タイトル:クリスタルダスト2マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/24 06:30

●オープニング本文


 俺の名前はヘルマン・セプテンフォー・セプテス・ステッペンウルフ、誰が名付けたかは忘れたが、皆、俺のことをそう呼ぶ。
 先日まで荒れ狂っていた吹雪も収まって、柔らかな日が差す雪原の中に立つ基地。こちらも誰が呼んだか氷塵基地。激戦地に主力を持ってからちまったもんだから、おいぼれと餓鬼ばかりが集まっているしみったれた基地だ。
 こんな基地、陥落させたって意味なんてあまりねぇと思うんだがなぁ。
「敵、ヘルメットワーム四! 味方の防空領域を突破しました!」
「敵基地到達まで二分! 傭兵隊は至急出撃し迎撃せよ!」
 天気が晴れたと思ったらすぐこれだ。
 慌ただしく老人と子供の整備兵が駆けまわるハンガー、
「おい、今日こそはちゃんと整備されてんだろうな?!」
 俺は愛機のコクピットに入り込みつつ叫んだ。
 鼻の頭を油と煤で汚した少女整備兵が俺を仰ぎみて、
「うん、今回は知覚兵器使っても暴発して爆散したりはしないよ!」
 満面の笑みでそこはかとなくかなり恐ろしい事だったような気がする過去からの進歩を保証してみせた。
「そうか、良くやったガキンチョ」
「でも多分ミスタ・ヘルマン3S(とぅりーえす)の機体だと出力とか装甲強度とか80%くらい落ちてると思う!」
 神の名にかけて! 俺は、いったい、何処から突っ込みを入れれば良いんだ?
 出力はまぁ良いとしよう(よくはないが)一体どこをどう整備したら装甲が80%も脆くなったりするんだ? ネジ止め忘れてんのか?
 それより、なにより、おお、UPCよ、カンパネラ学園よ、この素晴らしきクリスタルダスト基地よ!
 貴様等、俺達を殺したいのか? そうか、殺したいのか。殺したいんだな。上等だ、死んでも死ぬもんか。
 とりあえず俺は言った。
「俺の事はステッペンと呼べ」
 鍛えに鍛えあげた筈の愛機に乗ってハンガーの外へと進み出る。
 よぼよぼの爺さんが振る合図と共にガタガタの滑走路を走り、離陸。
 一つだけ言える事がある。
 この基地には最新鋭機や愛機は持ちこむな。
 今日の空は、なんだかやけに霞んで見えるぜ。

●参加者一覧

遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
リュドレイク(ga8720
29歳・♂・GP
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
テト・シュタイナー(gb5138
18歳・♀・ER
フィルト=リンク(gb5706
23歳・♀・HD
エリノア・ライスター(gb8926
15歳・♀・DG
希崎 十夜(gb9800
19歳・♂・PN
方丈 左慈(gc1301
36歳・♂・GD

