●オープニング本文
前回のリプレイを見る ギラギラと輝く灼熱の太陽、黄塵吹きすさぶ荒野の果ての果て。
インドが北西部、クジャラート州に属するステップ気候のその半島、戦火により荒れ果てた大地を千の兵団が動いていた。
「なんか世界各地域色んな所でハードにダンスってるよーな気がするけど、我等が第三独立大隊は〜、堅実地道に一歩一歩進んでゆきますよー、それ進撃〜!」
軍帽をかぶりしなやかな肢体を軍服に包んだブロンドの髪の女が片手で地平の彼方を指差し、もう片方の手は戦車の取っ手を掴みタンクデサントで移動しながら言った。バーブル師団が展開する戦線の一翼を担う、第三独立大隊、通称ディアドラ大隊の大隊長ディアドラ=マクワリス少佐である。
「たいちょーなんで外出てんです?」
コーカソイドの兵がバイクを並走させつつヘルメットを抑えつつ見上げて問いかけた。
「エアコン壊れちゃったんだ、中地獄だぜコンチキショー!」
アラサーな女士官はそう言った。カーティヤワール半島は本日も暑い。
「へぇ、そりゃ災難。ま、でも戦闘が始まったらどの道使えないんでしょ?」
「UPCもSES付ける前にその辺り改善してくれりゃー良かったのになー」
そんな事をのたまいつつ、ディアドラ大隊は半島を進撃し、競合地帯へと突入しベラバル市へと迫った。
ベラバルは半島の南西の端に位置する市で、そこには港が存在する。補給線を確保する為にも海運は有用なものであり、この港の奪取は半島で戦うUPCから期待が寄せられていた。
しかしながら、当然の如くバグア軍の守りも硬く、大小様々なキメラを組織した守備軍が存在しておりその守りは強固だった。やがて戦域に近づいた時、
「さて、戦の時間だ」
女少佐が軍帽を被りなおし戦車の中に入って無線に言った。部隊の空気が張り詰めてゆく。
バーブル師団のディアドラ大隊は歩兵およそ千二百名を主力に、攻撃ヘリ、自走砲、戦車と揃え、空軍からのKV隊の支援を受ける、ミニ混成旅団といった編成だ。これはバーブル師団の編成の特徴で、少ない兵力で広大な半島の各所を制圧してゆかねばならない苦肉の策の結果とも言えた。今の所は敗北していない。いつまで不敗でいられるかは解らなかったが。
砂塵の立ちこめる地平線、親バグアの兵団とキメラの部隊が進撃し、UPCの混成隊と能力者が前進する。
やがて戦が始まった。
蒼空をKVが舞い迎え撃つようにHWが赤く輝き爆風を巻き起こしながら交差する。地上をゆく自走砲や戦車の砲が焔を吹き地平を薙ぎ払ってゆく。砲弾が爆裂し、親バグアの砲が爆裂して四散する。今回のディアドラ隊の砲は射程が長く数も多く親バグアの兵団を後退させ牽制する役割は十分に果たしていた。しかし、やはりフォースフィールドを纏うキメラ達には砲の効果は薄く、足を止める事なく前進して来る。
超巨大なベンガル虎が咆哮をあげて爪に雷を宿して振るい砲弾の爆裂を割いて駆ける。六本の腕を持つ女の上半身と蛇の下半身を持つ白蛇が刀剣を鈍く輝かせ、像の顔と四本の腕を持った異形が双刃を旋回させ進む。その周囲をプロトンライフルを持った無数のオーク兵が固め、片手剣と全身を隠すサイズの大盾を装備した銀色の狼達が前進してきていた。
敵キメラ集団は一つの場所に固まるのではなく、幾つかの隊ごとに別れて距離を置いて突撃してきた。隊ごとの突撃である。
「能力者隊、前へ! 目標、キメラ各隊、迎え撃て!」
キメラ軍団を蹴散らす為に、傭兵達もまた隊ごとに別れ荒野へと繰り出されてゆくのだった。
●リプレイ本文
複数の隊に分散しているキメラが各方面へと突撃してくる。傭兵達もまたそれを迎え撃つべく武器を手に駆けてゆく。
『干物か茹でダコにならない気を付けろよ? ま、そうならない様に愛する少佐の為に手早く勝利の報告をしてみせるぜ』
アッシュ・リーゲン(
