タイトル:たまにはエステでもマスター:水乃

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/07/31 11:33

●オープニング本文


 ほぼ毎月のペースで変態やキメラの襲撃にあっていた九州のとあるエステサロン。
 土地のお祓いをしてもらい、店長自身もお祓いしてもらい、なんとか経営を続けるエステサロン‥‥。
 そのサロンに、ちょっとした異変が起きていた。
「え、店長、フィリピンに?」
「そう、あっちのサロンで本格的な研修があるの〜留守番よろしくね!」
 若い店員が目を丸くして訊ねると、高村百合子(店長)は満面の笑みで答えた。数ヶ月に渡るフィリピンでの研修‥‥ちょっとした旅行気分の店長である。
「そうですか‥‥数ヶ月も‥‥寂しくなりますね」
 しょんぼりした表情を見せる若い店員。しかしそれは建前だ。
(「店長が居ない間は、平和な気がします‥‥」)
 こっちが、本音。
 戻ってこなければいいのに! とまでは思わないが、なるべく長くあっちに居てくれないかなーと思う若い店員であった。


 そしてULTに『エステ体験美容ツアーの参加者募集』という珍妙な依頼が入る。
 ‥‥普通ならば報酬がもらえる類の依頼ではない。だが、今回マッサージを施術するのは研修生だ。つまり『報酬出すから研修にも付き合ってくれ』ということか。
「‥‥これって一般の方でも出来る仕事ですよね‥‥」
 オペレーターが首を傾げながら、依頼を打ち込んでいく。
 ――この忙しいのに大丈夫でしょうか、と思いつつ。

 確かにオペレーターの言う通り誰でも出来る仕事だけれど、『戦いの真っ只中にひと時の癒しを』という依頼主の気持ちが篭っているに違いない。
 ということで、美しさを磨きたい傭兵さん達募集中!

●参加者一覧

クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
夕風 悠(ga3948
23歳・♀・JG
藤堂 紅葉(ga8964
20歳・♀・ST
佐倉・咲江(gb1946
15歳・♀・DG
レイチェル・レッドレイ(gb2739
13歳・♀・DG
柊 沙雪(gb4452
18歳・♀・PN
日野 竜彦(gb6596
18歳・♂・HD
美黒・改(gb6829
13歳・♀・DF

●リプレイ本文


 リゾートエステを無料で体験となれば、美容効果を期待して自然と女性が集まるもの。
「愛するあの人の為にも常に最高の女性で居たいですものね。願ったりの依頼ですわ」
 麗しの新妻、クラリッサ・メディスン(ga0853)は微笑んで言った。
 愛する夫の為に少しでも綺麗で居たい女心。傭兵稼業の反動で、疲れが肌に出ているかも‥と少し悩んで居た所だ。 そして、
「確かに‥たまにはゆっくり休まないと、ですね」
 仕事中毒はイヤですし‥と、柊 沙雪(gb4452)は思う。
 純粋な息抜きとしては初めてのフィリピン、自然と胸が高鳴った。

 移動艇は、白い砂浜と青い海のコントラストが美しいフィリピン島に到着した。
「うわぁ‥地球上にまだこんな綺麗な場所があるんですねっ」
 白砂に足跡をつけ驚く夕風悠(ga3948)の髪を、爽やかな風が撫でた。
 暫し景色を楽んだ悠は、手渡された体験メニューを見てとある文字に釘付けに。
(「豊胸‥って、どんなエステなんですか」)
 自分のバストをチラリと眺め、悠は無難にヒロットオイルトリートメントをチョイスする。
 彼女の横からパンフレットを眺めつつ、
「私もそれと‥‥あと、フェイシャルエステを希望です。‥あっ、でもフラワーバスにも入ってみたいですね」
 と、受付係にコースを伝える沙雪の瞳は爛々としていて。
(「は‥、ちょっと落ち着きましょう、私」)
 戦場で感じるものとは違った胸の高鳴りに戸惑いつつ、苦笑する。初めてのエステにちょっとドキドキしてしまう、年頃の沙雪だった。
 そんな初心な娘さんも居れば。
「南国‥私達の為にあるような環境じゃないか‥」
 SM系エステティシャンの異名を持つ藤堂 紅葉(ga8964)はペロリと唇を舐め上げる。ブラつけてないノースリーブシャツの胸辺りに、彼女の期待が見え隠れしていた。
 そして誰かを探し、ミニなプリッツスカートを翻す。
「エステ体験なんて久しぶりー♪」
 ゴシックワンピースの裾を靡かせて、レイチェル・レッドレイ(gb2739)もやってきた。
 幼い容貌に無邪気な笑みを浮かべ、その内心は
(「折角の機会だし色んなコの身体を‥」)
 なんて邪念たっぷりに、心の中でじゅるりと生唾を飲み込んだ。
 白い袖なしワンピース姿の佐倉・咲江(gb1946)はレイチェルと手を繋ぎ、懐かしいサロンを見上げる。
「それじゃあレイチー、マッサージ終わったら待ち合わせ‥」
 二人は別のコースを選んだらしい。
 店内に入り百合子の姿を見つけるや否や、咲江はビクっと背筋を震わせる。
「店長さんがいる‥、またバグアが襲ってくる‥‥?」
 ‥確かに何人か嵐を呼ぶ女が居るが、多分大丈夫だろう。