●リプレイ本文

「出撃ね、了解!」
 HW接近の報せを聞き、遠石 一千風(ga3970)は基地を駆け、ハンガーへと到着。そしてKVに乗り込もう――として思わず足が止まる。
「‥‥え?」
 おかしい。
 何かが、おかしいような気がする。
 愛機のXF‐08Bを良く見る。XF‐08B‥‥XF‐08B‥‥XF‐08B?
 自分のヴァーユは、こんなに穴が沢山空いていて、翼が妙な感じの角度で曲がっていて、むしろ妙な箇所で増えていたりしただろうか?
「わ、私の機体がどうして‥‥こんな‥‥」
 緊急事態であるのにも関わらず愛機の姿に遠石は半ば呆然として立ちつくす。ある意味非常に緊急事態。
「馬鹿な‥‥これが整備って言えるのか‥‥?」
 似たような症例は他でも起こっているらしい。声のした方向へ顔を向けると希崎 十夜(gb9800)が彼の愛機F‐201A‐Rei−Crusader−を前にして呆然とした様子で立ち尽くしていた。
「‥‥‥‥今まで色々な所に行きましたけど‥‥こんな状況は初めてですよ‥‥一体何をどうやったらこんな事に‥‥‥‥」
 立ちつくす二人の傍らで一足先に遠い眼をしているのはリュドレイク(ga8720)だ。歴戦の傭兵でも未だかつてない状況に放り込まれる事はあるらしい。男はこの整備を評して「ある意味才能ですね」と呟く。ちょっと背中が煤けているように遠石と希崎には見えた。
「前回の整備不良はまだ何とかなるレベルでしたが、今回はどうしてさらに酷い状態になっているのか‥‥」
 ティリア=シルフィード(gb4903)が頭痛でもするかのようにこめかみを抑え呟いている。彼女は前にも一度この基地から出撃した事があったのだ。
「‥‥整備のノウハウとかって、普通は蓄積されてより良くなるはず‥‥ですよね‥‥?」
 そんな問いかけには「知覚兵器撃てるようになったよ!」とVサインする子供達。初老の男がくすんだ瞳に煙草を咥えながら言った「人生は等価交換だ」と。得る物があれば、引き換えに何かを失うものなのだ‥‥と。
 そういう次元の問題ではない、と思うティリアである。
(「敵と戦う前に空中分解とか笑えない冗談は、流石にない‥‥よね‥‥?」)
 ありえないとは言い切れない。不安を抱えながらコクピットの中へと入る。いかな傭兵とはいえここまで死を身近に感じる事も珍しい。
「初めてのKV戦がこんな酷くてラリホーな戦いに成るたぁ、流石の俺も予見できなかったぜ‥‥どうしてこうなった」
 方丈 左慈(gc1301)が眠そうな目をして額を抑えながら呟いている。
「ってもまぁ、戦場ならアクシデントは付き物だ」熟練兵士であった壮年の男は呆然としている一同をゆるりと振り返るとそう言った「現実それで戦うっきゃねぇんだから、頑張るしかねぇだろうよ」
「そうだな、OK。何でこうなったかは後で、じっくりと聞かせて貰うとするか」
 風防をあげてコクピットの中に入らんとしつつ整備担当に言うテト・シュタイナー(gb5138)。
「ほげ?」
 耳が遠いらしい腰の曲がった老人が手を顔の横にあてて聞き返す。
「‥‥覚えてろよ貴様っ☆」
 コクピットの中に入りつつちょっとひきつった満面の笑みを浮かべてテトは言う。自分の機体を整備したのは御老体か! もしも耳が遠い以上にボケてたらこの怒りは何処に持ってゆけば良いのか。
「嬢ちゃん。風呂とビールを用意しておけ!」
 エリノア・ライスター(gb8926)が操縦桿を握り、風防を下げながら言った。十年前に比べればまだマシだ、と思う。戦えはするのだから。すったもんだの末に傭兵達のKVはハンガー内から滑走路へと発進してゆく。
「エリノア・ライスター! アルトズィルバー、出るぞ!」
 機体がぼひゅん、となんだかいつも少し――いやかなり――違う音を発しつつ、いつもよりおよそ八割減の加速度でデコボコした滑走路を駆け、浮き上がり空へと昇ってゆく。
「フェニックスライダー、希崎 十夜。出撃するッ―!」
 F‐201Aに搭乗する希崎もまた愛機を走らせ舞い上がる。
 かくて、九機のKVが北の空目指して飛び立っていったのだった。


