タイトル:河童を川流せマスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/09 20:07

●オープニング本文


「私が歌部星明である!」
 黒狩衣に身を包んだ男が村の役場に馬鹿笑いと共に現れた。陰陽師の歌部星明(gz0051)だ。
「へへー、あんたが高名な陰陽師だっていう歌部先生だきゃあ」
 とある田舎の村の村長はそういって珍妙な生物でも見るかのように陰陽師を眺めた。
「まま、席についてくだせぇ」
 大分ガタのきている木造りのテーブルにつくオッサンとジーサン。
「して村長、今回私を呼ばれたのはいかなる用件ですかな?」
「はぁ実はだすな、村の外れを流れる川に河童が出るんだす」
 ずずっとお茶をすすりつつ村長は言った。
「‥‥河童、ですか」
 同じくずずーっと茶をすすりつつ歌部星明。
「河童、というとあのキュウリが大好きだという?」
「へぇ、その河童だす。頭に皿が乗っとるだす。人を水の中さひきづりこんで溺死させやがるだす。釣り人がもう五人もやられとるだすよ」
「五人も、ですか」
「このままじゃ釣りさできねぇってんで皆困ってるでやす。先生、妖怪退治さいっちょやってみてくれねぇだすか」
「ふむ‥‥」
 歌部星明は顎に手をやりしばし考えるようにしてから言った。
「解りました。ただし引き受けるからには条件があります。こたびの仕事は恐らく大仕事、ULTから幾人かの人員を雇わせていただきたい」
「ULTからだすか‥‥」
 村長はうーんとしばらく唸っていたが、やがて膝をぽんと叩くと言った。
「背に腹はかえられねぇ、承知しただよ。先生、よろしく頼んます」

●参加者一覧

柚井 ソラ(ga0187
18歳・♂・JG
伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
鯨井昼寝(ga0488
23歳・♀・PN
高村・綺羅(ga2052
18歳・♀・GP
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
シア・エルミナール(ga2453
19歳・♀・SN
蓮沼千影(ga4090
28歳・♂・FT
藤宮紅緒(ga5157
21歳・♀・EL

●リプレイ本文

 とある片田舎の村に十人の傭兵と一人の胡散臭い男が終結していた。
「私が歌部星明である!」
 集まった一同の前でぬぁっはっはっはと馬鹿笑いする狩衣姿の男が一人。歌部星明(gz0051)だ。
「歌部さん、またまたこんにちはです」
 狩衣姿の少年、柚井 ソラ(ga0187)がほんわかと笑いつつ言う。同じ衣装でも醸し出す雰囲気がエライ差だ。
「うむ、柚井殿、またまたこんにちはである!」
 そして今回も狩衣姿の男がもう一人。
「はじめまして、蓮沼千影と申します。有名な陰陽師の歌部星明サンの力になれるなんて嬉しい限りっスよ! 頑張るっス!」
 にこにこと笑いつつ蓮沼千影(ga4090)、美形だ。やはり同じ衣装でも印象が以下略。
「はっはっは、これは光栄だ。よろしく頼むぞ蓮沼殿!」
「歌部さん‥‥初めまして‥妖怪退治と‥聞いて‥興味津々‥‥伝説どおり‥力強い‥かな‥?」
 途切れ途切れに話すのは幡多野 克(ga0444)だ。
「うむ、釣り人を引きづり込んでいるあたり、力が弱いということはなかろう。もっとも能力者と比較して、というレベルになると不明だが」
「戦いは常に驕る事無く‥‥冷静に全力をもって敵を殲滅する事が重要‥‥河童がどのような相手だとしても侮らずに戦わないと危険」
