タイトル:橋陣の防衛戦マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/25 16:05

●オープニング本文


「橋が! ついに! 完成したぞ野郎どもーっ!!」
 ブロンドの女士官が橋の方へと腕を広げ声をあげた。うおー、と周囲の隊員やら工事員やらから歓声があがる。
「このインドの荒野へやってきて、苦節数ヶ月、キメラやらなんやらの妨害もアレコレあったがついにこの橋も完成の日を迎えた! これも皆、勇敢なる工事員の皆さんと隊員諸君のおかげだろうっ! オネーさんは嬉しいぞっ!!」
 どんどんぱふーと軍器? の音が鳴り響く中、工事監督のおやっさんとディアドラが、がっしと握手してぶんぶんとシェイクさせている。ノリが良いのは解るんだけど軍隊ってこういう所だったっけ? と心の片隅で思う僕はそれでももう他の隊へ転属したらやっていけそうにない山門浩志十五歳。良くも悪くもこのディアドラ小隊こと46小隊の水に馴染み過ぎた。多分、他の場所の水を飲んだら腹壊すのだろう。
 このインダス河の支流にある橋は、長さは二百メートルほどであり、幅は大型のトラックが二台並んで通れる程度だ。鋼鉄を基礎にコンクリートやらなんやらで固めて結構頑丈である。
 橋の両端、西と東には詰所が置かれ、周囲には堀がほられ土塁が盛られ張り巡らされた鉄条網が外部からの立ち入りを防ぐ形になっている。川沿いにもだ。まぁ簡単にいえば橋を中心としてちょっとした陣地になっているって訳さ。少し前に比べると随分とものものしくなった。そこに籠る僕らにとっちゃ頼もしくなったとも言えるけどね。
 この橋が完成したおかげで前線へとより素早く物資を届けられるようになる。僕等はここを離れて別の地方での戦いになるそうだ。守備には後任の部隊がつくらしい。激戦地にいくんじゃなければ良いんだけど。
「よし、ここはアレだ。橋の完成を記念して、一つパーティでも開こうじゃないかっ!」
 ディアドラがまたなんか言ってる。何かにつけてすぐ騒ぎたがるんだから、あの人の宴会好きにも困ったもんだ。
 僕がやれやれと嘆息していると、不意に隊員の一人が――ありゃアブラハム軍曹だな。機械いじりが好きな褐色のタフガイだ――血相をかえて人の輪に飛び込んで来て何やらディアドラに耳打ちした。
 金髪の女士官は空色の瞳を見開くと、表情を変える。
「皆、注目」
 ぴたりとざわめきが止んだ。
「残念ながらパーティは中止だ。ルパート監督はすぐに作業員をまとめて東から街に向かってくれ。三班はその警護につくように」
「‥‥何があったんです?」
 僕が問いかけると中尉は言った。
「防御線の一部を突破したキメラの群れが、西からこの橋を目がけて押し寄せてきている。触覚から電撃を飛ばし、口から酸を吐き出す蟻の群れだそうだ。体長は五十センチ程度、数は三十以上。分隊が二つ、全滅させられている」
 数で押してくるタイプのキメラは手強い。その中でも特に酸を吐くタイプが集団でくると不味い。キメラが吐く酸は、どんなに頑丈な防具を着込んでいても、それを無効化させてしまう。射程があまり長くないのが救いだが、敵は電撃でそれを補っているようだった。
「最低限の兵を残し、全戦力を西の陣地に移動させる。せっかく完成した橋を壊されてたまるか! 皆、なんとしても撃退するぞ!」
『おおっ!』
 周囲の隊員達から気合の声があがる。
 きっと、この場所では、これが最後の戦いだ。

●参加者一覧

幸臼・小鳥(ga0067
12歳・♀・JG
フェブ・ル・アール(ga0655
26歳・♀・FT
アッシュ・リーゲン(ga3804
28歳・♂・JG
時雨・奏(ga4779
25歳・♂・PN
ファルル・キーリア(ga4815
20歳・♀・JG
皐月・B・マイア(ga5514
20歳・♀・FC
シーヴ・王(ga5638
19歳・♀・AA
周防 誠(ga7131
28歳・♂・JG
レイアーティ(ga7618
26歳・♂・EL
ジュリエット・リーゲン(ga8384
16歳・♀・EL