 上空。
「世の中には『笑うしかないような状況』というものがありますが――」
 フィルト=リンク(gb5706)の声が無線に響いている。女は言う。
「――それはたぶん、今のような状況を指していうのでしょうか。出力は上がらず、フレームは嫌な音を立て、弾薬だって半分も積めていない」
 ふっ‥‥はっ、あはははははは! という堪えきれないような笑い声が聞こえて来る。
「ああ、楽しい! まさかこんなグリーンランドの辺境でこんな気分を味わえるなんて! ふっふふ‥はぁー‥」
 普段よりも理不尽に死が近い状況でなかなかハイな気分になっているらしい。子供のやったことを恨めるはずもなく、ただ楽しさだけがある。
「今の俺様たちは、怒りの矛先を向ける相手を欲している‥‥そう、欲しているのだ!」
 テトが吼えた。この怒りはバグアにぶつけるしかない。
「そうだな、奴等には悪いが鬱憤晴らさせてもらおう―‥‥」
 希崎が言った。あまりの整備のせいで機嫌が悪いらしい。
 一方、
「てめーがスリーエスのヘルマンか!」
 エリノアが少し離れた位置を飛ぶ男を見やり無線に言っていた。
「ステッペンだ」
「‥‥なんかどこかのコンビニみてーな名前だな。まぁいいや、よろしくな、ヘルマン!」
 と言って、左右に翼を傾けてバンクサインを送る。
「俺の事はステッペンと呼べっ!」
 そんなこんなを話しつつ、
「――へぇ、懲罰ですっとばされたのか」
「ああ、まったくお互いついてねぇな。こちとらグレプカで中破した翔幻だったから、動くようにするには苦労したぜー」
 とエリノア。
「まぁ丁度良く、側に同型機があったから修理部品には困らなかったけどよ! はっはっは!!」
「そりゃ不幸中の幸い――って、ちょっとマテ、なぁ、まさかとは思うんだが」
「おっと、一時に反応敵機、残念だがおしゃべりはここまでだ」
 ES‐008‐2鋼狼に搭乗する方丈が言った。空の彼方にHWの影が見える。数は四。
「‥‥肉眼で照準つけた方が早いなこりゃあ」
 照射の反応にエリノアが言う。
「囮につかせて至近距離から掘るしかねぇーだろ。ついてこい、ヘルマン。ドイツ人の空戦ってやつを見せてやらぁ!」
「了解、援護する。いきなり堕ちんなよ!」
 傭兵達は手早く作戦を打ち合わせるとエリノアと希崎の二機が前に出てステッペン機がその少し後ろについた。そしてまたその少し後ろのラインに六機のKVが並んで飛ぶ。
「味方に掘られるなよ。三秒後に左にブレイク」
 現在既にこちらは音速以下だがそれでも一瞬で距離が詰まってゆく。
 相対距離六〇〇。常ならK‐02やドゥオーモの射程内であったが今は有効なのはその半分以下になっている。距離が詰まる。
 相対四〇〇の少し前、ステッペン機は幻霧発生装置を起動させた。周辺直径一〇〇メートル範囲へと勢い良く濃霧が噴出してゆく。
 距離四〇〇、HW達が一斉に赤く輝く。狙いはまずは先頭の二機のうち一機。脆そうな方の機体、翔幻エリノア機。実際は皆ぼろぼろだがさすがにHW達も傭兵達がそんな状況に陥っているとはこの時点では夢にも思っていない。もしもAI柔軟な思考が出来たとしても『今回の連中は全機やけに飛ぶのが遅いな? 何かの作戦か?』と思うくらいであろう。四機のHWはプロトン砲を爆裂させ一斉に十六条の光線を飛ばす。
 エリノア機、ブレイク、左に急旋回。煌めく霧の中に飛来する淡紅色の光波を次々に掻い潜ってかわしてゆく。方丈機のジャミング中和も効いている。援護を受けつつ出力がさっぱり上がらないアルトズィルバーで十三発をかわした。だが流石に全てはかわしきれず三条の閃光がエリノア機を呑み込む。猛烈な勢いで装甲が吹っ飛んでゆく。損傷率六割。四機のHWは即応し慣性を制御してエリノア機の後方へと旋回する。
