タイトル:【DoL】天空の戦いマスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/24 01:47

●オープニング本文


 緊急発進指令だ。
 哨戒に出ていた部隊がオタワ市へと接近するワーム部隊を発見した。
 敵勢力は小型ヘルメットワーム六機、タートルワーム二機、ゴーレム四機、総勢十二機。
 空に六、陸に六、かなりの戦力だ。恐らくは、こっちの根拠地にどれだけ対応力が残っているか調べる為の威力偵察だろう。
 この敵さんがたは放置できる戦力じゃない。オタワ市に雪崩こまれたらとんでもない被害になる。
 主力は南へ飛ばなけりゃならんが弱味を見せる訳にもいかん。
 そこで無理の効くお前さん方の出番だ。
 任務は一つ、敵戦力を全て撃破しろ。
 敵は強力だが、こっちも二部隊出す。空と地上だ。
 
 周知のことかと思うがタートルワームには強力な対空砲がある。敵にこいつの支援がある状況で空でやりあおうなんざ正気の沙汰じゃない。
 射程の範囲外でやりあいたい所だが敵は当然、こいつの支援距離内にこっちを引きずり込むだろう。
 となるとまずはタートルワームを黙らせる必要がある。陸上部隊の出番だ。
 だが陸上部隊だけで突っ込んでも、上からヘルメットワームに音速飛行で撃ちまくられるだけだ。奴等にゃ慣性制御とかいう反則じみたもんがあるからな、狙ってくる。
 となるとタートルワームを黙らせる為にはまずヘルメットワームを黙らせる必要がある。
 だがヘルメットワームを黙らせる為にはタートルワームを黙らせる必要がある訳だ。
 完璧な相互支援って奴だ、うらやましいねぇ。
 だがうらやましがってばかりもいられねぇんで、同時に叩く。
 
 空、陸、どちらが欠けても上手くはいかぬ作戦だ。
 陸は亀砲を空へと撃たせるな。空はヘルメットワームの目を地上へと向けさせるな。敵に仕事をさせず速やかに撃滅しろ。
 
 行程を説明する。
 まず全部隊飛行形態で南東、Aポイントまで飛ぶ。
 陸上部隊はそこで降下、○38道路を用いて着陸、人型形態へと移行する。
 陸上部隊は○38道路沿いに南東へ進軍だ。航空部隊は陸上部隊の進軍速度に合わせて飛べ。
 予測では、○38道路上でおよそ一時間ほどで接敵する。周囲は荒野だ。遮蔽物はねぇ。
 機体性能と連携、操縦技術がものを言う。気張れ。
 空は言わずもがなだな。

 以上だ。幸運を祈る。

●参加者一覧

真田 一(ga0039
20歳・♂・FT
吾妻 大和(ga0175
16歳・♂・FT
天上院・ロンド(ga0185
20歳・♂・SN
皇 千糸(ga0843
20歳・♀・JG
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
ランドルフ・カーター(ga3888
57歳・♂・JG
バーナード(ga5370
21歳・♂・FT

