●リプレイ本文
船ごと海底へと沈める巨大な磯巾着。それを操る者は、この海に住む人魚達。
(「これも自分達が生きていく為だから‥!」)
そう割り切って、忠誠心高き女戦士‥南海の人魚ことレミィ・バートン(
gb2575)は、今日も人を捕食する。彼女のスピーディな泳ぎからは、誰も逃げられなかった‥‥。
その頃人魚族の姫、鏡音・月海(
gb3956)は、狩りに出かけたレミィを想う。
『レミィ、今日もお仕事ですか?』
『うん、すぐに帰ってくるね!』
とは言っても、心配で仕方ない。月海にとってレミィは、姫と親衛隊という関係だけではなく幼馴染という親しい間柄だ。
「‥いつまで、続くのでしょうか」
月海の瞳は憂いを帯びる。
水中花のような磯巾着に身体を預けるレイチェル・レッドレイ(
gb2739)は、獲物を捕らえ愉しげに。
「捕まえた♪」
と、触手で船を解体し、人間を捕らえては磯巾着の餌に。
そして可愛い子は自分が食べちゃう為に。触手を絡ませ、露になる肌を啄ばんでいく。
その傍を、鷹司 小雛(
ga1008)が優雅に泳いでいく。
「わたくしも混ぜていただきたいですわ」
レイチェルを見て、小雛は艶やかな唇に指を当てた。触手ごと少女の背中を抱き、豊満な胸を押し付ける。
「いいよ? 大勢の方が愉しいからね♪」
柔肉を絡ませ、擦りあい、互いを貪るレイチェルと小雛。そして挟まれた少女から、悲鳴混じりの嬌声が――。
こうして人魚は『危険』だと思い知らされた人間達は、勇者の力を頼ることになったのだった。
●
ストーンモノリスでは、白石ルミコ(gz0171)の祈りにより勇者達が目覚めはじめる。
生を司る勇者・白雪(
gb2228)も、過去の記憶を持つ勇者の一人。
目覚めるや否や、唐突に
「貴女はこの海を美しいと思いますか?」
‥と尋ね、頷くルミコを見て微笑んだ。
「さて、貴女が私達の長きに渡る眠りを妨げ、戦場へと呼び出したのですか?」
「ええ、そうよ」
「ならば願いは? 何を想い、何を欲するのです?」
「‥この島の人が安心して暮らせるように」
人魚を倒して欲しいわけではない。だが戦える者の力を頼るしかなかった。
「貴方の願い‥しかと聞き入れました」
ルミコの意図を理解してか、白雪は力強く頷く。
けもみみの勇者、佐倉・咲江(
gb1946)は、少女の話を聞きピクリと眉を動かした。
忘れもしない、眠りにつく前の昔話。人魚に捕まり食べられそうになった過去。
「人魚といえば因縁のあいつがいるはず‥。今日こそ積年の恨みを晴らすときです!」
今目覚めたのも、運命に違いない。因縁に決着をつける為に、咲江は拳を握った。
一方、勇者復活の場面を目撃した上月 白亜(
gb8300)は、咳き込みながら岩陰から登場する。
「その戦い‥私も参加するのです。これでも勇者の末裔なのですよ」
能力も引き継いでいるらしいが、細身なアルビノ少女はどう見ても病弱そうだ。
「ふふ‥けほ、人魚を食べればこのぽんこつボディも少しはマシになるかもしれないのです‥」
この病弱勇者は、不老不死伝説を信じているらしい。
(「大丈夫かしら、この子‥」)
正直、人魚側よりチームワークが不安視される勇者陣であった。
だが、仕方ない。勇者とその仲間達ではなく、みんなが勇者なのだから。
その頃、ルアーフィッシングするスポーツマン・織部 ジェット(
gb3834)は今日もボートの上だ。
彼はパラオの現状を知らぬ、只の一観光客‥‥だが、運命が動き出す。
「折角の釣りスポットが台無しだ、どうなってんだよ!」
磯巾着ばかりがかかり、イライラしはじめるジェット。
だが彼の頭上に眩い光が見えたかと思うと、脳に直接声が響いた。
「‥何だ、この声は!? ‥何、勇者の能力やるから磯巾着と戦ってこい!?」
ルミコの祈りに答えたモノリスの神は、何故かその辺で釣りをするジェットをも勇者に選んだらしい――いい加減な神である。
「ルアーで人魚をフィッシュオン出来るのか。面白いじゃねえか!」
能力の覚醒と共に一瞬で状況を把握したジェット。
だがやることは釣りには変わりない。ウキウキと伝説のルアーを動かしていく。
こうして人魚・磯巾着vs人間の勇者達の戦いが始まる――!
