タイトル:【ODNK】宇佐市防空戦マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/15 22:39

●オープニング本文


「ワームが、百機か」
 日本国九州大分県別府基地。司令室に初老の男の呟きが響いた。
 男の名は日向冬治、階級は准将。別府基地を預かる司令官である。
 髪は雪のように真っ白だが、その眼光は鋭く、筋骨たくましい。
「福岡方面の戦力数は凄まじいなクソッタレ。いずれこういう日が来る可能性はあると思っていたが」
 老人が言う。
「これでも小手調べでしょう」
 参謀の一人がそう言った。
「こちらの戦力が大分だけで限界近いという事を悟られる訳にはいかぬな」
 准将が唸る。
「閣下、今のうちに村上旅団を手元に呼び戻して別府北で守備に当たらせるが良いかと思われます」
「国東を後、一歩まで追い詰めているのにか?」
「しかし、宇佐が陥落すれば後背に敵を抱える事になります」
「宇佐が落ちれば豊後高田も放棄になる、ならば迎え撃つなら別府の北が良し、か。だが、折角取り返した土地を放棄し、戦線を縮小して守備を固めろと? この一年の戦果をほぼ全て放棄しろと?」
「福岡が敗れた以上、致し方ないかと」
 壮年の参謀は無念そうに、しかし、それでも老人を見据えて言った。
「二正面作戦だけは絶対に避けるべきです」
 その視線と言葉に日向は沈黙する。
 やや経ってから言った。
「‥‥国東を陥落させれば、少なくとも陸から背後を撃たれる事はない」
「閣下!」
 壮年の男が表情を変えて叫ぶ。
「大分までも全てバグアに渡すつもりですか! せめて別府以南だけは堅守せねばなりません!」
「戦は魂でやるものだ。そんな弱気でどうする。貴様それでも軍人か?」
「精神論で勝てれば苦労はありませぬ!」
「机上論も同じだな。退がった所でジリ貧だ」
 老人は言った。
「二正面がきついのは言われんでも解っとるわ。だが、ここで退がってはならん。村上に国東の攻略を急がせろ。その間はなんとしてもこっちの戦力だけで守りきる。全部分捕るか根こそぎ奪われるか、二つに一つだ」
「‥‥乗るか、反るか、ですか。村上大佐なら決して、そのような投機的な戦略は採らないと思われますが」
「そうかな」
「ここは博打を打つ場面でしょうか」
「俺はそう判断した。これは決定だ。新田を出せ」


「日向のオヤジも無茶しやがるな‥‥焦ってるのか」
 先に占領した国東空港基地で奪還の旅団を率いている村上顕家大佐が、紫煙を吐き出しつつ言った。
「大佐は反対ですか」
 不破真治が問いかける。
「難しい所だ。機械の駒を動かすなら、大分だけを考えるなら、退がるべきだと思うが、九州全土を見れば退がってられる状況でも無く、俺達ゃ機械じゃねぇ。ここまで苦労して分捕ったもんを一戦もせずに全て放棄、なんて事になりゃ、兵達の士気が下がるだろ滅茶苦茶、そらァもう、どん底まで下る。ここで下ったら、次に攻勢にでられるのは何時になる? ここで一戦もせずに逃げる? 勝てる可能性もそれなりにあるのに? とな。あのオヤジの判断にはそういう考慮も入ってんだろ」
「では大佐は賛成ですか」
「反対はしない」
 村上はそう言った。
「‥‥もし大佐が司令だったら退く、と?」
「バカヤロウ、つまんねぇ事聞くんじゃねぇよ。決定がくだったんだから後はやるだけだ」
「いえ、後学の為に聞いておきたく」
 不破の言葉に村上は嘆息すると。
「他には言うな。確かに、俺なら退く。分が悪い。勝てれば良い。だが負けると全てが破滅だ。そういう時はせめて八割、千歩を譲っても七割は勝算が欲しい。百万の未来を賭けるんだぞ? 士気なんざとは言わんが他でも補える、だが死人は決して甦らない。奪還した領土、放棄するは冗談じゃねぇが、生きていれば、戦力を保持していれば逆襲する機会が回ってくる可能性もある。永遠に無いかもしれんがな。だが、地球規模で見れば十年前よりこちらの戦力の質は遥かに上がっている。いつか、一年先、五年先、十年先、二十年先、再び向かえる日が来る可能性は皆無ではないかもしれない、程度には思える」
 十数年以上、そうやって村上は自身の隊を作り上げ、ここまで来た。
「堅実にいってばかりで万事上手く運べる訳じゃないが、ここは博打を打つべき局面ではない、我慢すべきだと思う」