 相対距離二〇〇、
「CD8、FOX‐3!」
 方丈機は四機のHWを全てロックオンするとK‐02小型誘導弾を発射。総計二五〇発の誘導弾が煙を噴出し空を埋め尽くして飛ぶ。赤く輝いている四機のHW達、襲い来る誘導弾の雨を各機素早く前後左右にスライドしてかわして、避けて、翻って潜り抜け、回避して、さらにかわした。
「CD1、FOX‐2!」
「CD2、FOX‐3!」
 方丈機の攻撃を合図に遠石がHWの一機へとホーミングミサイルを撃ち放つ、二連射。リュドレイク機もまたPフォースを発動させI‐01『パンテオン』を発射した。百発の誘導弾が解き放たれる。
「アイドル舐めんなゴルァァァ!!」
 テトが叫んだ。本当にアイドルか。きっとブチ切れ系アイドル。新ジャンル開拓なるか。ブーストを発動しツインブースト・OGRE/Bも起動、ロックオンしている一機へと向けてUK‐10AAM――実際は5になっているが――でフォックス2。
 ティリア機はファルコンスナイプを発動させ127mm2連装ロケット弾ランチャーを三連射、フィルト機もHWの一機へと向けてUK誘導弾を二連射しドゥオーモを解き放つ。
 HW達は二連のホーミングミサイルをかわし、六連のロケット弾が二発命中して爆裂を巻き起こし、二連のAAMと百連のドゥオーモをかわして、百発のパンテオンを悉くかわす。ツインブーストから放たれた誘導弾が二発HWに喰らいついて爆発を巻き起こす。一発は回避された。
「全力、全開――『焔迅』轟破ッ!」
 希崎機、ブーストを発動さらにオーバーブーストAを発動させエリノア機の後方へ旋回したHW達の一機へと捻り込む。機銃の猛射から対艦ミサイルを撃ち放った。HWは爆炎を斬り裂いて翻り、襲い来る二十発の徹甲弾と対艦誘導弾を悉くかわした。速い。ステッペン機もバルカンで一機へと攻撃を仕掛けているがこれも全て外れに終わる。エリノア機は意識を防御を固めて囮に徹している。遠石機が先にテト機の攻撃を受けたHWへと肉薄しバルカンで射撃し、リュドレイク機がティリア機の攻撃を受けたHWへとポッドミサイルを四十発撃ち放つ。HW達は翻って回避。
 次の瞬間、赤く輝いていたHW達からふっと輝きが失せた。安価なだけあっていきなり練力が切れたらしい。慣性と重力に引きづられ回避力が激減する。二機は継続してエリノア機へと攻撃を仕掛け、二機は希崎機へと翻る。
 エリノア機は濃霧を噴出しながら回避に専念して飛ぶ。後背にHW達がぐんぐんと迫る。ステッペン機がやや後方から誘導弾を三連射しているがHWは濃霧の中でスライドして回避する。二機のHWが四連のフェザー砲を爆裂させる。二十四条の紫色の光線が襲いかかった。エリノア機、急降下して回避せんとする。避けた避けた当たった避けた直撃直撃。鋭く放たれた十二条の紫光に撃ち抜かれ損傷約十二割。翼が根元から砕けて吹き飛んだ。翔幻が黒煙を噴き上げ錐揉み雪原へと落下してゆく。大破。
 希崎機へと回頭した二機のHWも同様に紫色の光線砲を爆裂させる。希崎、エリノア機のように強力な防御スキルは無い。まともにやってはフェザー砲は避けられそうにない。
「やってやれない事は無い!!」
