タイトル:【AA】難救・女神の翼マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/29 00:03

●オープニング本文


 ピエトロ・バリウスの戦死とユニヴァースナイト弐番艦の大破の報せは、勝利に酔いかけた欧州軍本部をその黒い翼で一打ちした。チュニジア沿岸に恒常的な拠点を確保するという大業を果たした将兵の顔も、暗い。それは勝利と言う言葉で表すには余りにも苦い味わいだった。
『数百人規模の一般人の収容所があるようだ』
 そう、生き残った兵士が語る。場所は、かつてカサブランカと呼ばれた都市のやや北側。バリウスの指揮下の一部隊は、陽動のためにそこへ強襲を仕掛けようと企図していたらしい。陽動はもはや、果たす意味が無くなったのだが。
「彼らをもしも解放できるならば‥‥」
 バリウスから指揮を引き継いだブラットは、言葉の後ろを宙に漂わせた。この戦場が無駄でなかった証が一つ、増える。それは、暗く沈んだ空気に光を差す事でもあった。
「ブリュンヒルデ、拝命します」
 マウル・ロベルは綺麗な敬礼を返した。今の欧州軍は小さくとも価値ある勝利を欲している。いや、必要としている。『比較的』損傷の軽微なブリュンヒルデで収容所を強襲、民間人を確保の上離脱するという作戦を立案するほどに。


 どうもこの収容所というのは複数あるらしい。UPC軍は多数のそれへと攻撃を仕掛けている。
 今回、傭兵達が向かうのもその先の一つだ。
 アフリカは敵地であり、行く手には多数のバグア側勢力がひしめている。
 敵を蹴散らして道を開き、収容所を襲撃して確保し、それを守りながら撤退する。
 言葉にするならたったこれだけではあるが、実行に移すとなると困難を極める任務だ。
 ブリュンヒルデよりこの収容所の襲撃を指示された将校は隊を三段に分けて実行にあたる事に決めた。
 すなわち、先だって突入し道を切り開く斬り込み部隊、収容所を襲撃し人員を確保し撤退する奪還隊、敵の追撃を抑える迎撃隊。
 どれが欠けても作戦の成功は望めない。
「似たような事は前に一度やっているのだが、あれは移送中の隊を襲撃しての事だったし、ファントムもいたからな‥‥」
 例の破壊神はチュニジア基地の守りへといった。彼女に頼る事は出来ない。
「それ抜きで施設を陥落させて数百人を収容して撤退となると‥‥」
 将校は考える。
 やはり、困難な任務だ。
 だが今回は損害は考えなくて良い。不利になったら途中で救出した民間人を放棄して撤退せよ、などという命令は出さなくて済む。その点が救いといえば救いだが――
(「厳しい」)
 どう考えてもやはり厳しい。
 だが、それでも失敗する事は許されない。彼はブリュンヒルデからすれば流れ者の客将のような存在だが、だが、だからこそ失敗して艦長の顔に泥を塗る訳にはいかない。何よりも数百もの人々の未来がかかっている。
 借り受けた戦力を考える。
 空、陸、歩兵。配備されている火器の数。
(「傭兵だけが頼みか‥‥」)
 正規軍だけでは――無理だ。これまでの戦いの経験からそう判断出来る。
 前に来てくれた傭兵達は優秀だった。
 だが、今回はどうか。今や切り札たりえているULTの傭兵達だが、不正規兵はいつもいてくれるとは限らない。神頼みという程博打ではないが、運が悪ければ十分たりえない。
「本部の参謀連中が傭兵の運用が好きでないのも解らんではないな‥‥」
 不安は限り無く零にしておきたいが、こちらの戦力値は常に変動する。しかもそれが切り札、頼みの綱であるのとなっては。
 考える。それでも、ここに渡されると思われしきもので、万が一の時でも敗北しない範囲で、戦力を配分し、過剰を減らし、足りない部分には回し、目的達成の為に運用する方法。戦略の部分は過ぎ、戦術の段階だ。
 地図を睨み、こつこつと卓を指先で叩く。
 とりあえず――胃薬が欲しかった。

●参加者一覧

花=シルエイト(ga0053
17歳・♀・PN
白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
瑞浪 時雨(ga5130
21歳・♀・HD
仮染 勇輝(gb1239
17歳・♂・PN
翡焔・東雲(gb2615
19歳・♀・AA
南 十星(gc1722
15歳・♂・JG

