タイトル:【AA】難救・制圧マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 不明
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/27 23:40

●オープニング本文


 ピエトロ・バリウスの戦死とユニヴァースナイト弐番艦の大破の報せは、勝利に酔いかけた欧州軍本部をその黒い翼で一打ちした。チュニジア沿岸に恒常的な拠点を確保するという大業を果たした将兵の顔も、暗い。それは勝利と言う言葉で表すには余りにも苦い味わいだった。
『数百人規模の一般人の収容所があるようだ』
 そう、生き残った兵士が語る。場所は、かつてカサブランカと呼ばれた都市のやや北側。バリウスの指揮下の一部隊は、陽動のためにそこへ強襲を仕掛けようと企図していたらしい。陽動はもはや、果たす意味が無くなったのだが。
「彼らをもしも解放できるならば‥‥」
 バリウスから指揮を引き継いだブラットは、言葉の後ろを宙に漂わせた。この戦場が無駄でなかった証が一つ、増える。それは、暗く沈んだ空気に光を差す事でもあった。
「ブリュンヒルデ、拝命します」
 マウル・ロベルは綺麗な敬礼を返した。今の欧州軍は小さくとも価値ある勝利を欲している。いや、必要としている。『比較的』損傷の軽微なブリュンヒルデで収容所を強襲、民間人を確保の上離脱するという作戦を立案するほどに。


 どうもこの収容所というのは複数あるらしい。UPC軍は多数のそれへと攻撃を仕掛けている。
 今回、傭兵達が向かうのもその先の一つだ。
 アフリカは敵地であり、行く手には多数のバグア側勢力がひしめている。
 敵を蹴散らして道を開き、収容所を襲撃して確保し、それを守りながら撤退する。
 言葉にするならたったこれだけではあるが、実行に移すとなると困難を極める任務だ。
 ブリュンヒルデよりこの収容所の襲撃を指示された将校は隊を三段に分けて実行にあたる事に決めた。
 すなわち、先だって突入し道を切り開く斬り込み部隊、収容所を襲撃し人員を確保し撤退する奪還隊、敵の追撃を抑える迎撃隊。
 どれが欠けても作戦の成功は望めない。
「似たような事は前に一度やっているのだが、あれは移送中の隊を襲撃しての事だったし、ファントムもいたからな‥‥」
 例の破壊神はチュニジア基地の守りへといった。彼女に頼る事は出来ない。
「それ抜きで施設を陥落させて数百人を収容して撤退となると‥‥」
 将校は考える。
 やはり、困難な任務だ。
 だが今回は損害は考えなくて良い。不利になったら途中で救出した民間人を放棄して撤退せよ、などという命令は出さなくて済む。その点が救いといえば救いだが――
(「厳しい」)
 どう考えてもやはり厳しい。
 だが、それでも失敗する事は許されない。彼はブリュンヒルデからすれば流れ者の客将のような存在だが、だが、だからこそ失敗して艦長の顔に泥を塗る訳にはいかない。何よりも数百もの人々の未来がかかっている。
 借り受けた戦力を考える。
 空、陸、歩兵。配備されている火器の数。
(「傭兵だけが頼みか‥‥」)
 正規軍だけでは――無理だ。これまでの戦いの経験からそう判断出来る。
 前に来てくれた傭兵達は優秀だった。
 だが、今回はどうか。今や切り札たりえているULTの傭兵達だが、不正規兵はいつもいてくれるとは限らない。神頼みという程博打ではないが、運が悪ければ十分たりえない。
「本部の参謀連中が傭兵の運用が好きでないのも解らんではないな‥‥」
 不安は限り無く零にしておきたいが、こちらの戦力値は常に変動する。しかもそれが切り札、頼みの綱であるのとなっては。
 考える。それでも、ここに渡されると思われしきもので、万が一の時でも敗北しない範囲で、戦力を配分し、過剰を減らし、足りない部分には回し、目的達成の為に運用する方法。戦略の部分は過ぎ、戦術の段階だ。
