タイトル:空に花を、地獄に風をマスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/03/27 18:22

●オープニング本文


「なんていうか最近、ハード過ぎない?」
 土塁に背を預け、銃を抱くようにして空を見上げ、戦友が言った。
「血がぶしゅーだとか、内臓がぐしゃっだとか、突き刺して捻って抉り抜くだとか、荒事ばっかりでもー、心が荒んでいくのが解るわけー」
 轟く爆音と銃声の中、彼女は虚ろな眼をして嘆息した。
「こうさぁ、偶には心温まる話しが聞きたい。楽しい歌を歌いたい。希望と笑いが欲しいのよ」
「笑いとかってお金みたいなものだと思う」
 私は超機械を手に土塁の陰に伏せながら言った。
「お金?」
「ある所には集まっていくけど、無いところからは逃げていく」
「嫌な法則」
 ひゅー、ひゅるるる、ひゅー、ひゅるるる、風の鳴く音が聞こえた。
 次の瞬間、私は宙を舞っていた。世界が回転し、天と地が激しく入れ替わる。爆音が鼓膜を突き破り、熱波が肌を焼いてゆく。どうやら砲弾が炸裂したらしい。
 地面に叩きつけられた。
 焦げくさい血溜まりの中、かすむ目を開くと、眼の前に千切れた戦友の首が転がっていた。
 ‥‥ああ、ここはどこだろう。もしも地獄があるというのなら、それは現世だろうか。
 きっとここは地獄の三丁目、天国にもっとも遠く、もっとも近い場所。

●かくて依頼
「――依頼です」
 まだ若いオペレーターが言った。
「歌って踊って戦えるエンターティナーを募集中だそうです。依頼主はUPC。場所は中国河南の激戦区。長引く戦いに兵士達の士気低下が著しく、士気の向上を計って欲しいとの事です。この場合は要するに、愉しみを提供して元気づけてやってくださいという事ですね。
 ステージがある場所は最前線の陣地よりはかなり後方にあり、休暇を与えられた兵士達がたむろっている場所です。襲撃を受ける心配は、絶対とは言い切れませんが無いでしょう。しかし危険地帯には変わりありませんので、通常の歌手などにはなかなか頼みにくく、こちらに依頼が回ってきたという事です。地獄の底に希望の風を吹き込んであげてください。例え幻想であったとしても、時としてそれは力となります」

●参加者一覧

稲葉 徹二(ga0163
17歳・♂・FT
赤霧・連(ga0668
21歳・♀・SN
皇 千糸(ga0843
20歳・♀・JG
石橋 楽子(ga5219
38歳・♀・BM
阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
リラース(ga5999
28歳・♂・FT
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
ヴァシュカ(ga7064
20歳・♀・EL
阿木 慧斗(ga7542
14歳・♂・ST
聖・綾乃(ga7770
16歳・♀・EL

●リプレイ本文

 中国が河南にあるとある街、十人の傭兵がステージに集まっていた。
「音の響きが違うわね。もう少し、こう‥‥」
 皇 千糸(ga0843)がブルースハープを手に音を合わせながら言う。
「生憎とセンスに自信はありませんので練習積むしか! もう一度宜しく!」
 稲葉 徹二(ga0163)も最後の調整に余念がない。バンド演奏時の彼の担当はドラムだ。
「こんな時だからこそ『楽しい』を忘れてはいけません。笑顔でいきましょう」
 と赤霧・連(ga0668)。
「了解であります!」
 初めはバラバラだった音も、回を重ねるごとに段々と音があってゆく。それぞれの特色を織り交ぜて一つの共鳴に。
「ん‥‥良いステージになりそうね」
 ハーモニクスに耳を傾けながら皇はそう呟いた。

