●オープニング本文

　ピエトロ・バリウスの戦死とユニヴァースナイト弐番艦の大破の報せは、勝利に酔いかけた欧州軍本部をその黒い翼で一打ちした。それはチュニジアに残った部隊も例外ではない。いや、残ったからこそ心に圧し掛かる重さは大きかった。
「この基地を、守らねばならない」
　おそらくは最もその重さを感じているだろうミハイル・ツォイコフ大佐は、ジブラルタルから反転したユニヴァースナイトの艦上で指揮を執っていた。
「‥‥それが、バリウス中将の遺志に沿うだろう」
　そして、自分達の心の安定にも。声には出さなくとも、それは周囲にも伝わっていた。

●
　ピエトロ・バリウスが死んだ。
　その報は計りしれない衝撃となってＵＰＣ軍を貫いていった。
　救援に向かった軍は結局、間に合わなかったのか。つまり、ピエトロは最後まで正しかった――本当に？
　最小の犠牲で最大の戦果を、それが指揮官の鉄則だ。だが何十年と戦い抜き今日までＵＰＣを支えてきたピエトロの手腕と引き換えに得たものは、本当にそれに見合っただけのものだったのだろうか？　ピエトロは、己自身の能力を実際よりも少なく見積もってしまっていたのではないか？
　一部の兵士達の間ではそんな声があがっている。
　そう、
『ピエトロ・バリウスがいなくなったら誰が実際的にＵＰＣ軍を統括するのだ？』
　そんな疑問がある。
　もっとも人望がありそうな軍人はツァイコフ大佐だろう。彼は堂々たる軍人で優秀な指揮官だ。だがしかし、あくまでその性質は前線指揮官だ。全体をまとめるのには向いてないように見える。そもそもに階級が足りていない。
　ならばオリム中将か？　優秀という噂だが、しかしいつだったかのアメリカでの戦いには良い印象がない。
　ならば原子時計か。ハインリッヒ・ブラッド。彼ならばやれそうな気がする。しかし、ピエトロ程の冷徹さで成すべき事を成す事が出来るのか‥‥
『我々は、替えの効かない屋台骨を、失ってしまったのではないか』
　そんな空気が、ひそやかに広がっていた。
　拡散する空気は冷たい不安となって兵士達の心の隙間に滑り込む。
「緊急出撃命令です」
　チュニジア基地のブリーフィングルームに声が響いた。声を発したのは緑髪の少女、ブルーファントムのスナイパー、相良裕子だ。
　不安だろうが死にかけてようが敵は来る。むしろ、そういった時にこそ嵩にかかって押し寄せて来る。大天使作戦によってチュニジア海岸沿いに作られた基地は、恒常拠点としてその体裁を整えつつあった。しかし敵がその完成を黙って見ていてくれる訳もない。
　失ったものと引き換えに手に入れたものは、守り通さねばならないと少女は言う。これを失ったら、あの戦いで焔に呑まれた人々は一体なんの為に死んだのだ？
　負けられないのだと少女は言った。
「当基地に向けてバグア軍の威力偵察と思われし部隊が接近中です。西の空より十六機、南の地上より十二機、かなりの規模です。隙あらば基地に一撃加えておこうという構えでしょう。接近を許す訳にはいきません。敵の内訳は空がエース機と思われしＨＷが二、爆装が施されていると思われし中型ＨＷが一、小型ＨＷが九、キューブワームが四です。地上は指揮官機と思われしタロスが一、タロスが三、ゴーレムが三、レックスワームが五です。こちらは空に九、地上に八で迎え撃ちます。各迎撃プランの詳細は――」
　ブリーフィングが続く。
　思えば遠くへ来たものだ。戦火は人を変える。三年前の迷子の中学生も例外ではない。その心は未だ闇夜を彷徨っているのかもしれないが――
　ブリーフィングの最後に、破壊神と渾名される少女は言った。
