●リプレイ本文
インナーなんて普段は見えやしない、だからといって疎かにはできないのだ!
依頼を受け、LHの下着種類不足に嘆く女傭兵達がその日一堂に会した。
「初めまして。今回お手伝いさせて頂くナンチャッテ傭兵の香原唯です」
茶色のおさげを揺らし、香原 唯(
ga0401)がペコリと挨拶。
そしてアオザイ姿で現れた佐倉・咲江(
gb1946)は、友人の姿を発見し瞬きする。
「あれ、レイチーも参加してたんだ‥。驚いた‥」
「サキも居ると思ったからね♪」
レイチェル・レッドレイ(
gb2739)が座る椅子の隣に、腰掛ける咲江。向いには、柚紀 美音(
gb8029)の姿が。
「あ、美音も。前回は楽しかったね。今回もよろしく‥」
「はい、よろしくお願いします」
こっちも知り合いのようだ。類は友を呼ぶ。
そしてメンバーの顔を見渡し、
「結構集まったのね‥やっぱり思う事は同じよね」
と、シュブニグラス(
ga9903)は黒髪をかき上げる。
伊万里 冬無(
ga8209)はコクリ頷きつつ。
「やっぱり。見えない所にも是非とも拘るべきです♪」
メイド服のスカート裾をヒラリと捲くれば、そこから白い太股と共に戦闘用勝負下着が覗いた。
こうして『LHの下着事情を救う会』、略してLSSの打ち合わせがはじまる。
「今現在ショップで手に入るものも限られてますし、どうしても通販とかに頼らないといけませんもの。自分好みのデザインの物を作れるというのは良い機会ですわね」
問題点を述べるクラリッサ・メディスン(
ga0853)。彼女が考えたインナーは『外出用にも使えるビスチェ』だ。
「見せる下着なんですね」
「そうですわね。合わせる上着に合わせて色を変えてみるのも良いですわ
と、伸子とクラリッサが話し合う中、」
「あえてセクシーなビスチェを展開するのも良いかもしれないわ」
シュブニグラスが、黒を基調とした大人のレースビスチェを描いていく‥‥勝負下着にもなりそうだ。
描き終えると、彼女はセクシーな笑みを浮かべ。
「高村さんにも着てもらいたいわね。一着サンプル作ったら?」
問いかければ、明日にでも作ります! と張り切った声が返る。
そしてセクシービスチェを見たクラリッサも、『夜の下着』が欲しいとふと思う。
「フォーマルなドレスの下に着込むスリーインワンも欲しいですわね‥」
ドレスのラインは崩さないけれど、夜には男性の視線を釘付けにするような、セクシーな下着へと化ける物を。――と、熱心にデザインを考えるクラリッサ。只一人に見つめてもらう為、情熱を燃やしていた。
一方、
「他のメーカーに無い斬新なジャンル開拓と合わせて、LHでの需要の高さを突いていくのがポイントだと思う」
と切り出すエリノア・ライスター(
gb8926)は、ペンを回しながら思案顔。
「‥実はLHじゃ、ふんどしを穿く女性が少なくねぇ。『ふんどしーちょ』という流行語もあるくらいだ」
「そうなんですか!?」
流石に驚く伸子。流行ってるかどうかは置いといて、あることにはあるらしい。
「そこで、だ。もっと肌に優しい‥そうだな。天然素材生地を使って、可愛く、時にはセクシーに‥『女性用ふんどし』なんてものも作れるんじゃないだろうか」
喋りながら、ペンが紙の上を滑り出す。伸子も真っ青な速さで、シンプルなデザイン、スケスケアダルティなもの、フリルの入った可愛いもの‥それらをスラスラ書き起こしていくエリノア。
「ブラ付きなんですねぇ」
「そうだ。女性用なら、ブラもねーとな。そこが男性用との最大の違いだ」
自分の仕上げたデザインを見て生唾をのむエリノア‥会心の出来だ。フリルが裸エプロンみたいに見えて、かなりエロいと気づいたらしい。
続いては唯。
「LHには私のような日本から来た女性も結構いらっしゃるので。日本愛好家向けの和装インナーをデザインしたいと思います」