 やがて日は落ち、人が集まり始める。
 野外に建てられたその会場には五千人もの観客が押し寄せていた。
「今回は可愛い子達が揃ったから、腕のふるい甲斐があったわぁ」
 舞台の裏、メイクを担当した石橋 楽子(ga5219)が言う。一同はそれぞれステージ用の衣装に着替えていた。
 独特の緊張感が漂う、最後のミーティング時、赤霧は手を真っ直ぐに夜空へと伸ばした。
「それ、なんですか?」
 聖・綾乃(ga7770)が小首を傾げて問いかける。
「パワーを集めているのですよ」
 笑顔を見せて赤霧は言った。
「なるほど、願かけみたいなものね」
 ふふと笑って石橋。
「皆さん、準備はよろしいですか! あと五分で開幕です!」
 担当の兵士から声が飛ぶ。一同は視線を合わせると、一つ頷いた。
「OK、では、行きましょう♪」
 親指を上げて赤霧が言った。


「えー、本日はお忙しい中、スカイフラワーのステージにお集りいただき誠に有難うございます! 今日の司会進行は僕、ケイです。よろしく!」
 夜空のステージにスポットライトを浴びて、ネコミミ・シッポ姿の少年が五千の観客の前に現れた。阿木 慧斗(ga7542)だ。大きく「司会」と書かれた腕章を左腕につけている。
 笑顔をふりまきながら、はきはきとした声で喋り司会を続ける。ステージの上に広がる巨大なスクリーンにはその様子が映し出されていた。
「メンバー一同、この日の為に調整を積み重ねてきました。最高の仕上がりになったと自負していますっ! スカイフラワーが織り成す幻想の舞台、どうか今宵は酔いしれていってください!」
 ステージの上から光が消えた。辺りは暗闇に包まれる。皇を中心としたスタッフが照明を操作していた。再び阿木の声が響き渡る。
「それでは早速、いってみましょう! 先陣をきるのは阿野次 のもじ(ga5480)! この腕、軽んじる輩は大統領だってぶん殴ってみせる! 我等が清純派殴り系アイドルだ! 戦場に咲く可憐な花、ここに推参! デンマークからやってきたギターの魔術師アンドレアス・ラーセン(ga6523)の熱いビートに乗せて飛翔します! 空に花を、地獄に風を――見渡す限りに微笑みを! 阿野次のもじで竜の舞ッ!!」
 阿木の声の残響が消えた次の瞬間、暗闇の中にディストーションの効いたギターが鳴り響く。
 伝統的な京劇のそれを基にしつつもその魂は骨太のヘヴィメタルのそれ、重厚感溢れるサウンドが聴衆の耳を打つ。
 闇の舞台に天空より光の柱が伸び、竜の頭が浮かび上がった。竜の傍らに立つのは一人の少女。盛大にフリルをあしらった衣装に身を包み竜と共に軽やかに舞った。
 炸裂する銅鑼の音と共に覚醒し翡翠色のオーラが溢れさせ、残光を引いて観客の視線を一つに集める。
 独特の張りつめた空気の中、阿野次はポーズを決めて舞いを終えると、マイクを手に持って言った。
「皆、今日は集まってくれて有難う〜」
 観客へとむけて微笑みと共に手をふる。
「私は阿野次のもじ。気軽にいっちゃんって呼んでね☆」
 マイクを観客の方へと差し出して煽る。しばらくの間の後、半数ほどから波のような声が返ってきた。
「――むむ、声が小さい、ハイ」
 先ほどよりは大きな返事がかえってきた。まぁ相手は軍人だし出だしはこんなものだろう。
「でばでば最初の歌は私のオリジナル曲になります。曲名は『ICHAN☆JUMP』聞いてくださいねっ」
 軽快な曲が流れだし、少女はそれに合わせて弾むように歌う。

「情熱もやせ☆少年少女たち。
 ためらい、瞬KI。迷わずとびこんで
 見えないハードル 飛び越そう

 伸ばしたその手に星掴め。どんな願いも手を伸ばさなければ届かない
 挫けそうなときは(ダッシュ!)