●リプレイ本文

「さて飛熊よ、とある雪原から君が背負って持ち帰った<装置>が使われているヴァルキリー級」
 鈴葉・シロウ(ga4772)は左手を愛機の外装甲に当てて呟いた。
「――そうだね、つまりはある意味私達の<娘>なわけだがどうだろう」
 鈴葉はAIにもやがて『意思』が生まれると信じている。雷電は静かに佇んでいた。振り返る。ヴァルキリー級のその艦に各地から救出されて来た人々が続々と乗り込んでいっている。ある者は安堵した顔で、ある者は不安げな様子で、ある者は――
「助けられるものは助けたいんだよ」
 ロジーナの前に立つ翡焔・東雲(gb2615)が人の波を眺めながら言った。
「後悔するのは、ゴメンだ」
 やがて、多くの思いと未来と生死を乗せ、純白の翼が空へと舞った。

●女神の翼
 暗黒大陸はバグアの勢力が極めて強い大陸。民間人を収容し北へ向かって飛ぶブリュンヒルデを黙って見逃してくれる訳がなかった。
「おいおい、随分な獲物が来るじゃねぇか」
 灼熱の空、F‐201Aのコクピット内、既に覚醒している宗太郎=シルエイト(ga4261)が言った。哨戒隊の最後の通信によると艦に接近している敵は本星型を含むエースが三機。数は少ないが強敵だ。
(「しかも不慣れな空戦‥‥今の俺には、ちと荷が重いか?」)
 だが、男は花と一緒なら大丈夫か、とも思う。
 その花こと月森 花(ga0053)は、
(「宗太郎クンと一緒に空を飛べる‥‥」)
 とこっそり嬉しそうな顔をしている。
「今回は敵戦力が把握出来ているだけでも助かるな」
 白鐘剣一郎(ga0184)が言った。
「基地に辿り着くまでが作戦だ。送り狼を追い返して戦乙女を無事送り届けよう」
 言葉の途中、空の彼方、高速で飛来する三つの機影が映った。来た。恐るべき速さ。
「フフーフ、いかんなぁけしからんなぁ。こういう時だというのに彼女(ブリュンヒルデ)擬人化&フィギュア化のアイディアがもりもりと湧いてきてしまう。我ながら業が深いぜ」
 鈴葉はそんな事を言っている。ある意味、肝が据わっている。
「此処まで来てアンカーがバトンを落としたとなったら大変です。ブリュンヒルデを守る為にも最初から全力で‥‥!」
 仮染 勇輝(gb1239)が言った。各員はその言葉に頷き一斉に加速する。戦闘機動に入る。
「私たちにワルキューレの加護があらんことを」
 南十星(gc1722)の声が無線に響いた。
 戦闘が、始まった。


