タイトル:【ODNK】WHeadSquadron2マスター:望月誠司

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや難
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/07 07:29

●オープニング本文


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 二〇一〇年初頭、日本国が九州、大分県の宇佐市、日出町、杵築市の二市一町を解放した村上旅団はその進路を北へと取り、さらに歩を進めんとしていた。
 別府基地のブリーフィングルームでは傭兵隊の面子が集まり、空のKV隊隊長不破真治の元で今回の作戦について事前の説明が行われていた。
「先の戦いでは良くやってくれた」
 不破真治はそう言った。
「貴君等の奮闘があり杵築は解放する事が出来た。杵築は地球人類の元に戻って来た。しかし、大分県全土に言える事だがその確保性は盤石ではない。周囲に敵勢力が存在している限り、いつまた取り返されるとも解らない。敵の再侵攻を防ぐ為にも、また未だバグア側の勢力下に置かれている人々を解放する為にも、九州全土を解放し周囲を地球側勢力で固めなければならない。
 面積を増やせば、少なくともその中央に位置するほどに安全性は増し、そうあってこそ、初めてその地は地球人類側の盤石たる土地と言える。いつまたすぐに取り返されるような危険性のある土地では人々は安心して暮らせないだろう。そもそもに戻ってこようとはしないだろう。それでは折角取り返しても生産性も何もあったものではないし、復興ともいえない気がする。人々の生活を取り戻したとはいえないだろう。故に、今回のこの戦いは目標地のみならず今までに取り返した地域の為にも、やはり、必ずや勝利せねばならない」
 不破真治は言う。
「今回、我々は進路を北に取り、大分県豊後高田市の攻略を目指す事となった。海辺の市だ。諜報部からの情報によれば、今回バグア側は中規模の艦隊の出港準備を進めているらしい。本州の港から遥々来てくだされるとの事だ。実に御苦労な事だ。迷惑厄介極りない。他地域からの援軍、という事だな。このまったく有難くないお客様を冬の日本海の底に爆砕して沈め、永久(とわ)に海底ライフを満喫させてやるのが俺達の第一任務となる」
 不破はブリーフィングルームのモニタを操作し、その画面に巨大な戦船を映し出した。
「こいつはビッグフィッシュを元に改造されたと言われている水上用のワームだ。うちの旅団ではバトルフィッシュと通称している。飛行はしないが、ビッグFと同様数百メートルという並外れた巨体を持つ。こいつは中でも巨大なもので八百メートルの巨大さを誇っている。キメラ搭載能力は持たないが、その分、常識外れの巨砲を積んでいて長距離からの圧倒的な海対地攻撃力を誇る。対空性能もそこそこあるようだ。一言で言えば巨大戦艦だな。厄介な事に日出町にあったものと同様のロック解除パルスを積んでいる」
 ロック解除パルスというのは、強制的にロックを解除する電波や超波動を発生させる装置で、これの影響が及ぼす範囲では単ロックの誘導弾もロックに妨害を受け、ロックに時間を有するマルチロックオン式のミサイルはほぼ同時攻撃が不能になる程の悪影響が出てしまう。
「このバトルフィッシュが高田市に接近した場合、陸軍は圧倒的な対地砲撃にさらされる事となり、空軍は虎の子のK‐02を初めとしたマルチロック兵器が使えなくなってしまう。こちらが著しく不利になる。これの存在は強く戦局を左右するだろう。故に俺達傭兵隊で以って接近する前に叩き潰してしまおうというのが司令部の方針だ」
 不破はモニタを切り替える。そこには急降下するKVと海に浮かぶ戦艦の図があった。
「基本的に音速を超えて飛ぶKVは空対地、空対海攻撃が苦手だ。地表近くへと射撃する為には速度と高度を極力落として水平爆撃するか、急降下して爆撃するくらいしか効果が期待できない。速度を落とせば当然、回避率は激減する。かなり危険な行為だ。だがそれを以ってしても命中精度は狙った地点より百メートル四方にばらけるという、かなり信頼性の低いものでしかない。救いなのは今回の撃破目標は例の通り全長八百メートルというデカブツだという事だ。横は縦に比べてかなり狭いが、それでも真心を狙えば命中が期待できる‥‥相手の運動性にもよるがな。相手の巨大さは今回は有難い」
 不破は言う。
「諜報部からの情報を元に予想される敵戦力はバトルフィッシュが一隻、および護衛のHWが十機だ。なかなか強力な相手だが俺達の戦力ならばやれると俺は確信している。このデカブツにはフレア弾などの対地兵器が有効だ。希望者には貸与する。俺達の手で敵艦が高田市に接近する前に海の藻屑と変えてやろう。
 まぁ、状況の変化があって、何らかの理由で敵が出てこない可能性もあるが……まず、その可能性は除外しても良いだろう。もし万が一があった場合は、俺達も空軍と共に高田市の上空の制空を確保する役割に回る事になる。以上だ」


 数日後、旅団は高田市へと進撃し、その攻略へと乗り出した。
 空陸で激しい攻防が繰り広げられる中、冬の日本海を進撃する艦隊の姿があった。
 全長八百メートル、長大な砲を備えた威風堂々たる巨艦が『二隻』、周辺を飛び回るHWワームは『二十機』を数えている。
 彼等は冬の荒波を割って高田市へと猛進していた。

●別府基地・指令
 こちらウォーヘッド、緊急発進命令だ。予想の通り本州から出港した敵艦が高田市へと向かって接近してきているとの報が哨戒部隊より入った。数は予想に反し二隻、ヘルメットワームは二十を数えている。予想の倍である――言いたい事は解るが、やらねばならぬ。俺達が止められなければ本隊は窮地に陥る。なんとしても撃滅しなければならない。最優先撃滅目標は二隻のバトルフィッシュ、次いで二十機のHWだ。第一傭兵KV大隊、出るぞ!

