タイトル:【BD】監視所の攻防マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/09/29 17:16

●オープニング本文


 ボリビア摂政、マガロ・アルファロは動じていない。この乱世に中立を国是と掲げた以上、この程度の苦難は覚悟の上だ。先王を担いだ革命では、今以上の危地など幾度となくあった。
「国境の基地が連絡を絶った、だと? ふむ‥‥、ご心配をお掛けせぬよう、陛下には知らせるな」
 報告に来た部下にそう告げてから、彼は考える。連絡を絶ったのは、せいぜい10名程度が駐留する監視所だ。運が悪ければ、キメラの数匹でも壊滅するだろう。問題は、適度に隠蔽されている筈の拠点が、連絡も出来ずに瞬時に壊滅している事と、それが一度や二度では無い事だ。
「偶然‥‥、とは思えぬな。拠点の情報が漏れているか、あるいは‥‥」
 考え込んだ彼の執務室に、次の伝令が駆け込んできたのは、その瞬間だった。


 ボリビアで監視所の壊滅が相次いでいるらしい。一応、調査隊も送られているが連絡も出来ずに瞬時に壊滅させられた箇所へ後から送り込んで何かを得られるだろうか? 微妙な所だ。
 ボリビア軍のその士官は調査隊を送るのとは別に一手を打った。とはいっても特に斬新な策ではない。国境の監視所の兵力を増強する。まぁ当たり前といえば当たり前過ぎる対応だ。瞬時に壊滅するなら、瞬時に壊滅しない兵力を置けば良い。
 問題となるのは、その兵力を何処から確保するか、また情報が漏れている恐れがあるとはいえ隠蔽を第一としている監視所である以上、巨大な兵器は送り込めない。
 そこで白羽の矢が立ったのだがULT傭兵である。剣一本でゴーレムすら両断すると噂される存在(実際には両断した者というのは未だこちらでは確認した事がないが――8m級の太刀を持っている歩兵は流石にいない――まぁ噂とはそんなものだ)彼等はまさにこの任務にうってつけの存在であった。
 密林の崖上にある監視所、派遣された傭兵達が軍兵達と共に任務についてから数日、突如として施設が光に呑み込まれた。コンクリートで造られた建物の大半が消し飛び、融解したそれらと軍兵の死体が白煙を吹き上げている。
 施設の外で警戒していた傭兵達が身を伏せ、また内部にいた者達が瓦礫を押しのけて外に出る。
 密林の一部が、消滅していた。円柱の通り道。道が、出来ていた。消し飛ばされた木々が緑が密集していた筈のそこに空間を発生させていた。
 木々はさらに消し飛び、光が爆音と共に次々に襲い来る。一つや二つではない。複数の何かか、その圧倒的な火力を遠距離から叩きつけて文字通り監視所を地上から消し飛ばそうとしている。
 視覚に優れている者は光の発生点にそれらを見た。迷彩色のパワードスーツに身を包んだ大小の人間達がそえぞれ巨大なキャノン砲を抱え、猛烈な赤光を乱射しているのを。
 襲撃者達は傭兵達が生きて動いているのを確認すると密林の陰へと散った。

●参加者一覧

伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
リュドレイク(ga8720
29歳・♂・GP
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
翡焔・東雲(gb2615
19歳・♀・AA
ナンナ・オンスロート(gb5838
21歳・♀・HD
グロウランス(gb6145
34歳・♂・GP
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD

●リプレイ本文

 光が荒れ狂った後の監視所。
「ひゅ〜‥‥なんてもんぶっ放しやがる。肝が冷えたぜ」
 残骸から這い出て陰に回り伊佐美 希明(ga0214)が言った。一般兵達は倒れているが、傭兵達は健在のようだ。
「消し飛びましたか‥‥」
 同じく破壊が荒れ狂った後から這い出てナンナ・オンスロート(gb5838)。確かにこれは厄介だ、と思う。放置するわけにはいかない。
「‥‥やられましたわね。でも、まだ完全に負けた訳ではありませんわ」
 クラリッサ・メディスン(ga0853)が言った。
「ええ、これ以上の被害は出させませんわ‥‥!」
 頷いてロジー・ビィ(ga1031)。敵は傭兵達にはなかなか当たらないと悟ったのか、あれから撃って来ていない。隙を窺っているのだろうか。
「止みましたね‥‥しかし、どういう射程ですかあれ。しかもこの威力‥‥当たらなくて良かったです」
 リュドレイク(ga8720)が呻いている。
「こりゃ距離を詰めてねぇと、火葬すっ飛ばして埋葬されちまう。こっちで確認している目標は三だ。人型」
 伊佐美が言った。
「我もそう見た。どうする?」
 月城 紗夜(gb6417)が問う。
「三分隊に分かれて各個に制圧するしかねぇな。相手がバグアなら、平気で味方を巻き込んでビームぶっ放してくんぞ」
「それしかないかな?」
 と翡焔・東雲(gb2615)。
「遠距離からのキャノンは厄介だ‥‥早々に封じねば」
 頷いてグロウランス(gb6145)。
「しかし、こんな端仕事にバグア自ら来ぬだろうし、中身は強化人間か? 人同士の殺し合いなら、今も昔も変わらんな‥‥」
 男の呟きに対し、
「相手が誰あろうと人を害する者は敵です」
 熊谷真帆(ga3826)はそう言った。
「とかく、不意打ちの可能性を常に頭に入れて行動しましょう。アレをまともに食らったらひとたまりもありません」
 とシン・ブラウ・シュッツ(gb2155)。
 傭兵達は手早く打ち合わせると三隊に別れて密林へと突入した。


 第一班はロジー、熊谷、ナンナ、リュドレイクの編成であった。
 四人は先頭に探査の眼を発動させて警戒に当たっているリュドレイクを立てて森中を進む。
 木々が視界を塞ぎ、下生えの草が足にまとわりつく。前進すると爆音と共に木立の合間から巨大な赤光が襲い来た。リュドレイクは横手から迫り来たそれに対し、咄嗟に振り向きざまに盾を翳す。赤光と盾が激突し、男の全身を呑み込んで通り抜けてゆく。七連光波。猛烈な破壊力が荒れ狂った。一発は重いがリュドレイク、頑丈だ。負傷率三割二分。集中攻撃でも受けなければ、簡単には倒れない。
「来ましたわね!」
 ロジーは二刀小太刀に極限までエネルギーを集中させるとクロスに振るい、爆風の刃を巻き起こす。下生えの草枝が吹き飛び、女はジャングルブーツで大地を蹴って走りながらさらに衝撃波を巻き起こして道を切り開き、距離を詰めてゆく。ナンナ、竜の翼は少し小回りが効かないので通常の移動で飛び出したロジーの後を追い、熊谷、リュドレイクもそれに続く。
 ロジーが速い。パワードスーツに身を包んだ小柄な影は七連後、すぐにまた横へ走り密林の陰を駆けてゆく。
 ロジー、ナンナは姿を見失ったが、直感に長けている熊谷と探査の眼を発動させているリュドレイクは見失わず追走してゆく。


 第二班目はシン、東雲、クラリッサの三人であった。
「監視所を落として、後続を潜り込ませ安くしたいんだろうが、そうはさせないよ。あたし達がここにいたことを後悔しろ!」
 東雲が密林を睨むように走査しつつ言う。強気な発言だが、それは自らを鼓舞する為であった。本当はいつも目一杯らしい。
 森中を進む三人の元へと例によって木立の合間から赤い爆光が爆音を撒き散らしながら襲いかかる。狙いは東雲。女は咄嗟に体を捌いたが、かわしきれずに光が身の半ばを灼きながら通り抜けてゆく。さらに六連の光が襲いかかり女の身を灼いてゆく。負傷率八割五分。
 東雲もなかなかタフだ。痛打を受けたが倒れずすかさずクラリッサが練成治療を四連打させて傷を癒し、東雲、シンは光が飛んで来た方向へと向かう。クラリッサは東雲とシンに練成強化を発動した。
「敵発見、戦闘に入ります。他所から僕たちが狙撃される可能性を考慮しつつ捜索継続をお願いします」
 シンは草に足をとられながらも駆けつつ無線を用いて他班に連絡を飛ばす。
 パワードスーツに身を包んだ中背の影はさらに東雲へと光を七連射してから、密林の陰へと飛び込んだ。東雲が負傷九割まで追い込まれるもクラリッサが練成治療を五連打して全快させる。東雲とシンが敵の姿を見失うもクラリッサが捕捉し追走する。


