タイトル:【DAEB】高義基地攻略戦マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/05 10:36

●オープニング本文


 中国大陸。
 先に徳州市故城空軍基地を陥落させたUPC軍は『生門』と見なされている石家庄市の攻略を目指し軍を西へと進めた。荒野においてUPC軍と親バグア軍が激突し、また一つ新たな戦線が生まれた。
 石家庄市の周辺100km以内には四つのバグア軍基地が存在する。すなわち高義空軍基地、元氏空軍基地、藁城空軍基地、石家庄空軍基地である。
 この四つの基地に連動して守られている石家庄市の守備は強固である。UPC軍も幾つかの旅団や師団を当ててこれを打ち破らんとしていたが、生半には抜けず、陸空の戦いは苛烈さを増していた。
 うちロン・バオエン准将率いる旅団は石家庄市を一気に攻略するのではなくまずその鎧たる高義空軍基地を目標に定めた。
 高義空軍基地は四基地の中で最も南にあり、また北京環状包囲網の最西南に位置する最前線の基地である。これの防備は強固であったが、なんとしても陥落させねばならなかった。
 しかしながら「なんとしても」と意気込んでそれだけで勝てれば苦労は無い。手立てが必要だ。故に旅団の参謀長たるマオ・シェジュンはその手段を示した。
「また無茶な策が来たな、おい」
「無茶の一つでも通さねば、どうにか出来る相手ではありますまい。それと無茶と仰られますが、決して無茶ではありません」
「空にKVを集中させ地上のワームには歩兵を当てるってのはかなり無茶だと思うが?」
「精鋭の能力者ならば歩兵でやれます」
 マオは断言した。
「敵の主力は陸戦型の重HWです。あれは空を飛びません。十名前後の精鋭を選抜して一隊を編成し当てれば、十分に可能です。徳州での報告書には目を通されておりませんか?」
「徳州での能力者の働きは承知している。だが傭兵だ。今回もそこまで強い連中が集まってるのか?」
「はい」
 参謀は断言した。実際の所はその確実な所はよく解っていないが、平然としたものである。
 司令は沈黙し、やや経ってから再び口を開いた。
「解った。この策を元に軍を進める。準備にかかれ」
「はっ」

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
冴城 アスカ(gb4188
28歳・♀・PN
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
天原大地(gb5927
24歳・♂・AA
流叶・デュノフガリオ(gb6275
17歳・♀・PN
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD
綾河 零音(gb9784
17歳・♀・HD
湊 獅子鷹(gc0233
17歳・♂・AA
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG

●リプレイ本文

「生身でワームを斬れとは何という無茶依頼」
 藤田あやこ(ga0204)が驚いたように言った。まぁそれが常識的な反応だろう。
「RCと来て今度はHW? ‥‥冗談だろう?」
 と流叶・デュノフガリオ(gb6275)もまた言う。
(「しかも今度は八体、か‥‥駄目だ、頭痛がしてきた」)
 少女は白い手で額を抑える。無改造のHWならRC程の強敵ではない。ならば確かに、上級職なら十分渡り合えそうな気がするが、自分には荷が重いような気もする。
 とは言え見て見ぬ振りをするのもあれだ。
(「何とも儘成らないものだ」)
 流叶はそんな事を思って嘆息する。一方、
「良い機会だ‥‥研究所の連中の言っていることが真実かでまかせか試してやる」
 と手のひらに拳を打ちつけるのは須佐 武流(ga1461)だ。気合い十分である。たとえデマだとしても俺が真実に変えてやる、そんな所存だ。
 月城 紗夜(gb6417)もまた上級クラスが多いのを見つつもそれに負けぬように鍛錬に励もうと気を引き締めている。
「――戦では同じ、戦火に投げ込む薪でしかない。HWも同じく」
 女はそう言った。勝敗を決めるのは火の種類ではなくその大きさだ。
「生身での実戦経験はいくらかあるけど、生身でヘルメットワームと戦うのは初めてだね。アーちゃんも気合を入れないと」
 とアーク・ウイング(gb4432)はそんな事を呟いている。なかなか落ちついている様子。
「生身でHWかぁ‥‥ちょっと怖いナ。多少無茶だケドみんなの安全な暮らしのためにも頑張るヨ」
 ラサ・ジェネシス(gc2273)もまたそんな事を言った。
 その一方、
「うん、きっと大丈夫、私ならできる‥‥大丈夫前より火力上がってるんだし硬さは減ったけど体力ならあるハズだし‥‥だから大丈夫大丈夫うん大丈夫だきっと」
 自己暗示に忙しいのは綾河 零音(gb9784)だ。はっきり言うとワームを相手にするには非常に厳しい。圧倒的な地力の差。しかし戦は単純な力の差が全てでもない。綾河零音、やれるか否か。上手く立ち回りたい所だ。
「この国に来るたびに汚れ仕事させられてるな‥‥だがこの混沌、嫌いじゃない」
 湊 獅子鷹(gc0233)はそう言った。そしてふと綾河へと視線をやり述べる。
「落ちつけレオン、大丈夫だ」
「うん大丈夫大丈夫大丈夫、私は大丈夫」
(「‥‥‥‥駄目っぽいか‥‥?」)
 ちょっとそんな事を思う湊であった。