 ぽそりというのは高村・綺羅(ga2052)である。
「おお、実に正しい心構えである。それでこそ私も後方で安心してサボ――もとい、見守れるというもの!」
 ぬぁっはっは! と歌部星明。戦えオッサン、きっと誰かが胸中でつっこんだ。
「‥高名な陰陽師さん‥‥確かに、雅なオーラを感じます‥‥」
 藤宮紅緒(ga5157)が尊敬と奇異の眼差しを持って見やり呟いた。奇異はともかく多分色々間違ってる。
 御影・朔夜(ga0240)は陰陽師を一瞥すると、
(「キメラを退治する陰陽師・歌部星明‥‥人の手を借りなければならない辺り、それほどに力はないと見るが‥‥さて、一体どれ程やら。口が回るだけのペテンでなければ良いがな」)
 胸中で呟く。抱く印象は人それぞれのようだ。まぁ通常はこちらだろう。
 ともあれ、そんな調子で一同は自己紹介や再会の挨拶をかわすと、村を一通りまわって河童に関する情報を集めてから、退治の為の作戦を練り始めた。
「――今度は河童ですか。理解しているつもりでしたが、本当に節操がありませんね、キメラというものは」
 シア・エルミナール(ga2453)は首をひねると、
「というか、本当にキメラなのかしら?? 本物の河童‥‥のわけはないでしょうけど」
「うむー‥‥実際に見てみなければなんとも言えぬが‥‥」
 顎をさすりつつ歌部星明。それに鯨井昼寝(ga0488)が続ける。
「でも、キメラであれ妖怪であれ、釣り人を既に5名溺死させているというのは看過できない事実。これ以上の被害を防ぐためにも、確実に倒しておきたいわ」
 ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)は鯨井の言葉に頷くと、軽く笑い、
「そうだな。それにポイントに陣取られて魚を食い尽くされては、皆が釣りを楽しめない。川の主を我々の手で釣り上げてやろう」
 と冗談めかして言った。
「しかし河童か‥‥確か、仏前に備えた飯を食べた後に戦えば負けないとか、そんな話をジイちゃんから聞いたなぁ。ま、関係ないだろうけど、ゲンを担いでおくのもいいかもしれない。ご利益くらいはあるかもよ」
 という訳で、と呟きつつ伊佐美 希明(ga0214)が取り出したのはパックに入った寿司セットだった。お値段お手頃で微妙に美味しい河童巻きである。
「皆も食べる?」
 カッパ巻きをシャクシャクやりつつ伊佐美。仏前に供えてきたらしい。一同は礼を言って受け取ると、カッパ巻きを食べつつ作戦会議を続ける。
「河童‥‥基本的に頭に皿、背に甲羅、口が嘴でしたか。胡瓜が好物で鹿の角とか鉄が苦手なはずですよね」
 ぽりぽりと河童巻きを食べつつ柚井。幽霊は苦手だが妖怪は大好きなので知っているようだ。微妙な機微である。
 伊佐美は柚井の言葉に頷くと、
「それと、河童は相撲が得意っていうね。力だけはありそうだけど‥‥そんなんに水中に引き込まれたら、どうなるのやら」
 それに鯨井が言う。
「私達のSES武器は水中だと力を発揮しないわ。厳しい事になるでしょうね」
「となると、陸上に引き上げるのが一番でしょうか。『陸に上がった河童』という諺もありますし」
 うーんと小首を傾げつつ柚井。
「そうですね、自分の有利な場所に相手を誘いこむのは実戦の基本。でも相手もそう考えてる筈です‥‥上手く釣れるかしら」
 というのはシア・エルミナール、良い視点だ。
「方針は間違っていないだろう。後はどう実行するかだ」
 既視感を覚えつつ御影が言う。
「では、とりあえず‥‥カッパを陸上に、誘いだす方向で‥‥良いの、かな?」
 克の言葉に一同は頷く。かくて作戦の細部が詰められていった。