「チュニジア基地は暗黒大陸に打ちたてられた牙です。そして我々がチュニジア基地の牙です。故に向かい来る敵は粉砕します。私達がこの地にいる限り、決して手出しは出来ないのだと、敵の髄に叩き込んでください。奮起を期待します。以上」

●参加者一覧

●リプレイ本文

　チュニジア基地から出撃した八機のＫＶが熱砂の大地を駆けている。
「今回はまた‥‥何とも厄介な編成ですな」
　ディアブロのコクピット内、飯島　修司（ga7951）が唸った。
「気を引き締めてかからないといけませんね」
　阿修羅で並走しながら井出　一真（ga6977）が頷く。情報通りなら敵の戦力はかなりのものだ。
（「亡くなられ、バグアにこれから利用されるであろうバリウス中将に報いるためにも、基地は守りきらないと‥‥！」）
「敵は手強そうだが‥‥うん、楽しそうだ」
　漸　王零（ga2930）は不敵に笑う。
「招かれざるお客さんです。早々にお引き取り願いましょう」
　と榊　刑部（ga7524）。全く無粋としか言いようがないタイミングで来るものだ、と思う。
　レーダー情報を元に駆ける事しばし、やがて傭兵達は南から迫り来る十二のワームの群れを発見した。
「うわ〜結構いますねぇ〜」紅桜舞（gb8836）が言った「でも全部やっちゃいますねぇ」
（「能力者になってから初めてやな、こんな強い敵に当たるの」）
　ユステズ（gc3154）は正直場違いかもしれないとも思ったが、
（「――死んだら所詮、ウチはそこまでの女ってこったな。試して見ようやないか、ウチの今の力がどの程度か！」）
　七機のＫＶが猛然と駆け出し、十二のワームもまたそれを迎え撃たんと展開する。
　距離が詰まる。
　相対距離六〇〇、漸機、動きを見つつ引き気味に前進。既に射程内だが味方がRCの動きを止める瞬間を待つ。
　飯島機は指揮官機タロスに、榊機と守原有希（ga8582）機は強化タロスに、井出機と紅桜機はRCへと向かう。宮明　梨彩（gb0377）は邪魔にならないように大人しくしている。
　ユステズ、ゴーレムかRC、どちらに向かうか？　とりあえず間を取って距離を詰める。どちらへゆくかは場の流れ次第だ。
　バグア側は横列に展開した。射線の関係だ。指揮官機を中心にその左右にRC、最左翼をゴーレム三機が固め、最右翼を盾持ちのタロス三機が固めている。右翼タロスは全体戦列より五十程度前方に出ながら戦場の東側を北へと昇ってゆく。
　距離二一〇、紅桜、アハトでRCに狙いをつけ発砲。砲竜は閃光を素早く機動して回避。距離が少しきついか？　リロードしつつ前進を再開する。知覚攻撃を回避した後、RCは青色に変化した。知覚に強くなったのだろうと予想する。
　射撃を受けワーム達が一斉に加速する。傭兵達もまた詰めんとする者は一気にそれぞれ最大戦速へと加速した。
　井出は蒼翼号のブーストを発動。鋼の獣が四肢を躍動させて飛びだしRC目がけて砂漠を高速で駆けてゆく。
　守原機、強化タロスとの相対一五〇、アクチュエータを発動。左に楯持つ敵機の右側面へ回らんと弧を描いて駆ける。
「ん達はここにおっとけ！」
　Ｓライフルを向け猛射。三機それぞれへ三十発づつ弾幕を撃ち放つ。タロス達は右に回られるのを嫌ったか東へ駆けながら大盾で受けつつ守原機へ距離詰める。
　中央、漆黒の指揮官機は赤く輝くと二連の荷電肩部砲を回し井出機へと狙いをつけ閃光爆裂十二連。黒銀赤の三機のゴーレムもまた肩部砲で砲弾を四連射した。五匹のRCも井出機へと小型プロトン砲で計十五連の閃光を爆裂させる。一斉射撃。