●
海底では、やがて始まるだろう全面戦争を予感し月海の表情が曇った。
「‥勇者が目覚めたようですね」
事態は難局化し‥‥もはや戦いは避けられぬのか。
「当然の結果だと思うなー。恨み辛みより寧ろ、お互い生き残りたいだけだしね?」
しかしレイチェルは、大規模な戦いが始まるという状況を楽観的に捉える。
そして王の命令のもと、出撃の準備をする人魚達。
「胸が高鳴りますわ」
戦いと女性をこよなく愛する小雛は胸を弾ませ、唇を舐め上げ体ごと振り向く。と、苦笑いを浮かべるレミィが居た。
その姿も魅力的だと、レミィをハグして頬にキスする小雛。
「え‥っ。な、何!?」
「レミィ様もドキドキしてますわ。鏡音様も。ほら‥」
レミィの胸の弾力と鼓動を楽しんだ後、小雛は月海の豊かな胸元に視線を這わせた。
僅かに頬を紅潮させ、胸元を覆い隠す月海。そこには蒼い宝石ネックレスが輝いていた。
そして戦場となる海では、沢山の『魚』が泳ぎ回る。
それは全て、勇者が召喚したものだ。
例えばやる気なく浮遊するマンボウ‥それは、咲江のお供である。
「‥魚使役したのはいいけど、マンボウ。‥どうしよう」
無表情だが焦る咲江は、遠い目をしながら突撃命令を下す。
一方で、白雪は強力な魚を操っていた。
「蒼穹の手綱!」
海の中、発せられる白雪の声。
召喚した大きなブルーマリーンに飛び乗り、閃光を伴った体辺りを巨大な磯巾着へ仕掛ける――千切れる触手、飛び散る体液。
そして巨大な磯巾着達に守られるように、後方に控える月海の姿を捉えた。
「あの姿は‥王族の末裔鏡音の一族。夜空の星の数ほどの年月を経てもなお‥業には逆らえぬのですね」
白雪は月海の胸元の、王族の証である蒼い宝石を見て呟いた。その表情からは、好んで戦っているわけじゃ無いと分かる。
複雑な感情を抱きつつも、攻撃されるうちは対抗するのみと、白雪は攻めの手を休めはしなかった。
一方、白亜は巨大タコを嗾ける。
「磯巾着如きが、舐めないで欲しいのですよ」
足を鞭のように振るい、敵を撃破するタコ。盾を失い慌てる人魚に、吸盤が吸い付いた。
捉えたのは白亜が求める、柔らかな女の人魚。
「戦いの歴史にはぶっちゃけ興味ないのです‥‥ご先祖様がどうしたとか私には関係ない事なのですよ」
「だったら見逃して‥」
「ダメなのです。私が欲しいのは貴方の肉‥」
言葉で揺さぶりをかけながら、タコの足で優しく絞める。
しかしこの人魚、薄い白亜と違い肉付きが良いではないか。肉以外の部分を味わってみたいかも‥。
「ふふふ、最後にイイ思いさせてあげるのですよ。感謝して欲しいものです」
勇者の末裔とは思えぬ台詞を放つと、白亜は人魚の脇腹を撫でた。
―その時。
「お一人で楽しむのは狡いですわ」
小雛が駆けつけ、触手で白亜を攻撃する―!
「さあ‥あんな触手食い千切ってやるのです!」
しかし咄嗟に鮫を召喚した白亜によって断ち切られた。更にタコが足を伸ばし、小雛へと掴みかかる!