 こうして続々人の集まるエステ店内では――眠りから目覚めた日野 竜彦(gb6596)が頭を抱えていた。
 会場に一番乗りしたせいで気づかなかった、が。良く見ると右も左も、女女女‥。
(「‥もしかして、女性限定の企画?」)
 A.その通り。
(「うわぁぁ! 男だってばれたら俺の生命がデッド・オア・ライブでゴー・トゥ・ヘルだよ〜〜っ!」)
 着物姿でバンダナをカチューシャ代わりとしていた竜彦は、女だと思って通された様子。
(「ちょっと、ショック」)
 気づかれなかったとか! ありえない。
 そして急にそわそわし出す。しょうがない、男の子だもの。
 お手洗いに行くと言って、逃げよう。そう心に誓ったが‥。
「ふむ、たっ君のためにも手に職をつけるのである」
 日々『姉』だと豪語する美黒・改(gb6829)の姿が見え、竜彦は天を仰いだ。
 何としたことか、美黒は将来俳優を目指す弟の為にカリスマエステティシャンを志し参加していたのだ!
 従業員用の制服に着替え、本物のエステティシャンから熱心にマッサージを教わっている。
「一つ積んではたっ君のため、2つ積んでは‥」
 竜彦は聞こえないフリをしたが、美黒の方から彼を見つける‥‥何て格好、ビックリだ。
 ――その時従業員が、竜彦に着替えのバスローブを渡す。
 受け取ってオロオロする竜彦をよそに、周りの女性は着替えはじめ、目に付く肌色、漂う色香‥!
(「何コレ、天国と地獄は紙一重の間一髪ってこと?」)
 いや、今はそんなことを考えてる場合じゃなくて。竜彦の若い体が反応したら終りである、いろんな意味で。
 そうしている間にも、早速アロママッサージが始まる。
(「はぁ〜、気持ちい〜‥って和んでる場合じゃないよ!?」)
(「むむ、隙をみて保護するのである‥!」)
 微妙な気分で顔を見合わせる、竜彦と美黒だった。

 そんな研修生と女性がひしめくサロン内で、九州店店長の高村百合子は、
「んふふ、よりどりみどり‥」
 誰のお相手をしようか目を光らせていた。その時百合子の首に白い腕が絡みつく。
「お姉様、お久しぶりです」
 思わず抱きついてしまったのは、紅葉であった。先日結ばれたばかりの二人は、エステ後に会うと簡単な約束を交わす。
 百合子の前では大人しい紅葉も、研修生達を見つけ態度豹変。
「女ばかり‥選り取りみどりだねぇ」
 と、誰かさんと同じことを考える、似たものカップルだ。百合子に熱い視線を注ぎつつも、研修生相手にトリートメントを受ける紅葉。
 そして同じ部屋では着替えたレイチェルが。
「ボクに負けない位、おっきくて綺麗なバストにしてアゲル♪」
 むっちり豊満な巨乳を揺らし、横たわる女性を前に小悪魔的笑顔を見せた。
 施すのは勿論、『豊胸マッサージ』。
「胸を大きくするには女性ホルモンを活性化させないとね」
 その為には、何よりまず気持ちよくならないと! ‥と独自理論を語るレイチェル。
 小さな掌にたっぷりローションを塗りたくって、触れるほどの強さで円を描くように、まずは胸を揉み。
 それから脇の下へと手を滑らせて、脂肪を寄せ集めるように胸へと押し上げ、ゆっくり執拗に‥。
「どう? 気持ちいいかな?」
 訊ねると、涙目の女性はコクコク頷く。
 ご褒美とばかりに尖りを指先で擦り、レイチェルは時折自分の胸を押し付けながら全身マッサージへと移行していった。
 それを横目で見つつ、
「ん、あっちは中々だね。それに比べ‥」
 紅葉は研修生を見上げた。
 何というか、物足りない‥‥カチっと紅葉の女王スイッチが入る。
「話にならないね‥手本をみせてやろう」
 起き上がった紅葉に組み敷かれ、驚く研修生。相当な手錬でボタンを外され、紅葉の掌が肌をタッチした。
「良い声で鳴かせてやるよ」
「そんな‥あぁ!」
 鷲掴まれ、肌に指先が食い込む。紅葉のマッサージはなんと荒々しい事か。
「うん、いいわ‥二人とも合格よっ!」
 紅葉とレイチェルを見ていた百合子がOKサイン‥‥随分趣味に走った審査である。
「良かったら、店長さんもお一つどうかなっ♪ 勿論、ボクのカラダで‥♪」
 レイチェルの胸元のボタンが弾け飛ぶ。
「あら、いいわね」
 乗った百合子の制服のボタンが弾け飛ぶ。
「お姉さま!? そんな、私も‥!」
 紅葉がバスローブの紐を解く――!
 ‥この後の出来事は、報告書では割愛致します。