■敵戦力
●バトルフィッシュ × 2
 全長八百メートル。水上を航行する。飛行能力、潜水能力の保有は確認されていない。圧倒的な破壊力を持つ海対地長距離砲を持つ。四十八門の対空フェザー砲を保有している。フェザー砲は旋回式。射程は短め。ロック解除パルスを放射する。

●一段階改造HW・巴戦型 × 20
 運動性と最高速度に優れたHW。短射程だが威力の高い機銃を持つ。後背に回り込み精密射撃で油圧系やコクピット、エンジン、装甲の隙間などの急所を撃ち抜いてくる。回避が低く、機動が単純な機体は餌食になるだろう。

■味方NPC
●不破真治大尉
 TACはウォーヘッド。傭兵隊の隊長。指揮官機型シラヌイに搭乗。データリンク可能。誘導弾、機銃、フレア弾装備。戦闘能力は中の上程度。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
オルランド・イブラヒム(ga2438
34歳・♂・JG
叢雲(ga2494
25歳・♂・JG
セージ(ga3997
25歳・♂・AA
リン=アスターナ(ga4615
24歳・♀・PN
ラシード・アル・ラハル(ga6190
19歳・♂・JG
フォル=アヴィン(ga6258
31歳・♂・AA
不知火真琴(ga7201
24歳・♀・GP
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
美空(gb1906
13歳・♀・HD
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD

●リプレイ本文

 スクランブル前、蒼い空が広がる冬の別府基地。
「今回も宜しく頼む」
 ハンガーで白鐘剣一郎(ga0184)が言った。古流剣術「天都神影流」の遣い手でありペガサス分隊の隊長を務める若き傭兵である。
「ああ、こちらこそよろしくな。今回も頼むぞ天馬の隊長」
 傭兵大隊の隊長である大尉、不破真治はそう答えた。
(「不破大尉か‥‥最初に会った時は准尉だったのだが、それだけ時が経ったという事かな」)
 白鐘は少しの感慨を覚えて胸中で呟いた。最初に会ったのはもう二年も前になるだろうか。まことに時の流れは速いものである。
「不破さん、先日はどうもありがとうございました」
 黒髪の女がやって来て言った。藤田あやこ(ga0204)だ。先の杵築市攻略の戦では重傷を押しての出撃であり、不破からの援護を受けていた。
「お、藤田か。なに、さしてたいした事は出来なかったが‥‥怪我はもう大丈夫なのか?」
「おかげさまで、今回はもう万全ですよ」
「それは何よりだ。前回の分まで暴れてやってくれ」
「はい。鬱憤晴らさせていただきます」
 ふふふ、と瞳を光らせて笑い藤田。思うように暴れられなかった鬱憤が溜まっているようである。
「そ、そーか、頑張ってくれ。あまり無茶はするなよ」
「はい」
「しかし、今度は海のお魚、ですか」
 不知火真琴(ga7201)がふと事前情報を思い出すようにしながら言った。
「ビッグフィッシュを改装し海に浮かべる、か。水上戦艦‥‥と言う事になるかな? バグアも色々手を変えてくる」
 手袋を嵌めながらオルランド・イブラヒム(ga2438)が言う。三十と少々の黒髪の男だ。小を切り捨て大を生かす、を徹底して行うリアリスト的な一面を持つ。
「今までビッグフィッシュのことを『鯨』って略語で呼んでたけど‥‥まさか見た目だけじゃなくて、本当に海を泳ぐ個体が出てくるとはね」
 銀髪のリン=アスターナ(ga4615)が言った。今までそれは空にあった。外見から鯨と呼んでいたが、海に浮かぶとなると本当にその巨大な哺乳類のようである。もっとも大きさは桁違いであるが。
「とかくやってない事をやるのが好きな連中だからなバグアは。北九州の主力は今の所、大分より西に集中している。ごり押しを通せる程の戦力が無い、という理由もあるのだと思うが」