 地図を睨み、こつこつと卓を指先で叩く。
 とりあえず――胃薬が欲しかった。

●参加者一覧

櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
秋月 祐介(ga6378
29歳・♂・ER
フォルテ・レーン(gb7364
28歳・♂・FT
ゼンラー(gb8572
27歳・♂・ER
柳凪 蓮夢(gb8883
21歳・♂・EP
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN
アクセル・ランパード(gc0052
18歳・♂・HD
ジャック・ジェリア(gc0672
25歳・♂・GD

●リプレイ本文

 ブリーフィングルーム。
 傭兵達は話し合い主力隊がまず一撃した後、退がる作戦とした。各員はそれを了解する。しかし、どの程度の距離から攻撃を開始して、どの程度の距離まで踏み込んで、どの程度の距離を後退するのか。具体的にはどう動こうか。
 主力隊、フォルテ・レーン(gb7364)は開幕突っ込んでブレイド、ファリス(gb9339)は初期は重機関砲を主とし接近戦は行わない、アクセル・ランパード(gc0052)はスラスターで射撃戦。柳凪 蓮夢(gb8883)は最前線で矢面に立ち射撃の予定だが、白兵突撃する者がいるなら射撃ラインは最前線ではない。偽りの印象を敵に植え付けたいが零距離突撃射撃をやってしまうと説得力が無い。各員の狙いが相克している。相談の末、アクセル機が間を取って中間ラインまで先頭で詰めてから後、三機でフォルテ機を射撃援護する事にする。
 砲撃隊、ジャック・ジェリア(gc0672)は前衛に立ちつつ砲撃隊が喰い付かれない様スナイパー等で距離を取って射撃したい、櫻小路・なでしこ(ga3607)は序盤は敵を惹き付ける役割として牽制攻撃を仕掛ける予定、粒子砲の射程は二〇〇mだが一発撃つと四十秒使えない、次の武装は射程八〇。ジャックが前衛とすると立ち位置はそれ以下になる。間を取る。櫻小路の射程に合わせてライン八〇まで詰め、中央が引いて半包囲なのでジャックの意見を通して敵の注意を惹かないように射撃する事にする。
 最後に機動班、秋月 祐介(ga6378)、全体を統括する。ゼンラー(gb8572)と共に砲撃隊に合わせて八〇のラインで右翼につく事にする。
 その後、傭兵達は後の動きも意識を擦り合わせてから出撃した。
「さて、彼らに『明日』を届けに行こうか?」
 柳凪が言った。
 八人の傭兵、民間人救出なるか。


 荒野。
「折角、先行の皆様に切り開いていただいた道です。推して参りましょう」
 綾小路が言った。
「おう、ドームの皆さんも我慢の限界近いだろうしな。速攻で片付けてやりますか!」
 フォルテが一同の意気を盛り上げるように言う。
「バグアに囚われている人達を助けるの! その為にファリス頑張るの!」
 それに応えてファリスが声を発する。先行隊は上手くやっているらしい。巨大なクレーターが無数に空き、千を超える焼き焦げたキメラの残骸が転がる大地を進む。吹き飛んだ蟻の殻がところどころまだ燃えていた。
(「‥‥バリウス中将には、申し訳ない事をした、ねぃ」)
 ゼンラーは焔の荒野を前進しながら思う。今は救える命だけでも、救わなくては。
(「拙僧の掌はあまりに小さいが、それでも、ねぃ」)
 焔の通り道を進む事しばし、やがて彼方に白い建造物が見えて来た。
「ドームはもう目の前ですね」
 アクセルは思う。弱きを救い、明日を繋いでこその騎士だと。
(「‥‥渡されたバトン、しっかり後に繋げましょう!」)
 気合いと共にさらに前進。ドームまで一キロを切った。傭兵達の側にワームが八機展開している、既に臨戦態勢だ。秋月は状況を各機に伝え、言う。