「なるほど‥‥しかし‥‥ああ、なので焦っている、と?」
「なにが、なので、だ?」
「すいません。日向准将はもう結構、お歳ですよね」
「そうだな。それだけが理由ではないと思うが」
「いずれにせよ、急がなければなりませんね」
「ああ‥‥攻めの準備だけじゃなく、撤退ルートも確保しとけ。高田の連中にも伝えておけ。勝てれば良い。最高だ。だが、オヤジ達が負けて宇佐が陥落したら別府まで一気に逃げる、全てを捨てるとな」


 別府基地のブリーフィングルーム。軍のパイロットと傭兵隊の能力者達が集められていた。
「ブリーフィングを始める」
 厳つい髭を蓄える壮年の男が一同の前に立ち言った。名を新田貞治。階級は大佐。今回の迎撃戦隊の隊長である。腕は良いとの評判だ。
「福岡方面よりヘルメットワームとキューブワームの戦隊が宇佐市へと侵攻して来ているとの報が入った。我々の任務はこれを撃退する事だ。数で劣勢だが、やらねばならん。各員の奮闘を請う」
 大分の運命を左右するであろう戦いの緒戦が、始まろうとしていた。

●参加者一覧

稲葉 徹二(ga0163
17歳・♂・FT
藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
ヴァシュカ(ga7064
20歳・♀・EL
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
虎牙 こうき(ga8763
20歳・♂・HA
エリアノーラ・カーゾン(ga9802
21歳・♀・GD
レイヴァー(gb0805
22歳・♂・ST
ミリハナク(gc4008
24歳・♀・AA

●リプレイ本文

「‥‥ここまである程度順調に攻略を進めて来ましたのに‥‥やはり、なかなかこちらの思う通りには行きませんわね」
 ブリーフィング中、クラリッサ・メディスン(ga0853)が苦渋の表情を浮かべながら呟いた。彼女は杵築、高田、国東南とこれまでの奪還戦に多く参加している。無数の兵員の犠牲の元に取り返せた場所だ。それら全てが失われるというのは許容しがたい。
「宇佐の農業公園、初デートの場所です。大局の為、命を賭して郷土を護る者に捨てろと? 余りに無神経」
 藤田あやこ(ga0204)が怒気を双眸に閃かせて言った。司令部の一部には宇佐を捨てて撤退すべき、という意見もあったらしい。その噂に彼女は怒り狂っていた。彼女の恋人は中国で戦死していた。彼との思い出が眠るこの土地は守らなければならない、強く、そう思う。
「そうやって退くべき場所で戦いを挑み、破滅していった国が幾つあるか、人間が何人いるか、君は知っているかね‥‥」
 厳つい髭を蓄える壮年の男が無表情で呟くように言った。空軍大佐の新田だ。
「だからといって故人との思い出まで棄てるなんて‥‥出来ません!」
「それで何かを守れるかな‥‥」
 光の消えた、黒く塗りつぶされた瞳が藤田を見た。女はそれを睨み返し、言う。
「勝利の為に守るべきものを捨てて、それで一体何を守る為に戦うと?」
「問題は何時だってそれだな‥‥とかく、司令部の決定は迎撃だ。捨てる事は無い。勝てば良い。勝てば官軍‥‥というのとは少し性質が違うだろうが、勝利は全ての問題を解決する‥‥逆を言うなら‥‥敗北は、全てを奪い去ってゆく。何もそこには通用しない。だから、決して敗北は許されない。解るね?」
「元より承知しています」
「それを解っているなら、良い」
「‥‥これまでの戦果を無に帰さない為にもこの戦い、負ける訳にはいきませんわね」
 クラリッサは頷いてそう言った。
「しかし、どうしたのこれ? 百機? 冗談でしょう? 異常気象の影響で大量発生でもしたの?」
 今年の夏はホント暑いものね、などと言うのはエリアノーラ・カーゾン(ga9802)だ。一昔前なら互角に渡り合う為にKVが三百機は必要だった超戦力である。
「それだったらまだ良かったのですが」
 飯島 修司(ga7951)が首を振って言った。北九州の本軍では三〇〇、四〇〇と飛び交うのが日常茶飯事らしい。百機程度は小手調べだ。
「これで大盤振る舞いという訳でも無いのが何とも‥‥福岡にはワームが生える畑でもあるんでしょうかね。乾いた笑いしか出ませんな」