「ふーん‥‥なるほどね」
「何にせよ、撃破しなければならんことに変わりは無いな」
 オルランドが淡々と言った。
「うむ」と頷いて不破。
「今回もしっかり落してあげないと、ですねっ」
 不知火が意気込んで言った。
 傭兵達がそんな事を話しているとパイロットスーツに身を包んだ青年が一人やって来た。
「お、大尉、シラヌイに乗るのか?」
 セージ(ga3997)はハンガー内の佇んでいる紫色の機体を見上げると驚いたように言った。
「ああ、各機の連絡を取って指揮を主とするならこちらの方が良いかと思ってな」
 と頷いて不破。シラヌイのS型甲はC4I機能を強化してあり、情報処理能力に優れている、と言われている。
「そうか。俺も開発を手伝ったが、いい機体だぜ大尉。今回もよろしく頼む」
「ああ、よろしく。しかし、セージも開発に関わっていたのか?」少し驚いたように不破「それは知らなかった。これも因果という奴なのかな」
 出撃準備が進められるハンガー内にやがて、大量のフレア弾が車に乗せられて運ばれてきて、次々にKVへと取り付けられていった。
「随分と積むな」
 うち一機を見やって不破が言った。
「ええ、一発で仕留められるとは限りませんから」
 フォル=アヴィン(ga6258)が愛機XF‐08D雷電を見上げ、頷いて言った。三発のフレア弾が雷電に積みこまれてゆく。六堂源治(ga8154)機もまた同様に三発のフレア弾を積みこんでいるようだった。美空(gb1906)機に至っては四発である。ファランクスを除き全てフレア弾の完全爆撃仕様だ。
「それは、確かにそうだな」
 フォルの言葉に頷いて不破。デカイ船はそれだけやはり耐久力がある。簡単には沈まない。
「幸いなの事は敵の戦艦は一隻だけという所だな」
 うむ、と頷いて不破真治はそんな事を言っていた。

●スクランブル発令後
「やれやれ。敵戦力が予想の二倍とは」
 空に上がった叢雲(ga2494)が無線に言った。先程、敵の侵攻が伝えられ傭兵達へも出撃命令が出たのだが、その時に確認された敵の戦力は当初の予想よりも倍もあった。
 もうちょっと正確に情報は欲しいものですね、と叢雲は思う。
「返す言葉も無い」
 不破真治の苦虫でも噛み潰しているような声音が無線から聞こえて来た。戦いの第一は情報戦である。今回、諜報部はバグア軍のそれに対して敗北を喫してしまったようだった。
「高機動型の直衛二〇機と水上艦二隻か‥‥どちらも厄介だな」
 唸りながら白鐘が呟く。
「このまま放置しておく訳にはいきませんわね」
 艶やかな美声が無線機から漏れた。クラリッサ・メディスン(ga0853)である。今回も「アズリエル」と名付けたCD‐016シュテルンに搭乗している。
 ブロンドの女は意思を込めて言った。
「困難な任務ですけれど、きちんと結果を残すようにしましょう」
「‥‥うん‥‥そんなの、町に近づけるわけに、いかないし‥‥早く、沈めちゃおう」
 その言葉に頷いたのは黒髪の少年ラシード・アル・ラハル(ga6190)だ。今回はイビルアイズでなくEF‐006ジブリールIIに搭乗している。
「色々厄介な能力を持ってるみたいだし、行きがけの駄賃に護衛のHWも一緒に叩き落して、仲良く海の藻屑にしてやりましょうか‥‥!」
 操縦桿を握り彼方を睨んでリン・アスターナ。それにラシードがふと思いあたったように言った。
「‥‥あ。沈めた後って、誰が片付けるの‥‥かな」
「‥‥三ヶ月後には魚の棲家になってるんじゃない?」
 とリン。海の環境は大切ではあるが、まぁ引きあげるのは困難だろう。海の底には色々なモノが眠っていて、きっとこれからも寝床となるモノが沈んでゆくのだ。海はそれでも多くを呑み込む。
「まぁともあれ、爆撃時の対空砲火は相当な脅威になるはずだ。最善を尽くそう」
 白鐘剣一郎がそう言った。
「爆撃か‥‥ロシアで陸上戦艦と戦った時を思い出すッス」