 HW達は傭兵達が迎撃に出て来たのを見てとると上と左右に別れた。三方に散る。傭兵達もまた三隊に別れてこれに当たった。
(「相手が相手だ。仮染も言っていたように、ここは時間稼ぎではなく本気で当たるべきか」)
 中央高空、東雲と組んで本星型に当たる白鐘はそう決意を固めている。
(「とりあえず、やれることをやるんだ」)
 東雲は胸中で呟いた。後悔したくない、だから、できることをやりに来た。流星皇とレーシィが爆風を巻き起こして本星型HWへと迫ってゆく。
「ペガサス、エンゲージオフェンシブ、FOX‐3!」
 相対距離六〇〇、白鐘、高速で突っ込んで来る本星型HWを照準に納めSRD‐02で発砲。コンマ秒以下で弾丸が彼我の距離を制圧し本星型に突き刺さる。強烈な破壊力を秘めたそれがHWの装甲を砕く。
 相対四〇〇、本星型は赤輝を纏い紅色の光線を空に爆裂させる。一瞬で六条。白鐘機は高速で空をスライドし合間を掻い潜ってゆく。月森機の中和支援も効いている。圧倒的な速さ。東雲機はIRSTで感知注意喚起は無理だった。声に出してる間に中るか避けるかしている。相対二〇〇、白鐘機は突撃しながらスラスターRで九〇発の弾幕を飛ばす。
「BG7、FOX‐2!」
 同時、東雲が誘導弾の発射ボタンを叩き込みながら叫ぶ。三連射。HWは翻って六割強の弾幕を回避し、二発の誘導弾をファランクスで叩き落とし、一発が直撃して爆裂を巻き起こした。その一瞬に間合いを詰めた白鐘機が至近距離からレーザーを爆裂させる。六連。三条が命中し強烈な破壊力で装甲を削り取ってゆく。
 左翼に展開した金色のHWに向かったのは鈴葉、仮染、瑞浪、南十星の四機。
「後の事は考えない、もしもの時は皆さんお願いします」
 そう言っていた仮染機はブーストを展開し極超音速で先行している。
「高出力ブースター最大出力! ブースト発動!」
 三連の高出力ブースターも併発させ蛇の如く蛇行する軌跡を描きながら高速で迫る。距離四〇〇、黄金のエースは猛烈に赤く輝くと六連の誘導弾を撃ち放つ。仮染機は螺旋を描きながら翻って五発を回避する。一発が直撃して猛烈な爆発を巻き起こした。損傷率一割三分。焔を突き破って距離一〇〇まで詰め二百発のフェザーミサイルを解き放つ。黄金のエースのファランクスが起動し誘導弾を薙ぎ払った。仮染はそのまま変形攻撃でも仕掛けるかの如き勢いで突っ込んでゆく。
 爆発を合図に相対距離七〇〇、南十星機A‐1DサザンクロスII、誘導システムを起動させ一〇〇発のパンテオンを解き放つ。一瞬遅れて相対六〇〇、鈴葉機XF‐08D改飛熊、銀は視界の外なので金のみロックし二五〇発のK‐02小型誘導弾を撃ち放つ。黄金のHWはパンテオンをファランクスで薙ぎ払い、K‐02の間を高速で縫って回避してゆく。
「戦乙女は落させない‥‥墜ちるのは貴方達‥‥!」
 瑞浪 時雨(ga5130)が詰めている。エンハンサー、スタビライザーを併発、回避軌道の先を狙い猛烈な雷撃の嵐を解き放つ。三連射。後背に捻り込んだ仮染機も先んじてAAEMを撃ち放ち動きを見つつ回避先にライフル射撃。南十字星が短距離AAMを二連射。黄金のエースは翻ってAAEMをかわし、ライフル弾に装甲を削られつつも、猛烈な雷撃の嵐をかわしてゆき、しかし全ては回避しきれずに一連の嵐に捉えられた。雷撃が荒れ狂い凶悪な破壊力が炸裂する。衝撃に動きが鈍った瞬間に二連の誘導弾が突き刺さって爆発を巻き起こした。黄金のHWは焔を切り裂き瑞浪機へと迫る。
 瑞浪、ヘッドオン、敵機はまったくまだまだ終わりそうに見えなかった。一般機とは違う、エースの称号は伊達ではないらしい。今度は試作型を用いて再び雷撃を飛ばす。直撃コース。爆雷が荒れ狂う。鈴葉機が矢の如くに突っ込み二門の重機関砲を用いて鉄塊の嵐を叩き込む。八〇〇発の弾丸がHWに喰らいつきその装甲を穿ってゆく。
 銀色のHWへと向かったのはシルエイト、月森の二機。
 月森、初手はシルエイトとの連携攻撃だろうか? しかしシルエイトは初めは牽制で様子を見る模様。序盤はとりあえず一定の距離を取りつつ集積砲で射撃する事とする。