 その頃美黒は、上手く竜彦を捕まえていた。
 バレないようにしっかりタオルを巻く竜彦は、肩を落としつつ。
「えっと‥お手柔らかに」
 横たわる竜彦の背中は染み一つ無く、綺麗な物だ。
「むー、嫉妬してしまうのである」
 嫉妬心と共に、ついむらむらしてしまった美黒。意地悪半分にいろいろ試したくなり、彼を実験台とする事に―。
 えーと、確かこの辺りを押せば。
「――っ! いたたたっ!」
「んー? 間違ったかな?」
 こきぃと肩を鳴らす美黒の顔が、一瞬劇画調に‥‥いや、気のせいか。
「‥あはは、ごめんねーなのである」
「ごめんじゃないよ!」
 叫んでしまい、慌てて口を噤んだ。
 知識面でも怪しい上に、大雑把かつ力任せ。美黒が頑張れば頑張るほど、悲惨になる竜彦。
 そしてさらに悲惨な事に。
「キミも豊胸、どうかな♪」
 汗まみれのレイチェルが電動マッサージ器を唸らせながら、仕切りを越えて乗り込んできた――!
「えぇ‥ぇえ、遠慮します!」



 研修部屋がカオスになる一方で、水上ヴィラでのんびり過ごす4人。
 ヒロットオイルトリートメントは普通より圧が強く、動きが早く、コリを解したい者には最適である。
 台の上でうつ伏せになりマッサージをうけるクラリッサは、肌蹴た背中に潮風を感じ、心地よさにまどろんでしまいそう。
「‥やはりどうしても戦場とかを往来していますと、気付かぬ疲れが溜まって肌荒れを起こしているかも知れませんわね‥」
「そうです‥ね‥。‥うー、気持ちいーです‥」
 圧された場所から疲れが抜けていき、あまりの気持ちよさに声の出てしまう沙雪。このような無防備な姿は珍しい。
(「はうぅ‥はまっちゃいそうです‥」)
 今度他の店に行ってみようかなと考えながら、トロンと沙雪の表情が緩んだ。 
「こういう機会にリフレッシュしないといけないですわね」
 幸せそうな沙雪の表情を見てクスッと笑い、クラリッサは顔を伏せて再びトリートメントに没頭。
 その二人から仕切りを隔てた場所で。
「マッサージ気持ちいいです‥‥ZZzzz」
 やはり、眠りの世界へ誘われかけている咲江。
 隣の台では、ヒロットを終えた悠がバスローブを直しつつ、ウンと伸びをする。
「ん‥気持ちよかった」
 ほんの一時だけでも、色々なことを忘れることができたようだ。
「次は何にしようかな‥」
「豊胸‥‥効果があれば少しはレイチーの胸に近づけるはず‥」
 悠の言葉に、咲江が眠りながら答える。
(「そういえば、豊胸って何をするんだろう?」)
 やはり気になる。悠は自称Bだが実際は多分Aなので、もう一息欲しいところだ。
「あのー‥ほ、豊胸‥ってどんなことするんですか?」
 と、きいてみると、刺激マッサージするとか、光当てるとか、電気流すとか。
(「な、色々されるみたいだけど‥‥誰かがうけないと」)
 悠は戸惑いつつ言い聞かせ、「じ、じゃあちょっとだけ」と勇気を振り絞り名乗り出る。
 その時、マッサージを終えたクラリッサが顔を覗かせた。たゆんたゆんなその胸は、羨ましい限りだ。
「クラリッサさんは‥しませんよね?」
「ええ、ほどほどが宜しいと‥」
 大きければいいなんて言うのは殿方の勝手な願望ですもの。と、クラリッサは言う。
「肩は凝りますし、可愛い服とか格好良い服とか難しいですし、なかなか好みの服を選ぶのも大変ですからね」
 一度は言ってみたい、その台詞。悠はつい苦笑した。
 そして。
「‥ん」
 余韻に浸っていた沙雪は、白い背をローブで隠す。‥こちらも終わったようだ。
「さて、私はフラワーバスに‥」
 騒動が起こっているとも知らず、歩いていった。