 軍勢と軍勢が激突する攻防戦。
 八体の重装甲陸戦HWが解き放たれ、十人の傭兵達がその迎撃へ繰り出される。
 現在今まさに交戦中の戦場のど真ん中で塹壕を作るというのは厳しく、ワームの突進速度はそれを許さないので傭兵達はそのまま繰り出されたワームへと向かった。
「ふぅ‥‥難儀な体ね」
 抑制剤を飲み終えた冴城 アスカ(gb4188)は息を吐く。
「アスカ姐さんが囮、か‥‥気をつけてね?」
 ミカエルの後部座席に乗る綾河が心配そうに言った。
「大丈夫、腕試しには丁度いい相手よ」
 と天城が笑みを見せて言った。割と頼もしい。上級職の銀髪姐さんは、恐ろしく速いので、虚言という訳でもない。
 先陣を切って巨大な八つの鋼鉄のワームへと向かう。
 四本の巨大な脚と二本の鋏、そして巨大なプラズマキャノンを持つHWは、その砲門を冴城へと向けていた。
「敵の視点は人体より高い上に長射程の武装、此方は丸見えだ。反面、巨躯ゆえにこちらもその機影を捉え易い、鈍重という欠点もある」
 藤田が追随しつつそう言った。重さは慣性制御が発揮されると大幅に削がれるが、基本的に正しい。
「ちょっとしたチャリオットだな、レオン、振り落とされんなよ!」
 一方、バイク形態のミカエルに跨っている湊もまた、後方に綾河を乗せて走り出す。
「獅子鷹、好きなように走ってくれな、落ちるような真似はしないから!」
 綾河はターミネーターを片手にしがみ付いて言う。
「オーケィ」
 凸凹の激しい荒野をバイクのグリップを回してブーストして加速しつつ湊。風が唸り、タイヤが砂塵を巻き起こし、二人乗りの二輪が駆ける。敵の射線に入らないようにしたい。荒野の戦いでそいつは少し要求が高いが、クリア出来る方面も無い事もない。仲間が正面から詰める中、大回りに旋回してワーム集団の後方を目指す。敵味方が互いの敵味方から突出していて、バイクだから可能な機動だ。
 相対距離一五〇。藤田は後方からエナジーガンで射撃して大地を爆砕し土煙を巻き起こしている。射程に入って来た冴城に向かって三体のワームは赤く輝くと荷電粒子砲を猛射する。一機四連、三機で十二連射。爆裂する光の奔流が空間を貫き女へと襲いかかる。冴城は瞬天速で加速して素早く駆けまわりつつプラズマ光波を次々にかわしてゆく。恐ろしく速い。この密度ではまったく当たる気配無し。ワームは流石に全機で人間一人へと攻撃を集中させるようにはAIがセットされていないが、バグア側もそろそろの設定、見直した方が良いかもしれない。
 同様に流叶へと三体のワームがプラズマ光を猛連射している。銀髪の少女も弓を手に駆けて十二連の爆光を次々にかわしてゆく。十一発回避し一発直撃した。猛烈な衝撃が身を貫いてゆく。流石に当たるとその一撃は人の身には重い。負傷率一割六分。
「虎穴に入らずんば小五郎を得ずヨ」
 ラサ、微妙に(?)間違った故事成語を言いつつ、プラズマキャノンの動きに注意を払い、その延長線上に入らないように駆けつつ前進する。だがワームも当然追尾するし、基本、円の中心よりも外周の弧の方が距離が長い。
 二体のワームが少女へと狙いをつけ爆光を連射する。八発の荷電粒子の波動がラサへと襲いかかり、ラサは三発をかわすも一撃をもらってよろめき、次々に計五発の猛烈な爆光に飲み込まれて装甲を消し飛ばされ負傷率七割八分。
「侵略者如きに、一人もやらせはしない‥‥!」