　井出機はブースト突撃しながら二連の閃光をかわし、三発の砲弾をかわし、五連のプロトン砲をかわして抜ける。第一波全部抜けた。鬼神の如き速さ。だが抜けた直後に二波、三波、四波、五波、六波と迫り来る。第二波、避けた。第三波、スライドした先にプラズマ光波が叩き込まれ猛烈な衝撃が襲い来る。指揮官機の射撃に合わせて直射で撃ってきている。衝撃に揺らいだ後に残り全弾入った。壮絶な衝撃がコクピットを襲う。紅光砲が終わる。第四波、衝撃がきつい、全弾直撃。砲弾が終わる。第五波、機体を低く横に跳躍させる。光が傍らをかすめてゆく。かわした。六波、回避。井出機、損傷率六割。タフな造りだ。
　三機のタロスは赤く輝いて加速し円弧を描く守原機へと詰めつつ相対一〇〇で荷電小銃を猛射する。高速機動戦。守原機は左右へと乱数機動を行いながら十一発を上手くかわすも四発被弾。プラズマ光波が猛烈な勢いで装甲を消し飛ばしてゆく。損傷率六割二分。守原、回避に重きを置くなら戦い方は悪くない。烈火閃剣の運動性の場合ただ相対するだけの者なら三倍当たってる。だがここは北アフリカの激戦区、地獄の一丁目。強化タロス三機は同時に相手するには厳し過ぎる敵だ。しかし、贅沢は言ってられない頭数であるのも事実。
（「信じてくれた人、信じてくれるの為、うちらは希望ば有らしめる！」）
　熱砂を蹴って駆ける。守原有希、弐の現小隊長、踏ん張れるか。
『機体も乗り手もロートルですが、暫しお付き合い願いますよ』
　中央相対二十。先々代小隊長、飯島修司は真紅の悪魔を疾駆させつつオープンチャンネルで言った。敵指揮官機は赤光を纏い半身で大楯を構えている。
（「油断は‥‥見えませんな」）
　逆に凄まじいまでの気迫を感じさせる構え。飯島はブーストを発動させ加速、牽制から入る。相手の顔面へ砲を向けレーザー三連。光を追うようにしつつ、相手の右側へと踏み込み護剣で斬りかかる。閃光と盾が激突する。盾がスクリーンになった筈だがしかし、指揮官機は後退しつつ素早く大楯をかざして護剣を受け止めた。敵も並ではない。鋼と鋼が激突し激震と共に火花が突き抜ける。
「ＳＥＳフルドライブ。ソードウィング、アクティブ！　その砲、撃たせ続けるわけにはいかない！」
　同じく先代の弐の小隊長、井出一真、ブースト機動で砲火の嵐を突き破り低い態勢から駆け抜けざまRCの足を切り裂いてゆく。高さが低く、速い。一体を抜け、その先の二体目も抜ける。竜達の足から血飛沫が吹き上がった。その色が赤く変化してゆく。
　距離一一〇、その二体へ向け漸はすかさずM‐181大型榴弾砲で射撃した。命中。RCの直径十ｍ範囲で大爆発が巻き起こる。
「まずはお邪魔な弱いさんからお掃除ねぇ〜」
　紅桜、相対一四〇程度まで詰めアハトを構える。足を止め、炎の中のRCへと閃光を解き放つ。蒼光が竜の身を撃ち抜いた。色が青に変化する。
　榊機は砂漠を駆け近接マニューバを機動、守原機へと撃ちあっているタロスの一機へと迫る。猛然と振りかぶりツインブレイド一閃。タロスが振り向き刃と盾が激突して轟音と共に火花が散った。ユステズ機は前進中。距離は後八十ｍ程度。
　一方、
『それは好都合――』
　指揮官機タロスは槍を引きながら一歩後退しつつ飯島に答える。
『貴様は俺と踊っていてもらおう！』
　右手に持つ爆槍を飯島機へと連続して繰り出す。剣二本と爆槍持ったディアブロには気をつけろ、くらいは言われているのかもしれない。
　飯島機、右へ回り込む動きを重点に前後左右に動きながら、赤光を纏い踏み込んで来る指揮官機の連続突きを払い、いなし、打ち落とし、捌き、止めて、止める。穂先から吹き出す爆炎が直撃していないにも関わらず衝撃を伝える。損傷率四分。飯島、反撃に槍を繰り出し、フェイントを織り交ぜ、レーザー砲を猛射する。大楯は悉くを止める。
　井出機、ブースト機動で剣翼突撃。新たにRC三体の脚を駆け抜けながら斬り裂いてゆく。漸機が榴弾砲を三連射して巻き起こした爆裂を背にゴーレムへと向かう。その漸機はブースト機動でRCへと突撃を開始した。