 六堂源治がふとしたように呟いた。
「そーいや、あの時もフォルとラシード、不知火も居たな?」
「あ‥‥そういえば、そうでしたっけ?」
 呟きを拾って不知火が言葉を返した。
「ロシアですか、そういえば確かに。奇遇ですね」
 少し思いだすようにしながら頷いてフォル。
「‥‥今回は海、だけど‥‥似たような状況ではある‥‥のかな?」
「似てるとは思うな。ただ敵機は前より随分と多いみたいなんで、俺達も倍以上の気合で臨むッスよ」
「そう‥‥だね、了解」
「今回も勝ちましょう」
「応」
 十六機のKVが轟音を上げ音速波を撒き散らしながら冬の海の上を飛んでゆく。
「勝利は我等に。美空たちがバグアへの死神となるのであります」
 A‐1ロングボウのコクピット内で操縦桿を握りつつ美空が言った。先のヒューストン上空決戦での重傷から回復したばかりだが、予備機のロングボウで駆けつけ参戦している。断続的に明滅するレーダー、光の点が近づいて来る。
「さぁ、行こうか、エルシアン」
 右目を青く、左目を緑色に輝かせ、背に光の翼を出現させてソーニャ(gb5824)が言った。
「Mk‐4D、駆逐戦闘機の称号は伊達じゃない」
 呟きスロットルレバーを前に倒す。エンジン全開。エルシアンのSES機関が唸りをあげ、音速を超え、鋼の翼が空を切ってさらに加速してゆく。他のKVも次々に出力を上げ戦闘速度へと入ってゆく。
(「友軍のためにもバトルフィッシュを海岸に近づけさせるわけにはいかん! 奴らには魚の巣になってもらう!」)
 XF‐08B剣虎に搭乗する堺・清四郎(gb3564)は胸中で強く決意を固める。コクピットから覗く彼方の敵の黒影が見えた。距離が詰ってゆく。
「行くぞ!」
 不破が吼えた。十六機のKVが音速波を巻き起こしながら冬の蒼空を貫いて行った。


「CrowsよりWarHeadへ。HWはそっちに任せた。これよりBFに対し爆撃を行うッス」
 六堂が言う、作戦領域に入った。
「WarHead、了解。開幕から爆撃するのか? 数は敵の方が多い。爆撃班は仕掛ける際に十分に注意せよ。全機の交戦を許可する!」
 十六機のKVが飛び二十機のHWが迫る。HWを示すレーダーの光点にはAからTまでの番号が振られている。不破のデータリンクだ。鋼鉄の翼達が蒼空に炎を吹かしながら散開した。HW達は二段に構え、傭兵達は大まかに三段に構えた。HWをメインに処理する対HWが先頭、次いで爆撃A班が続き、その後背を爆撃B班が守った。AとBは交互にスイッチして互いを援護し、B班が仕掛ける際にはA班がB班の後背を守る予定だ。
「ペガサス、エンゲージオフェンシブ」
 白鐘が言った。距離六〇〇、ヘッドオン。対HWに所属する白鐘は迫り来るHWEをガンサイトに納める。中心に合わせてスナイパーライフルのトリガーを引く。CD‐016流星皇から勢いよく弾丸が飛び出した。錐揉むように回転する二連の弾丸は、閃光と化して飛び、HWの正面から入って猛烈な破壊力を撒き散らしながら後方へとぶち抜けてゆく。漏電と共に火炎の嵐が巻き起こり、HWEが爆裂した。撃墜。
(「重要任務だが気負わずいつもどおりに」)
 オルランド・イブラヒムは胸中で呟いた。常に全力で戦っている以上、結果はメンタルでは変わらない。サイトに急速でその姿を大きくしてゆくHWDを納める。赤く輝いている。風が唸りをあげて風防を揺るがす。距離が詰る、四〇〇。オルランドはHWの機動を予測するとトリガーを引いた。爆音と共に煙を噴出し紫色のサイファーから二十四連のロケット弾が次々に飛び出してゆく。空に白煙の軌跡が引かれる。HWDは身をさらに赤く輝かせると機体を斜めに傾がせた。そのまま斜め上にスライドしてゆく。一発、二発、三発、ロケット弾がHWをかすめて空を抜けてゆく。なかなか速い。しかし、同時に一発、二発とかわし切れぬロケット団が命中し、激しく爆裂を巻き起こしてゆく。八発が命中した。