ga3804)はトランシーバーをオープンでない周波数に合わせてそう言った。
『あっはっは、ありがとー、水分補給が大事なお年頃だぜ。うん‥‥アッシュも気をつけて、無理はしないで。死ぬんじゃないぞ』
ディアドラからはそんな言葉が返って来た。
『ああ』
アッシュはそう答えて無線を終える。
「こんな物着込んで言う事じゃ有りませんが、暑いですね」
隣を駆けている装甲スーツのお化け、もといクラーク・エアハルト(
ga4961)が言った。AU‐KVばりの全身装甲「ハイライン」を着込んでいる。
「‥‥クラーク、そりゃ暑いだろうよ。良く生きてるな」
「慣れてますので」
そんな事を言いつつ傭兵達は手早く作戦を打ち合わせてゆく。
「数が多い上にまた妙な盾持ちか、また面倒な事になりそうだ」
時任 絃也(
ga0983)が敵の陣容を評して言った。能力者の上級職とまともにぶつかると一瞬で蹴散らされる事も少なくない昨今、それに対抗する為に敵側でも大盾は愛用品らしい。これを破るには工夫やコツが必要だ。
「盾付き‥‥ですか。しかもバイザーまで‥‥とことん対策練って来ましたね‥‥」
リュドレイク(
ga8720)がげんなりしたように言った。敵方もそれなりに戦略を行使してきている様子。
「ふむ、スタンドアロンの大将首に、矛と盾の最強コンビか 姑息に眼つぶし対策までしておるとは‥‥じゃが神風までは防ぎようあるまい」
藍紗・T・ディートリヒ(
ga6141)が言った。KV戦と歩兵戦では使える兵装が違い、中には盾を破るに便利そうな兵装がある。藍紗は今回、竜巻で攻めるらしい。通用するか、否か。
(敵が手強くなってきている‥‥それだけ敵の喉下近くまで近づいてきているってこと、かな‥‥?)
と思うのはティリア=シルフィード(
gb4903)だ。今までのインドでの戦いに比べれば今回の敵の数は少ないが、だからといって油断はできない。
「別方面の傭兵隊も頑張っています‥‥ボクたちも負けられない!」
その言葉に応とそれぞれ周囲から声が返って来る。
「今回も生きて戻りましょう」
ノエル・アレノア(
ga0237)がティリアへとそう言った。
「うん」
少年の言葉に少女は頷く。
(これ以上、戦うことに慣れるのは‥‥嫌ですけど。それでも、やっぱり、戦う力があるのですから‥‥)
如月・由梨(
ga1805)はそう胸中で呟きつつ片手に篭手を嵌め片手に大太刀を握る。戦を忌避する心と戦を好む心の狭間に立つ。
(戦いが、始まる‥‥)
虎牙 こうき(
ga8763)もまた胸中で呟いた。敵であろうが味方であろうがキメラであろうが消えゆく命は見捨てない、それが身に沁みつけた思いである。で、あるならば、虎牙こうきは真に命を大切にする男だ。
(もう、目の前で何もできず誰かが酷い怪我を負うのは耐えられない‥‥)
男は胸中でそう呟く。
だが世界は男の心など知った事ではない。
戦場の賽は常に血を求めて回り続ける。
護れるか? その暴威から。
全ては不可能でも、せめて手の届く範囲は護りたい所。
「――虎牙さんも気をつけて」
作戦を打ち合わせていたクラークが言った。
「はい」
虎牙はその言葉に頷く。仲間達には手練が多い。一人で戦う訳ではない。敵は強力だが味方も強烈だ。力と力のぶつかる所――命の失われてゆく所。
戦場だ。
「山門さんも気をつけてくださいね?」
とクラーク。
「了解、上手くやりますよ」
メットを被った青年は突撃銃のセーフティを外しつつ言葉を返す。
「ヤマト」
皐月・B・マイア(
ga5514)は声をかけ振り向いた青年に言った。
「‥‥無理矢理会わせた後で言うのは卑怯だと思うけど。すまない」
「ああ‥‥ね」
青年としてもバツが悪い所があるのか視線を逸らして頬を掻いた。
「でも、姉さんの気持ちも汲んであげて。本当に心配してたと思うんだ」
「うん、そうだな。心配かけてたのは認めるよ」