 三班は伊佐美、月城、グロウランスの三名だった。
「偶には微笑め、当てにならん浮気者」
 グロウランスはグッドラックを発動させ幸運の女神に祈り? を捧げる。親指で弾かれたコインが甲高い音を立ててクルクルと回りながら飛び、落下するそれを背に男は進みだす。結果は見ない。だが、とりあえず表に賭けておく。
 刀を納め危険そうな箇所へと突き進んでゆく月城を前に、伊佐美が後につけて索敵し、グロウランスは木々の枝の上を跳び移ってゆく。
 月城は散られた以上、積極的に釣りだすのなら敢えて隙を作る腹であり、グロウランスも目立って撃たれてもそれで敵位置を判断出来るだろうとの考えだ。両者ともにアグレッシヴである。
 前進する三人。真紅の極光が森を吹き飛ばしながら次の枝へと飛び移ったグロウランスへと迫った。空中を狙われた。猛烈な光が男を直撃し吹き飛ばす。連射された光がさらに直撃し、地に叩きつけられたグロウランスは転がって木陰へと入る。三発目の光が付近を薙ぎ払って通り過ぎてゆく。グロウランス、二発もらって負傷率七割一分。
 月城、伊佐美が光が発生した方へと駆け、唸りをあげて四発の光が月城へと叩き込まれる。月城、竜の鱗と盾でガード。負傷率一割二分。光を突き破って進む。大柄な影はさらに月城へと七連射し、盾と激突して負傷率五割八分。三人が迫ると大柄な影が木立へと飛び込み、月城、グロウランスが見失い、伊佐美が見失わず追ってゆく。


(「強化人間と言う事は、今までの経験から自爆装置を所持している可能性が高いですわね‥‥」)
 ロジーは胸中でそう呟く。早期の決着を試みたい所。
 一班の四人が見失わずに追走して来ると強化人間クリスは振り切るのは無理だと判断したか向き直って足を止め、先頭のリュドレイクへと光を連射する。
 男は盾を翳しながら耐え、光を突き破って進む。七発もらって負傷六割四分。リュドレイクはグローブを翳して電磁嵐を巻き起こし、熊谷はスコーピオンでキャノンを狙うと紅蓮衝撃を発動、フルパワーで猛連射する。蒼光が少女の身を灼き、銃弾がキャノンに突き刺さって表面を割り火花を撒き散らしてゆく。
「突撃します!」
 ナンナは言って140cmの白銀の突刺剣を抜き放って飛び込み、ロジーは敵の後背へと回り込まんと密林を走る。クリスは穿たれたキャノンを放り捨てるとナンナへと向かって踏み込む。
 ハバムートに身を包んだ少女から流星の如くに突きが連打され、クリスは手甲で払い火花が散ってゆく。強化人間の少女が疾風の如く跳躍して一気に飛び込み身を捻りナンナの頭部へと目がけて蹴りを放たんとし、ナンナは反応して間合いを保つべく後退し刺剣を突き出し弾き飛ばして押し返す。
(「強化人間、といっても強い方ではない?」)
 それとも自身が強くなったのか。流石の上級職、かなり速い。恐らく両方と武装の相性とそれを活かした立ち回り。ロジー、地に着地したクリスの背後より小太刀を振り上げる。
「一気に決めますわ!」
 練力を全開にすると剣劇を発動、強刃併用の一撃を後頭部に叩き込んで態勢を崩させると必殺の十五連撃を首筋や肩の付け根、腰などの装甲の薄い箇所へと叩き込んでゆく。ゴーレムをも叩き斬るエースアサルトの壮絶な破壊力にパワードスーツの装甲が次々に吹き飛び、スパークと共に火花が散り、血飛沫が噴出してゆく。下級職では一部を除いて考えられなかった壮絶な殲滅力。当たると凶悪過ぎる。
 無論、周囲もぼうっと見ている訳はないので、斬り裂かれているクリスへとさらに熊谷が至近から電撃を叩き込み、ナンナがモスキートを繰り出して貫き、リュドレイクが鬼蛍を振り降ろして叩きつける。
 滅多打ちにされた少女はそのままぐらりと身を傾けると血河の中に沈み、次の瞬間、その全身と手放したキャノンから焔を膨れ上がらせ壮絶な超爆発を巻き起こした。
 自爆装置の炎がロジー、ナンナ、リュドレイクを呑み込み、その壮絶な破壊力を解き放った。


