タイトル:【PN】P26キメラ襲来マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/03 15:28

●オープニング本文


「マケドニア・バグア軍に大規模な北上の兆しがあるらしい」
 その報を受けセルビア方面を守備するUPC軍は国境付近の街ブジャノヴァクの南、E75街道上、地図上で山と山が東西より迫っている地点に大規模な陣を築城していた。
 陣の建築は急ピッチで進められているが後方の輸送隊が襲撃を受け、物資がなかなか届かず、思うように進んでいないというのが現状だ。
「急げ急げ野郎ども! もたもたしてると作りかけの陣で街道を北上してくるバグアどもの軍と戦う事になるぞ!」
 数十キロの範囲にわたってつくられている陣の一角、BNBP26陣を担当している叩きあげ軍曹が鉄筋を担いで運びつつ周囲に激を飛ばした。
「しかしサー! コンクリートが無いです!」
「泥でも詰めとけ!」
「鉄筋が足りません!」
「気合で補え!」
「気合が足りません!」
「バグアの前に俺に殺されたいか三等工兵!」
「それは御免であります! ベオグラードに残してきた家族の為にも死ぬ訳にはいかないであります!」
「だったらグダグダ言わずに働け小僧! 返事は!」
「サー! イエッサー!」
 まぁそんな調子である。
 現場の兵士達は塹壕を掘り、土で壁を築き、山から木を切りだしてバリケートを作ったりと、ありあわせの物で出来るだけの防御を固めようとしている。
 付け焼刃ではあるが、曲がりなりにも築城が進められていた陣内に、けたたましく警報の音が鳴り響いた。
「なんだ、どうしたっ?」
 携帯の無線機から一報が入る「ヘルメットワームの編隊が急速接近中」と。
 軍曹が空を仰ぎ見ると、彼方より音速で大型の――恐らく中型ヘルメットワームだろう――が低空より飛来し、宙を駆け抜けていった。
 ワームの編隊が通り過ぎた後に残されたのは夥しい数のキメラの群れだった。次々と空から降下してくる。
「‥‥くそったれ! バグアども、キメラをばら撒いていきやがった!」
「本格的な侵攻の前に、陣の完成を遅らせるのが目的でしょうか」
 三等兵と呼ばれた少年が言った。
「呑気な分析やってんじゃねぇ! 野郎ども! 後退だ! 急げっ!!」

●参加者一覧

アグレアーブル(ga0095
21歳・♀・PN
エスター(ga0149
25歳・♀・JG
風巻 美澄(ga0932
27歳・♀・ST
比留間・トナリノ(ga1355
17歳・♀・SN
諫早 清見(ga4915
20歳・♂・BM
増田 大五郎(ga6752
25歳・♂・FT
草壁 賢之(ga7033
22歳・♂・GP
八神零(ga7992
22歳・♂・FT
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
ヨシュア(ga8462
21歳・♂・DF

●リプレイ本文

●とあるスナイパーの場合
「苦心して作った陣地がガクガクアニマルランドにされたッスか」
 出動の命を受けた傭兵エスター(ga0149)は隻眼をぱちくりとさせて言った。
「‥‥なかなか上手いことを言うな貴様」
 UPCの軍曹が頬をぴくぴくと震わせている。
「今の俺の心境を教えてやろう。その言葉は面白い! だが状況はシャレになっとらんのだッ!! とっとと行ってこい!!」
「へい、了解ッスー」
 隻眼のスナイパーはぴしっと敬礼すると、突撃銃を肩に担いですたこらさっさと天幕から脱出した。

●とあるビーストマンの場合
「襲撃時刻はおよそ1324時だな」
 諫早 清見(ga4915)の問いにUPCの下士官がそう答えた。
 ビーストマンの青年はさらに幾つかの質問を重ねる。
「塹壕と櫓の配置は解りますか?」
「予定図がある。緊急事態故に貸し出す。機密文章故、扱いには注意してくれ」
「建設中の危険な構造物はありますか?」
「詳しくは解らない。貴官の目で確認してくれ」
「時間帯で風向きを特定できますか?」
「春の風は変わりやすい。否定だ」
「人用の煙幕って借りられますか?」
「否定だ。時間が無い、急いでくれ」
 収穫は時刻と陣図の二つだった。諫早は一礼すると天幕を出た。
「風は‥‥」
 指を舐めて空にかざす。西から吹いていた。