 相対四〇〇、シルエイト機F‐201Aフェニックス、高速で突っ込んでくる銀のエースを狙い三連の放電の嵐を解き放つ。銀のエースは赤光を纏いローリングしながら電撃の腕を掻い潜る。月森機、リロードしつつ集積砲で二連射、銀のエースは素早く翻ってかわし、その機首を月森機へと向ける。電子戦機を狙っている。
 月森機ES‐008‐rosaRosen、ブーストを発動、銀のエースが六連の誘導弾を空に解き放つ。煙を噴出して高速で飛来するミサイルを月森機は極超音速機動で回避してゆく。しかし四発目に喰らいつかれ爆裂が巻き起こる。五、六、と直撃。猛烈な破壊力が荒れ狂い装甲が吹っ飛んでゆく。損傷率四割一分。
 本星型HWと流星皇は互いに機首を敵に向け、慣性制御とジェット噴射核ノズル操作を用いて空気の断層を滑るように流れてゆく。本星型は猛烈に赤く輝くと、偏差で四条、予想される回避スペースに二十条の紫光をほぼ同時に一瞬のうちに爆裂させた。面で撃って来た。白鐘、緊急防御策は用意してあるが使用量に制限がある。まずは温存しておくか? この攻撃は回避は困難そうだが連続しては喰らいそうもない。一刹那のうちに判断し通常回避。フェザー砲が白鐘機に直撃して損傷三分。
 東雲、白鐘機と本星HWのリロードタイミングは彼等本人でないので解らないが、とりあえず勘であたりをつけて誘導弾を三連射する。本星HWは翻って三連の誘導弾を回避。その機を捉えて白鐘機は敵機後背へ捻り込むとリロードしつつレーザー砲十五連射。うち十二発が次々に本星型を捉え直撃する。が、全て赤壁に減衰し吹き散らされた。無傷。何か強力なフィールドを展開し出したようだ。
 黄金のHWが瑞浪機へと向けて六連のミサイルを解き放つ。瑞浪機、急旋回。誘導弾が牙を剥いて追尾し、次々にエレクトラに喰らいつく。避けられない。全弾直撃して猛烈な爆裂の嵐が巻き起こった。装甲がひしゃげ、ふっとんでゆく。損傷率九割二分。
 鈴葉機がエースの後背に喰らいついて二門の重機関砲で猛攻をかけている。黄金エースは螺旋の軌道を描いて鉄塊の嵐を回避。直後に仮染機が狙いすまして荷電リボルバーを三連射する。HWは一撃を受けるも二発を翻ってかわし、直後に猛烈な電磁嵐に呑み込まれた。瑞浪機の放電装置だ。
「余裕はない‥‥全力で吹き飛ばしてあげる‥‥!」
 呟きつつエンハンサー、スタビライザー共に発動を持続させ、電磁嵐の中のHWに照準を修正し、DR‐2荷電粒子砲を三連爆裂、猛烈な光の波動が黄金のHWを呑み込みその装甲を消し飛ばしてゆく。すかさず南十星が二連の短距離AAMを撃ち放ちライフルで攻撃を重ねる。全弾直撃。爆炎が黄金のHWを包み込んだ。
 月森機はブースト機動で距離を離し、翻ってヒット&アウェイで集積砲を連射。加速して放たれる砲弾の一発が銀のHWに直撃しその装甲を穿つ。シルエイト機は月森機を追いまわす銀HWの後背に小旋回で喰らいついてプラズマライフルを猛射する。一撃が銀HWを捉えその装甲を焼くも残りはスライドして回避される。銀HWは月森機が集積砲を撃ちに戻って来た所に合わせて誘導弾六連射。後方から攻撃を受けつつもあくまで月森機へとターゲットを定めている。三発が命中して爆炎に焼かれ損傷率八割三分。他の仲間が来るまで踏ん張りたい所だがエース相手に撃ち合いながらではなかなかきつい。
 東雲機は本星HWの機動先へとツングースカで弾幕を張る。本星HWは急旋回して回避。その隙に白鐘機が喰らいつきレーザーバースト。HWは凶悪な破壊力の光をしかし悉く吹き散らす。不意に白鐘機の火器管制が曇った。KV全機に起きている現象だ。本星HWは猛然と翻り、八条を偏差で面で撃ち十六条を重ねて撃って来た。うち四条の光が白鐘機を捉え、衝撃に機動が乱れた所へPRM改を発動しガード。紫の猛烈な光を悉く吹き散らす。弾いた。損傷率は六分。
