ても安心、という雰囲気を意識。しかし普段無表情になりがちな咲江は、相当恥ずかしい模様。
「お、お父さ〜ん♪ ‥。‥‥。‥‥‥がぅ」
 やっちゃった後に、頬が真っ赤だ。
「‥サキ、実際に声を出す必要は無いと思うよ? でもそれはそれで萌えるから良し!」
 つい声までだして子供に紛する咲江にキュンとなるレイチェル。思わず後ろから腰に手を回して、きゅーっと抱きすくめ。
「カメラさ〜ん、もう一枚!」
 その格好のまま、レイチェルの声と共にもう一回シャッターが切られた。その写真には当然、真っ赤なままの咲江が激写されていた‥。



 パラオ周辺の海はべた凪となる日さえある。だが幸い、今は波に恵まれていた。
 メティスは黒のビキニに着替え、日焼け対策にTシャツを纏う。彼女のスタイルの良さがはっきり分かる水着姿だ。
 そしてサーフボート携え、サーフィン撮影。メティスは積極的に高い波へ挑む‥‥
「ね、今のどう?」
 ‥‥カメラマンからOKサイン。
 早速写真を見てみると、確かにメティス自身は美しく写されていた。だが人物ばかり強調されすぎて上手く背景が入っていない。
「ん〜‥‥ここちょっと気に入らないわね‥‥もう数枚良いかしら?」
 少し遊び心を出しながらも、写真は納得のいくまで何枚も。海と空の青さをテーマに、再び波乗りに挑むメティス。
 今度は美しいコントラストを描く海と空の中心で、メティスが見事に波を捉える姿が写されていた。
「ん、オッケーオッケー、これなら意図も伝わり易いでしょうね」
 会心の出来に、笑顔が浮かぶ。
 そしてシーンはカープ島へ。
 ダイビング用のウェットスーツを着込み機材のセッティングを行う姿をカメラに収め、続いて海の中へ‥。
「あら、あなたもダイビング?」
「それも考えましたけど、私は波打ち際で撮影します」
 カープ島ではファーリアとばったり会う。メティスは頑張ってと声をかけ、また撮影に戻るのだった。

 コテージを借りて水着に着替えるファーリアは、ふとその手を止める。
(「何かこの水着‥‥布面積少ないような‥?」)
 ブルマの色にも似た紺色のビキニは、豊かな胸の頂をしっかり隠してはいるがあとは総じて紐だった。
(「いやいや、お店の人のオススメなので変な意味は無いでしょう」)
 しかし納得。天然系ゆえ、きわどい姿なのに気づいてないようだ。流石に激しい動きは不味いだろうと思いつつ、気を取り直してビーチへと。
「お待たせしました! お願いします♪」
 お辞儀をすると、ファーリアの二つの果実がたゆんと揺れた。動揺したカメラマンに気づかず、そのまま海に飛び込む。
 まずは膝下まで海に浸かって、まぶしそうに太陽を見上げる姿‥‥僅かに目を細め、明るい笑顔を作るファーリア。水着は際どいながらも、正統派のアイドル路線で攻める。
 次はカヤックに乗っての撮影だ。波が出てきて、慣れぬカヤックの操縦に四苦八苦しながら、撮影ポイントを探す。
「なかなか難しい‥‥この辺りでお願いします」
 撮影ポーズは、カヤックの上から海へ乗り出すように、笑顔で手を振っている姿。
 その写真を撮っている最中、やや大きな波がファーリアのカヤックを揺らした。重心が偏っていたカヤックは、簡単にひっくり返り‥‥。
「‥‥!? きゃぁぁぁ!」

 そんなハプニングに見舞われている頃、昼寝は機材を一切外しての素潜り撮影に突入。
 水深20m辺りまでいけるというが‥‥。
「じゃあ、行くわね」
 カメラマンに声をかけ、水面からジャックナイフで垂直に潜っていく昼寝。先に調べた絶好の撮影場所まで、一直線に潜っていく。
 小さな魚が群れを成し、まるで一つの巨大な魚のようになる魚影。この時期は、イレズミフエダイが産卵のために大群を作るという。魚群と共に泳ぐ昼寝の姿を、撮影していくカメラマン。
 深い青から明るい水色へ‥‥差し込む陽の光を浴びながら海面を目指す昼寝の周りを、螺旋を描きバラクーダの群れが舞う。
 青き楽園の姿が、そこにはあった。