 ったく、このクソッタレどもめが、と壮年の男は珍しく悪態をつく。数名が少し驚いたような顔をした。その表情に気付くと飯島は一つ咳払いしてから、
「‥‥や、失礼致しました。つい若い頃の口癖が。大分の村上大佐に毒されましたかね」
 そんな事を言った。今では紳士な立ち振舞いだが、若い頃は相応に口が悪い所もあったようだ。
「はは、まぁ、相手が百機だろうが二百機だろうが、これ以上九州とられてたまるかよ。返り討ちにしてやろうぜ!」
 砕牙 九郎(ga7366)が息まいて言う。傭兵達や軍パイロット達はその言葉に頷き迎撃作戦の細部を詰め始める。
「CW十機が、凄まじく厄介ね‥‥それで指揮官っぽいカラーリングのHWが金銀銅白黒、と‥‥え、黒?」
 エリアノーラが驚いたように言った。
「どうかしたのか?」
 砕牙が問いかける。
「白と来たら紅が日本の『お約束』じゃないの?」
「‥‥まぁ、乗り手は知らんが造った連中は多分バグアだからなぁ。日本人どころか地球人ですらねぇべ」
 頬を掻きつつ砕牙。そんな事を言いつつブリーフィングは続く。
「相手は百でこちらは四十二‥‥派手な空戦になりますね。慎重に行きましょう」
 井出 一真(ga6977)が言った。KV好きが高じてKV整備士の資格も得た青年だ。空戦でも近接格闘戦を得意としている。
「ええ。しかし、戦力が限界近い事を悟られる訳にはいかぬ、との事ならば。辛勝さえ論外です」
 レイヴァー(gb0805)がディスプレイに表示されている敵図を手で叩き言った。
「余力有り、と思わせねば意味が無い」
「‥‥その通りだ」
 新田がレイヴァーを見て頷く。
「我々は、大勝しなければならん。例え勝利しても余裕が無いと見られたら、敵は嵩にかかって大分へ攻めてこよう。そうなったら二正面作戦の遂行などとてもではないが不可能だ」
「司令部もなかなか無茶な要求して来ますなァ」
 他ならぬ故国の為ですし、踏ん張りたい所ですが、と言いつつ稲葉 徹二(ga0163)。
「数では劣勢ですが、質は揃っています。厳しいですが不可能では無いでしょう」
 レイヴァーはそう言った。
 やれるか、どうか。動かし方にかかっている。
「今回は忙しくなりそうだなぁ‥‥」
 XS‐09A‐アクエリアスに搭乗予定の虎牙 こうき(ga8763)が呟いた。彼の第一の役割は演算システムを用いて敵の動きを解析しての攻撃支援だ。空間に存在する敵の数が多い程に負荷は重くなる。息をつく間もなさそうだった。
「目は多いに越したこたァありませんからな」
 稲葉 徹二(ga0163)は傭兵側の電子戦機の情報を傭兵・正規軍側で共有できるように要請し、飯島もまた正規軍の攻撃目標優先度をHW>CW≧指揮官とするように要請した。
「了解した。ではそのように定めよう」
 新田は少し考えてから頷き、各員は意識を擦り合わせる。やがてブリーフィングが終わる。
「――では、以上だな、空で会おう」
 パイロット達は作戦を手早くまとめるとハンガーへと走ってゆく。
「‥‥ヴァシュカさん、大丈夫ですか?」
 途中、周防 誠(ga7131)は銀髪の娘に問いかけた。
「‥‥う。久々の実戦‥‥‥‥ちょっぴり不安です」
 ヴァシュカ(ga7064)は眉をハの字にしつつそう答えた。故あって故郷に帰っていた為、今回の戦いは物凄く久々の実戦であるらしい。一年程前では村上旅団でも一線級で名を馳せていたが、日進月歩の時代だ。現在でも通用するかどうか、不安がある。
「ま、自分も一緒に飛びますし、大船に乗った気でいて下さいよ」
 周防はヴァシュカの肩に手を置くと笑って言った。本当はすぐ傍で飛びたかったが、戦争だ。作戦があり、戦力配分があり、そういうわけにもいかない。せめて少しでも不安が紛れるよう明るく励ます。
「うん‥‥誠さんも居るし大丈夫かな」
 ヴァシュカはほっと男を見上げるとそう言った。周防は強い。恐ろしく、という形容が頭につく程に強い。しかし、
「でも‥‥誠さんも、前みたいに無茶しちゃ‥‥や、ですよ?」
 別の不安が胸を掠める。彼もまた人の子だ。空では何が起こるか解らない。バグアが来襲してより無数のエースが生まれ、そしてその多くが散っていった。
「ええ、大丈夫、堕ちませんよ自分は。安心してください」
 にこりと笑って周防は言った。
 失敗した先人も多いかもしれない。だが、
