●リプレイ本文
バイトを終え、佐倉・咲江(
gb1946)は家へと向う。『お金稼がないと生活できないしね‥』と語る彼女には、ある家庭事情があった。
「ただいま」
「おかえり、サキ」
帰宅した咲江を迎えたのは、アーシュ・シュタース(
ga8745)。赤髪の二人は、姉妹だろうか。
その頃、別の部屋では。
モニタに見入る上月 白亜(
gb8300)がフフと笑い、せき込んで細い肩を震わせた。
そこへやってきたクラリア・レスタント(
gb4258)。
「ねぇ白亜? 次の見つかりそう?」
「見つけたのですよ」
果たして何を見つけたのか‥それは。昔奪われた、形見の宝―!
「少しずつだけど、形見。集まってきたね」
「今こそ返してもらうのです!」
かつて過ごした孤児院で、慕っていた老婦人の亡き夫の形見を取り戻す為!
彼女達は立ち上がる―!
そう、彼女達こそ今巷を騒がす『怪盗LH』!
その正体は美少女姉妹、長女・アーシュ、次女・クラリア、三女・白亜、四女・咲江、彼女らなのだ!
●
そして『予告当日』―。
屋敷への道を颯爽と走るファミラーゼ。
「怪盗LH〜。逮捕だぁぁぁ」
暑苦しい裏声でお決まり文句を叫ぶのは、賊を追ってン30年・刑事の白雪(
gb2228)だ。
金木犀の香りを漂わせながらタバコに火をつける白雪刑事。
「こう見えても私は‥げほっ‥通信教育で犯罪心理学を学んでおりましてね‥必ず奴等はかかります。‥私の気が確かなら‥げほ」
煙で咽ながら自慢げに話す。
「ほう‥通信教育か」
気は確かか! と突っ込みたいのを抑えつつ、屋敷主は懐から予告状を出す。
「これが今日届」
「おっと失礼。コーヒーの時間だ」
話を強引に中断。白雪は懐中時計を見、コートからコーヒー牛乳を出してティータイム。
唖然とする男を尻目に、
「‥何か?」
涼しげな顔をする、この刑事侮れない。
そこへ新人メイドのAnbar(
ga9009)がやってくる。
「旦那様、着替えをお持ちしました」
褐色の肌に大きな瞳、エキゾチックな少女だ。
ニヤニヤ笑い、男は続いてゼフィリス(
gb3876)を眺める。
彼女も屋敷のメイド。胸は豊かで、ミニスカートから覗く脚は細くて美しい。
「‥‥」
しかし可憐な容姿とは裏腹に、両手にはマシンガン。彼女は戦うメイドさんなのだ!
ゼフィリスは一礼すると、侵入者を排除すべく持ち場へと歩いていった。
そして、主人の孫に仕えるメイドの水無月鈴(
ga8700)は頬を赤らめ困り顔。
「捕まえないとお仕置きだね」
「うぅ、酷いです坊ちゃま‥」
と言いつつ身体を悩ましく捩らせる姿は、普段どんな目にあっているのか想像がつく。
「あ、でもどんなお仕置きされるか考えたら‥」
「期待しているのかい?」
「ち‥違います‥」
これが屋敷側の布陣である。
その中を、Anbarは早足で歩いた。
ある部屋の窓を開け、笛を吹く――と、一羽のハトが舞い降りる。
「これを、姉さん達に」
託されたハトは首を傾げ、空へと羽ばたいていった。
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屋敷の外には、すでに準備を整えた怪盗LH姉妹の姿。
‥そこへ舞い降りる一羽のハト。
「Anbarからね」
赤レオタードに黒マントのアーシュは、ハトの足のポッドから紙を取り出す。
そう――屋敷のメイド・Anbarも、実は怪盗LH。体をはった情報収集が得意なのである!
紙は白亜に渡され、彼女はレオタードでは寒いらしくマントに包まりながら暗号を解読。大きなウェストバッグに詰まった夢一杯のアイテムで、情報を引き出していく。
「玄関からが良さそうなのですよ」
警備が手薄な場所を割り出し、いよいよ突入だ!