 流叶、超機械に武装を持ちかえるとラサへと練成治療を四連打。不可視の何かが飛び、みるみるうちに少女の傷が癒え痛みがその身体から引いてゆく。ラサ・ジェネシス、全快復。
「いかなバグアのキャノンとは言え永遠に連射は出来まい、今の内に肉薄するぞ!」
 藤田が言って加速し、攻撃班の面々もまた一気にダッシュしてワームへと向かってゆく。
 相対距離一〇〇、ラサは足を止めると貫通弾を小銃へと装填、銃床を肩に当て左腕を添えて支えつつワームAの脚の一本へと狙いをつけ発砲。上へと跳ね上がる反動を抑え、標的を排気口らしきものを狙い連射、エンジン部はちょっと解らないのでキャノン砲の付け根を狙ってさらに射撃。轟く銃声と共に三連の弾丸が錐揉みながら空を裂いて飛び陸戦HWへと襲いかかる。銃弾の一発がワームの脚の関節へと命中して強烈な衝撃と共にその装甲を穿ち、一発が虚空を貫いて外れ、一発が砲の付け根へと突き刺さって破壊を撒き散らした。
 ワーム達の斜め後方、相対距離五〇。湊がバイクをブースト機動で走らせつつ綾河はSMGをワームへと向けて猛射。流石に後ろからなら当たる。六〇発の弾丸がワームAへと次々に命中し火花を巻き起こしてゆく。
 瞬天速で加速してワームAへと飛び込んだ冴城はその脚部を狙って三段の蹴りを繰り出した。プレートが激突して轟音と共にワームの装甲がひしゃげ、砕けてゆく。猛烈な破壊力。
 バランスを崩したワームAへと天原大地(gb5927)は突進しながらバラキエル拳銃を構えて連射する。二連の銃弾がHWAの装甲を突き破り凶悪な破壊を撒き散らした。さらに須佐が跳躍し真燕貫突を発動、グラスホッパーで多段蹴りを叩きこんでゆく。四段の蹴りがその装甲に叩き込まれるとHWの身から漏電洩れた。須佐と冴城は素早く離れ、次の瞬間、猛烈な爆裂が巻き起こった。撃破。
 アークウィングは相対距離三〇まで入るとエネルギーガンでHWBの脚を狙って閃光を解き放つ。光がワーム脚へと直撃しその装甲を灼き焦がしてゆく。竜の爪を発動させて突っ込んで来た月城が肉薄ざま蛍火を一閃させてHWBの装甲を削り取った。
 ラサ、相対距離八〇、小銃をリロードすると制圧射撃を発動、七体のHWへと向かって銃撃を連射してゆく。素早くリロードしワームCへと連射。その脚部の装甲を穿つ。
 須佐、高速機動、真燕貫突を発動、HWCとDから赤光と共に振るわれる四連の鋏を跳躍して回避すると、HWCへと跳ぶ。上部装甲へと左のグラスホッパーを叩き込み、二撃目で蹴りつけ反動で上へと跳ね上がると右のスコルからブーストを噴出して急降下、猛烈な速度の蹴りを叩きこむ。怒涛の十連撃が炸裂しHWCは爆裂を巻き起こしながら四散した。撃破。
 冴城は駆けまわりつつHWE、F、Gからの鋏を回避。Eへと飛び込むと、その脚部を狙って蹴りを叩き込み関節部を圧し折ってゆく。天原が太刀を手に走り込んで来て、もう一本の脚と胴の繋ぎ目を狙い最上段から落雷の如くに振り降ろした。蛍火が空間を断裂して抜け、間にあった鋼の脚を真っ二つに切断し通り抜けてゆく。壮絶な破壊力。男はさらに四連の剣閃を巻き起こしてHWEを切り刻み爆裂と共に大破させた。撃破。
 アークウイングはエネルギーガンから超機械αに持ちかえると攻性操作を発動、HWBを操ってHWDへと鋏を叩きつけさせる。HWDの鋏がHWBを強打して轟音と共に装甲をひしゃげさせ、超機械が砕け散って消えた。