「写真撮影終了です‥‥。後は‥‥時間まで遊ぶ?」
 咲江が首を傾げて訊ねる。
 お父さん方が満足しそうな写真を撮り終えた咲江は、レイチェルと共に海で遊び、休憩時間を楽しんだ。
「綺麗な魚がいるね」
 浅瀬をシュノーケリングで楽しむ‥‥そこには珊瑚礁が広がり、カラフルな魚達が群がっていた。カニハゼやカスリハゼの仲間も沢山いる。
 目で楽しんだ後は沖に出て泳ぎ、波に体を預けてプカプカと浮かんでいた。
 あれ、何か白い物も波間にプカプカと浮いている‥‥。
(「って、サキったらいつの間にか水着取れてるし」)
 それは咲江の白ビキニだったが、当の本人は気づいていない。綺麗な肌色、控えめな胸が波の隙間に見え隠れしているというのに。
(「自分のコトなのに気付かないなんてドジっ娘だなぁ、もう」)
 直してあげないとね♪ と、浮かんでまどろむ咲江の元にそっと忍び寄るレイチェル。
「ん? レイチーどうしました‥‥? ‥きゃっ」
 胸にそっとビキニをあてがわれ、ようやく気づいたようだ。か弱い悲鳴を上げて、咲江は慌てたように首まで海に沈む。
「‥‥そんなトコが可愛いんだけど♪」
 その反応にやっぱりキュンとして、もう一度抱きついちゃうレイチェルだった。

 伽織は夕暮れを待つ間、穏やかに揺らぐ海を眺めていた――綺麗な海の色を眺めてるだけで疲れも癒される。
 そして偶然、休憩を取っていたルミコにばったり出合う。
「建設中の所見てみたいけど、良いかな?」
 伽織が訊ねると、「いいわよ♪」とルミコは快諾した。
 そして案内された建設場所には、木材が積みあがっている。
「ログハウスみたいだね」
 この建物は、小さなコテージ風らしい。工事現場見学って楽しいよね、と、設計図と見比べながら建物の完成を楽しみにする伽織だった。
 そして作業に戻るルミコと別れ、潮風を感じつつまどろんでいると‥‥陽が傾き、夕暮れを迎える。
「昼間の海の色の美しさと、夕方の海に沈む夕陽‥‥どちらも捨てがたいね」
 オレンジ色に染まる白砂の浜をリラックスして歩く伽織。大人の雰囲気漂う一枚が撮影された。
 その後、夕暮れのオープンカフェで一枚どうかという提案が。
「それもいいかもしれないね」
 と、勧められたカフェへ立ち寄ってみる‥‥そのカフェは美しい夕日が見れると有名な場所であった。
 沈み行く夕日とヤシの木をバックに、静かに微笑む伽織。その視線は海を漂い、瞳はオレンジを映し出す。
 ――こうして、一日の撮影が終了した。



 撮影を終えたモデル達はホテルにて、ベストな一枚を選出する。
 特に昼寝はデザイナーも交え、一番イメージに近い物を選ぶことに尽力。出来にはかなり拘るタイプとみた。
「よし、この一枚で決まりね」
 ――納得の一枚があったようだ。それはグレデーションがかった一面の青の中、バラクーダの群れと共に水面を目指す昼寝が写し出されている。似たような写真も多い中、バランス良いこの一枚を選出する。
 レイチェルは過激なものは排除し、咲江の笑顔がより自然な物を選び、残りの写真は記念としてお持ち帰り。
 又、他の物とは被らぬよう、『夕暮れ』を映したシーンを選ぶのは伽織であった。
 ファーリアは出来上がりを確認しつつ、ある一枚を手にとりカァっと頬を赤くする。そこにはトップレスなファーリアが写されているではないか。
「絶対流出禁止です〜っ」
 海に落ちた時偶然撮れたらしい。
 これからアイドルの道を進むファーリアの為、ポロリ状態のお宝写真は丁寧に処分された‥。

 ホテルのバーで寛ぎ酒を愉しみつつ、メティスはより波が美しいサーフィンの一枚をチョイス。そしてふと、思いつく。
「‥あのエステサロンの店長に姉妹店とかこっちで出す気ないか聞いてみようかしら」
 あの店が進出した途端、変態バグアが出現しそうな気もするが。
「こう言うサービスも必要だしなぁ‥‥聞くだけ聞いて後でルミコに教えとくのが良いか」
 そう思っていると、丁度仕事を終えたルミコがやってくる。仕事後の一杯を楽しみつつ、バーでの時間が過ぎていった。



 そしてポスターは作成された。
 A2サイズに一枚ずつ大きく写真が印刷され、全部で5種類。キャッチコピーはなく、隅に目立つように『Palau』と文字が入れられている。これは「沢山文字入れたら折角の写真が隠れて勿体無い」という意見の元デザインされた為。
 だが文字は入れずとも、『Palau』の魅力は語れるだろう。それ程に美しい人物と風景が、A2サイズの世界には広がっていた。