「それじゃあささっと目的のものを奪って帰りましょう。‥この後もアルバイトですし」
狼耳と尻尾をつけた咲江が言う。それよりこんな深夜に何のバイトをしているんだ、咲江よ。
慣れているので突っ込まず、アーシュは懐中時計に視線を落とす。
「時間ね。そろそろお仕事開始と行くわよ」
「よし、行こうお姉さま! 咲江! 怪盗LH出動!」
クラリアは【OR】怪盗☆マスクを装着。独特の怪盗感を醸し出している。さらに特注の【OR】怪盗☆マントも襟長めな怪盗仕様‥まるでリーダーのようだ!
そして駆け出していく―。
「あまり派手にやると、大赤字になるわよ‥」
意気揚々と向う3人を見送り、屋敷外で待機するアーシュはやれやれと溜息をついた。
そして、
「犯行予告時刻か。お気遣い無く‥私の時計は月に15秒しか狂いません」
微妙に狂う懐中時計の針を眺めつつ、白雪刑事が真面目な表情をする。
「来るか‥? LH‥」
●
辿り着いたドアには白雪の細工で
『本日休館日』
と貼ってある――が、LHはお構いなく突入。
あえて警備を薄くしてある玄関には、メイド・鈴の姿があった。
「わゎ、何時の間に来たんですか!?」
「ははは! 怪盗LH参上!」
この怪盗、忍ぶ事を知らない。華麗に飛び上がるとマントが翻った。
「お、お帰りくださーい!」
鈴はモップを振り応戦! ‥だが前髪で目が隠れて命中していない!
「む、私達の邪魔をする人が‥そんな人は縛りあげますよ?」
「えぇっ!?」
咲江が縄をもって鈴ににじりよる。
その間に風のように舞い、道化のように高らかに、クラリアは笑いながら屋敷を進む。
「ふっ! こんな罠」
四方から飛んで来る縄をナイフで切り、易々と入口突破!
一方、咲江も。
「私に縄で対抗しようとは笑止千万です」
と、罠を突破する。
そして玄関に取り残されたのは‥咲江により入念な亀甲縛りを施された鈴。豊満な肢体が、宙に吊られプランと揺れていた。
「ちょ、待ちなさ‥ゃ‥食い込‥擦れちゃ‥」
もがいて身を捩るほどに荒縄がくい込み、胸の膨らみはたゆんと揺れる。鈴は思わず内股を摺り寄せ、熱い息を吐いた。
そんな鈴の姿を愉しそうに眺め、白亜は姉妹の切り開いた道を歩いていく。
「‥派手にやっているわね」
双眼鏡で屋敷の様子を伺い、アーシュの表情が険しくなる‥主に金銭的な問題だ。
そんな長女の心配も知らず、豪快に進んでいく怪盗達!
一方屋敷の奥では。
「準備‥完了‥」
数々の銃器を持ったゼフィリスが、扉の前に立つ。
主の命令で、最後の砦として。彼女は使命を果たそうとしていた。
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「‥なんでこの時世にこんな罠を本気で仕掛ける人がいるんですか!」
1000cに立て札、数々の古典的な罠に白亜が悲鳴をあげた。
科学に頼ってばかりでは人間ダメになるという教訓だろうか‥続けて穴に落ちる。だが下に敷かれた仮反発マットは設置者白雪刑事の優しさだった。
その時、見てられない! と窓からアーシュが突入。
「まったく、こんな罠に掛かるなんて恥ずかしいわね」
「姉さん‥」
白亜を救い上げる為、手を伸ばす。
「本当にやる気あるのかしら? 半端な気持ちなら怪盗なんてやめなさい」
「くっ‥こうなったら道具で何とかするしかないのですよ」
アーシュは厳しく言うが、家族を想う心からだ。反撃しようと白亜も燃える。
一方、
「次の部屋は‥がぅ!?」
穴に落ち、粘着プールに足をとられる咲江。必死で身を捩ると、衣服が乱れ肌が覗く。
「むぅ、このくらい‥ぁ」
這い上がった途端、すぽんと脱皮。粘着液に絡まりレオタードだけ脱げてしまった‥脱出成功だが複雑な気持ちだ。
無事だったマントで素肌をくるみ、咲江はそそくさと部屋からでる。
「ごめん‥。レオタードの怪盗がマント姿の変な人になってしまいました‥」
「マントがなければ通報だったね!」
クラリアがふふふと笑う。そして、
「よく調べるのですよ」
と、白亜は『最高傑作』というカメラ搭載ネズミ型ロボットを操作し、部屋を調べていく。
命令と共に動き出すチュー君。
彼の活躍で難なく粘着ゾーンをクリアする白亜!