「あんっ‥」
打たれ、色っぽく喘ぐ小雛――衝撃でブラが弾け、二つの丸みが水中に零れた。
強敵の存在に、胸躍らせる‥‥これは楽しい戦いになりそうだ。
その頃レミィは、胸に纏わり付くイカ足を千切り逃げ回る。
明らかに下心有りな男勇者を睨みつけるレミィ‥しかしその口許は笑っていた。
「ふふ、かかったなッ!」
わざと相手を優位にさせることで油断を誘い、罠へと誘っていたのだ。男勇者が気づいた時には、隠された磯巾着の触手が彼を拘束する。
―そこへ、仲間が慌ててやってきた。
「え‥? 仲間が釣り上げられてるって!?」
報告をきき、レミィは目を丸くする‥こうしてはいられない、急がなければ。
釣り上げられた人魚達は、ジェットの船に上げられていた。
「マジかよ。本当に釣れちまった!!」
身に付いた特殊能力に驚くジェット。
「しかしなぁ‥人魚はどうでもいいから、イソギンチャクを何とか出来ないのか!?」
残された触手は船を襲う。海の中ではシーバス軍団が活躍しているので、辛うじて転覆は逃れている状態だ。
そこへ、一層太く力強い触手が迫る――!
その触手は船ではなく直接ジェットの足に絡みつき、体を海へと引きずり込んだ。
「おわっ!?」
身体が海へとダイブする。
そこで待ち構えていたのはレミィだ。彼女の海のように青い瞳が、怒りを湛える。
「あっはは! 大物が釣れたっ‥! これでアンタは陸に上げられた魚も同然‥さぁ覚悟しなッ!」
そして、人魚達の反撃が始まる―!
岩場に磯巾着を隠して人間を待ちつつ、レイチェルは無邪気に笑うと触手を蠢かした。
「可愛い女の子なら人間でも人魚でも、目一杯愛したいんだもん♪」
仲間の両腕を拘束し、手は胸へ‥‥しかし彼女にも、勇者の影が。
やってきた小さな勇者は、過去に一度可愛がったことがあるではないか。
「ふふ‥また来たんだ? ボクのテクが忘れられなくなっちゃったのかなぁ‥♪」
「そんな軽口もう叩けないようにしてあげるのです」
泳いでやってきたのは、マンボウを従えた咲江だ。
「とりあえず突撃!」
早速マンボウを嗾ける。しかしぼーっとして聞いてないマンボウ‥‥やはりダメか。
「う‥。仕方がない。私自らその首を!」
諦めて、咲江は素手でレイチェルに掴みかかろうとした。
だがその腕は容易く触手に絡め取られる。
「こういうの、好きだったよね?」
「‥きゃ!? やっぱりこう‥‥ひんっ。どこを触って!」
レイチェルの命令で自在に動く触手は、咲江のビキニの隙間にすっと入り込んでいった。
布地が歪に盛り上がると同時に、肌を撫でられ咲江の身体が撓る。
「もっと太い方がよかったかな? ‥でも大切なのはテクだよね♪」
「ひゃっ、それ以上は‥ん、やめな‥ぁぁ」
真っ赤な顔で見悶える咲江。‥執拗に胸の尖りや腿の内側をねぶられているのだろう。
「もう、可愛いんだから‥。そんな姿見せられたら、本気になっちゃうじゃない‥♪」
咲江の乱れる様をじっくり眺めながら、レイチェルは身体を寄せた。そして垂れるケモミミを唇で挟む。
すると何故だろう、下腹辺りキュンと疼く‥あの時はこれほど感じなかったのに。
戦いが続き‥劣勢となっていく人間側の勇者達。
吸盤を堪能したところで、小雛は反撃に転じていた。白亜の操るタコを撃破し、さらに鮫をも消してしまう。
一方、白亜は高い召喚能力で次の魚を呼ぼうとするが‥。
「‥っ!」
「あら、腕力はあまり無いのですわね」
素早い泳ぎで接近した小雛に関節技を極められ、白亜は身動きが取れない。
「今度はわたくしが堪能する番ですわ」
小雛は豊満な体を密着させながら、締め上げていった。
すがる思いで仲間の姿を探す白亜。すると、
「こら! そんな目で見てないで早く助けるのですよッ! 変態ですかあなたは!」