●リプレイ本文

●天地鳴動
 ここは北米大陸の蒼穹の戦場、天地をまたにかけ地球人類のナイトフォーゲルとバグアのワームが激突する。
「こちらBatter1、鳳閃。地上部隊の到着を確認した」
 上空、距離を置いて高空を飛行中の真田 一(ga0039)が雑音の混じる無線を傍受し断続的に機影を映すレーダーを確認して言った。地上部隊からジャミング解除がかけられているが、それでも距離があるとやはりノイズが混じる。
「Charge1、破天、了解。予定通り地上部隊の突撃後、迎撃を開始する。各機準備はよろしいか」
 漸 王零(ga2930)が言った。
「Assault2、イフリート、OK。空と地上に分かれての戦闘とは‥‥なんだか緊張しますね」
 と言葉通り緊張した面持ちのバーナード(ga5370)、バグア側は空陸の完璧な相互支援に基づいて行動している。さながら天地が協奏しているかのようだと誰かが言った。
「Batter2、アメノムラクモ、OK。ま、向こうが協奏ならこっちは寄せ集めの雑音で引っ掻き回してやるとするかね」
 と飄々とした口調で言ったのは吾妻 大和(ga0175)だ。地球側もまた空陸を連動しバグア軍を迎え撃つ作戦を立てていた。地上を気にしながら戦うというのもなかなか厳しい、とそういう意見もあったが、
「Destroy2、Tsukuyomi、OK。ま、そこは地上部隊を信じましょう。お互い信じてなきゃ、気が散ってしょうがないもの」
 皇 千糸(ga0843)が泰然とした口調で言った。なかなか出来る事ではないが、少なくとも表面上には漏らさない。
「Destroy1、ノーベンバー、OK。この依頼の成否によって少なからず大規模作戦に影響が出ることでしょう。必ず、成功させなければなりませんね」
 大局を見据えて言うのは天上院・ロンド(ga0185)だ。彼の脳裏には北米の戦略図が刻まれていた。
「Assault1、月影、OK。ええ‥‥必ず、成功させましょう」
 ベル(ga0924)は密かな決意を秘めて頷いた。彼にはより差し迫った理由があったからだ。というのもこの眼下の大地に展開している地上部隊には他ならぬ彼の友人達が参加していたのだ。
(「‥‥地上の仲間達に手出しはさせません」)
 特に借りを返したい女も地上にいる。一度助けられた相手だ、彼女の為にもやらせる訳にはいかない。
「Charge2、RC、OK、および各機へ、地上軍の突撃を確認」
 周囲に神経を張り詰めさせていたランドルフ・カーター(ga3888)が無線を傍受しレーダーを確認して告げる。
 それを受けて漸が言った。
「Charge1、了解。航空部隊各機に通達、これより迎撃を開始する。この大空の覇者は誰なのか、異星人どもに示してやれ。行くぞ!」
 その声に一同は答えエンジンをフルスロットルに入れる。SES機関が唸りをあげ轟音をまき散らして八機のKVが加速してゆく。景色は矢のように流れゆき、やがて相対距離1km程度でレーダーに断続的な反応が現れた。ヘルメットワームだ。六機。
(「ヘルメットワームとKVのキルレシオは未改造のもので1:3‥‥それに対しKV8機‥‥改造されているとはいえ正直かなり厳しいが‥‥)」
 一刹那の間に天上院の脳裏にそんな考えが浮かぶ、だがしかし、やるしかない。
 空の彼方に現れた六機のヘルメットワームは横一列の編隊で向かってくる。傭兵達もまた横一列で飛んだ。初撃で集中攻撃を加える為だ。
 しかし音速戦闘で互いに接近する場合、目標を見てから攻撃を設定し、各員それに合わせる等という事は難しかったので、ランドルフ・カーターの提案に従い各員目標をある程度決めていた。
 皇を中心とする一隊は「中央の向かって右のワーム」で天上院を中心とする一隊は「中央の向かって左のワーム」だ。
 八機のKVと六機のヘルメットワームが互いに横一線に並んで向かい合い真っ向から激突する。
「先手必勝!」
 皇が叫んだ。
 相対距離600ほどで皇機と天上院機がSRD−02を二発撃った。回転するライフル弾が音速を超えて飛び、皇機の一発が命中する。
 皇機は距離を取るために上昇、旋回に移り、残りの七機はそのまま前進する。両軍がさらに接近し400まで距離を詰めたところで、各自一斉に火器を解き放った。
「デストロイ1、フォックス2!」
「Batter2、エンゲージあーんどFOX−2! ってな」
「ありったけのミサイル、たっぷりご馳走してやるぜ!」
「放電装置を持ってるのは私だけだが、一機でもGストリーム・アタック発動!」
 KVから放たれる雷撃が宙を焼き、弾丸が空を切り裂き、膨大な数のミサイルが、まさに嵐の如く飛ぶ。
 ヘルメットワームから淡紅色光線砲と紫色光線砲が猛射され文字通り空間を焼き尽くす。
 両軍まったく同じ思想で火線を集中しての攻撃を仕掛けた。違いがあるとすれば傭兵隊は4:4で分かれたのに対し、バグア側は3:3だったというだけだ。
 傭兵隊の攻撃の基点となった天上院機と列の中央に位置する吾妻機にそれぞれ三条のプロトン砲と六条のフェザー砲が集中して飛ぶ。
 猛烈な光の嵐が爆裂し天上院機と吾妻機を襲う。両機、全弾九発被弾し、光の中でS−01とR−01の装甲が次々に吹き飛んでゆく。激震がコックピットを襲い、赤いランプがけたたましい音をあげ一気に全て点灯する。黒い噴煙が機体のあちこちから噴き上がり、速度が見る見るうちに落ちてゆく。
 吾妻は機体を立て直そうと操縦桿やレバーを必死に操作し、なんとか墜落を避けようとするが駄目だ。まったく機体が言うことを聞かない。
 六機相手に集中して突っ込めば誰かは落ちる。
 男は嘆息すると、
「ついてないねぇ、こりゃ幸運の女神様に嫌われたかな」
 あくまで飄々とした口調で言って緊急脱出装置のボタンに拳を叩きつけた。
 一方の天上院機もあっという間に速度と高度が落ちていっていた。このままでは態勢を立て直してもヘルメットワームにトドメを刺されるのが目に見えている。
 天上院はイチかバチかブーストのスイッチを入れる。エンジンから焔が噴き上がり機体が急加速する。ダメージの為機体が分解する恐れもあったが、なんとか大丈夫なようだ。速力を取り戻すと、機首をあげ煙を引きながら高空へと逃れてゆく。
 かろうじて飛んでいたが未だ落ちていないのが不思議なくらい深刻なダメージだった。天上院機は後二発程度なら攻撃に耐えられるだろうが、三発目を貰ったら確実に落ちるだろう。
「こちらDestroy1、損傷率が八割を超えました。申し訳ないが後方へ退がります」
 天上院は額から血を流しつつ悔しそうに呟き、やむなく離脱を計った。万一に備えて撤退はしないが、安全圏まで後退してゆく。