(「俺は死なない」)
 胸中で呟く。
 守るべきものが、あるのだ。
(「俺は失敗しない」)
 死ぬ訳にはいかなかった。


 空。
「あー、只今無線テスト中。傭兵隊より稲葉徹二、二年半傭兵やってて彼女ナシ誰か紹介シテクレ、であります。オクレ」
 持たざる者というのはいるものだ。稲葉もまたLHが誇るエースの一人だが、そちら方面は戦歴程には上手くいってないらしい。
「こちらベータリーダー、相対距離一千圏感度良好異常無し。つぶらな黒瞳が愛らしい大和美人なら紹介が可能だ。ただし足が四本ある。どうぞ」
「出来れば人間でよろしくお願いします、サー、どうぞ」
 そんな軽口を叩きつつ適度に緊張もほぐれた辺りで傭兵達は宇佐市街の上空を通り過ぎ、北西の端へと辿り着く。レーダー、レイヴァー機のおかげで少しクリアか。断続的に光る点が次々に浮かび上がってゆく。光の海だ。福岡の軍勢。
(「‥‥ダムダル、前の彼が敵だけど好きだったなぁ‥‥」)
 虎牙はふとそんな事を思い、胸中で呟いた。人は時の流れと共に変わるものだ――そういう次元の変わり方ではないが――肉体でなく魂が人を成すなら、彼は別人だ。本来の彼の魂は爆散している。かつての戦士は戦火に消え、既にこの世には亡い。彼は敵であったが、しかし虎牙はその消滅を残念に思うのだった。
「九州の命運を握る一戦。勝利して笑顔で帰りますわよ」
 ミリハナク(gc4008)が言った。百を数えるワーム達もまた南東へと向かって来た。KVとワーム、百を超える空舞う鋼達が爆風を巻き起こし互いの距離を詰めてゆく。KV戦隊は南東より三隊、正規軍十機隊にA隊は三機、B隊は五機、C隊は四機の傭兵機を加えた編成だ。左翼からABC。傭兵各機を前に出している。
 レイヴァー、敵の編成の様子を伝える。ワーム側はキューブワーム十機をおよそ一〇〇m程の距離を置いて後背に、五隊十八機の編成の模様。AI機は先頭に金銀銅白黒の指揮官機が後尾につけている。
(「最後の希望。名は素敵ですけれど‥‥切り札らし過ぎて頂けませんね」)
 レイヴァーは胸中で呟いた。序盤は攻撃を控え、回避と情報支援に専念予定。
 相対距離一千、ヘッドオン。KVとワーム、両陣戦闘機動に入る。ワーム側の速度が落ちた。CWのそれに合わせている模様。
 距離が詰まる。足が速いのは頭二つ三つ抜けて周防機EF‐006‐ゲイルII、次いで飯島機F‐108‐ディアブロ、三番手にレイヴァー機H‐223B‐骸龍『改』、ミリハナク機XF‐09B‐ぎゃおちゃんの二機と続くが、ミリハナクは突出しないように速度を抑えて僚機と並んでいる。レイヴァー機、立ち位置は何処か、CW殲滅後に前線へ向かうつもりだから、傭兵達の中では後尾か、こちらも後ろにつける。次いで稲葉機XN‐01改‐Xero、井出機XA‐08B改‐蒼翼号、ヴァシュカ機PM‐J8‐Siegruneの三機で最終組が砕牙機XF‐08D改‐爆雷牙、藤田機PM‐J8‐看看兮、クラリッサ機CD‐016G‐アズリエル、虎牙機XS‐09A‐アクエリアスの五機だ。その後方に正規軍各機がつける。
 中央B班、周防機、一千からおよそ0.7秒で相対距離六〇〇に突入。特に目標を定めずロックせずに前方へ二百五十発の小型誘導弾を撃ち放つ。進路上に居たHWは赤く輝くとスライドして回避。周防はそれを間髪入れずにガンサイトに納めるとD‐02をリロードしつつ四連射。唸りをあげて飛んだ弾丸がHWへと次々に突き刺さり、その装甲をぶち抜いてゆく。瞬後、爆裂と共に四散した。撃破。HW達との相対四〇〇に突入。猛烈な頭痛が発生し目眩がする。真っ直ぐ前を見るのも辛い程の怪音波だ。KVの精度が急激に低下してゆく。五機のHW達が一斉に淡紅色光線砲を爆裂させた。二十連射。紅の光の嵐が著しく動きを鈍らせたワイバーンへと襲いかかり、その装甲を集中射撃で削ってゆく。全弾命中。損傷率五分。ゲイルII、速度が目を惹くがタフさにも定評がある。頑強だ。
 左翼A班、左翼A隊の先頭を飛ぶ飯島機F‐108改、FCSをK‐02に切り替えている。ブースト及びPF発動、迫り来るHWの壁より五機をロックオン、
「Alpha11、FOX‐3!」