そこでは無名の男勇者が佇み、女の絡み合いを生唾飲んで見守っていた。
●
ある意味激しくなる戦い。
ジェットは人魚を避けつつ、巨大磯巾着にありったけのルアーをぶつけた。シーバス軍団はそれを食べようと、磯巾着に決死の猛攻を仕掛ける。
「俺の釣りスポットを返せ!」
「ちょっと、こっちにも居るんだよッ!?」
人魚ではなく、磯巾着退治に執念を燃やすジェット。人魚には恨みはないと言う彼に、レミィは戸惑いつつ攻撃していた。
ジェットは最後に伝説のルアーをイソギンチャクの中に放り込んで、海中より引き剥がす事に成功する。
――その時‥‥海底が唸った。
月海の護衛を散らしたところで、白雪は攻撃の手を休める。
「鏡音の末裔‥貴女は本当に争いを望みますか?」
「!? 貴方は‥」
話かけられ、月海は驚く。
だがそれも一瞬で、王家の伝説により白雪こそが勇者である事を理解した。
「聡明な方‥‥貴方ならば出来るはずです」
「‥‥」
白雪に言われ、月海は蒼の宝石を握り締める。勇者と共に祈る事で、込められた力を解放する為に。
「‥分かりました、今こそ―!」
父を想い、一族を想い、月海は白雪と共に宝石を握る。
――眩い光。
『ぐぁぁ!』
「なんだっ!?」
海底から引き剥がした巨大磯巾着が悲鳴をあげ、ジェットは驚く。
‥それはいつのまにか人の姿に変わっていた。
「あれは‥魔女!?」
レミィも驚きを隠せない。
『もう少しで両族破滅となったものを‥! お前達の所為で魚達は‥!』
「俺のルールはいつだって、キャッチ&リリースだぞ! 文句があるなら、イソギンチャクにくすぐられて来い!」
しかし魔女は、ジェットの言葉にも耳を傾けない。
レミィとジェットはついに手を組んで追い詰め始めた。
そこへ、怒りで覚醒した真白がやってくる。
「お前が元凶? ‥絶望に魅入られ両族の滅びを望むか」
両手を掲げ、無数の魚達を‥現世に召喚する。
「I am the bone of will.Greed is my body wish is my blood.I have created over thousands lives‥」
魚達は、一斉に魔女の方を向いた。そして。
「Unlimited reincarnation.」
真白の言葉と共に、襲い掛かった―!
魔女の身体がはじけ、小さな魚の姿が残る。
磯巾着や人魚に擬態する魔女も、元の姿はこの小さな魚だったのだろうか。
「あれは‥クマノミ‥」
それは磯巾着と共生する小さな魚。この海に人魚がやってくる前に、磯巾着の寵愛をうけていた魚だ。
●
「それでは、協定を」
反省した父から王位を受け継いだ月海は、人間との共存を誓う。
「双方に良き未来が生まれますよう」
その幼馴染の姿を、レミィも微笑みながら見つめていた。
「もう捕食は諦めるのです‥そのかわり、体調維持の方法を教えて欲しいのです」
白亜の言葉に、小雛は片目を瞑って。
「お安い御用ですわ。ですから戦いで火照ったこの身体、冷まして下さいません?」
積極的にスキンシップをはかる。
――そしてジェットは、再び気ままな釣り生活へと戻り。
「貴女はこの海が美しいと思う?」
真白は再びルミコへ問う。「ええ」頷くルミコの、海への思いは変わらない。
「そう‥なら。受け入れてあげて、美しさも汚さも‥全て」
こうして、パラオの海に平和が訪れ、真夏の夢が終わる。
―だがいつ第二の魔女が現れるかは、人の心次第だろう。
その頃‥‥レイチェルは咲江をかかえ、島を離れていた。
「レイチー、二人で幸せになろう‥」
うわごとのように呟かれる言葉にも愛しさが溢れ出す。
「そうだね、幸せになろう」
レイチェルは答える。
二人、種族も超えて、遠く離れた海で幸せを誓った――ここまで誰も追ってこないだろう。だけど。
「もし邪魔する者が現れたら、その時は――」