「ふ‥怪盗ホイホイとでも言うつもりですか。そんなのにかかってやるほど私はお人よしじゃないのですよ! ‥あ」
得意げな白亜の視界の片隅で、粘着罠に堕ちるチュー君の姿が映った。
「作るのに‥(ピー)cも掛かったのに‥」
さようなら、チュー君! 君の事は忘れない!
――そして肩を落とす白亜の神経を逆撫でするタイミングで、白雪刑事が現れた!
「見つけたぞ、LH! 逮捕だ!」
アラスカの銃口を怪盗達に向ける‥中に仕込まれたのはペイント弾。
「この大砲で私と勝負するかね?」
「待って!」
姉妹を庇うように、マントを翻したクラリアが前へでる。
その見事な仮面とマントに見惚れ、
「黒豆を使った最高級の仮面とマントやないかーい」
白雪刑事は思わず感歎の声を上げた。
その隙を見逃すはずがない。
「今だ!」
不意打ちアタックを仕掛けるクラリア―白雪の体を押し倒し、まんまと粘着部屋に押し込んでしまった!
「卑怯な!」
「ご苦労だったねぇ! ワハハハハ!」
●
その頃の屋敷主の孫は。
「おかしい‥」
この状況に疑問を感じ始めた‥‥そこへメイドのAnbarが現れる。
「さあ、安全な場所へ‥」
孫の手をとり、部屋の移動をしようとした。だが何かに気づく孫。
「‥まさか、君がっ!? こうして警備員達を誘導して‥!」
「‥バレちゃしょうがないぜ」
侵入者に気づいたとき、彼の首筋に手刀が埋まった。
とうとう辿り着いた扉の前――そこでは。
主の命令を忠実に守り、待ち続けていた彼女が立ち上がる。
「目標‥視認‥攻撃開始‥」
最後の難関、マシンガンメイド・ゼフィリスがショットガンを構え、無表情なまま怪盗達へ銃口を向けた!
「っそんなもの撃ったら危ないのですよ、主に私が!」
「みんな危ないわよっ!」
叫ぶ白亜、庇うアーシュ。そんな彼女らに、ゴム弾の嵐は容赦なく降りかかる!
「痛い‥」
咲江の唯一の生命線、マントの生地が弱っていく!
「武器‥変更‥」
淡々とサブマシンガンに替えるゼフィリス。
しかし弾が乱れ飛ぶ中を、クラリアは走り抜けた――!
「!?」
だがその時――罠が作動。
何かに突き飛ばされた衝撃で、クラリアは床に倒れこんだ。
起き上がると、さっきまでクラリアが居た場所ではアーシュが縄に絡まれている。
「ちぃっ! 私としたことがっ!?」
「姉さま!」
「いいから行きなさい!」
構わずに行けと姉は言う。だからはもう迷わない。
クラリアは再び走り、そこへ咲江も駆けつけて。
「今助けます‥」
マントからナイフを取り出した。その際ポロリしようが構わない、姉妹なのだから。
「理解‥不能‥」
血の繋がらぬ姉妹の絆を見せられ、一瞬ゼフィリスの動きが止まった。
「指令‥実行‥」
そして直ぐに銃弾を放つ――スカートの裾が翻り、白い太股が露になる。
だが。
クラリアはもう怯まなかった。徐々に二人の距離が縮まっていく――。
「‥‥」
マシンガンを発砲しながら、ゼフィリスは雇い主から預かったスイッチを思い出していた。
それは怪盗捕縛の罠を発動する、切り札――とうとうそれに手を伸ばしたその時。
「!?」
クラリアの目の前から消えるゼフィリス。瞬間白い何かが見えた。
「‥これは一体?」
唖然とする怪盗達‥‥なんとゼフィリスの体は穴に落ちていたのだ!