 距離二〇〇。間合いを詰めた鹿島 綾(gb4549)機モーニング・スパロー、HWをガンサイトに納めると凄まじい爆光を解き放った。並び飛ぶCD‐016レイヴンもまた光を爆裂させる。モーニング・スパローから五機のHWへ向けてDR‐2の砲撃が飛び、叢雲機からも三機のHWへと向けてDR‐2の砲撃が飛んだ。HW達は一斉に赤く輝いて、迫り来る光を避けんとする。光の方が速い。次々に光の奔流がHW達に突き刺さってゆく。
 FGHIJの五機が鹿島機に射抜かれ、さらに叢雲機から二本目の光の槍を喰らってFとGが爆裂した。HWHは装甲を融解させつつも叢雲機からの一撃を辛くもかわす。
 不破機がHWCへと飛び、藤田機もそちらへ追随した。距離百。ヘルメットワームABCの三機が不破機へと一斉に猛弾幕を張った。不破機はHWCへと誘導弾を撃ち放ち急旋回して回避運動に入る。シラヌイがバンクして旋回し追いかけるように弾丸の嵐が追尾してゆく。大半をかわすが数が多い、無数の弾丸が次々にシラヌイに突き刺さって激しく火花を散らした。交差するように飛んだ誘導弾がHWCに突き刺さり爆裂を巻き起こす。
「さてHW達、知覚攻撃をたっぷりお見舞いしてやるわよ!」
 藤田機は接近して距離を詰めるとSESエンハンサーを起動させた。爆炎の中に高分子レーザー砲を撃ち放つと同時、即座に斜め上方の空へと離脱する。増幅された六条の閃光が飛び、HWに突き刺さった。装甲が穿たれ、次の瞬間激しい爆裂を巻き起こした。HWCが煙を吹き上げながら落下してゆく。HWDは藤田機を追うとその後背に急接近し弾丸を解き放った。PM‐J8看看兮に弾丸が襲いかかり火花を散らす。
 ワームHIJは赤く輝いて旋回し砲を鹿島機へと向けると弾丸の嵐を撃ち放つ。鹿島機は急旋回して回避した。HW達は慣性を制御して急機動するとその後背へ回り込まんと飛ぶ。
 爆撃A班、不知火、ソーニャ機はマイクロブースタを発動させ急加速した。ソーニャはさらにアリスシステムを起動させる。
「六堂さん、進入速度あわせます」
 フォルは六堂とエレメントを組み、それに合わせて飛ぶ。
「一気に行くッスよ」
 六堂はアフターバーナーを点火、音速を超えて急加速する。フォルもまたブーストを点火して追いかける。
 堺はHWOを目指して翼を翻す。四機のKVはブーストで一気に加速し、空いた中央を目指し飛んだ。二段目のHWは左右にそれぞれ弧を描くように別れて展開している。
 爆撃A班はHW達の間を通り抜けて、堺機を除き海に浮かぶバトルフィッシュへと向かう。B班はその後をやや離されながらも追った。
「煙幕を展開します!」
 不知火が言って煙幕銃の銃口をバトルフィッシュがいる辺りへと向けて撃ち放った。弾丸が最大射程で炸裂し空に白い煙が噴出する。堺機が一気に加速した。リンは無線を聞いて試作型対バグアロックオンキャンセラーを発動させた。周囲の重力波が乱れる。
 不知火はそのまま減速しつつ機体の高度を下げると煙の彼方、先にビッグフィッシュの砲台が見えた辺りを狙ってロケット弾ランチャーを連射した。横手からHWKLが赤く輝いて加速し後背へと捻り込まんと動いて来る。B班のラシードはHWKの動きを予測しガンサイトを合わせるとその後背へとエネルギー集積砲をリロードしつつ連射した。エネルギー弾が勢い良く飛び出す。
 十六連のロケット弾がBFに突き刺さり煙の彼方で爆発して白の中に赤い光を発生させた。集積砲がHWKに直撃しKは弾丸をばらまきながらも途中で翻る。二発目はHWの装甲の端をかすめて行った。Lは不知火機が加速する前にその後背につけると狙いすまして機銃を猛射した。手甲焼夷弾がロビンの装甲の隙間をぶち抜き破壊力を解き放ってゆく。炎と熱が踊り狂い猛烈な漏電がKVの内部から発生し激震がコクピットを襲った。不知火機の損傷率が急激に上昇してゆく。
「いくぞ! 貴様等の遊び相手はこちらだ!」