 コードを発しつつ発射ボタンを押しこむ。真紅のディアブロより破壊力が増大した五百発の誘導弾が射出され、五機のHWに喰らいついて大爆発を巻き起こした。猛烈な勢いでその装甲が消し飛びHW達が砕け散りながら落ちてゆく。五機撃破。
 飯島機、相対四〇〇、猛烈な頭痛が発生する。HW一機、紅の閃光を爆裂させ四連射。全弾命中。損傷は軽微。極超音速機動でCWへと肉薄しエニセイ対空砲を六連射。砲弾が唸りをあげて飛びCWに直撃し粉砕した。撃破。
 A隊、井出機、ヴァシュカ機、相対距離六〇〇、FCSをK‐02に切り替え共にHWの五機をロックオン。ヴァシュカ、同速、同射程、同隊の井出機とカウントを合わせて攻撃開始。
「‥‥んじゃ行きますね。ポチっとな♪」
「コンテナ開放、目標選定。ミサイル斉射!」
 ヴァシュカと井出は言葉を発しつつボタンを勢いよく押し込む。瞬後、二機から同時に放たれた総計七五〇発の小型誘導弾が猛然とHW達へと襲いかかった。誘導弾が赤く輝くHWの七機に炸裂し爆裂の嵐を巻き起こし、うち四機が爆砕され落下してゆく。
 B隊、稲葉機相対五〇〇、ハイマニューバを起動、正面のHWへと狙いをつける。127mmロケット弾ランチャーを連射。総計八発のロケット弾が次々に煙を噴出し勢い良く飛び出してゆく。音速を超えて加速するロケット弾がHWへと全弾直撃して粉々に消し飛ばした。撃破。
 同隊、クラリッサ機、相対六〇〇、PRMSを発動し精度を高める。K‐02誘導弾で五機のHWをロックオンし発射、すぐにまた別の五機をロックして撃ち放つ、十機のHWへとそれぞれ五十発づつの小型誘導弾が襲いかかる。唸りをあげて飛んだ誘導弾は全弾直撃し激しい爆裂を巻き起こした。
 A隊新田機、HWを狙いラプターを四連射。誘導弾がHWに突き刺さり爆砕した。撃破。
 B隊、藤田機、高度を高く取っている。CWとの相対六〇〇、うち一機へと狙いをつけ、急降下しつつSRD‐02でリロードで連射。レイヴァー機のジャミング中和が効いている。常よりも鋭さを増した二連の弾丸がCWのその装甲へと突き刺さった。そのまま敵の後ろへ突き抜けるように向かう。頭痛が発生した。
 相対距離四〇〇に稲葉、井出、ヴァシュカの三機が突入、頭痛が発生。井出機はブーストを発動、金色の指揮官機を狙って十式バルカンで猛射。HW五機、四機、三機からそれぞれ計二十発、十二発、十二発のプロトン砲が襲いかかる。稲葉機、ハイマニューバとレイヴァー機の支援が効いている。またCWが一機減っていて、元より運動性が恐ろしく高い。激しい頭痛を受けつつも素早く旋回して十六発を回避。四発が装甲に突き刺さるも損傷は軽微。井出機さらに速い、ブースト機動で翻り十六発の光線をローリングしながら悉く回避してゆく。全弾かわした。ヴァシュカ機、避けきれない、全弾直撃。光の嵐が装甲を削り取ってゆく。損傷率四分。変わらず頑健。まだまだ余裕。井出機からの射撃を黄金の指揮官機はスライドしながら全弾回避。
 ミリハナク機、レイヴァー機、砕牙機、藤田機、クラリッサ機、エリアノーラ機、虎牙機、相対四百に突入。頭痛が発生。
 レイヴァー機、虎牙機、ブーストを発動させて射程外に逃れるなどの行動は取らない模様。虎牙機、傭兵隊の後尾につけてはいるが、上下左右、少し角度をつければ射線自体は通る。優先的に狙われにくくはなるが、最初から狙うと決められている場合、射線が通り放題な空においてはあまり関係が無い。レイヴァー機、虎牙機にそれぞれ十八機から七十二条の光波が空間を埋め尽くして飛び、ミリハナク機、砕牙機、クラリッサ機、エリアノーラ機にそれぞれ六機より二十四発の光線が飛び、クラリッサ機がスナイパーライフルで発砲、エリアノーラ機、砕牙機が十式バルカンで射撃する。エリアノーラは虎牙機へと攻撃中の黒指揮官機を狙った。
 百を超える光線とKVからの射撃が交錯する。
 レイヴァー機、ジャミング中和、回避専念、驚異的な運動性、しかしCWの影響で著しく機能が低下している。おまけに敵の射撃は猛烈だ。しかしそれでもブースタを吹かし地力にものを言わせて空を埋め尽くす程の紅光の嵐の隙間を掻い潜ってゆく。六十四発もの光線を次々に回避。しかし指揮官機からの四連射が次々に直撃し、態勢を崩した所へ四発が直撃した。紅光が骸龍『改』の装甲を溶解させ消し飛ばしてゆく。損傷率十二割一分、大破。レイヴァー機が爆裂を巻き起こし砕け散りながら大地へと落下してゆく。全体からジャミング中和機能が消え失せた。