　榊機は近接マニューバ継続発動、颶風双刃二連斬。火花を散らしつつタロスは盾で受け、榊は内臓の雪村を起動させる。紅蓮に眩く輝く光の刃が稲妻の如くに噴出する。神速の突き。光の刃に対ししかしタロスは素早く反応し盾をかざした。非物理にも強い。タロスが金属の筒を振り上げる。長大な蒼の光刃。落雷の如き二連斬。榊機、素早く後退、一撃避ける、近接マニューバが効いている。が、踏み込んでの追撃をかわしきれず装甲が削り取られてゆく。損傷率二割二分、猛烈な破壊力だ。すかさずタロスは金属筒を放り捨てナイフを抜刀様に三連の閃光を巻き起こす。榊、二発喰らった。損傷率四割四分。
「頑丈でも両方浴び続ければどがんか！」
　割と後が無い守原機、ブースト、アクチュエータ、ＡＥＣを併発、直線で突っ込んで来るタロスに対して相対距離八〇、Ｌカノンを撃ち放つ。タロスの一機は赤く輝いて盾で受け、プラズマライフルを六連射、二機目も同様に盾で受け六連射、三機目はちょうどナイフで榊機へと斬りかかっていた所へ三条が直撃する。襲い来る十二連の閃光を守原機は円弧を描くように跳躍し、宙でスラスターを吹かせつつ下降し、また滑るようにブースト機動でスライドして全弾をかわしてゆく。
　五体のRCは井出機へと側面後背から十五発の淡紅色光線砲を撃ち放った。井出機ブースト機動、四脚で低く駆け抜け七発回避、これを避けるのか。しかし八発被弾。損傷率九割一分。
　紅桜はRCへとSRD‐02で射撃しリロードしてアハトを放つ。回転するライフル弾と閃光が空を切り裂いて飛び、赤青に色を変化させるRCをぶち抜いて大地に沈めた。撃破。
　ユステズ、ディアブロを疾駆させRCに踏み込む。アグレッシヴフォースを発動、すれ違いざまに斧で薙ぎ払う。命中。RCの皮膚が割れ鮮血が噴出する。ユステズ機はそのまま走り抜けてゆく。その背後を撃たんとした直後、ブースト機動で突っ込んで来た漸機が左の拳を眩く輝かせRCへと猛然と叩き込んだ。猛烈な破壊力にRCが悲鳴をあげ、色を赤から青に変える。漸機は右に構えた剣を引き絞るようにしつつ一歩後退し、次の瞬間、刀身を回転させながら繰り出した。螺旋のジャイレイトフィアーがRCをぶち抜きその奥まで貫き通す。引き抜く。RCの瞳から光が消えた。撃破。
　三機のゴーレムは大剣を振り回して突っ込んで来た井出機と格闘している。三方からの剣は高速で駆動してかわし、サンダーテイルを叩き込む。
　飯島機は指揮官機は激しい攻防、しかし互いに防御が硬い。
　漸はRCの無力化を優先にナックルと螺旋剣の二段撃で二匹の砲門を破壊する。螺旋剣を叩き込んで一匹の砲門もやはり破壊。ユステズ、漸機と挟むように一匹へと突撃、お膳立てするつもりだったのだが敵味方の流れから良い所が回って来る。後背取った、ＡＦを継続発動させ三連の斧撃を叩き込む。赤く変わっていたがそのまま物理で削り倒す。RCがかち割られて倒れる。残る二匹のRCは漸機を取り囲んで爪牙を振るう。漸機は一歩後退しながら半身に構え、剣で払い拳でいなしかわす。その隙に紅桜機が突撃しＬガトリンクで閃光を放つ。三条のそれをRCは素早く跳躍して回避、紅桜は再度レーザーを放つ、命中、すかさず重機関砲に切り替え猛射。鉛玉を喰らってRCが倒れる。
　井出機はゴーレムと格闘戦を継続中。剣翼と尾を振り回して三機を押している。