 裂帛の気合と共に、迫り来る閃光に対しジェット噴射ノズルを調節して愛機を横にスライドさせつつ猛烈な赤光に輝かせる。『炎舞』を発動、Rei−Crusader−が唸りをあげてその姿を変えてゆく。空中変形だ。空気抵抗を利用して急減速し避けんとする狙いである。超・整備不良の機体でそれをやろうとはクソ度胸。いけるか? 猛烈な空圧に耐えて変形、成功。空中分解する事もなく無事に完了する。閃光が迫る。希崎機急減速。八条の紫光が側面手前を突き抜けてゆく。かわした。瞬後十六条の閃光がReiを直撃する。オーバーシュートする前に撃って来た。HWもKVも速度が遅い。損傷率八割七分。なんとか残した。華麗にはいかなかったが、全部当たれば落ちてたであろうから上々だろうか。
 遠石機、引き続きHWを追いかけ機銃で猛射、弾丸の嵐を解き放つ。攻撃に気を取られていたHWが撃ち抜かれてゆく。
「Merkabah、砲門オープン、システム起動‥‥! 虎の子の一発、喰らえッ!」
 ティリア機KM‐S2Merkabah、ファルコンスナイプを発動させ200mm4連キャノン砲を猛射、十二発砲弾が音速を超えて飛びHWに直撃する。十二連爆裂、全弾命中。HWの装甲が穿たれ激しい漏電を洩らし次の瞬間、大爆発を巻き起こして四散した。撃墜。
 フィルト機、希崎機へと攻撃を仕掛けているHWへと放電装置から二連の雷撃を飛ばし、誘導弾を撃ち放つ。
「すっくらーっぷにしてやんよー♪」
 良い笑顔でテト。合わせて機関砲で猛射する。HWはスライドするも電磁嵐にからめとられ、誘導弾に喰らい突かれ、銃弾の嵐に穿たれ爆裂を巻き起こす。方丈機の援護が効いている。全弾命中。
 HWは攻撃を受けつつも希崎機の上を突き抜けてゆく。希崎、間髪入れずバルカンを構えHWの背へと撃ち放ち二十連射。十発命中、同時に赤く輝き空中変形、バーニアを吹かせて復帰する。
(「まさかこんな旧式のHW相手に苦戦するとは、思いませんでしたね」)
 リュドレイク、濃霧を抜けたHWへと迫りフォースを起動させつつポッドミサイルを撃ち放つ。次々に命中して猛烈な爆発を巻き起こした。衝撃に揺らいでいるHWへと方丈機は機銃を猛射しながら突撃し交差ざま剣翼でかすめ斬る。入った。弾丸が穿ち刃が火花を撒き散らしながら装甲を削り取る。だがまだ堕ちない。
 HWの一機は翻ると希崎機へと閃光を爆裂させ撃墜。二機のHWはステッペン機へと二十四連爆裂、撃墜。フェニックスと翔幻が爆裂する火球と化して落ちてゆく。
 遠石とティリア機は無傷のHWへと攻撃を仕掛け、フィルト機はMブーストを発動させて前へ。新たに囮になる腹だ。テト機はツングースカで猛射してHWに痛打。後一押し。リュドレイクは方丈機と共に攻撃を継続しフォース継続で破壊力を炸裂させHWを撃ち抜き叩き落とした。
 二機のHWがフィルト機へと猛攻をかける。フィルトはブースト機動でなんとか残しテトが射撃して一機撃墜、残り一機へと遠石、ティリア、リュドレイク、方丈が猛攻を仕掛ける。
 撃たれつつもHWは耐えて再度フィルト機へとフェザー砲を爆裂させて叩き落とす。
 だが次の瞬間、四機からの猛攻を受けて最後のHWが爆散する。開幕から五十秒、ついにその激戦は幕を降ろしたのだった。



 かくて一行は敵を撃退し撃墜された者を救助してから基地に帰還した。
(「生きている限りは可能性はいくらでも広がっていて今はダメでもそのうち一流の整備士になる‥‥可能性はない事もなく」)
 フィルトは包帯を変えながら胸中で呟く。
 じりじりと地球は人員も物資も削られてきている。未来、どうなっているだろう。世界中がこの基地の状況よりも酷くなるのか――
 今度この基地で整備を受けた時はきちんとされていると良い、と願った。



 了