 ミラクルが来る前に駆け出せば追い風におされてカッコヨク跳べる
 目指せICHAN、頑張れ一番
 大事なことはすぐ目の前〜☆」

 阿野次は歌の最後に合わせて元気一杯にジャンプした。暗転。
 観客席から拍手が飛ぶ、徐々に舞台が温まってきた。
「有難うござましたー!」
 暗闇の中、阿木が司会を進行させる。
「続きましては、ヴァシュカ(ga7064)! 銀の妖精による電子ピアノの弾き語り! 其の心に想いが届くよう、心を込めて奏でます! 煌きの調べに乗せて、希望の種を撒きましょう――どうぞ!」
 再び舞台の中央にスポットライトが当たる。電子ピアノの前についた少女はヘッドマイクを用いて言う。
「こんばんわ皆さん、この旋律で皆の心に少しでも風が吹き込んだら嬉しいです」
 挨拶を終えると少女は明るい声音で歌い始める。

「貴方の笑顔は、
 誰かの心を暖めた事でしょう。

 その温まった心で自然と出た笑顔は、
 違う誰かの心を暖めるでしょう。

 辛い時に支えてくれたのは、
 いつも誰かの優しい励ましの言葉。
 だから私は貴方に言葉を贈りたい。

 旋律に言葉をのせて。
 辛い時こそ心の中に、
 歌を鳴り響かせて、
 頑張って乗り越えて欲しい」

 溢れ出る思いを音に乗せて、数曲を会場に響かせると、ヴァシュカは再びマイクに向かって言った。
「次が私の最後の曲です。この曲には歌詞がありません。この曲を聴いて心に浮かんだ言葉があればそれが歌詞です。
 貴方だけの‥‥『唄』この曲を此処に居る皆に捧げます――では、行きます『戦場の夜想曲』」 
 少女は鍵盤の上に指を躍らせた。明るく輝くノクターン。戦場に生きる者達の慰めとなるように。辛い現実を前にしても希望を忘れる事がないように。血臭を吹き払う西風となるように。祈りを込めて彼女は弾いた。
 やがて曲が終わり、暗転。拍手が会場に溢れた。
「ご静聴有難うございましたー!」
 再び阿木の声が闇に響き渡る。
「三番手はフランス育ちのバイオリニスト、 リラース(ga5999)! 艶やかなクラシックの音色と共に人生の喜びを歌います。それはきっと戦士達の応援歌! 心震わせる愉快な曲をお楽しみください、どうぞ!」
 ステージに再びスポットが当たる。ヘッドマイクをつけフォーマルなスーツで身を固めた男は軽く会釈すると言った。
「君たちはまた戦にいくさ。でも今夜だけは、愉しんでくれ」
 そういってバイオリンを携え、弦をひく。軽快なメロディ、思わずステップを踏みたくなるようなケルト風の曲だ。
 リラースは軽やかに舞いつつ歌う。

「明日を守るために
 今を生きよう
 憂いを忘れて
 エンジョイ! ザ
 オーディエンス!

 寂しいときも
 死にたいときも
 救われなくても
 全部ダメでも
 そういう時もあると割り切り

 愉しもう
 小さい事に
 つっかからずに
 適当だっていいじゃない
 どんなことでも
 なんでもいいさ
 人間なんだ、適度に息
 抜き
 寝つつ休みつつ
 のんびり行こうじゃないか

 張り切らずに
 引き攣らずに
 不満を漏らして
 へらへら笑って
 ほっと一息

 悲しい事も
 きっと忘れる
 苦しい事も、なんでも
 結構! だって
 今夜はカーニバル!」

 男は軽快に歌う。

「ラララ
 利得になんか囚われず〜、
 ルックスなんか気にーせーず〜
 連敗だらけでいいじゃない〜
 六腑が無事ならさ!