「それに‥‥私も。‥‥最近のヤマトは、急ぎ過ぎだ。私が少し足を引っ張るぐらいで丁度いいと思った」
マイアは言った。
「前言ったな。疲れないのかって。私は、誰彼構わず心を砕く程慈愛に溢れてなければ、酔狂でもない」
光線銃を差し出し、
「ほら、エネガン。お前には、砕いていいと思った。ヤマトは『弟』みたいなものだからな」
最後は、自己暗示に近いのかも知れない、とマイアは思う。
「――姉貴って言うにはちょっと頼りないぜ」
などと笑いながら青年は光線銃を受け取り、
「俺が急いでるなら、君はどうだい? 無理はしていないか。俺は結構薄情だけどさ――有難う、感謝はする。けど俺は大丈夫だ。それで以って、俺にも他人を心配する機能は一応ついていて、そして概ね向けられるのはマイアだよ。こちらの前に、自分を守りな、と言いたくなるんだ――‥‥それだけ心配かけてたって事だよな。嗚呼、悪かった、有難う。無茶は控えるよ」
なるほど、確かにお姉さんかもしれないな、などと言って青年は頭をガリガリと掻いた。
「ヤマト」
「ん?」
「フラグは折るものだ。死ぬなよ」
「了解」
銃や剣爪、盾に超機械、各々の武器を構えて傭兵達が駆けてゆく。
キメラの一隊が黄い砂を巻き起こす風の彼方より迫って来る。
最後にクラーク・エアハルトが言った。
「何だかんだ言って、ここまで来たんです。何としても、勝ちましょう。全員で帰って、美味いコーヒーでも飲みたい所です。誰一人欠ける事無く、ね」
一同はクラークの言葉に同意の声を返しつつキメラの一隊へと突っ込んで行った。
●
大盾を構えた十体の狼人が駆け、その後背にライフルを所持した十体のオークが続く。その集団の横手を像頭の四本腕の巨人が双刃を旋回させながら独特のステップを踏んで前進して来ていた。
空でHWとKVが激突し、UPCと親バグア双方の戦車と自走砲の砲が火を吹いて爆炎を巻き起こしている。
傭兵第一分隊がキメラの隊へと迫り、少し離れた場所でも同様に他の分隊がキメラ集団と激突していた。
距離が詰まる。
傭兵前衛A班、左翼に時任、ノエル、中央をリュドレイク、ティリア、右翼に藍紗、如月と並んで歩調を合わせて前進。
支援B班、左翼から山門、左中をマイア、中央クラーク、右中をアッシュ、右翼を虎牙として続いてゆく。
「アッシュさん、そっちは任せます」
クラークが言った。
「了解」
アッシュは応えつつ貫通弾を込めておいた緑色小銃を構える。
如月は閃光手榴弾のピンを抜いた。
距離が詰まる。
相対距離一〇〇、
「取り回しは悪くても、平地での射撃戦なら十分に運用できますよ、コイツはね」
クラーク・エアハルト、大口径ガトリング砲を構える。狙撃眼を発動、射撃開始。多身の砲が激震と共に勢い良く回転し猛烈なマズルフラッシュと共に凄まじい銃弾の嵐を解き放ってゆく。大盾持ちの狼は身を半身に構えると弾丸を盾で受け弾き飛ばしながら突き進んでゆく。
ライフルオーク達がそれぞれウルフの陰から小銃を突きだすとA班の各員へと向けて一斉に連射していた。ワーム級の破壊力を秘めた淡紅色の光線が空を灼いて襲い来る。
「せめぎ合いに付き合うつもりは無い、とっとと沈め」
アッシュ・リーゲン、相対距離八〇で強弾撃、影撃ち、跳弾を発動、藍紗へと射撃しているオークHの斜め後方を狙って発砲。鋭く飛んだ貫通弾が大地に当たって跳ね返り後方からオークの背に突き刺さりその破壊力炸裂させた。射撃中だったオークが血飛沫を噴出して倒れる。アッシュはさらにティリアを狙って射撃中のオークFへ、盾の陰から覗かせている顔を狙って猛射。オークは初撃をウルフの陰に顔を引っ込めて回避。再度射撃せんと顔を出した所へアッシュよりの二連の弾丸が今度は突き刺さって倒れた。
クラークは加速した像人へと標的を移行し影撃ちと強弾撃を発動させて猛射している。弾幕が像人へと襲いかかりその身に突き刺さって血飛沫を噴出させてゆく。