「Giftradioより全機へ、敵状は報告の通り。目標、敵守備隊、状況を開始する」
 ノイズの交じった声が各機のコクピットに流れ、傭兵達は戦闘機動を開始する。散開し戦列を展開、速度を合わせ駆ける。距離が詰まる。
 相対距離四〇〇。柳凪機はマルコキアスをワーム達へと向け突撃しながら千を超える弾丸で薙ぎ払う。ワーム達は素早く飛び退いて回避。八機のワームは一斉にバーニアを吹かせ赤く輝きながら駆け出す。ゼンラー、ジャック機も発砲したが外れ。距離が詰まってゆく。
 相対距離二〇〇、櫻小路機、粒子加速砲をゴーレムへと向けて発射。猛烈な破壊力を秘めた閃光が宙を焼き尽くしながら飛ぶ。ゴーレムは素早く機動して回避した。
 主力隊、ワームとの相対距離一五〇、四機のゴーレムは肩の砲門を回すと突進しながら射撃を開始した。四連射。柳凪機GFA‐01S紅弁慶、迫り来る十六連の砲弾に対し機刀を翳し、秋月機の中和援護を受けつつ僅かに体を逸らして避け、刀身で弾き逸らして直撃を避け、受けた瞬間に生じた爆炎を突き破りながら一気に駆け抜けてゆく。損傷率一割七分。マルコキアスを向け、掃射。分散した弾雨の中をタロスは盾をかざしつつ、ゴーレムはかわし、あるいは装甲に受けつつも怯まず突っ込んで来る。
 アクセル機、スラスターライフルの射程に入った。ゴーレムの一機をガンサイトに納め発射レバーを引く。激しいマズルフラッシュと共に九十発の弾丸が飛び出してゆく。ゴーレムは慣性を無視した動きで突撃しながら左右へとスライド、弾幕を回避。
 距離が詰まる。相対距離一〇〇、赤輝のタロス達は荷電銃を五連射。四機で合計二十連の閃光を柳凪機へと向かって解き放つ。爆裂する光の弾丸が流星と化して紅弁慶へと襲いかかった。柳凪機、小さな動きと剣で十二発回避の八発被弾。強烈な破壊力に装甲が吹っ飛んでゆく。損傷率五割九分。
 ファリス機、重機関砲の射程に入った。アクセル機の攻撃を受けている一機を狙い発砲。八〇〇連射。轟音と共に怒涛の勢いで鉄礫が飛んでゆく。ゴーレムは五割程度を素早く飛び退いてかわすも残りに装甲を削られてゆく。
 フォルテ機、ツインブレイドを構え加速し真っ直ぐにゴーレム目がけ駆ける。ゴーレム側も大剣を構えて猛然と駆けて来ている。
「‥‥すまんが、一切の遠慮は無し、だよぅ。早めに退散して頂戴ねぃ」
 センラー機、距離八十、足を止めた。突っ込んで来る先頭のゴーレムへと四連装クァルテットガンで狙いをつけ、発砲。リロードしつつ二四〇〇連射。凄まじい数の弾丸が空間を制圧しゴーレムに襲いかかる。全弾命中。装甲が深く穿たれ漏電が巻き起こっている。
「UPCのヨーヘーです。殴りこみに参りましたぁー!!」
 フォルテ機はスタビライザーを発動、疾風の如くに加速すると猛烈な破壊に動きが鈍っているゴーレムへと肉薄、二連斬。赤く輝くゴーレムが防御に掲げた大剣の上からその頭部をぶち破る。流れる様に刃を旋回させて胸部へ一撃、鈍い手ごたえ、入った。
「最後の晩餐‥‥遠慮せずにたっぷりどーぞ!!」
 刃を引き抜き、発生した穴へとスラスターライフルの銃口を押し当て発砲、三十連射。青の鉄巨人が猛攻を受けて吹き飛び、激しい漏電と共に大爆発を巻き起こし四散した。撃破。
 その間にも各機動いている。櫻小路機PM‐J8改白姫は左翼のゴーレムの一機を狙うとレーザーバルカンで射撃。秋月機、フォルテ機へと向かっているゴーレムへとR‐P1マシンガンで八〇発の弾幕を展開している。ジャックは狙撃銃でよく狙いをつけゴーレムへと単射狙撃を仕掛けている。ゴーレムの装甲が閃光の弾幕に穿たれ、鋼のそれをかわし、ライフル弾が激突して火花を散らす。
 三機のゴーレムは射撃を受けつつも前に出て来たフォルテ機へと大剣を振り上げ三方より突っ込む。一機、二連の三機で六連の剣閃を巻き起こす。