●交差の瞬間
 両軍の火力が一斉に炸裂した時、何が起こっていたのだろうか? 各機の動きを見てみよう。
 まず天上院が狙いを定めた方のヘルメットワーム。全機の相対距離は400。
 一番手は真田機だ。UK−10AAMが三発発射された。全弾命中。痛烈な打撃を与える。
 続いてはベル機のスナイパーライフルR。発射、リロード、発射。二発発射された。命中無し。
 三番手、バーナード機がアグレッシヴ・ファングを発動させ、ミサイルが発射されないことに気づく。換装ミスか。緊急発進の為、整備士もチェックを洩らしてしまっていた。
 ラスト、天上院機がブレス・ノウを発動させHMを三発発射した。全弾命中。大打撃を与える。

 ヘルメットワームは無数のミサイルの爆発に巻き込まれ、爆散した。

 続いて皇機が狙いを定めた方のヘルメットワーム。相対距離は皇600、他400だ。
 一番手は漸機だ。UK−10AAMが三発発射された。二発命中。かなりの打撃を与える。
 続いて、ランドルフ機がブースト空戦スタビライザーを発動させ、試作型G放電装置で四回攻撃。全弾命中。かなりの打撃を与える。
 三番手、吾妻機からHMが三発発射された。三発命中。痛烈な打撃を与える。
 ラスト皇機。SRD−02をリロード、発射、リロード。一発放たれ命中無し。