褌ではありませんけど‥と笑みつつ。
「上は肩出しヘソ上の短い肌襦袢、下は実用性から普通のショーツで‥どちらも布の合わせを右前にして着物っぽい感じにしてみてはどうでしょう?」
唯の話を参考に、描いていく伸子。
「後は‥肌触りが優しい柔らかな乳白色のちりめん生地をベースにして、ワンポイントのビーズや結び紐も使用して和風感アップです」
「可愛い! 刺繍とか入れてみません?」
「刺繍は‥そうですねぇ。今の季節だと秋の七草のひとつである撫子なんてどうでしょう。名前はそのまま『大和撫子』です」
和気藹々とデザインしていく。あまり下着っぽくはないが、『淑やかに見える』和風下着ということで人気が出そうなデザインだ。
「‥これは過激すぎませんかぁ?」
冬無の案を描きおこし、伸子は顔を真っ赤にする。
それは首筋から谷間、臍まで大胆にカットした、若干体を締め付けるボンテージクロスラインテディ。背中が露出している上にTバックなんて‥と、褌は平気だったのに、ここにはちゃっかり反応する伸子。
「傭兵ですから。こう、ピチっと身体にフィットするのが良いんです♪」
「そ‥そうなんですか」
それが良いと豪語する冬無に押され流される。
又部屋の片隅では、自分のバストサイズを測る咲江の姿。
「えっと、私のサイズは‥ん、あまり成長してない‥」
控えめな胸のサイズはあまり変わらず、がっかりしたような、そうでもないような。
そして咲江は、赤い薄手のキャミ&ショーツのデザインと共に自分用の何かを頼み込み、そっとレイチェルのデザインを覗き見た。
「レイチーは‥普通に可愛い?」
「ふふ、可愛いデザインでしょー」
彼女のデザインは、パステルオレンジ生地をフリルで飾った、子供っぽくも可愛らしい物。セクシー路線で攻めるかと思っていたが、意外である。
そしてレイチェルは伸子の耳元に唇を寄せると、何かを囁いた。赤くなる伸子の顔‥果たしてどんな仕掛けを仕込んだのやら。
最後に、美音のデザインだが。
「サンプルが出来てからのお楽しみですよ〜」
と言う事らしい。
「出揃った感じね。後は‥スパッツを提案しようと思うわ」
話も酣な頃、シュブニグラスが黒のシンプルなスパッツを提案。
「傭兵は戦闘する事が多いから、やはりスパッツは必要だと思うわ」
「スパッツ? そういえばあったような‥」
首を傾げ、部屋の隅の箱を探る伸子。‥あった、白スパッツ。
「やっぱり黒がいいわね。実用的にホルスターのような、腰周りにもポケット的な物があるタイプね」
眉根を寄せるシュブニグラス。白スパッツは、少しお気に召さなかったようだ。
一方、
「そういえば、ブルマやスク水って下着扱いなんだよなぁ‥これを直穿きだというのかっ!?」
「‥あ、気に入ったなら差し上げますよ?」
スパッツ(白)を手に取り興奮気味なエレノアを見、のほほんと勘違いする伸子だった。
●
その日の夜、伸子は無駄に頑張って全てのサンプルを作り上げた。
翌日連絡が入り、再び集合するLSSメンバー。
まず更衣室から出てきたのは、ビスチェを纏ったクラリッサ。その深い胸の谷間と、露な首元の肌が美しい。格好よく、活動的な見せ下着である。
「活発な女性なんかに受け入れられると良いのですけど‥」
「わぁ‥とても似合ってます」
モデルさながらなクラリッサの姿に、伸子は惚れ惚れとしていた。
「ふふ、有難うございますわ。女性らしさを保ちつつも、格好良く振る舞いたい時もありますものね」
唯やシュブニグラスの意見もきき、クラリッサは鏡で出来を確認する。
「あなたは試着なさらないの?」
「私は温かい飲み物用意して待ってますね」
風邪をひいてはいけませんから‥‥と、コーヒーセットを運ぶ唯。上手くはぐらかした。
一方エリノアは、フリルの褌を広げてみる。
「お、これが褌かっ」
出来に満足し、ニヤっと笑う‥まるで悪戯を思いついたような表情だ。