●平成妖怪バスターズ
 一同は河童が出るというポイントへ村の釣り人の案内で向かう。
「流石に水は綺麗だね。まだ泳ぐには早いけど、気持ち良さそう。河童キメラが棲むのも、分かる気がするよ‥‥オジサン、ここの川では何が釣れるの?」
 春の日差しを受けて流れる川の水をすくって伊佐美。釣り人曰く今は山女が良く釣れるらしい。
 釣り人は帰り、一同はまず川辺に河童の好物といわれるキュウリを置いた。
「‥‥これで出てきてくれたら恩の字ですね」
 餌を置くと皆が隠れている茂みの中へと柚井も潜伏する。
 待つことしばし、河童は現れない。
「‥か、カッパも式神の一種だと聞いた事があるのですが‥‥歌部さんは召喚なども出来るのですか‥‥?」
 茂みの中、ひそひそと紅緒が陰陽師に向かって話しかけた。
「うむ、式神は召喚できぬが、人類の守護神を召喚することは出来るぞ」
「ほ、本当ですか‥‥っ?」
「本当だとも、その方法はだな。ULTに依頼を出すのだ」
 ぬあっはっはと小声で笑う星明。
「‥‥それって、陰陽に関係あるのでしょうか‥‥?」
 小首を傾げる紅緒だった。
 さらに待つことしばし、しかし河童は現れない。一同は作戦を次の段階へ移らせることにした。
 蓮沼千影が釣り人の格好に扮し、腰に命綱のロープを巻いて川辺へと向かう。青年は釣り竿をふるって川の中へと糸を垂らした。
 待つことしばし。
 待つことしばし。
 待つことしばし。
 一同は春の陽気に眠くなってきた。
 しかし河童は現れない。どうにも上手くいきそうにないので蓮沼が一同の潜む茂みへと戻ってくる。
「うーん、参ったな。本当に、河童なんているのか? と思えるくらい、気配がないぜ。平和そのものだ」
 蓮沼が川辺の様子を報告する。
「それは‥こっちからでも解る、ね‥‥」
 克が頷く。
「平和過ぎて眠くなってきたわ」
 と鯨井。
「今日は‥天気も良いからね‥‥」
 春のぽかぽかとした日差しを見上げて綺羅。
「うむぅ‥‥この辺りの釣り人は中州まで入ってゆくという。その時に河童に襲われるのではないか?」
 烏帽子を直しつつ星明。
「やっぱり川の中に入らなきゃ駄目か」
 蓮沼は命綱のロープを締めなおす。
 作戦は最終段階へと移行した。蓮沼は川の中へと入り、釣り竿を振るう。
 すると、それはすぐにやってきた。
 蓮沼の脚部を強烈な衝撃が襲う。蓮沼はバランスを崩し、飛沫をあげながら勢いよく倒れた。
 冷たい水の中で蓮沼は覚醒し目を開く、そして見た、己の脚に背後から緑色の生物がしがみついているのを。
 蓮沼は釣竿を放りだすと練力を開放して河童の腕を掴む。
 ロープが伸びきり、強烈な力が加わった。陸上から仲間達が引いているのだ。
 河童の引き込もうとする力は強かったが陸からの力の方が強い。蓮沼と河童の身が水面を突き破って宙へと飛びあがった。
「釣れたぞ!」
 ホアキン・デ・ラ・ロサが勝利の叫びをあげる。
 川辺に蓮沼と河童の身が打ちつけられる。河童は俊敏に反応し、踵を返して立ち上がり、再び川へと逃げようとしたが、その時には既に鯨井昼寝と高村綺羅のグラップラー組が瞬天速を利用して回り込んでいた。
「逃がすワケ‥‥ないでしょうがッ!」
 鯨井はシュナイザーを振りかざすと、横薙ぎに強打して河童を陸上方向へと弾き飛ばす。赤壁が展開された、キメラだ。綺羅が追撃に走りナイフで閃光の如き連撃を浴びせかける。
「俺の漫画で覚えた柔道技をとくとみよ!」
 河童が怯んだところへ蓮沼が豪力を発現させて後方から組みつく。気合の雄叫びと共に背面投げで河童を宙へと高々と放り投げた。
(「外敵なんて無い。戦う相手は常に、自分自身のイメージ‥‥!」)
 伊佐美は長弓に弾頭矢を番え宙の河童を狙い撃つ。研ぎ澄まされた一撃は河童の皿部に炸裂し爆発を巻き起こした。
「皿だけとは言わない――その身全て塵に帰してやろう」
 御影は側面に回り込むと二丁の小銃で猛攻をかけた。撒き散らされる弾丸が爆炎の中の河童に次々に叩き込まれる。
 河童は体表を焦がし鮮血を噴き出しながら地に落ちる。それでも強靭なキメラのこと川へ向かって走り出す。
「‥‥逃しません、よ」
 地に落ちた河童へと向かって柚井がアルファルで電撃を纏った矢を飛ばし、紅緒が腕に白光を輝かせてシエルクラインで弾丸をまき散らす。
 シア・エルミナールのアーチェリー・ボウから音速を超えて矢が飛びだし、河童の脚を撃ち抜いた。
「急急如律令銃剣退魔!」
 動きが止まった所へホアキンと克の刀剣が襲いかかり滅多斬りに切り刻んだ。閃光のごとき刃の嵐に河童は断末魔の叫びすらあげる間もなく解体され、地に崩れ落ちる。
「成敗‥‥完了‥‥」
 克は刀を一振りして血を払い、カシャンと音を立てて鞘に刀を納めた。
「尻子玉‥抜かれなくて‥‥良かった‥‥とか‥言ってみる‥‥」
「本当にこれで終わりか‥‥?」
 動きを止めた河童を用心深く見下ろしてホアキン。
「蓋を開けてみたら何のコトはなかったわね」
 嘆息してシュナイザーを手から外す鯨井。強敵こそ彼女の求めるものなのだが、今回の河童はその相手とはなりえなかったようだ。
「ふむ、敵は水中でこそ力を発揮するタイプであったのであろうな。陸上へと釣りあげた時点で勝敗は決していたのかもしれぬ。作戦勝ちであるな」
 がっはっはと笑いながら歌部星明。
「‥‥これは、観光客は呼べそうにないですね」
 ひょいと河童の骸をみやり眉間に皺を刻んでシア・エルミナール。彼女は河童を倒したら剥製にでもすれば村に観光客を呼べるかもしれないと考えていたが、一同の猛攻の前に報告書には記載できないくらいの状態になっている為、それは不可能な事に思われた。
 少女は嘆息すると、
「まぁ‥‥折角、手早く片付いたことですし、帰る前に釣りでもしてゆきますか?」

 かくてULTの傭兵達により河童は退治され、村は平穏を取り戻した。
 春の陽ざしに煌く川は泡沫の平和と悠久の時と共に流れゆく。この流れのゆく先は何処だろうか。
 ともあれ、それはまた別の話であり、傭兵達は軽く釣りを楽しんだ後にLHへと帰還したという。

 了