 先のゴーレムを吹き飛ばした直後のフォルテ機F‐104改ダライアス、正面と左のゴーレムの斬撃を機盾を掲げて受け、流し、後退しながら止めて、止める。強力な斬撃に盾持つ腕が悲鳴をあげる。盾のない右手側より踏み込んで来たゴーレムの二連斬が直撃し、猛烈な衝撃と共に装甲が斬られ破片が吹き飛んでゆく。損傷率五割一分。
「こいつは‥‥結構‥‥危ない状況?」
 三機のゴーレムより猛攻を受けながらフォルテが呟く。アクセル機はシリウスブースターを発動、跳躍し背からバーニアを吹かせ一気に宙を突進する。
「退くよ!」
 柳凪が言ってフォルテ機の足元へと煙幕銃を撃ち放ち、グレネードを砲撃隊と敵との間の野へと放ち、さらにフォルテ右の敵機へクァルテットガンで四百発の弾丸を叩き込む。秋月機もまた合わせてマシンガンで猛射。フォルテ左の敵機を狙ってファリス機が重機関砲を、櫻小路機がレーザーバルカンを解き放つ。危急を見て取ったジャックはファルコン・スナイプを発動、『ランタン』を回して左のゴーレムをサイトに納める。
「退けよ、吹っ飛ばしてやる」
 200mm4連キャノン砲が轟音と共に猛烈な焔を吹きあげた。全力砲撃。レーザーの嵐と弾丸の嵐とそして十二連の砲弾が音速を超えて飛び、ゴーレムに次々に突き刺さって大爆発を巻き起こす。
 フォルテ左の鉄巨人は爆炎に吹き飛ばされ装甲の破片を撒き散らしながら大地に叩きつけられる。次の瞬間、爆裂を巻き起こして動かなくなった。撃破。
 ゼンラー機もまた右側のゴーレムを狙ってマルコキアスで猛攻を仕掛けていた。リロードしつつ二四〇〇発の弾丸を叩き込む。柳凪機、秋月機のものと合わせて二八六〇の怒涛の弾丸がゴーレムを蜂の巣にしてゆく。次の瞬間、右の巨人も激しい漏電と共に大爆裂を巻き起こして四散した。
 フォルテ機は煙幕が噴出した瞬間に飛び退くと踵を返し後方へと駆け出す。正面に居たゴーレムは見逃す訳もないので間髪入れずに煙中へと踏み込み、がら空きになっているフォルテ機の背中へと斬りかかる。一撃が入って装甲が吹き飛び、二撃が入って漏電が巻き起こり、三撃目、横殴りの銃弾がゴーレムを穿った。アクセル機だ。
 ブースト、オーバーブーストAを併発させ猛加速しているアクセル機は高度を下げて空中変形スタビライザーAを発動、脚爪を地面に突き刺し削りつつ急角度で曲がり、鉄巨人の横手へ回ると再度空へと跳躍してスラスターライフルで猛撃を仕掛けていた。
「さぁ‥‥駆けますよ! Aeon!!」
 弾丸を追いかけるようにバーニアを全開にして宙より突っ込む。8mの機槍『ドミネイター』が閃光と化して繰り出された。バーニアランスチャージ。アクセル・ランパード、堅実に見えてここ一番で滅茶苦茶な機動をする奴だ。だがフェニックスならそれが出来る。流星の如く突っ込んだ不死鳥の騎士の槍が、大剣を振り上げているゴーレムの脇下に激突し猛烈な衝撃を巻き起こして吹っ飛ばした。アクセル機はその勢いのまま抜けて行く。
 この時フォルテ機、損傷八割七分。相対六〇、その背に向かってタロス達が一斉に赤く輝きプラズマのライフルを爆裂させる。二十連射。煙中とはいえ背を向けている、攻撃が来るタイミングも狙われている事さえ解らない。避けられない。光がバイパーの背に次々に喰らいつき壮絶な破壊の嵐を巻き起こした。全弾直撃、損傷率四十一割七分。超爆発と共に消し飛んだ。
 傭兵達は各機、潰走を偽って退却を開始する。踵を返して駆ける。一部は駆けつつ武装をリロードした。
「喰い付かれると厄介だからな、適度に主力隊と遊んでてもらおうか」