「‥で、もちろんあんたも試着するよな?」
「え‥私は褌はちょっと‥」
伸子に詰め寄るエリノア。逃げる伸子。――暫くして「きゃぁ!」と悲鳴が響く‥南無。
こんなドタバタの中、今度はセクシーな夜の下着を着けたクラリッサ。
「ふふ、こっちも素敵じゃない」
シュブニグラスが、彼女のスリーインワンの出来を確かめる。ガーターベルトが特にセクシーなその下着は、大人な二人にとても似合うだろう。
「昼間は淑女、夜は‥‥、というのは殿方の幻想ですけど、幻想に付き合って差し上げるのも良い女性の責務ですわね。夢を見させて差し上げるくらいは宜しいですわよね」
妖艶な笑みを浮かべ、
(「これならば、旦那様もいちころですわね」)
クラリッサは愛しい人を思い、そっと目を閉じる。
「けれど‥思ったより良い出来でしたわね」
「ええ本当。こっちの白いビスチェも良く出来ているわ。このスパッツも‥」
シュブニグラスも更衣室でチェックを始める。商品として世に出せるかどうか、その目は真剣そのものだ。
一方、女の子ばかりだから恥ずかしくないもん! とお部屋で脱ぎ出すレディ達。
「レイチェルさん‥この胸は本物ですか? これは調べなくてはいけません‥」
露になったレイチェルの豊かな膨らみを、掬い上げる美音。しっとりと重い‥これは本物だ!
「お返しにボクも調べちゃおっかな♪」
10本の指を巧みに動かし、揉みしだくレイチェルも負けてはいない。こんな触り合いっこも女の子の特権、決して嫌らしくなんか無い。嫌らしくなんか。
「試着ターイム。‥これは誰の作った下着だろう?」
そして咲江がテディを手にとる‥どう見ても冬無デザインの物だ。チラリと横を見ると、冬無が同じ下着を試している。その後姿は褌も真っ青な露出具合。
「この締め付け‥堪りませんです♪」
程よい拘束感にうっとり呟く。女性には不要な股間部のファスナーも、バッチリだ!
「‥しやすそうだね」
あえて何がとは言わない。
咲江も試着しようとするが、‥冬無程胸が無かった。さてどうする。
「寄せれば変わりますですよ♪」
冬無が両手を咲江の脇下に差し入れた。羽毛のような感触の手袋で敏感な部分を撫でられ、咲江の体がぴくんと揺れる。‥こうして脇辺りの肉を寄せ集めて上げることに成功!
「うふふ〜♪ 良くお似合いだと思いますですよ♪」
作り上げた谷間に満足し、デジカメを手ににたりと笑う冬無。
「がぅ!? 写真も撮るの? ちょっと恥ずかしい‥」
「やっぱり着た姿は納めておかねばです! ささ、両手は頭の上で〜♪」
ここぞとばかりに、いろんな角度や体勢をバシバシ撮影する冬無である。結局「‥後でその写真頂戴ね。‥特にレイチーの分を」と咲江も開き直った。
そしてレイチェルは、咲江デザインを試着。
「‥ちょっと透けてる。さすがに薄すぎた?」
咲江の言葉に首を振り、メイド服を着込むとクルリと回ってみせるレイチェル。スカートが翻り、透けたショーツがチラリ♪
「うふふ〜、どーかな? 似合ってるー?」
頬を赤く染め咲江はコクリと頷く。そこへ「似合ってますですよ♪」と冬無の撫で攻撃が始まる――床に転がり絡み合う二人。
その様子を楽しげに眺めつつ、美音はレイチェルデザインの可愛らしい下着を身に着ける。
(「‥ん、この感触‥」)
しかし少し歩いただけで、痺れるような快感に襲われた。見た目は普通の下着、だがその内側に秘められた罠に嵌りカクリと体が崩れ落ちる。
床にへたり込む美音の後ろに近づいたレイチェルは、その肩に顔を近づけて。
「ふふ♪ ちょっとこの辺やこの辺に突起付けただけだよ? ボクが想い込めてデザインした下着、気に入ってくれたかなぁ」
言いつつ、手は美音の胸の頂へ。
美音が熱い吐息をあげたその時、カシャっとデジカメ音が。
「は‥はずかしいですよ‥」
真っ赤になる美音――だが彼女もやられてばかりではない!