 堺はブースト機動でマッハ6まで愛機のXF‐08B剣虎を加速させるとガンサイトにHWOの姿を納める。彗星の如く突っ込みながらスラスターライフルで弾幕を展開し、アハトアハトで蒼光のレーザーを撃ち放つ。HWに光が炸裂し、次いで放たれた弾幕がその装甲を次々に穿った。交差直後に後方で爆裂が巻き起こりHWが煙を吹き上げながら落ちてゆく。堺はそのままHWPへと迫ると同様に弾幕とレーザーを叩き込んで爆砕した。
「兵は神速を尊ぶ‥‥ってのは誰の言葉だったッスかね?」
 六堂源治が呟いた。中華が春秋時代の兵家の言葉が大元と言われている。戦争は睨み合っているだけでも国家に莫大な費用をかけ、その穴埋めはどんな賢人でも出来ないから、戦術レベルで拙くとも速めに切り上げるという事はあっても、長引かせては結局の所は上手く無い、という言葉だ。転じて速攻を尊ぶ時に言わる。
 バイパーはブースト機動で急降下し煙中へと突っ込む。フォル機もまたそれに合わせて突入した。煙の彼方から二機のKVに向かって紫色の光線が嵐の如くに撃ちだされる。六堂機に次々にフェザー砲が炸裂してゆくがバイパーと雷電の装甲はそれを弾き飛ばした。六堂機とフォル機は砲火の中を接近すると最大限にまで急減速し、フレア弾を投下した。速度の著しく低下した六堂、フォルの両機へと狙い澄まされたフェザー砲が飛来し、次々に急所にぶちあたってゆく。激震がコクピットを襲い損傷率が勢い良く上昇してゆく。バイパーと雷電から投下されたフレア弾がバトルフィッシュの甲板に炸裂して猛烈な爆発を広範囲に巻き起こした。巨艦の装甲が広範囲で吹き飛んでゆく。HW、MNQがフォルへ、RSTが六堂機の後背へと迫る。アスターナ機がHWRを狙って集積砲を連射し、ソーニャ機がHWMを狙ってG放電装置を解き放った。クラリッサ機はHWSを狙って三連の誘導弾を猛射する。セージ機は減速するとロケット弾ランチャーをバトルフィッシュの砲台めがけて連射した。
 HWRはイビルアイズからのエネルギー弾を一発受けると煙中でスライドして続く一撃をかわした。HWMが電撃を受けて煙中で翻る。ソーニャはロックサイトから外さずにその機影を納めんとする。
「フォックス2!」
 サイトが赤く変わった瞬間に発射ボタンを叩きつけるように押し込みミサイルを撃ち放つ。Mk‐4Dエルシアンから誘導弾が飛んだ。ガンサイトを素早く合わせてレーザーを撃ち放つ。閃光がHWMに突き刺さり、次の瞬間誘導弾が爆裂してHWの装甲が吹き飛んだ。空飛ぶカブトガニが高度を下げて落ちて行く。
 HWMは回避せんと翻ったが、AAMは蛇のようにうねって喰らいつき次々に爆裂を巻き起こした。装甲を砕かれたHWが紅蓮の火球に包まれながら落下してゆく。ロケット弾がバトルフィッシュの甲板に激突して爆裂を巻き起こした。
 フォル、六堂機の後背につけたHW、NQ、RTの四機はそれぞれ二機づつ煙中でフォル機と六堂機へと狙いを定め猛弾幕を展開してゆく。弾丸が装甲に次々に激突して雷電とバイパーから激しい火花が散った。フォル機は加速して離脱する。六堂機はそのまま水平に飛びブリッジを狙いフレア弾を連続で投下してゆく。猛烈な爆炎の海が全長八百メートルのビッグフィッシュの甲板を穿ち焼き尽くしてゆく。艦橋が半ばから吹っ飛ばされ剥き出しになる。凶悪な破壊力。
 対空砲がフォル機と六堂機へ飛び、NQがフォル機を追尾するように上昇しながら弾幕を張り、RTが狙い澄ませて六堂機へと猛攻を継続した。フォル機は閃光と弾幕に撃たれながらも加速上昇して上空へと戻った。六堂機にフェザー砲が炸裂し、唸りをあげて来た徹甲焼夷弾の一発がバイパーの排気孔から入り、奥のエンジンを一基ぶち抜いた。機体が傾き、激しく回転してゆく。バイパーはそのまま失速し制御を失うと海面に激突して沈んでゆく。次の瞬間、海水が膨れ上がり紅蓮の色に染まり、猛烈な水柱が天へと向かって吹き上がった。バイパーが海中で爆発を起こしたのだ。六堂機大破。
 美空機はB班の面々と爆撃タイミングを合わせる為に旋回中。