 電撃の嵐とミサイルの爆発に呑み込まれ、ヘルメットワームは爆散した。

●乱戦
 各機複雑な戦闘機動をとり六機のKVと四機のヘルメットワームが螺旋の機動に入り乱れる。
 背後の取り合いで分があるのはやはり慣性制御の能力を持つヘルメットワームだ。四機が連動し集中して一機を狙う。
 最初に狙われたのは飛び道具がない事に気づいて混乱中のバーナード機だった。だが混乱の中にあっても敵機に囲まれないよう細心の注意を払っていた彼は素早く反応し、間合いを詰められるよりも前に機体を翻し死地からの脱出を図る。しかしヘルメットワームも逃がすまいと動く、逃れられるかどうか微妙なところだ。
 その間に漸機とランドルフ機は二機編隊を構成して敵に向かう。真田と皇は相方が既に無く単機だ。真田機が中距離からSRRを二発放ち二発当てる。皇もまた遠距離からSRD‐02を発砲するが、しかし距離がある為、なかなか当たらない。
 ベルは追い回されるバーナード機を救援する為、敢然とヘルメットワームに立ち向かう。G−43の高い運動性で旋回するとヘルメットワームの一体に肉薄し高分子レーザーを猛射して大きな打撃を与えた。
 だがベル機に攻撃を受けているヘルメットワーム以外の三体が慣性制御で翻り、ベル機を狙う。プロトン砲とフェザー砲が嵐のごとく飛んだ。
 ベルは冷静に対処しブーストをかけて避けようと試みる。その甲斐あって何割かは避けたが、近距離からでは最善を尽くしてもベル機の回避性能では全てを避けきれない。G−43は装甲が低い。一発が致命打になる。合計六本の荒れ狂う光の帯がベル機の装甲を吹き飛ばした。
「‥‥Assault1、損傷率が100%を超えました。後を、頼みます」
 爆裂する火球に包まれ黒煙を噴き上げ、ブーストの勢いもあってG‐43が流星のごとく落下してゆく。
「――ベル? ベルッ?! ベルがやられた‥‥! 俺のせいだ‥‥‥畜生っ!」
 換装ミスが尾を引いているのか、バーナードが必死に機体を旋回させながら無線に向かって絶叫する。実際のところは彼のせいではない。武器があろうがなかろうがヘルメットワームは彼を狙ったであろうから――が、戦闘中にそこまで考えが巡る筈もない。
「落ち着いて! 脱出装置を起動させた筈です。彼なら大丈夫! それより眼前に集中を!」
 ランドルフ・カーターが追いつめられる味方に声を飛ばす。
 彼自身、確信も余裕もある訳ではなかったが、年長者として取り乱す訳にはいかない。
 漸機と連携してヘルメットワームへと攻撃を加えながら唇を噛み締め、冷汗をかきながら考える。五対四、いけるか?
 真田機が旋回しベル機が攻撃を加えたヘルメットワームの後方につけるとSRRで攻撃をかけた。リロードし一発発砲、命中。皇機が間合いを詰めロケット弾ランチャーを六発放った、二発命中。
 ヘルメットワームが煙を噴き上げるが、しかしまだ落ちない。
「畜生ぉおおおおお! この攻撃を避けられるかぁっ!!」
 バーナード機は猛然と迫ると一か八かの空中可変攻撃を仕掛けた。音速戦闘においての変形攻撃は無謀に等しい。成功する確率など十二分の一程度だろう、いや、もしかしたらそれ以下かもしれない。しかし――
 バーナード機はアフターバーナーを咆哮させ加速すると、ヘルメットワームとヘッドオン。すれ違いざまに変形、アグレッシヴ・ファングを乗せてビームコーティングアックスを横薙ぎに振るう。光を纏った剛斧がヘルメットワームの装甲を突き破り、爆散させた。
 ――極稀に、奇蹟的に成功することもある。
 だがその代償は大きい。変形によって急減速し、さらに爆風に巻き込まれ、大きく速度を落としたバーナード機には再び航空形体に変形すれども戦闘を行う為に十分な速力が残されていなかった。
 失速しているところを三機のヘルメットワームに集中攻撃をかけられ、爆光に包まれ墜落してゆく。
「バーナード!」
「無茶しやがって‥‥!」
 四機のKVが旋回し、三機のヘルメットワームが飛び、蛇が絡み合うが如く軌跡を残す。
「だがこれで4:3‥‥押し返すぞ!」
 漸機が強烈なGに逆らいながらヘルメットワームを追い回しガトリング砲を猛射する。ランドルフがそれに合わせてレーザー砲を九連射した。
 三条のレーザーと百数十発の弾丸の直撃を受けてヘルメットワームは爆発を起こし、黒煙をあげて墜落してゆく。
 ランドルフ機の後背に二機のヘルメットワームが回り込み、六条の光線を浴びせる。激震がコックピットを襲い、アラームがけたたましく鳴る。損傷率61%。
(「駄目か‥‥行けるか‥‥私はまだ、飛べるのか?」)
 もうワンセット喰らったら終わりであるが、ランドルフは跳ね回る心臓を抑えつつ出来うる限り冷静に思考を試みる。
 その結論――行ける。
 初老の男は戦闘を続行した。
「やらせないわよ!」
 皇機が接近しロケット弾を連射した。六発のロケッド弾が突き刺さり猛烈な爆圧がヘルメットワームの装甲を穿つ。
「撃ち落とす‥‥!」
 真田機が中距離からミサイルを三連射し、それの直撃を受けてヘルメットワームが沈む。
 漸機がガトリンクをリロードしまた弾丸の嵐を放つ。ヘルメットワームから三条の光線砲が飛びランドルフ機を直撃する。
 赤いランプが喧しいが、損傷率92%、まだ堕ちてはいない。
 ランドルフはヘルメットワームを引き剥がせなかったが、残りの三機が猛攻撃を加えその円盤兵器を大地に叩き落とした。

●結果
 基地のベッドには怪我人が横たわり、整備場では破壊されたKV達を修理工達が必死に修理している。
「また派手にやったもんだなオイ」
 傭兵達の中には戦闘前に被害を予想している者もいたが、まさかここまでの事態になるとは考えていなかった者もまたいるようだった。
「まぁ、同等の射程の相手に横並びで真っ向から突撃ってのは、お互いノーガードで全力攻撃しあうようなもんだからなぁ」
 被害もでかくなるもんだと士官は言った。
「しかし頭数はこっちの方が多かったんだから、これで正解だったのかもな。まぁ損害は大きかったが、敵も全て撃滅する事が出来た。お疲れさん。地上の敵軍も全滅したそうだから、安心して寝てな」
 士官はそう言って笑ってみせたのだった。