 虎牙機から放つ機銃をHWは慣性を無視した動きで横滑りしながら回避、紅の光の海がアクエリアスへと迫る。回避運動。九機のCWの影響下で避けられる運動性ではない。七十二発全弾直撃。損傷率三十三割七分、機関部より紅蓮の焔が膨れ上がり、次の瞬間、超爆発を巻き起こしながら爆散した。KVが起こした爆裂が大気を揺るがし、アクエリアスの破片がソラに散ってゆく。
 ミリハナク機、二十四連の光が迫る、避けられない、全弾被弾、コクピットを激震が襲った。光に呑み込まれ装甲が猛烈な勢いで吹っ飛ばされてゆく。損傷率八割五分。レッドランプがけたたましく鳴り始める。砕牙機も光に呑まれた。光の嵐に装甲が削れてゆく。だが損傷率一割一分。爆雷牙なかなか頑強だ。エリアノーラ機も全弾被弾、しかしPRMシステムを抵抗に発動させている。悉く弾き飛ばした。クラリッサ機も全弾もらって二割九分。早い所CWをなんとかしないと不味そうだ。
 HWはクリッサ機から放たれたライフル弾をスライドして回避。エリアノーラ機からの三十発の弾丸を黒指揮官機は攻撃しながらスライドして回避。砕牙機がその隙を狙って弾幕を合わせる。しかしHWは赤く輝きながら翻り悉くをかわしてゆく。
 ミリハナク機は相対三〇〇に入るとHWの一機をロックオン、飛竜誘導弾を三連射する。やはりCWの影響がきつい。HWは誘導弾を赤く輝きながら宙をスライドして全弾回避。
 ヴァシュカ機は距離を詰めると井出機とターゲットを合わせてスラスターライフルで猛射、黄金のHWは急降下して回避。
 正規軍は相対距離三〇〇に踏み込み、四機ないし三機の編成でメインアタッカーを支援する形でターゲットを合わせ集中射撃。全機全弾外れた。
 空で止まったら重力に引かれて落ちるのみ。KV達が旋回し、HW達が旋回する。百機以上が狭い空域に音速を超えて翻る乱戦となった。
「キューブちゃんを潰しに行きますわ。ここは任せましたの」
 ミリハナクが言った。
 ファランクスを持つ各機のそれが発動し弾幕が放たれてゆくも周防機以外はずれた。
 飯島機ブースト継続中、極音速機動で空気の断層を滑るように翻る。初撃の手ごたえから敵機の耐久力を推察、リロードしつつ三機に二発、一機に一発の砲弾を飛ばす。砲弾がCWの装甲を撃ち砕き三機を爆砕して叩き落とす。一機のHWからの四連の光線が直撃してディアブロの装甲を削った。
「っ‥‥! まあ、見とって下さいな‥‥そうそう落ちやしませんから!」
 稲葉機、頭痛を堪えつつブースト発動、この段階ではまだCW九機生存している。四機のHWからの十六発の光線を八発かわし八発に撃たれつつも銀色の指揮官機へとハイマニューバを併発させ突撃する。損傷率三分。相対距離百まで詰めるとガトリング砲を猛射しつつ機体ごとぶつけるように突っ込む。剣翼突撃だ。銀色のHWは赤く輝くと素早くスライドして三十発の弾幕を回避し、突っ込んで来た稲葉機のコクピットを狙ってフェザー砲を十六連射。狙い澄まされた光線が次々に直撃してゆく、装甲の隙間を狙う猛撃。しかしそれでも稲葉機、損傷率二割一分、タフ過ぎる。光を突き破ってXeroが迫る。頭痛が少し軽くなる。鋭さが増した。激突寸前で銀HWは慣性を無視した動きで翻って一撃を回避。まだ当たりそうもない。
 井出機、回避を重視しつつブースト機動、前に出ているのでCWは射程内だ。射程内にいるならCW討伐が最優先、HWが優先、指揮官機が最優先、どれも狙えるが分身は出来ない、どうする? HW四機から放たれる光の嵐を悪条件をものともせずに高速で翻り次々にかわしてゆく。ラダーを操作して機首を回しCWをガンサイトに納める。こいつが一番厄介だ。猛射。四十発の徹甲弾がCWを蜂の巣にして爆砕した。撃破。
 翻る周防機、敵の一部は正規軍へと向かっている。しかしCWも視界に捉えている。どちらを優先させる? CWを狙う。ブーストを発動。
「そう簡単に自分は止められませんよ!」
 前方範囲にいる五機のHWをロック、小型誘導弾を撃ち放つ。HWからの二十連光線の直撃を装甲にものを言わせて突き破り誘導弾を追いかけるように突撃。ミサイルはHWへと次々に直撃して爆裂を巻き起こした。すれ違いざまにアテナイが発動してHWへと追撃を叩き込んでゆく。CWへ向けてエニセイ対空砲を七連射。唸りをあげて飛んだ砲弾がサイコロ状のワームを爆砕して叩き落とした。撃破。