 東雲とシンは姿を見失っているので先導はクラリッサだ。アマルガムは追って来る女へと向き直ると爆光を七連射する。駆けまわるクラリッサは四発をかわし三発の直撃を受けて負傷率五割一分。シンは疾風脚と限界突破を発動させ手近な木の上へと跳躍する。クラリッサは間合いを詰めると練成弱体を発動させつつエネルギーガンを構える。
「‥‥わたしのビーム攻撃は当たったらそれなりに痛いですわよ。当たりたくなければ、きちんと避けて下さいな」
 言いつつ五連射。アマルガムは素早く木立の陰に飛び込んで二発をかわし三発に直撃を受ける。凶悪な破壊力を秘めた光線が木々を薙ぎ倒しパワードスーツの装甲を消し飛ばしてゆく。
 練成の光を帯びた二刀小太刀を構えた東雲が迫り、アマルガムがキャノンを放って金属筒と銃を取り出し光の刃を出現させ、東雲の突進を止めるように銃から光線を三連射する。東雲は流し斬りを発動させて斜めにステップしながら一撃をかわして踏み込む。光剣の方が小太刀より間合いが広い。アマルガムが剣を振り上げ、シンがリヒトを三連射して凶悪な破壊力を直撃させてその右腕から金属筒を吹き飛ばし、東雲が小太刀の間合いに入って猛撃を発動、男のエネルギーガン目がけて下段から斬りあげて弾き飛ばす。東雲は後退し、シンは敵の頭部、左肩、右肩、左足、右足へと狙いを移しながらSeeleで五連射。一瞬のうちに撃ち放たれた閃光が次々に突き刺さってゆく。精度が抜群に高い。凶悪な破壊力を秘めた光線が装甲を消し飛ばしてゆく。
 顔面と両手足を撃ち抜かれたアマルガムへと東雲は再度、踏み込むと左右の小太刀で剣閃を巻き起こした。滅多斬りにされた男の装甲が斬り飛ばされ火花を巻き起こしてゆく。
 アマルガムは低く跳んで枝草を薙ぎ倒しながら転がると、一回転して起き上がり拾い上げた拳銃を東雲と向け、シンがダブルエネルギーガンを猛連射してその手の中から消し飛ばし、クラリッサが猛射して六連の光線を叩き込んでゆく。
 東雲は膝をついている男の側面へと回り込むと右の小太刀で逆袈裟に斬り降ろす。男は鉄甲でガードし、タックルするように東雲の片足を掴みにかかり、女は素早く飛び退いて回避。シンが再度光線を連射してアマルガムの頭部へと五発の光線を叩き込み、東雲が小太刀で顔面を突き破るとようやく男は動かなくなり、そして次の瞬間大爆発を巻き起こして東雲を吹き飛ばした。