敵味方の射撃が交錯しながら距離が詰まってゆく。
その間にオークのプロトンライフルより時任へ三発、ノエルへ六発、リュドレイクへ六発、ティリアへ五発、藍紗へ四発、如月へ三発、淡紅色の光線が飛んでいた。
時任は初撃の閃光がクリティカルに飛んで直撃、強烈な衝撃に態勢を崩すも続く閃光を素早く身を捻ってかわし、頭部を下げて三発目もかわした。負傷率一割二分。
ノエル、迫り来る閃光を頭部を振ってかわし、二発目がクリティカルに飛んで直撃、態勢を崩すも横に跳んでかわし、回避先へ襲い来る光も身体を振ってさけてさけて胴に光が突き刺さる。猛烈な破壊力。負傷率四割六分。当たるとキツイ。
リュドレイク、唸りをあげて迫る光線に対し一条を避け二条目も鋭く機動して避けるが三条目が身に突き刺さり続いて次々に四条の光が突き刺さってゆく。負傷率六割九分、前の戦いの傷が全快していない。
ティリア、初撃をもらって態勢を崩すも続く四条の光線を機敏に動いてかわしてゆく。負傷率およそ二割。こちらも当たるとキツイ装甲だ。
藍紗、装輪走行で駆けつつ両手に構える鉄扇・扇嵐を構えて迫り来る閃光を受け流さんとする。初撃が扇の間をすり抜けて直撃、猛烈な破壊力が炸裂しつつも続く三条を次々に扇で払ってゆく。負傷率三割五分。
如月、避けきれない。三条の光線が次々に身に突き刺さって負傷率八分。
虎牙、広い範囲を見渡して戦況把握に努めている。腕に嵌めた超機械を掲げ練成治療を連発、ノエル、リュドレイク、藍紗の傷を癒してゆく。ノエル、藍紗を二割、リュドレイクを四割回復させる。
如月、使用の旨を告げつつ像人へと向けて閃光手榴弾を投擲、アッシュもまた像人へと向けて閃光手榴弾を投擲した。二連の手榴弾が飛んで像人の前で次々に炸裂し爆音と閃光で包み込む。
藍紗、まだ射程外だが正面のレギオンウルフへと向かって超機械の扇を翳し竜巻を巻き起こす。砂塵が舞い上がって視界が遮られてゆく。次の瞬間、爆風が巻き起こって塵が吹き飛んだ。レギオンウルフが盾の陰から剣を振るって音速の衝撃波を巻き起こしている。
ウルフ達はそれぞれ、時任へ三発、ノエルへ六発、リュドレイクへ六発、ティリアへ六発、藍紗へ二発、如月へ三発、音速の衝撃波を撃ち放つ。
「狼の盾を押さえ込む、巧く連動してくれ」
時任、言いつつ瞬天速で猛加速、音速衝撃波の狭間を見切って瞬間移動したが如き速度で突っ込んでゆく。全撃かわした。一気に間合いを詰めると緋色に光る四本の爪を振りかざしてレギオンウルフへと襲いかかる。
ノエル、素早く駆けて六連の音速衝撃波のうち四発を見切って回避、二発を受けるも倒れずに時任の後を追って突っ込んでゆく。負傷率五割。
リュドレイク、三発かわして三発直撃。負傷率五割七分。大盾が下がった所へ斬りかかりたいがまだ少し遠い。大盾の奥のウルフEを視認すると腕に嵌めた超機械クロッカスをカウンターに翳す。四連の電磁嵐が連続して巻き起こった。強烈な四連の蒼光嵐がウルフを呑みこみ、狼人は断末魔の吼え声をあげながら倒れてゆく。撃破。
ティリア、二匹のウルフから放たれる六連の音速波に対し迅雷を発動、猛加速して五発をかわし、一発の直撃を受けるも突っ込んでゆく。負傷率三割四分。
藍紗、二連の音速衝撃を扇を翳して受け止めると、そのまま超機械を発動させる。
「鉄壁の盾といえど、これは防ぎようがあるまい」
大盾を構えたレギオンウルフを中心に四連の竜巻が発生、狼人Gはズタズタに斬り裂かれながら倒れた。撃破。藍紗の負傷率は三割。
如月は迫り来る音速波の軌道を見切ると像人へと向かって駆けながらスライドして全撃を回避。
「荒れ狂い、呑み込め!」
マイア、ウルフDへと向かって禍々しい形状の杖を翳し、大盾を構えたウルフの周囲から四連の蒼光の電磁嵐が巻き起こす。狼人は光の嵐に飲み込まれ灼き焦がされて倒れた。撃破。