 左翼、黄金のHWが爆炎を裂いて瑞浪機目がけて飛び出してくる。装甲の七割程度が吹き飛んでいるがまだまだ健在。猛烈な赤い光を纏いながら瑞浪機へと向かって誘導弾六連射。瑞浪機は機体能力を全開にして放電装置から電撃を放ち荷電粒子砲を猛射する。鈴葉は敵味方の流れを見つつストレイキャッツ誘導弾を二連射、アフターバーナーを吹かせて黄金エースへと突っ込み、仮染機から三条の閃光が空を裂いて飛び、南十星機がリロードしつつライフル弾を放つ。
 六連の誘導弾が炸裂して瑞浪機を爆砕し、電磁嵐がHWを捉え荷電粒子の嵐がHWを撃ち抜く。衝撃に鈍った所にプラズマ光波、ライフル弾、誘導弾が炸裂、不意にFCSが鈍ったが構わず鈴葉機が焔の中に飛びこんで剣翼で体当たり攻撃。雷電の刃が唸って黄金エース機を叩き落とした。アンジェリカとゴールデンヘルメットワームが爆裂を巻き起こしながら落ちてゆく。大破、撃墜。
 右翼、シルエイト機、銀HWを追ってプラズマライフルをリロードしつつ十連の閃光を飛ばす。銀HWは螺旋の機動で回避。月森機、兎に角他の迎撃が終わるまで持ち堪える事が目標なのだが敵の撹乱も行いたい。遠間から翻って撃つ。その瞬間に誘導弾が六連飛んできた。狙いは逸らさない。砲弾が一発、HWに直撃し、誘導弾が四発直撃してrosaRosenが爆裂と共に墜ちてゆく。大破。強力なジャミング中和機能が消え失せる。曇った原因はこれだ。
 中央、本星HWは八連の面撃ちからの連携で十六連の紫光を直撃させる。損傷二割四分。東雲機が機関砲を撃ち放ち回避した所へ白鐘機がレーザーを叩き込む。九発が命中し六発が無効化され、残りの三発が強烈にHWの装甲を削る。
 シルエイトVS銀HW、一対一、プラズマが空を貫き、機銃から放たれる徹甲焼夷弾がシルエイト機の装甲の薄い部分を狙い澄ましてぶち抜いてゆく。損傷率八割八分。鈴葉、仮染、南十字星の三機は銀HWの元へと飛ぶ。
 本星HWから赤い輝きが失せ運動性が落ちる。東雲機から放たれる弾幕を受けつつも白鐘機へと狙いをつけて八連から十二連に繋いで当てて損傷率三割六分。白鐘機は閃光を突き破って飛ぶと猛然と加速し剣翼で体当たり攻撃を仕掛けた。翼の切っ先が入って三回ヒット。
 銀HWは機銃でシルエイト機を叩き落とし、仮染機がロケット弾を放ち、南十星機は雷撃を解き放ち、鈴葉機が詰めて重機関砲を叩き込む。銀HWはロケット弾をかわすも雷撃に捉えられ鈍った所に鉄塊の嵐に削られる。
 本星HWを白鐘機が剣翼で再度切り裂き、それに合わせて東雲機が誘導弾を撃ち放って爆裂を巻き起こす。本星型HWの面射、慣れて来たか白鐘機は全弾回避。
 銀HWは南十星機へと誘導弾を六連射して損傷率八割九分。鈴葉機が銀HWの後背にくらいついて二門の重機関砲を猛射し、仮染機はブースト、オーバーブーストしてAAEMを連射。HWは鉄嵐を翻ってかわし二発のAAEMをファランクスで叩き落とし一発を回避。
「ブリュンヒルデには民間人も乗っているんだ。落とさせる訳にはいかない!」
 南十星、損傷にも退かず猛射。銀HWは雷撃に焼かれるも二連の螺旋誘導弾を急降下して回避。
 東雲機が弾幕を本星HWの回避先に叩き込み、白鐘機が剣翼で突撃して本星HWを叩き落とした。爆裂と共に落ちてゆく、撃墜。
 銀HWは南十星機へと誘導弾を撃ち放って撃墜、鈴葉機と仮染機は格闘戦を継続。銀エースは全弾回避。
 白鐘機と東雲機が銀エースへと向かい、銀エースは猛烈に赤く輝くと南の空へと向かって極超音速で飛んでゆく。鈴葉機、仮染機が誘導弾を猛射した。直線機動に入ったHWの背にミサイルが喰らいついて爆裂の嵐を巻き起こす。
 だが銀エースはそれでも落ちず傭兵達を振り切り南の空へと消えていったのだった。



「私たち‥‥勝ったんですか?」
 地上の残骸から救出された時、朦朧とする意識の中で真っ赤に染まった南十星は問いかけた。
「――勝った。安心しろ。ブリュンヒルデは無事だ」
 逆光でよく見えない。誰かが言ったその言葉を聞き、少年は意識を闇に落とした。



 かくて撃墜者を救出し、ブリュンヒルデに合流した傭兵達は、無事に基地へと辿りついてその任を全うした。
 基地ではバグアの支配から解放された民間人達の歓喜の声が響いていたという。


 了