●リプレイ本文

「この間のハナシな‥‥俺には訊かなきゃならない事があるんだ」
 夜の詰所、アッシュ・リーゲン(ga3804)が言った。
「俺は、数え切れない程人を殺してる‥‥戦争屋の傭兵やってたから当然な‥‥自分で選んだ道だから恥じるつもりも後悔も無い。けど胸を張って自慢出来る様な事でも無い‥‥こんな血で汚れた人間でも、まだ『拒まない』って言ってくれるなら、もう退く理由が無い。
 善悪ひっくるめた『ディアドラ・マクワリス』って人間の事をもっと知って、もっと好きになりたいと思ってる」
 詰所に静寂が落ちる。古い電灯が漏電したような音を立てていた。
「善悪‥‥‥‥血で汚れた人間‥‥私はな、軍人で中尉で、隊長だよ」
 ディアドラは自分の手を電灯にかざし目を細めた。
「血塗れだ。私は前に貴方にきっと失望すると言った。何故、そう言ったか解るか?
 私は、一隊の長だからだ。
 私が何故、非能力者で、女だてらで、中尉なんてやっていられると思う?
 隊を指揮できるからだ。
 では隊を指揮するのに必要なのはなんだ。
 昔、恋人がいた。いつも優先して損な役ばかりやらせてた。何故か、身内だからだ。でなければ隊が崩壊する。私は、故人の家族に魔女と呼ばれている」
 女の顔には表情が無かった。
「‥‥なんで、こんな所に来てしまったのか、偶にどっかで人生間違えたと思う。大学の研究室に帰りたい。あの場所に帰りたい。けどな、葬ってきたものにかけて、今更後戻りはできない。私に命を預けてくれる連中がいるんだ。放り出す訳にはいかない。私は、この戦が終わるまで戦い続ける。
 普段の言動じゃあ説得力ないかもしれんが、私は戦場の女なんだよ。良い女であるよりも、良い隊長であろうとする。恋人にするなら最悪だ。なんで皆、業火に焼かれたがるんだ? 遠巻きにしておけば焼かれぬものを」
 嘆息した。
「私はな、きっと薄情な女だ」
 女は真っ直ぐに男を見据えると言った。
「それでも良いのか?」
 問いかける。
「俺は」
 アッシュ・リーゲンはしばしの沈黙の後に口を開いた――