時任、狼の左面へとステップし爪で薙ぎ払う。レギオンウルフは素早く反応して大盾でガード。猛烈な火花が巻き起こる。激突の反動を利用して身を捻りざま脚甲「ペルシュロン」で回し蹴りを放つ。ウルフはこれも盾を合わせてガード。
(正面からだとこの盾は相当に厄介だな)
まったく攻撃が通らない。時任、その頑強さに辟易する。が、一人で戦っている訳ではない。計算のうちだ。
ノエルが右面へと挟みこむように回り込んでいる。ウルフの背後を取ると左手に持つ金属の筒からレーザーのナイフを一閃させ、右手に嵌めた金属の爪を振り降ろした。二連撃が直撃しウルフBは血飛沫をあげて倒れる。撃破。
時任とノエルはその勢いのままウルフAへと襲いかかる。ノエルが繰り出した爪がウルフの大盾と激突し、その瞬間に側面へと踏み込んで時任は急所突きと瞬即撃を発動。目にもとまらぬ速度で爪と蹴りの二段撃をウルフへと叩き込む。
「さっさと沈め、後が支えてるのでな」
時任の蹴りを受けてウルフが吹っ飛んでゆき荒野に転がる。撃破。
「その盾ごと‥‥この一撃、『通す』!」
ティリア、剣を振り上げるウルフに対して残光を宙に引きながら側面に入る。盾を持っている腕はちょっと狙えない、腕を折りたたんで密着している。目にも止まらぬ速度で右の小太刀を振るって剣持つ手首へと斬りつける。刃が炸裂して血飛沫が噴出しティリアはすかさず左の小太刀を突きこんでウルフFを打ち倒す。撃破。
ヤマトは至近まで飛び込むと光線銃を二連射づつしてオークABを撃ち抜いて倒す。
像人は四本腕のうち二本の腕をくねらせると、その指先から氷の矢を発生させ如月へと撃ち放つ。狙いが甘い、閃光手榴弾が効いている。如月は突進しながら二連の氷の矢を掻い潜る。かわした。
猛然と間合いを詰めると長さ1.6mの大太刀をパワーに物を言わせて唸りをあげて降り下ろす。像人は素早く双刃を掲げ、右端の刃で太刀を払うように受け流した。流れるような動作でそのまま双刃を回転させると左の刃を如月へと向かって振り下ろす。カウンターは警戒している。大太刀を流される勢いに逆らわずに横にスライドして一撃を回避。身を捻りざま四連の剣閃を巻き起こす。像頭の巨人は体躯に見合わぬ軽快さでバックステップしながら回避し、あるいは双刃で受け流し、空いている二本の腕から氷の矢を撃ち降ろす。如月は飛び退いて氷の矢を回避。荒野が蒼白く凍てついてゆく。
時任、ウルフCへとその左手へと踏み込んで襲いかかり大盾と爪を激突させ、ノエルがその右手側から背後に回り込んで爪とレーザーナイフで連撃を叩き込んで沈める。時任はオークCからの光線を突進しながら踏み込んで回避すると駆け抜けながらその脇腹を爪で掻っ捌く。逆サイドからノエルが入って同様にレーザーナイフを一閃させて斬り倒した。撃破。
クラーク、無線で如月へと注意を促しつつ女が斬り合っている像人へと大口径ガトリング砲をリロードし再度その砲口を向ける。
「銃弾の激流にどれだけ耐えれるかな?」
練力を全開に強弾撃と影撃ちを発動、マズルフラッシュと共に凄まじい勢いで弾丸の嵐が像人へと襲いかかってゆく。像人は素早くステップして弾丸をかわすもやがて呑みこまれて蜂の巣にされ血飛沫を吹き上げてゆく。
如月は弾幕の切れ目を捉えると下方から踏み込み、像人の双刃の中央を狙って逆袈裟に振り上げる。太刀と鋼の柄が激突して像人の身が仰け反り、如月は横薙ぎに太刀を振るった。刃が巨人の腹に炸裂して血飛沫が噴き上がる。二本の腕から氷の矢が出現して如月へと襲いかかり女は飛び退いて一撃を回避し、二撃目が避けきれずに直撃、その身が凍結してゆく。像人が追撃に踏み込み、如月はレジストを発動して凍結に対抗、動きが鈍ったと見せつつ、像人が振り下ろす刃に反応、かわしながら踏み込んでカウンターの斬撃を氷の矢を放つ腕を狙って振り下ろす。像人は流れるように身を捻って回避し振り抜いた双刃を回転させてカウンターの一撃を如月へと振り下ろす。如月はステップして一撃を回避。