 周りなんて気にせず〜
 身分なんて気にせず〜
 難しい事も気にせず〜
 面倒な事も気にせず〜
 問題なんてありゃしない!

 だって今夜はカーニバル!

 ワイン
 を飲もう! とびっきりの! いいワイ
 ン!

 やなこと忘れて
 いいこと考え
 ゆっくり進もう! なにも
 得なくて
 良いじゃない!

 ラララ
 利得になんか囚われず〜、
 ルックスなんか気にーせーず〜
 連敗だらけでいいじゃない〜
 六腑が無事ならさ!

 周りなんて気にせず〜
 身分なんて気にせず〜
 難しい事も気にせず〜
 面倒な事も気にせず〜
 問題なんてありゃしない!

 だって今夜はカーニバル!」

 溢れる歓声の中、男は声を張り上げる。
「センキュー!」
 ぱっと光が消え、暗転。
「有難うござましたー! 続きましては曲は一休み。稲葉 徹二さんによる講談です」
 しばらくの間の後、ぱっとステージにスポットが当たり、座布団の上に座りお辞儀している少年の姿が浮かび上がる。着物、扇子、ベーシックな講談スタイルだ。
「どーも、どーも、御紹介いただきました稲葉徹二であります。冬の寒さも薄れ、春の陽気うららかな今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか」
 太鼓の音と共に挨拶をする。微妙に喉が渇いたが、あくまで笑顔で言う。
「本日は自分の方は講談をさせていただきます。曲の狭間に戦場における小噺、休憩がてらご静聴いただけましたら、幸いであります」
 稲葉は卓を扇子で一つ叩くと、講釈を切りだす、
「さて! 今は昔――といっても、さほど昔じゃありません。何故かって? そりゃ、あんまり昔の事を話しても歴史の授業になっちまうでしょう? ここまで来て勉強するってほど皆さん勤勉ではないと自分は信じております。休憩といっても爆睡されちゃあ困りますからねぇ」
 は、は、はと笑いながら稲葉。ぽん、と卓を一つ叩く。
「時を遡るは数か月前、ULTの傭兵達が巻き込まれたる幻想怪奇の物語。現実は時として伝奇さえも凌ぐ摩訶不思議が起こるもの。舞台となるは北米北部、敵は海岸沿いに現れたる巨大な影、すなわち体長十mを越える化物なり。かの化物によって駐屯部隊が壊滅したという」
 稲葉は朗々と詠うように語りつつ卓をぽぽんと叩く、
「一報を受け、現場に急行するは八人の傭兵、皆々百戦錬磨のつわものなり。見敵必殺の意気も高くに現場の司令官に問う。敵は何者か! 司令官言葉を濁し、青き色の瞳をそらす、や、や、や、これは相当の強敵か。されども傭兵、敵が強大であろうと怯みはせず。気勢高くして司令官に詰め寄り、正体を問う。司令官、重々しく口を開きて言った――敵はペンギンなり」
 とそんな調子で軽快に稲葉は語る。LHの依頼報告から特に楽しげな話を厳選し、さらに面白おかしく脚色してゆく。爆笑とまではいかぬまでも、忍び笑いのようなものが観客席に広がってゆく。
「――と、まぁこんなところで自分の方はお開き。引き続き演奏の方をお楽しみください」
 稲葉が礼をし、暗転。拍手の中、恒例の阿木の声が響き渡る。
「有難うございましたー! 続いては先の竜の舞でもハイな演奏をみせてくれたギタリスト・アンドレアスによるソロ演奏! ナンバーは『EAST WIND』!」
 スポットライトの中に立つのは黄金の長髪を持つ長身の男。その傍らに伴奏として聖が立った。
 尖ったフォルムの変形ギターより花火が炸裂した。観客が目を剥くと同時に爆音が鳴り響く。疾走感溢れるハードロックだ。
 アンドレアスのソロに合わせ聖がザクザクとリフを刻んで裏打ちする。
 事前に中国音楽を研究して書かれたその曲は、兵士達が何処かで聞いたような特徴的なフレーズが盛り込まれている。それは自然に兵士達の耳に溶け込み、徐々に徐々に会場の熱を加速させてゆく。
 ギターを振り回して曲弾きし派手なパフォーマンスを交える。皇達が操る色鮮やかなライトがそれをひき立てた。アンドレアスはHRから、王道のロックンロールへと繋ぎ、さらにジャズ風、バラードへと転調を重ねて繋いでゆく。
 バラードには賛美歌の『Deep River』のフレーズを使用し、故郷を離れ戦う兵士達に向けて荘厳な祈りを捧げた。
 その瞬間、突如として舞台の光量が増した。背後の幕が上がり、今まで隠されていた舞台の奥が現れる。そこにはメンバー全員がバンドの態をもって楽器を携えていた。
 バラードは終了したがギターの音色は鳴りやまない。メドレーのように次の曲へと繋がる。
「続いては『スカイフラワー』全員によるバンド演奏!」
 会場の熱気に押し負けぬよう阿木が声を張り上げる。
「ボーカル、阿野次! 石橋!
 ギター、聖! アンドレアス!
 ベース、赤霧!
 ピアノ、ヴァシュカ!
 トランペット、リラース!
 ハーモニカ、皇!
 ドラム、稲葉!」
 阿木の紹介と共に各員にスポットライトが当てられてゆく、
「スカイフワラーによる一曲目は、聖綾乃作詞作曲『君想い〜キボウのツバサ〜』だ! 皆、こころして聞いてくれよっ! それではどうぞ!」
 阿木の言葉が終了すると同時にボーカルの二人が声を合わせ、口を開いた。