●橋陣の防衛戦
「くっ‥‥せっかくお酒が飲めると思ったのに、これじゃ台無しじゃない。この代償、高くつくわよ」
 南側の堀の中で黄金の髪の女が唇を噛んだ。ファルル・キーリア(ga4815)だ。まだ見ぬキメラに闘志を燃やし地平を睨む。
 一同は北側の鉄条網に穴を開け――キメラを誘導するのが狙いだ――南北西の三方に別れて守備についていた。
「蟻が三十匹は――アリガトウじゃねぇです。群がる程甘ぇモンはねぇどころか、苦ぇ思いしやがれです」
 譲り受けた十二個の手榴弾を準備しつつシーヴ・フェルセン(ga5638)が言った。
「せっかく完成した橋‥‥壊させないように‥‥しないといけませんねぇ‥‥」
 一方のこちらは北側の土塁に詰める幸臼・小鳥(ga0067)だ。
「苦労して作った橋です。そう易々と壊させはしませんよ」
 堀の中から見上げてレイアーティ(ga7618)が言う。
「そーやな、これ造るの何か月もかかっとるんやし。壊れたら大損害や」
 時雨・奏(ga4779)が頷いた。
 待つことしばし、やがて西の荒野の彼方から黒い点が砂埃を巻き上げながら出現する。
「ぞろぞろとやってきましたよ」周防 誠(ga7131)が双眼鏡を手に確認した。青年は不敵な微笑を口元にひくと「まぁ、数だけいたってしょうがないんですけどね」
 そうイヤホンマイクの無線を通し告げる。
「おーし、兵隊やくざども! 麗しの中尉殿のために、ひとつ死んでみようかー!」
 フェブ・ル・アール(ga0655)が手榴弾を手に声を張り上げた。
 情報通り西より蟻型のキメラの群れが一塊になって迫ってくる。その数三十強。大軍だ。
「ヤマト殿!」
 無線に向かって皐月・B・マイア(ga5514)が言った。
「え、なんだいっ?!」
「死んでも姉さんは守れよ! ‥‥後、死ぬなよ!」
「‥‥マイアさん、なんか言ってること矛盾してない?」
「五月蠅い! この後パーティーで幾らでも踊ったり演奏したりしてやるから!」
「ふ、そいつぁー楽しみだね、任せといて――だからそっちこそ死ぬんじゃないぜ!」
 少年は重機関砲を回し、正面、西へと砲口を向ける。
「さぁ、戦闘開始だにゃーっ!!」
 距離が百程まで詰まった時、フェブ・ル・アールが手榴弾を投擲した。
 緑色のそれはフェヴの強肩により山なりに飛び、黒蟻の群れの前で炸裂する。爆炎が巻き起こり、その先頭集団が後方へと吹き飛んだ。だが赤い障壁が展開していた。非SES兵器である手榴弾ではろくなダメージが通らない。吹き飛ばして足止めするのがせいぜいだ。
 フェブ・ル・アールは次々と手榴弾を投擲していった。敵は西から迫ってきている。北へと流さなければならない。
 しかし、蟻は北へとは進まなかった。吹き飛ばされはするが、ダメージ零のものを、敢えて進路を変えてまで避ける義務は、この距離においては、蟻には無いだろう。鉄条網は一辺が150mある、回り込むとなるとかなりの距離だし。西から迫る蟻達が、北に空いている穴に気づくだろうか? 距離的にも角度的にも気付き辛いし、わざわざそちらに回り込むような事はしないだろう。
 むしろちょっかいをかけられて蟻達の漠然とした意識がフェブに集中したようだった。殴られれば殴り返しにゆくのが本能だ。手の届きそうな場所にあり、かつ、相手の攻撃が軽い場合は特に。
 爆雷が巻き起こった。十匹近くの蟻達の触覚が一斉に明滅し、フェブに向かって電撃が放たれる。視界を真っ白に染め上げる程の無数の閃光が真っ直ぐに飛んだ。閃光は鉄条網にぶちあたり、激しく荒れ狂った。そして、そのまま地へと潜る。アースの原理だ。
 雷撃が通らないと判断した蟻達は前進を再開する。また、爆風の範囲外にいた蟻達は既に左右から回り込むように前進している。フェブはなんとか北方へと流れるように手榴弾を投げる。
 しかし狙いをつけて炸裂させた爆発は、蟻達を北の方角に吹き飛ばしはするのだが、やはりその度に敵意を瞳に燃やしフェブ目指して進んでくる。北へは、向かわない。
「‥‥ちょーと、敵さん、全部が西にあつまりつつあるにゃー」
「抑えててくださいまし応援を要請しますわ」
 ジュリエット・リーゲン(ga8384)は無線で他の班に状況を伝え、西に集結するように要請する。
 フェブは継続して手榴弾を投擲しつづけているが当然全てを抑えきれる筈もなく、爆風を抜けて十数匹の蟻が網へと接近する。その咥内から一斉に放たれた酸はまたたくまに鉄条網を溶かし、あちこちに大穴を開けた。
「折角出来上った橋だ、虫なんざに明け渡せねぇな」
 アッシュ・リーゲンが言った。
(「落ち着くのよジュリエット‥‥訓練の通りやれば良いの‥‥」)
 アッシュとジュリエットが射撃を開始し、南北のメンバーが西中央に到着する。側面後方より46小隊の面子が側面より銃弾を撃ち込み始めた。通常兵器は射程が長い。
「援軍の御到着やで!」
 西堀にやってきた時雨がアサルトライフルを構え射撃する。弾丸が勢いよく飛んだ。