像人の身から竜巻が発生しその身が切り刻まれてゆく。装輪走行で間合いに入った藍紗は鉄扇を像人へと振り降ろし像人は双刃を回転させながら払い、そのまま逆の刃で藍紗へと斬りつけ、藍紗は逆手の扇をかざし太刀を受け止める。凶悪な破壊力が炸裂し衝撃が身を貫いてゆき、如月が斬りかかって像人が後退する。
「むぅ‥‥まともに受けては身が持たんのぅ」
藍紗は手の痺れを堪えつつ回避先へと竜巻を巻き起こして像人へと破壊を叩きこんでゆく。
「しかしまたずいぶん立派な鼻じゃのう、二枚目の下半身にぶら下がっていれば可愛がってやるのにのぅ」
見た目少女は像人を評してそんな事を言った。割と余裕はあるらしい。
他方、リュドレイクはオークEからの猛射を受けつつも光線を突き破って肉薄している、流し切りを発動させて追撃をかわしながら側面を入ると両断剣をさらに発動、身を捻りざま赤色の刃を稲妻の如くに二連に閃かせて斬り倒し、さらにオークFへと駆けて光線の猛射を受けながらも刃を落雷の如くに振り降ろして斬り倒す。
虎牙はリュドレイク、ノエル、ティリア、藍紗へと練成治療を発動させてその傷を癒してゆく。各員の生命力が二割程回復した。
(しかし、今の所回復で手一杯だな‥‥)
男は胸中で呟く、傭兵達が押してはいるがなかなかハードな戦場だ。
「囲ませるかっ!」
マイア、機動しながら藍紗へと音速波を飛ばしているウルフHを射程に捉えると再度杖を翳して電磁嵐を巻き起こした。蒼い光に飲み込まれ狼人が灼き焦がされて倒れる。
ティリアもまたウルフIへと突進すると刹那を発動させて二刀小太刀でカウンターの連撃を叩き込んで沈め、その勢いのままウルフJへも突っ込んで斬り倒す。
アッシュ、今回の敵はなかなか左右への機動が激しい、固定射撃は行い難いので影撃ちを発動させつつ猛射。オークGへと銃弾を二発撃ちこんで倒し、オークIもまた撃ち抜いて撃ち倒す。
オークDを時任とノエルが連撃を叩き込んで打ち倒し、オークJをヤマトが光線銃で撃ち抜いて倒す。
像人が閃光手榴弾の影響から脱しその動きの精度が鋭さを増し、如月へと疾風の如くに刃を叩きこんでゆく。如月は練成治療を発動させて自己を回復させながら反撃の刃を放つ。
藍紗、サイドへと素早く機動しつつ鉄扇を振るい、竜巻を巻き起こし、仕込み刃で突いてゆく。
「沈めぇぇ!」
クラークは無線で仲間へと警告を飛ばしリロードを終えると、前衛の二人が飛び退いたのを見てから三度練力を全開にガトリング砲で猛弾幕を張った。像人の身から血飛沫が噴出し、アッシュは緑色の小銃をリロードすると像人の足を狙って弾丸を叩きこんでゆく。虎牙がミネラルウォーターを投擲、像人の身の一部に水が降りかかる。虎牙はすかさずクロッカスをかざして電磁嵐を巻き起こし、マイアもまたアスモデウスをかざして電磁嵐を叩きこんでゆく。十字砲火だ。ヤマトもまたエネルギーガンをここぞとばかりに猛連射し、ノエルはS‐01を抜くと狙いを定めて連射、四連の弾丸を叩きこむ。リュドレイクもクロッカスを翳して電磁嵐を集中させてゆく。
「由利殿、あのでかっ鼻切り落としてやれ」
藍紗が言って竜巻を巻き起こす。猛射を受けてよろめいている像人へと如月は踏み込むとその大太刀を振り降ろして炸裂させて、斬り倒したのだった。
かくて、第一分隊の活躍によって踊る像人のキメラ隊は殲滅された。
クラーク・エアハルトはそのまま追撃戦にも参加しUPC部隊の援護を行った。
ベラバルの野での戦いに勝利したディアドラ隊は余勢を駆ってバグア軍を追撃して撃破し、ベラバル市を陥落させてまた新たにカーティヤワール半島にUPCの旗を立てたのだった。
了