 砕牙機、頭痛を堪えつつ銅色の指揮官にターゲットを移し、ロックオン。UK‐11AAMを三連猛射。音速を超えて誘導弾が飛び、銅HWは螺旋の軌道を描く。三発の誘導弾が虚空を貫いてゆく。外れた。
『郷土を恋人を‥‥寵愛の対象を簒奪し尽くされた者に何が残る?』
 藤田機、エンハンサー、ブースト、スタビライザを併発、銅色の指揮官機へと迫り外部スピーカで声を発しつつ、発射ボタンを叩きつけるように押し込む。
『憎悪だよ!』
 総計二〇〇発の小型誘導弾の嵐が銅HWへと襲いかかり、荷電銃よりプラズマの光線が猛然と連射される。六機のHWが藤田機へと二十四連の光波を撃ち放ち、銅HWは赤く輝きながら急降下してドゥオーモの嵐をかわしプラズマをかわす。光の嵐が看看兮を貫き、その装甲を爆砕した。損傷率三十五割二分。機関部より焔が膨れ上がる。
「――!」
 藤田は何かを叫び、そしてアンジェリカは超爆発を巻き起こして爆散した。大破。粉々に砕かれたカケラが空へと散って流れてゆく。
 クラリッサ機もまたPRMSを発動させ、銅指揮官機へとスラスターライフルで弾幕を張っている。だが、当たらない。敵が速いのではない、こちらの精度が著しく低下しているのだ。六機のHWからのプロトン砲の嵐が次々にアズリエルに突き刺さってゆく。損傷率五割八分。砕牙機も全弾被弾して損傷率二割三分。
 ヴァシュカ機、班員は全てCWへ行っている。とりあえず引きつけんとする。
『‥‥鬼さんこちら♪ 手のなる方へってね♪』
 スライスターンで翻ると再度スラスターライフルで黄金のHWへと猛射。指揮官機は素早く機動してかわし、フェザー砲を爆裂させる、さらに二機のHWからの光がSiegruneを撃ち抜いてゆく。損傷率九分。
 エリアノーラ機、機銃で弾幕を張りつつHWの一機へと突っ込む。剣翼突撃。HWは斜め上へと回転しながら翻り回避。六機からの光波が次々に突き刺さってゆく。損傷率五分。非常に頑強な造りだ。
(「‥‥身体が震えてますわ。力を振るえる歓喜か、撃墜されるかもしれないという恐怖か‥‥自分でもわかりませんわ」)
 ミリハナク、レッドランプが点灯しアラームがけたたましく鳴り響くコクピットの中、機器を操作してブーストおよびDC発動、CWへと突撃を開始する。六機のHWから二十四連発、全弾直撃。装甲表面に流れる超高圧電流が光の嵐を弾き飛ばした。アテナイが途中のHWへ放たれ、HWは翻って回避。CWへと極超音速機動で迫ると十式バルカンで四十発の徹甲弾を叩き込む。蜂の巣にされたCWは茨の如き電流を洩らし、次の瞬間爆裂を巻き起こして四散した。撃破。
 正規軍三十機は誘導弾を連射しているが全弾外れ、五機が二十四発の光波を受けて爆散した。
 飯島機がエニセイを損傷機へ一射、周防機が別へ二連射し、井出機とミリハナク機がまた別へ十式を二十発、十発、叩き込んで三機のCWを爆砕する。怪音波が消えた。
 稲葉機、ブースト・ハイマニューバ機動継続、この時点ではまだCW三機の影響が残ってる。HW四機からの光線をかわし、頭痛の完全消滅を感じつつCSPで徹甲弾の嵐を叩き込む。徹甲弾が次々に指揮官機の装甲をぶちぬいた。再度剣翼突撃、銀HWから放たれるカウンターの閃光をジェット噴射ノズル核を操作して横滑りして回避、急機動で曲がると、剣翼をぶちあてる。猛烈な破壊力。HWの装甲があっという間に吹っ飛ばされてゆく。
 砕牙機、銅色の指揮官機をロックオンしUK誘導弾を発射。銅色は回避。頭痛が完全に消える。超電動アクチュエータ発動、螺旋誘導弾に切り替え二連射。火炎と共に煙を噴出し二連の誘導弾が風を切り咆哮をあげて飛ぶ。慣性制御で翻る銅機に喰らいつき、その装甲を貫いて強烈な爆発を巻き起こした。銅機の装甲が削られてゆく。プロトン砲が次々に砕牙機へと突き刺さってゆくがまだまだ落ちない。クラリッサ機がPRMで火力を増大させ銅機へと六十発の弾丸を叩き込む。突き刺さった弾丸は猛烈な破壊力を解き放ちHWの装甲に穴を生じさせてゆく。プロトン砲は途中から全弾回避し、被弾は三発。損傷は軽微。