「余所見をするな。貴様らの相手はこちらだ!」
 白鐘機流星皇は前方へと飛ぶとフォル機を追いまわしているHWQをガンサイトに納める。未来機動を予測し偏差で発砲。リロードしつつ連射。シュテルンから飛び出した弾丸は超音速を超えて飛びHWの装甲に激突、猛烈な破壊力を撒き散らしながら抜けてゆく。ライフル弾の直撃を受けたHWQは爆裂して大破した。
 鹿島機の後方につけたHWHIJは赤く輝きながら猛弾幕を浴びせかける。鹿島は愛機を斜めに傾かせつつピッチを上げる。天地が入れ替わり光が流れて行く。螺旋を描く軌道で横にスライドして回避し急減速する。三機のHWが後方から鹿島機を抜いて前に出て行く。背後を取るとスラスターライフルで狙いをつけ、六十、六十、三十とリロードしつつ片っ端から弾幕を叩き込んでゆく。次々に爆裂が巻き起こり三機のHWが煙を吹き上げながら落下してゆく。撃墜。
 HWABCは赤く輝いて加速し不破機へと弾幕を浴びせながら追いかけている。
 叢雲はHWCをサイトに納めると牽制にロケット弾ランチャーを連射した。飛来する八連のロケット弾をHWは急旋回してかわす。
「レイヴン、アハトをスタンバイ」
 叢雲は予測をつけて敵機をガンサイトに納めると狙い澄ませてアハトアハトを連射した。閃光が一瞬で宙を制圧しHWに突き刺さる。HWCは爆裂を巻き起こしながら落ちて行った。
 HWDは藤田機へと猛攻を仕掛けていた。オルランドは藤田機へと攻撃を仕掛けているHWDの後背を取ると身外身ミサイルを撃ち放った。百発のミサイルが宙へと放たれHWワームへと伸びて行く。HWは回避運動に入ったが避けきれずに爆裂に巻き込まれた。さらに不破機から誘導弾が迫り来てHWDに突き刺さった。オルランドは爆炎から脱出する機影を捉えるとロケット弾ランチャーを連射した。ロケット弾が勢い良く飛び出して装甲を突き破り爆裂の華を咲かせた。破片を撒き散らしながらHWが落ちて行く。藤田機はエンハンサーを発動させると不破機を追っているHWAの後背へと小回りに旋回して接近しリロードしつつレーザー砲のガンサイトに納める。
「これは本来BFに叩き込む予定だった分。鬱憤晴らしだ!」
 光の束がHWAに突き刺さり漏電と爆発を巻き起こした。撃破。
「B班、各機、行くでありますよ!」
 美空が無線に言って、操縦桿を倒す。鋼鉄の翼が風を切り、ロングボウが雲を引きながら翻る。
「了解! 背中は頼んだぜ!!」
 セージが無線に言った。CD‐016リゲルもまた一気に高度を下げて急降下してゆく。
「近くで見ると、ますます大きい、ね‥‥」
 バトルフィッシュの巨体がさらに大きくなってゆく。ラシード・アル・ラハルは静かに呟いた。
 爆撃B班、セージ機、ラシード機、クラリッサ機、美空機はタイミングを揃えると翻り、煙中へと一斉に降下してゆく。紫色の光線砲が嵐の如くに飛んだ。セージ、クラリッサ機は極限まで速度を落としPRMで抵抗力を増大させる。ラシード機もまたマイクロブーストを発動させつつも速度を極限まで落としつつ頭から急降下する。美空は多少速めの速度で降下した。対空砲が猛然と牙を剥き次々にセージ、ラシード、クラリッサの三機を直撃して射抜いてゆく。激しい揺れがコクピットを襲った。
「く‥‥簡単に墜とされるほどわたしの【アズリエル】は柔な機体ではありませんわよ!」
 クラリッサが眼前を睨みながら言った。損傷率が上昇してゆく。美空機もまた砲の直撃を受けていた。装甲が薄い。猛烈な勢いで損傷率が上昇してゆく。
 HW、KNRTがそれぞれ一機づつ爆撃B班の後背へと向かいLは不知火に射撃をかけている。
「鯨の潮吹き宜しく対空砲でお出迎えってわけ? 嬉しくて涙が出るわね全く‥‥!」