 月城は竜の爪、竜の咆哮を発動させ全身からスパークを発生させてHWBへと斬りつける。猛烈な衝撃が炸裂し反動で月城の身体が後方へと吹っ飛んだ。さすがにこの塊全体を吹き飛ばすのは無理だ。操作から解かれたHWBの鋏が月城へと襲いかかり、女は咆哮を乗せた太刀を横に振るって鋏を弾き飛ばして逸らす。多少手が痺れたが負傷五分、問題無い。四連斬を巻き起こしてワームBを斬り刻みその装甲を穿ってゆく。
「おーにさーんこーちら‥‥っと」
 流叶は弓に弾頭矢を番え引き絞るとHWGを狙ってはっしと放つ。矢が光と化して飛び、巨大なワームの身に命中して爆裂を巻き起こした。
「アスカ姐さん、今行きますっ!」
 綾河はバイクから降りHWFの後背へと迫ると紅蓮衝撃を発動、炎剣『ゼフォン』を両手でしっかりと構えると爆熱の輝きを帯びた刃を一閃させる。一撃が入ってワームの装甲を削り、二撃目が入る前にワームの巨体が眼前から消え失せた。かわされた。
「さてどこまでたたき込めるかな‥‥」
 湊もまたバイクから降りてAU‐KVを身に纏っている。 竜の爪を発動、二刀小太刀『兜玖和形』を構えて回避に跳んだワームFへと迫るとスパークを巻き起こしながら三連撃を叩き込む。二発が命中して装甲を削って火花を散らし、一発が避けられ、綾河が追走して一撃を叩きこむ。
 相対距離三〇、前進して来た藤田は電波増幅を発動させるとワームBへと狙いをつける。
「ここ一番の命中率を持つ私の出番だ、狙撃行くぞ」
 言葉と共にエナジーガンから五連の爆光を解き放ち次々に直撃させて爆裂と共に大破させる。撃破。
 ラサは再び制圧射撃を繰り出しつつDへと銃弾を飛ばし、須佐が鋏をかわしつつDへと七連撃を叩き込んでこれも撃破する。
 藤田はガトリング砲に持ちかえると猛烈な弾幕を解き放ってワームFの脚部へと銃弾を叩き込み、その関節を穿って態勢を崩させる。湊と綾河がそれぞれ小太刀と炎剣で斬撃を叩き込み好機を見てとった冴城はHWの脚を蹴って跳躍しその頭頂部へと飛び乗ると真燕貫突を発動、蛇剋が、ちょっと携帯品に入ってないのでそのまま踵を振り上げて叩き込む。
「お相手ありがとう、次に会うのは地獄ね」
 七連撃がHWFの頭頂部を陥没させ、次の瞬間、爆裂を発生させた。撃破。
 アークウイングへHWGの脚部へと狙いをつけるとエネルギーガンで五連射。猛烈な破壊力を炸裂させてその巨大な脚を吹き飛ばす。
「当たれば厄介、ならば逸らすまで!」
 流叶は反撃の砲撃をかわしつつ弓矢を構え強弾撃を発動、プラズマキャノンの砲身を狙って下方から知覚力の矢を叩き込み破砕する。
「蟹ならひっくり返して、腹から中身を引きずりだすんだが」
 とワームGへと迫りつつ月城。流石にこれだけの重量の物を生身でひっくり返すのは骨が折れる。竜の爪を発動させつつ連斬を叩きこんで側面から切り刻んでゆく。天原が蛍火を手に装甲の薄い箇所を狙って五連の剣閃を巻き起こし、その壮絶な破壊力で装甲を叩き斬ると、次の瞬間、HWGもまた爆裂を巻き起こし、荒野に沈んだのだった。


 かくて傭兵達の手によりバグア軍の陸戦ワームは撃破され、空ではKV隊が勝利を収め、UPCの優勢が決定づけられた。
 UPC軍は怒涛の勢いでバグア軍を潰走に追いやると基地へと迫り、これへ猛攻をかけてついに陥落せしめたのだった。


 了