 そして行われる豊胸エステ。
 うっかり眠ってしまった咲江が重い瞼を開けると。
「ここは‥?」
 見回せば白い部屋。
 視線を落とすと、露になった咲江の胸には何かが貼られていて。ソコから細い管が伸び、機械へ繋がっている。
「‥あっ」
 刹那身体に僅かな電撃が走り、身を捩る咲江。
 ――そして、扉を一枚隔てた向こうでは。
 悠が真剣な表情で、トップバストにメジャーを当てていた。あまり押し付けないように、慎重に。
「ええっ、2cm!?」
 以外な効果に目を丸くして驚いた。
 恐るべし、豊胸エステ。但しその分、いろいろ弄られたのは秘密だ。



 さて、他に成果があったのか疑問ではあるが。
 エステ体験会は終りを告げようとしていた。

 仕上げのフラワーバスでは。
「何みてるんですか?」
「えっ、ええと‥綺麗な景色を。こっ、心の目で見てますから」
 参加者に尋ねられ、明らかに挙動不審な竜彦。
 身体を直視しないようにはしているが、次第に、前かがみになっていく。
 流れ流されここまできたが‥‥いよいよまずいと竜彦が立ち上がったとき。
「きゃぁ! 男!?」
「‥しまった」
 流石に濡れて密着するバスタオルは不味かった!
 慌てて脱衣所から出て行く竜彦に気づき、沙雪は咄嗟に石鹸を投げた。
(「全く、脱ぐ前で良かったです‥」)
 そして、
「た‥大変である!」
 竜彦をキャッチした美黒。前かがみになっている彼を『腹痛』だと言い張り、エステ現場から連れ出した。
 欺くならば、最後まで注意怠るべからず。
 せめて、少人数用のバスを選べばよかったものの。

 一方咲江とレイチェルは二人だけでフラワーバスへ。
「起きたら白い部屋で、改造されるかと‥」
 バグアより怖いものを垣間見たと、恐怖体験を語る咲江。
「で、おっきくなった?」
「1cmくらい‥?」
 つい、頬を染める。バキューム、微電流、高周波‥あらゆる方法で大きくなった1cm‥誤差ではないのか?
「ホントに? よし、じゃあその成果の程をボクが確かめてあげよう♪ ついでに更なる効果アップを目指して!」
 先程店長を唸らせた手つきで、早速咲江を揉みにかかる。掬い上げて、質感を確かめて、ついでに唇を寄せれば効果覿面に違いない。
「んっ‥レイチー、そんな直に効果でない‥」
 咲江が身悶えるとパシャリとお湯が跳ね、赤い花びらが散った。

 そんな騒動もあったりしたが。
「ふぅ、いいお湯でした‥」
「次は食事しませんか? フィリピン料理初めてなんです」
 ばったり会った沙雪と悠はレストランへ。エステで美しくなった分、食べないと‥?
「ご飯、いろんなのがある。美味しそう‥」
 じゅるりと唾をのむ咲江も居た。沢山注文して、たっぷり食べる。
「そういえば店長さんがいたのに今回は平和だったね‥」
「平和‥‥かな?」
 少し疑問の残るレイチェルだった。

 その頃すっかり子猫スイッチの入った紅葉は、百合子と共に食事を楽しむ。
「私に何も言わず海外に出るなんて‥」
 眉を寄せ、拗ねる紅葉は珍しい。
「お姉様は、同居したいとは考えませんか?」
 さりげなく質問攻めをしてくる紅葉を可愛いと思いつつ、結婚の話題には苦笑いし、「同棲した後かしら?」なんて言ってみる。
 デザートのイチゴは、さり気無く口移しで‥その甘さを共有しながら。
「お姉様の肌、すべすべで美味しい‥」
 甘い時を過ごす二人は、そのまま水上ヴィラへと向かい――全身にじゃれつくように、再びマッサージをし合う。
「もっと強く‥‥虐めてください」
「うふふ、随分熱心ね‥」
 この二人のエステ体験会は、終りが見えないのであった。

 辺りは静かに暮れていく。
 水上ヴィラで夕暮れを見ながら、クラリッサは愛しい人を想った。
(「命の洗濯もたまには良いですわよね。帰ったら、存分にあの人に甘えて‥‥綺麗になったわたしを可愛がって貰いたいですわね」)
 美しさを増し、LHへと帰還する――。
 彼女らを見た人は、きっと驚くに違いない。

 そして能力者達が去ったエステサロンでは。
 誰かさんの忘れたトランクスが更衣室から発見され、騒然としたのは言うまでも無い。