 リンがガンサイトにHWを納めながら呟いた。ラシード機の後背へと回り込まんとしているHWKに対しマシンガンを猛射。損傷しているHWKは弾幕を前に慌てて翻る。アスターナ機はすかざすエネルギー弾を撃ち放った。エネルギー弾は空を切り裂いて飛びHWに突き刺さり、次の瞬間HWが爆裂を巻き起こした。大穴を開けながら落下してゆく。撃墜。
 不知火は複雑な機動を描きながら飛び、HWLからの弾幕を急所に当てさせる事を避ける。セージ機を狙っているHWNの背をサイトに納めるとレーザー砲で猛撃をかけた。蒼い光の嵐が次々にHWNに突き刺さり装甲に穴を開けてゆく。次の瞬間、HWNは激しい漏電を発生させ、爆裂を巻き起こし、火球に包まれながら海へと堕ちてゆく。撃墜だ。
「邪魔はさせませんよっ」
 フォル機雷電はクラリッサ機へと飛ぶHWRの後背に回り込むとヘビーガトリング砲で猛弾幕を解き放った。弾幕を受けてHWは慌てて翻り、その先にサイトを合わせてフォルはエネルギー弾を撃ち放つ。弾はHWRを直撃しこれを爆砕して空に破片を撒き散らさせた。HWが海面に墜落して爆発し盛大な水柱を吹き上げさせる。
「邪魔はさせん!」
 堺機ミカガミもまた美空機を狙うHWTへと迫るとアハト・アハトを撃ち放ち、スラスラーライフルで弾幕を張った。HWTが強烈なレーザーに射抜かれ、弾丸の嵐に蜂の巣にされて爆裂を巻き起こし明後日の方向へと煙を吹き上げながら流れて行く。撃墜。ソーニャはHWLの後背へと捻り込むと電撃、閃光、誘導弾と繋げてこれを爆砕した。
「3、2、1‥‥今ッ」
 ラシードが言って、フレア弾を切り離す。セージ、クラリッサ、美空の三機も次々にフレア弾を投下してゆく。
「往生際が悪いぞっ、さっさと沈め!」
 セージが吼えた。弾はバトルフィッシュに命中すると一斉に猛烈な爆裂を巻き起こした。炎の海が瞬く間に広がりバグアの巨艦の装甲を吹っ飛ばして焼き尽くす。次の瞬間、バトルフィッシュの内部から炎が膨れ上がり猛烈な爆発が巻き起こった。紅蓮の光が周囲を赤く染め上げる。
「やったぜベイビーキティなのであります!」
 美空が翻って歓声をあげた。巨艦は砕け、真っ二つに折れて沈んでゆく。海中に沈むとさらに大爆発を巻き起こし、その衝撃波に海面が膨れ爆ぜて、盛大な水柱を天へと吹き上げた。
 叢雲、鹿島、オルランド、藤田の四機は火線を合わせて最後のHWを撃墜する。白鐘機はブーストを点火してマッハ6を超えて飛ぶと低空で二隻目のバトルフィッシュの前を横切ってゆく。対空砲火がそれぞれ、それを追いかけるように、行く手を塞ぐかのように襲いかかった。流星皇は抜群の運動性で光の嵐に対しローリングしながら次々に抜けて行く。
「ソーニャ、爆撃体制に入ります。援護よろしく」
 暗号コードを用いてソーニャが言った。少女は操縦桿を引くと機体を宙返りさせる。天地が逆転し青と蒼とが入れ替わる。白鐘機が引きつけている隙を狙ってバトルフィッシュへと急角度で突っ込んでゆく。爆撃A班、B班もまたそれに続いた。セージは煙幕を張り、ロケット弾を砲台めがけて叩き込む。
 フォル、ラシード、ソーニャは少しだけ余力を残した速度で、クラリッサは再度限界まで速度を落とし爆撃を仕掛けんとする。美空はバトルフィッシュの直上から深い角度で降下しその中央を目指す。
「直上よりの降下で角度を合わせれば、接近以外のベクトル速度はゼロ」
 ソーニャが呟く。五機のKVは対空砲火に撃たれながらも接近し次々にフレア弾を投擲した。猛烈な爆炎が荒れ狂いバトルフィッシュの装甲を吹き飛ばしてゆく。
 その一波にはかろうじて耐えたバトルフィッシュだったが、再度の爆撃を受けて身を大きく穿たれて割れ、大爆発を巻き起こし、冬の海の底へと沈んで行ったのだった。


 かくて海からの支援を断たれたバグア軍に対し陸の村上師団は猛攻を加え、これを敗走させて豊後高田市を次々に制圧していった。
 同市は再び地球人類側の手に取り戻されUPC軍の旗が翻る事となる。
 大分県で残す主要都市は国東市、中津市、日田市、の三つ。徐々にだが確実に大分県全土の解放の時が迫って来ていた。


 了