冬無が美音デザインの下着を着けると、反撃が始まった。
「これは斬新なデザインです♪」
それはショーツとブラに生クリームや苺を模したアクセサリーが飾りつけられた、所謂スイーツデコのような下着。
「テーマは私を食べて‥ですよ?」
クスっと笑い、美音は冬無を押し倒すと‥その体に跨って。
「美音のデザインは寝そべるのが一番いいポーズになるんです! おいしそうですよ〜」
「あぁん♪」
クリーム部分を啄ばんでいく!
すると咲江も負けじとレイチェルに寄り添って。
「レイチー、帰ったらこれ着て‥しようね?」
「サキもボクの‥‥試してね♪」
小声で約束を取り付けていた。
――時同じくして、
「うう‥無理やりなんて酷い‥」
褌を穿かされた伸子は部屋の片隅でさめざめと泣いていた。――だが急にふっきれる。
「エリノアさんも着るべきです! この葉っぱ下着を!」
それは「葉っぱ一枚あればよくね?」‥と、エリノアがなんとなくデザインした物。ショーツは葉っぱ一枚、ブラは二枚、ちゃっかりとサンプルが出来ている。
「は? これは‥ちょっと、な」
詰め寄られ、じりじり後退するエリノア‥‥だが背中に壁が当たる。絶体絶命!
「‥すまん、ついカッとなってやった。若干後悔している」
「問答無用ですー!」
こうして二人は仲良く着せ替えするのでした。
―そう、レイチェルがにぃっと笑いながら近づいているのにも気づかずに‥。
そんな混沌の中でも、
「皆さん、風邪をひいてしいまいますよ?」
お茶を飲みつつ、唯はのんびりしていた。
「あ、そうです、伸子さん。いくら良いデザインがあっても、皆さんに使って頂くには為には宣伝が大事ですよ?」
「え‥宣伝?」
「はい。そこで、来るべき日に備えCMの絵コンテ切っておきました」
じゃん、とスケッチブックを取り出す唯。
そこには。
〜
キメラと対峙する男女の傭兵。
女はキメラの攻撃をかわすが、破れた服の隙間からチラッと下着が!
その時、男の心臓が高鳴った。
無事に殲滅を終え、男は女から目を逸らしつつ、
「おまえ‥可愛いとこあるじゃん」
と、照れくさそうに言う。
そこで初めて服が破れたことに気づいた女は、頬を赤らめつつ微笑んだ――。
おしまい
〜
‥‥キュンとするストーリーだ。
「どうでしょう?」
「あら、上手く描いてるわね」
驚くシュブニグラス。クラリッサもコンテを覗き、
「確かに宣伝も必要かもしれませんわね」
「後は‥あの娘を説得する事かしら。‥難関かもしれないわね」
いつの間にやら、話はCM、そして売り込みの方向へ――。
そこまで展開することを考えていなかった伸子は、ただオロオロするのだった。
――こうして終わったLSSの集い。
「また声を掛けて下さいませですよ♪」
「応援してるわ。頑張ってね」
ヒラヒラと手を振る冬無。是非頑張ってほしいと、激励するシュブニグラス。
「皆さん有難うございました〜」
8人を見送り、ペコリと頭を下げる伸子。
果たしてデザインされた下着は、LHで売られるのか――!? それは伸子の腕にかかっているのかもしれない。