「はぅ、たくさんですぅー‥‥け、計画と手順が違いますぅ。でも‥‥とりあえず‥‥射程内なのでしかけますぅっ!」
 西の土塁の陰に立った小鳥は、120センチ代の小さな身で、長大な和弓に矢を番え渾身の力で引き絞る。半身を向け、左の人差し指を伸ばし、目標を見据える。視線の先は、前進する蟻の眉間。ぎりぎりと弓身をしならせ満つる月の如く、弦を限界までひいた。
 瞬後、練力を開放し裂帛の呼気と共に解き放つ。弓身が爆ぜ、SESの矢が閃光と化して飛ぶ。鉄板すら撃ち抜く強弓が黒蟻の眉間に突き立ち、その甲殻を貫いた。
「ヤマト君、強弾撃で射撃を!」
 ファルルが無線で重機の支援を要請する。了解の報と共に弾幕の嵐が網を抜け前進しようとする蟻達の前進を一時的に押しとどめる。ファルル自身は西堀の中に立った。
「折角だから歓迎会を開いてあげるわ、もちろん地獄へのね」
 洋弓に弾頭矢を番えセットアップ、フルドロー、弦を限界まで引き絞り、強弾撃を発動させて解き放つ。命中。爆風が黒蟻を吹き飛ばし、炎に包みこんだ。
 周防もまた強弾撃を発動させドローム社製SMGを金属音をたてつつ腰溜めに構える。強烈なマズルフラッシュと共にフルオート射撃、弾幕をまき散らして蟻達を薙ぎ払う。アサルトライフルを構えレイアーティが発砲する。連続発射機能を使って速射し、弾丸を鋭く吐き出す。
 傭兵達は猛攻を加えるが、しかしそれでも蟻は三十以上居た、数が多い。反撃の電撃をまき散らし、攻撃を受けない者が、あるいは攻撃を受けながらも前進する。電撃に幾人かが打たれた。
「的が小せぇのも中々やり辛ぇモン‥‥火力で吹き飛ばすですか」
「吹き飛べ!」
 堀の中、マイアとシーヴは共にショットガンを構え、散弾をまき散らした。前進してきた大蟻達の甲殻をまとめて穿つ。
「ロックンロール! 酸‥サンダー!!」
 フェヴが刀を抜いた。紅蓮の輝きを巻き起こし、接近してきた蟻の群れへと向かって突撃する。赤い竜巻を巻き起こして蟻の群れを薙ぎ払う。
「勝負どころやな!」
 時雨もまたライフルを投げ捨てると二刀を抜き放ち堀から飛び出した。フェブの後方を守るように双剣を振るう。
 蟻達から酸が吐き出されフェヴ・ル・アールに一斉に降り注ぐ、酸を浴びた箇所から白い煙があがり、猛烈な熱さが全身を包み込んだ。
「う‥‥近すぎ‥‥ですぅ。装備変更しないとぉ‥‥わきゃ!?」
 小鳥は咄嗟に土塁に屈みこんで電撃を避ける。ショットガンに装備を変更すると蟻の群れに向かって散弾を撃ち放った。
 アッシュとジュリエットはターゲットを合わせて狙撃し、ファルル=キーリアはフォルトゥナマヨルーに切り替えて射撃する。高威力の拳銃が焔を吹いた。
「まいったね、どこを向いても的だらけだ!」
 周防は手榴弾のピンを口で引き抜くと、敵の後続へと向けて投擲した。爆風が巻き起こり蟻達が吹き飛ぶ。SMGを構えリロード、フルオート射撃。猛烈な弾幕を張る。
 後方の蟻達から周防へと雷撃の嵐が飛んだ。マイアが間に入り虚闇黒衣を発動させマントを翻す。
「無駄だ!」
 爆雷が黒い闇の中へと吸い込まれてゆく。多少衝撃がきたが軽い、余裕だ。
 レイアーティは腕を純白の光に輝かせるとフォルトゥナ・マヨルーを構え堀の中から発砲。威力を増した二連の弾丸が唸りをあげて飛び、黒蟻の眉間を貫き甲殻を吹き飛ばす。
「‥‥普段はこの火力が頼もしいんですが、こういう状況では装弾数の少なさが恨めしいですね‥‥」
 手早く装填しつつ呟く。
 弾丸と酸と雷撃が荒れ狂う戦場へとシーヴ=フェルセンは背から両手持ちの大剣を引き抜き飛びだした。酸を浴びつつも突進し、紅蓮の大剣を振り下ろす。
「頭なくなりゃ、電撃も酸も出ねぇです」
 黒蟻の首関節が断ち切られ、酸を撒きながら崩れ落ちる。
 目下最前線で蛍火を振り回しているフェブは集中砲火を受けているが、敵の数も減ってきている。彼女自身頑丈なこともある、このまま押し切れるか。時雨は散発的な反撃を受けているが持ち前の身軽さでかわしている。
「そこ‥‥ですぅっ!」
 強弾撃を使用しつつ小鳥が勢いよく散弾を放ち、前進してきた蟻達を吹き飛ばす。
「当たれぇっ!」
 ジュリエットはアッシュのライフル弾の衝撃で動きの止まった蟻に狙いをつけ射撃する。回転する弾丸が命中し甲殻を穿つ。
「シーヴ簡単に抜けると思いやがったら、間違ぇです。アリんこ!」
 赤髪の少女は大剣をふりかざし閃光の如くラッシュをかける。三体の黒蟻がバラバラになって吹き飛んだ。
 ファルルはヴィアを抜き放ち堀から飛び出す。低い体勢から突っ込むと、踏み込み下段から剣を一閃させて黒蟻を吹き飛ばした。
 周防がSMGで弾幕射撃し、マイアはショットガンを放ち、レイアーティは腕を輝かせてフォルトゥナ・マヨルーで射抜く。
 初めは大軍だった蟻達も徐々にその数を減らしてゆき、激しい攻防の末についに撃退されたのだった。