「空を見上げる君 何を見てる?
 掌(て)を見下ろす君 何を想う?

 傷付き疲れた 精神(こころ)と身体
 飛ぶ事も忘れ 力を失くした翼

 思い出して それは本当の君じゃない

 目に映る全ての物が 希望の光 放っていた
 描いた夢を未来を 疑う事すら しないでいた

 僕はそんな君を 知っているよ」

 曲はさらに続いてゆく。
「さぁ、名残惜しいが、これが最後のナンバーだ。ヴァシュカ作詞作曲『スカイフラワー』!」
 ボーカルの二人が歌声を共鳴させる。石橋はリズムを刻みながらタンバリンを叩き阿野次の歌声にコーラスを重ねる。時に楽しく、時に切なく甘く、少女には出せない声で演奏を彩る。ブルースハープを吹く皇は伸びやかに、強弱をつけて吹き、調和の中に華を添えた。
 表向きは笑顔だが必死で演奏している稲葉と共に、曲の根底を担うベースの赤霧はこちらも全霊を集中させてリズムを刻んでいた。皆の心が一つになるよう、魂を奮い立たせるよう、情熱を込めて重音を轟かせる。会場にいる一人一人にこの胸の熱さが届くよう、流れる汗を振り払ってリズムを刻む。
「ここではない何処かで私も共に戦い続けます。約束です、けして忘れません」
 そんな想いを音に乗せて少女はベースを奏でる。
 全員の想いはただ一つ、希望を吹き込む事。
 地獄のような現実に、希望の風を吹き込む事。明日に負けぬ心を生みだす事。
 彼等の魂は確かにその時共鳴し、一つの音をこの地上に響き渡らせていた。


 どんな熱い夜にも終わりはくる。
 津波のように轟く五千の歓声の中、阿木は言葉と共に幕を降ろした。
「戦場に生きる者同士、僕らは再び出会う事でしょう。そんな時に思い出して下さい、共に歌った事を。See you‥‥またいつか!」
 きっと彼等は忘れないだろう。
 今日という夜を。自分の為に祈ってくれる者達がいる事を。
 河南の地にまた一つ、伝説が生まれる事になる。