 ジャックは爆撃隊の方へ敵機がこないよう周辺へと誘導弾を打ち放ってから退却を開始。爆発が大地を吹き飛ばす。ファリス機、後退中も重機関砲で攻撃したい所だが後ろに走りながら射撃は出来ない。体を横に開いて半身になって横に動くようにして後退しつつ砲を向けて射撃する。常よりも後退速度は落ちている。ゴーレムは移動しながらの射撃を赤く輝いて回避しつつ迫る。地に降りたアクセル機、偽退却の為に背中を向けて駆けている。攻撃が来る事は今なら解るか? 勘でタイミングを計り、勘で方向を決め、勘で回避運動。タロス達は傭兵達の一斉後退を見て猛然と加速突撃し、アクセル機の背へ最終的にファリス機を追い抜き距離零まで詰めながら十六連の閃光を爆裂させた。アクセル、一発は避けたが二発目に捉えられ鈍った所に全弾直撃。損傷率十八割五分、大破。大爆発と共に四散した。陸で背後を取られるのは空のそれとは危険度が違う。
 ファリス機に追いついた鉄巨人は大剣を振り上げ二連の斬撃を放つ。ファリス機、素早く身をかわして一発回避、一発もらった。損傷一割二分。
 その間に砲撃班は左翼に展開、ファリス機を除く先行班と機動班は横列を整えている。反転。ファリス機、Aファング発動、再度の連斬を受けつつも機槍を用いて三段突きを放つ。穂先が唸り鉄巨人の眉間、喉、腹を貫通した。猛烈な爆裂が巻き起こりゴーレムの瞳から光が消える。
 距離六十。櫻小路機、スタビライザー、エンハンサー発動、粒子加速砲で光の波動を爆裂させ、さらにガトリングでレーザーバースト。ジャック機もまたFスナイプを起動スラスターライフルで猛弾幕を張り全力射撃。柳凪機、マルコキアスでタロスの一機に向かって猛射。左と正面からのクロスファイア。対するタロス達は柳凪機へと十六連の閃光を爆裂させる。柳凪機、最初の二発をかわすも残りの八発全弾命中。損傷率十一割七分、大破。狙われたタロスは柳凪機からの銃撃を盾で受けるも、その間に櫻小路機から放たれた猛烈な荷電粒子の波がタロスを呑み込み、レーザーが撃ち抜き、ジャック機から放たれた弾幕がタロスを蜂の巣にしてゆく。大爆発が巻き起こったがまだ動く。
「条件は全てクリア。御坊、奴等の退路を断つ!」
 秋月が言った。ブースト起動、ゼンラーも高速二輪に変形し合わせてブースト加速、タロス達の後方を目指して弧を描くように回り込んでいる。背後を取った秋月はドーム方面へと向けて煙幕を放ちオープン回線、
「ドームは味方が抑えた、ここで奴等を行かせなければ我々の勝ちだ」
 声を発しつつ相対距離一〇〇、瀕死のタロスの後背を狙ってマシンガンで百連射。銃弾の雨がタロスを打ち抜き、漏電と共に爆発を巻き起こして動かなくなる。ゼンラーはアテナイを全て機動させマルコキアスで二千四百発の弾丸を飛ばしアテナイで二千二百五十発の弾丸を飛ばす。銃弾のスコールがタロスの背を猛烈な勢いで穿ってゆく。激しい漏電が巻き起こり次の瞬間、タロスが大爆発を巻き起こした。撃破。
 残った二機のタロス達は秋月機へと振り向くと六連の閃光を解き放つ。光が迫る。秋月機、四発回避するも二発被弾、損傷率二十四割。
「敵に特に動きの変化は無い‥‥全てAIか」
 閃光に呑まれながら秋月が呟いた。骸龍が吹き飛び消し飛んでゆく。瞬後、猛烈な火の球と化して爆散した。大破。
 ゼンラーは再度四六五〇連射して弾丸の嵐を叩き込み、ファリス機はリボルバーで射撃。タロスは中型の盾で受けるもこれは防ぎ切れず覆っていない部分を穿たれてゆく。側面から櫻小路機とジャック機が猛連射し先行と弾幕を叩きつけて穿つ。十字砲火。だがまだ堕ちない。
 秋月機が大破した事により強力なジャミング中和支援が消え失せる。
 二機のタロスは櫻小路機へと八連射。全弾命中。損傷率八割一分、まだ動く。傭兵四機クロスファイア、タロスの一機が爆裂を巻き起こして四散する。最後のタロス、櫻小路機を閃光で吹き飛ばす。最終局面、三対一。傭兵達は十字砲火のラインを保ち猛射を続ける。三十秒後、タロスはジャックへと猛射し当ててゆくが損傷率四割五分、撃破するまでは至らず、逆に傭兵達の弾幕が唸り、ついにこれを沈めたのだった。