 ヴァシュカ機、黄金のHWへと狙いをつけ荷電粒子砲を発射。まだCW三機の影響が残っている。HWは翻って回避。反撃の連射、三発を受けるも最後の一発は頭痛が消えて回避。四機からの光は被弾六発。飯島機が三連射をかわしつつ翻り指揮官機へとエニセイ砲弾とライフル弾を撃ち放つ。次々に直撃を受けて黄金機の装甲が吹き飛び態勢が崩れ、ヴァシュカ機は再度、荷電粒子砲を解き放った。三連射。凶悪な破壊力を秘めたプラズマの波動が黄金のHWへと襲いかかり、その装甲を貫いて猛烈な勢いで融解させてゆく。プラズマ光波が指揮官機を完全に吹っ飛ばした。砕けた黄金のワームは爆裂を巻き起こしながら四散する。撃破。ヴァシュカは指揮官機撃墜の旨を無線に発する。
 エリアノーラ機、スラスターライフルへと切り替える。光の嵐の中でHWをガンサイトに納め、トリガーをひく。剣山号から猛烈な勢いで弾丸が放たれ、光波の直撃を受けつつも怯まず弾丸を追いかけるように加速する。CW三機なら当たる。弾丸がHWを捉えて次々に装甲を穿ってゆく。頭痛が消えた。周囲への認識がクリアになる。シュテルンは猛然とHWへと迫り交差ざまに翼を入れて叩き斬った。刃が装甲を深く抉り斬り飛ばしてゆく。瞬後、HWは漏電を起こし猛烈な爆裂を巻き起こした。黒煙を吹き上げながら落下してゆく。撃破。光波二十四発は七発被弾。損傷率七分。落ちる気はしない。
 翻った周防機がエニセイをリロードしつつ連射してHW一機を撃墜し、井出機が銀HWへと機銃を叩き込んでいる。ミリハナク機もブーストとDCを継続して発動させつつ翻りHWへと十式で猛射し装甲を削っている。
 正規軍は六機が撃墜され、クラリッサ機が先に削った十機のHWを撃墜する。
「SESフルドライブ。ソードウィング、アクティブ!」
 井出機はブーストを継続しつつ稲葉機が機銃と剣翼を叩き込んでいる銀HWへ機銃を撃ち放ち、肉薄して剣翼を叩き込で切り裂くと上昇して宙返る。
「何処まで耐えられるか‥‥! 勝負だ!!」
 天空から落雷の如くに降下する。四発のプロトン砲が井出機を撃ち抜いた。他に三機狙っていたが飯島機がエニセイを七連射して爆砕している。蒼翼号と銀HWが交差して抜け、次の瞬間、銀HWは爆裂を巻き起こして四散した。撃破。
 周防機は襲い来る全弾を回避しつつ正規軍と格闘しているHWのうち二機を粉砕し一機に痛打を与える。ヴァシュカ機は光波をかわしつつHWを荷電粒子砲で吹っ飛ばして一機撃墜。砕牙機とクラリッサ機は銅HWの装甲を削ってゆく。敵もなかなか落ちない。エリアノーラ機はスラスターをリロードしつつ射撃して剣翼で切り裂きHWに痛打を与え、ミリハナク機は一機を機銃で粉砕し、一機へと二連の誘導弾を当てた。正規軍は二機が爆散し、四機のHWを粉砕する。
 戦いが続く。CWさえ消してしまえば後はKV側が有利なようだった。クラリッサ機が猛撃した所へ砕牙機はスラスターライフルで猛射。銅HWはついに抗しきれず爆散した。撃破。一方で飯島機が黒HWを粉砕し、やがて白HWを稲葉機と井出機が叩き落とした。途中、DCを張る練力が尽きたミリハナク機と正規軍十機が撃墜されたが、それ以外は撃墜者を出す事なく空戦隊はワーム百機を殲滅したのだった。


 一方の地上、虎牙は練成治療を使用してなんとか一命を取り留めると、レイヴァーの元へと向かい、これも練成治療を使って救助した。次々に落ちて来る正規軍のパイロット達の元へ駆けつけ練成治療を発動させ練力が尽きてからは救急セットを使って治療にあたり、数多の命を救ったのだった。死亡は空中もしくは地上に叩きつけられた際に即死した正規軍パイロット五名。虎牙は弔いの祈りを捧げるのだった。
「今回の作戦は‥‥成功したのでしょうか?」
 基地に戻った時、レイヴァーは新田に問いかけた。
「‥‥勝負には勝った」
 士官は少し考えるようにしてからレイヴァーに答えた。
「被害は自軍27に対し敵は100だ。数的劣勢にありながら敵に三倍以上の被害を与えたのだから大戦果と言って良い――精強無比なLH傭兵の感覚だと違うかもしれんがな‥‥普通は互角の状態でも敵を一殺せば味方も一死ぬものだ。今回の結果は司令部はまずは喜ぶだろう。しかしこちらは消耗戦に弱い‥‥敵がどう見るかは、微妙な所だな。三百、四百と来た時、勝てるかどうか。パイロットの死亡が少なかったのが救いだ」
 昏い眼をした空軍大佐はそう述べたのだった。



 了