　守原機、アクチュエータ起動、榊機の眼前の敵へと左九十度から猛射。タロスは盾を翳して受ける。榊機はすかさず右に踏み込みつつ機体能力を全開に再び雪村を発動させる。光刃一閃。火煌の刃がタロスの胴をぶち抜いた。榊機、雪村を噴出させたまま横に掻っ捌き、さらに双刃で一撃を入れる。轟音と共に装甲が陥没する。タロスは既に赤く輝かず再生もする気配がない。しかし、衝撃に一瞬揺らぎはしたが、若干速度を落としつつもタロスは猛然と至近距離から振動波ナイフで五連の閃光を巻き起こす。一発二発で動きに齟齬が出る程ヤワな造りはしていない。榊機は三発回避して二発被弾。損傷率七割一分。
　二機のタロス、猛然と赤輝を纏い守原機を追って荷電銃を六連射する。守原、足を止める事なく駆け乱数機動、八発かわして四発被弾、損傷率十一割六分、よく踏ん張ったがここで大破。爆裂。
　飯島対指揮官機。この大楯はこれといった対策無しに一機で正面から抜ける性質の物ではない。飯島機の手数と破壊力なら流石に多少は衝撃が抜けるが、指揮官機は生じた傷をみるみるうちに回復させてゆく。再生能力だ。
　漸機はブーストを吹かして榊機の元へと向かっている。背を向けた瞬間にレックスの一匹が爪牙で飛びかかったがすかさずに紅桜が閃光で撃ち抜いて落とした。
　井出機はゴーレム三機と格闘中。痛打を与えてゴーレムの一機を追いこむ。反撃は全て回避。ユステズがゴーレムの元へと駆けよって井出が尾で貫いている敵へと斧で斬りつけた。命中、後一押し。
　タロス、音速ナイフ五連斬、榊機、敵の攻勢が激しいので守備を固めて相対している。四発を避け一撃に斬られる。損傷率八割六分。双刃で牽制の斬撃を放つがタロスは盾で止める。漸機がブースト機動で横手よりＳライフルを放ちながら突っ込んだ。盾が弾丸にかざされ、榊機がすかさず側面に入って連斬を叩き込む。命中。再度振り上げ連撃。タロスが盾をかざす。漸機が踏み込んで肉薄し螺旋剣を繰り出してぶちぬいた。痛烈な一撃。二本の剣が叩き込まれ、タロスが漏電と共に爆裂する。撃破。同時、横手から飛来した十二連の閃光が榊機に襲い来る。吹っ飛んだ。損傷率十一割六分、大破。ミカガミが倒れる。
　井出機、ゴーレムの一機を剣翼で体当たりして吹き飛ばし撃破。二機目へと仕掛ける。
「は〜い援護〜援護〜」
　紅桜機はガトリング砲で弾丸を、ユステズは側面より一撃離脱で斧をゴーレムに叩きつけて援護する。
　飯島機、指揮官機と一騎撃を継続中。
　漸、戦場全体を見る。タロスを前に右手の砂漠の彼方、指揮官機へ狙いをつける。誤射が怖いが槍対槍なら間合いはあるか？　援護射撃、発砲。鋼鉄の弾幕が百の距離を越えて指揮官機へと襲いかかる。同時、タロス達が閃光を爆裂させた。漸、注意が分散している。全弾命中。損傷率二割一分、アンラ・マンユ、タフな造りだ。指揮官機は漸機よりの銃弾を咄嗟に大盾で防御。飯島、この好機は見逃さない。間髪入れずにブースト機動で側面に踏み込み光に匹敵する速度でロンゴミニアトを繰り出す。切っ先が盾の合間を縫ってタロスの脇腹、入った。リロードしつつ猛爆七連。鬼神の破壊力。指揮官機が胴から真っ二つに割れ吹き飛んだ。全快から零まで一気に持ってゆく。ありえん、と言うのも毎度の事になりつつある。撃破。
　ゴーレムは井出、ユステズ、紅桜機が抑え、強化タロス二機の猛攻にも漸機は踏ん張り、フリーになった飯島機が動き出す。二十秒後、強化タロス達が螺旋剣と爆槍によって打ち倒され、ゴーレムの一機が三機からの攻撃を受けて沈み、その十秒後、四方からの集中攻撃を受けて最後のゴーレムも沈んだのだった。



　かくて傭兵達の活躍により十二機のワームは殲滅された。
　人類は数多の犠牲と共に築いたこの基地を橋頭保としてさらに暗黒の大陸を喰い破ってゆくのか、それとも砂漠の塵に消えるのか‥‥
　それは未だ解らぬ事であったがしかし今はこの勝利を称えよう。
　チュニジア基地は、守られたのだ。


　了