「任務‥失敗‥無念‥」
そういえば『場所を移動してから押せ』というのを失念していた。
ゼフィリス、無念。底は粘着プールで、もう脱出は不可能だろう。
「‥食らうのです」
最後に白亜が催涙弾を穴に投げ込み、なんとか砦を攻略したのだった。
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姉達が突破したのを知り、Anbarはメイド服を脱ぐ‥と、レオタードのスレンダーボディが現れる。
しかしその変身を、屋敷主が目撃!
「!?」
目を丸くする‥‥胸が無いではないか!
正直怪盗だった事より、女の子じゃ無い事にショックを受けた。
「いや‥超Aカップという可能性もある!」
屋敷主は真偽を確かめる為Anbarに抱きつくと、その腰布を捲り上げる―!
「俺に触るなこの○○オヤジ‥!」
その醜い顔に、Anbarの強烈右フックが炸裂した。
「義母さんの為とはいえ、こんなことになるとはな‥」
「Anbar! 何かされなかった?」
「‥ああ。‥まあ、早い所お宝を取り戻す事にしようぜ」
そして5人揃ったLHは、宝の部屋へ―。
しかしそこには服が破れほぼ半裸・縄痕もついてセクシーになった鈴の姿。
「こ‥ここを通す訳にいき‥ません」
「‥また縛られたいですか?」
「‥違います! 通られちゃったら坊ちゃまにピーやピーな事されちゃうんです‥」
モジモジ赤面しつつ、咲江の問いに恥ずかしい返事をする。
「や、決して期待して想像してる訳じゃないですよ!? ‥行きます!」
―飛び掛る鈴。
―そして、迎え討つ咲江。
半裸メイドと裸マントの因縁の対決がはじまる――!
‥と思われたが。
「きゃう!?」
縄の罠発動!
宝箱の前でまんまと捕まった鈴は、再び宙吊りのあられもない姿を晒すことになるのだった‥相変わらずよく食い込む体だ。
「ひゃっ‥胸絞られちゃ‥」
「喜んでるみたいだし‥放っておきましょう‥」
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部屋の中には宝箱と、設置された木製パズル。
「これで解除かしら」
「解除するのです」
アーシュと白亜は熱心にパズルに取り組む――が。
「あ、開いたよ宝箱!」
その隣でクラリアがアッサリと宝箱をあけた。意味の無いパズルとは小癪な事を!
「やったな!」
「これを孤児院に返せばOKですね」
―こうして形見の『深海の秘宝』を取り戻した!
後は脱走するだけだ!
「遅かったか!」
白雪刑事が部屋に駆け込むと、そこはもう空っぽだった。
「さらばだ諸君! この世に秘宝が、悪がある限り! 我々はまた現れる! ワハハハハ!」
‥頭上でクラリアの声が響く。
「はっはっは、それではさらばだ。また会おう」
咲江の棒読み台詞も‥‥。
――こうして怪盗LHは夜に消えた。
「行ってしまいましたね‥」
白雪刑事が屋敷主に語りかける。
「奴らはとんでもないものを盗んでいきました」
「ああ‥秘宝を‥」
「‥貴方の心です」
突然の言葉に、屋敷主は首を捻った。そういえばなぜだろう、Anbarきゅんの事を思うと胸が苦しくなる。
(「‥この気持ちか!?」)
盗まれた物>深海の秘宝・心
与えられた物>ショタ属性
実害が出た物の、なぜか屋敷主は被害届けを出さず丸くおさまったそうな。
そして、
「申し訳ありません、坊っちゃまぁ〜」
鈴がどんな破廉恥なお仕置きをされたのかは内緒です。
いつもの慌しさを取り戻した屋敷では、ゼフィリスが掃除に勤しんでいた。
●
こうして形見の宝は、孤児院の老婦人へ届けられた。
「喜んでくれるかな」
姿は見せず、咲江はそっと去っていく。
一方で、
「そーいえば、情報をバラすと脅せばこんな苦労しなくても済んだのでは‥」
今更のように気づく白亜。そしてクラリアは
「果たして、次の怪盗LHの獲物は!? ‥な〜んてね」
と、クスッと笑い怪盗☆マスクを外す。
「姉さん‥」
「次は当分ないわ」
Anbarとアーシュは顔を見合わせ、苦笑するのだった。