「畜生、ツイてるな。相手は強化人間か」
 伊佐美が逃げるベルクを追跡し、月城とグロウランスがその先導に従って後を追う。振り切れないと判断したベルクはやはり足を止めて向き直ると伊佐美へと向かって七連の爆光を解き放つ。伊佐美は素早く木立の陰へと跳んで三発を回避し四発の直撃を受ける。爆裂する赤光が女の身を灼き、負傷率六割八分。
「外敵なんて無い。戦う相手は常に自分自身のイメージ‥‥」
 伊佐美は詰めるとジャジメント拳銃を構え発砲し、すぐにまた次の木の陰へと飛び込む。鋭く放たれた弾丸が空間を貫き大柄な男の身に直撃してその装甲を穿ち、凄まじい破壊力を撒き散らす。非常に高い威力と抜群の命中精度。スナイパーとは一撃の重さが違うようだ。
 月城は超機械、は携帯してきていないので盾を構えつつ抜刀して迫り、ベルクもまたキャノンを放り大剣を背から抜刀する。伊佐美が十m程度まで間合いを詰めつつ移動しながらの射撃を叩き込んでその態勢を崩してゆく。グロウランスもまたS‐01拳銃を連射して弾丸を撃ち放つ。
 弾丸を受けつつもベルクは大剣を振りかざして踏み込み月城へと巨大な鉄塊を振り下ろす。ドラグーンの女は盾を翳して一撃を受け流し竜の眼を発動、足を狙って斬りつける。反撃の刃をベルクは後方に飛び退いてかわし、伊佐美とグロウランスの銃弾がその身に突き刺さってゆく。月城は踏み込んで太刀で打ち込んで追撃し、ベルクは大剣でそれを捌きつつ後退すると五連の剣閃を巻き起こす。射撃の援護が効いている。月城は全段を盾で受け流し負傷率八割、反撃の二連斬を叩き込んでベルクの装甲を削る。
「釣りはいらねぇ、とっときな!」
 伊佐美が攻勢に出た。練力を全開に強弾撃、二連射を発動、左右の拳銃でリロードしつつ十連射を叩きこむ。凶悪な破壊力の弾丸が次々に大男の装甲を叩き割って血飛沫を噴出させ、隙を見てとったグロウランスもまた貫通弾を装填、強弾撃と影撃ちを併発して射撃し、渾身の一撃を叩きこむ。月城は竜の瞳を発動させてベルクの右足へと連斬を叩き込んでその装甲を破砕して血飛沫を噴出させ、反撃の剣閃を盾で流しつつも衝撃に腕が下がった所へ一撃を受けて倒れた。
 伊佐美は再度ベルクへと向けて左右の拳銃で十連射、猛撃を仕掛けてその生命力を凄まじい勢いで削ってゆく。弾丸の嵐を受けながらもベルクは伊佐美へと突進して七連の剣閃を巻き起こす。伊佐美、四発かわして三連斬を喰らい負傷率十三割七分、倒れた。その隙にベルクの後背へと忍び寄っていたグロウランスは渾身の力を込めてその首裏の装甲の隙間へとバトルブック2の角を叩き込み猛烈な電磁嵐を巻き起こした。
 光の嵐が大男の延髄を吹き飛ばし、泡を吹きながら前のめりに倒れた。
 伊佐美、自爆を予期していたが、昏倒している状態ではどうにもならい。次の瞬間、壮絶な爆裂が巻き起こって伊佐美を吹き飛ばし、警戒していたグロウランスは咄嗟に腕で顔をかばうも爆炎に巻き込まれて吹き飛び意識を失った。


 第一班は熊谷が救急セットで治療し、第二班はクラリッサが練成治療で治療し、第三班もまたクラリッサが駆けつけて練成治療で三人を回復させた。
 かくて各地の監視所を潰して回っていた強化人間達は撃退された。
 監視所の消滅の原因はこれだけではなく、宰相はまた別のものについても対策を採らねばならないだろうが、一つの脅威は確かに消えた。
 ボリビアの情勢は混沌としており、どのように決着がつけられるのかは未だ予断を許さないが今は十名の傭兵達のその健闘を讃えよう。

 了