●BNBP26
 かくて各々命令を受けた傭兵達は一隊を構成し、BN26陣地に突入した。
 陣に入った一同は、まず密かに櫓に登った。
「今後の為にもキメラにこのままアスレチックさせとく訳には行かないッスね」
 と双眼境で索敵しつつエスター。言う事はともかく、やることは真面目だ。
「‥‥敵キメラ、発見しました」
 アグレアーブル(ga0095)が言った。
「確認中‥‥コアラ確認、バッタ確認、兜蟲確認」
 赤髪の少女は双眼鏡を手に淡々と報告をあげる。
「南南西、バッタ二匹を先頭に立て、格子状にコアラ三匹、頭上を旋回する兜蟲二匹、陣地中央より、速度およそ三十で北上中」
 双眼鏡の中には、地面を這って進むコアラを中心に、まとまって進むキメラの群れの姿が映し出されていた。
「アニマルと昆虫なのに、やたら統制が取れてるなぁ」
 勘弁してくれと草壁 賢之(ga7033)が銃を担ぎ直しつつぼやいた。
「‥‥昆虫の出来損ない如きに、好き勝手させる訳にはいかないな‥‥こちらが使えそうな塹壕はあるか?」
 八神零(ga7992)が問いかける。
「キメラの予想進路上に一つ塹壕がありますね」
 地図を見つつ諫早が言った。
「ではそこを足がかりに迎え撃つか‥‥前衛はともかく後衛にはあった方が良いだろう」と八神。
「そうですね。うっうー、塹壕戦‥‥! 最初の大規模作戦で掘りまくった事を思い出します!」
 比留間・トナリノ(ga1355)がかつての陣地戦を思い起こしていった。まだ数ヶ月程前の話だが、随分昔の事のような気もする。季節は既に移り変わった。傭兵達の立ち位置も静かに変化している。
「ここで気合い入れて成果出せば、一部の雇われへの偏見もマシになりますかねぇ」
 草壁が言う。
「――どうですかね。質も思想もバラバラで、金での臨時雇われというのが変わらない限り、LHの傭兵は頼りにできない、という軍人は残るでしょうね」
 増田 大五郎(ga6752)が言った。
「そんなもんですかね」
「でも成果を出せば、悪い事にはならないと思いますよ」
「ですよねー。うしッ、今後の為にもここらで一踏ん張りしておきますかっ」
 草壁は掌に右拳を叩き付け、気合いを入れる。
 傭兵達は櫓を降りるとキメラを迎え撃つべく動き出した。


「うっうー! ガンホーガンホーですっ!」
 傭兵達は塹壕を目指して身を低くして走る。
「知ってるか、コアラの肉って美味らしいぞ!」
 風巻 美澄(ga0932)が言った。
「‥‥それって、喰えって事ッスか?」
 六堂源治(ga8154)がひきつった顔で言った。
「や、深い意味はないんだけどね」
 煙草を咥えつつサイエンティストは笑う。
 そんな事を言いつつ、傭兵達は塹壕へと飛びこんだ。
「キメラは?」
 土壁に背をつけて突撃銃を抱きつつ草壁。
「まだ‥‥いや、来た」
 塹壕から顔を覗かせヨシュア(ga8462)が言う。砂煙が風によって流れてゆき、その奥からアニマル&ビーストの軍団が姿を現した。
「お出ましだ。全員揃って遊んでくれるみたいだな」
 ヨシュアは背負った矢筒から矢を取りだし洋弓に番える。
「飛蝗男‥‥マフラーはしてるんスかね?」
 鞘から日本刀を引き抜きつつ六堂。
「さぁな、蹴りには注意ってトコじゃないか」
 風巻が紫煙をくゆらせつつエネルギーガンを構え笑う。
「もうじき距離に入るッスよ」
 エスターが言った。
「では手筈通りに」
 ルベウスを構えアグレアーブル。
「うっうー、カウント入ります」
 サブマシンガンを構えて比留間。突撃のタイミングを計る。
「3」
 増田が長剣を構える。
「2」
 諫早がファングを構えた。
「1」
 八神が二刀を抜き放つ。
「GO!」
 銃声が轟き焔を吹いた。飛び道具を持つ者達が起き上がり、塹壕から銃と弓を向け、キメラへ向かって猛射を開始する。
 前衛達が塹壕から飛びだした。キメラの群れへと向かって解き放たれた矢の如く突撃する。
 コアラの目から反撃の雷撃が解き放たれる。青く輝く両眼から閃光が解き放たれ、傭兵達へと降り注ぐ。
 草壁は咄嗟に塹壕の中に伏せこむも避けきれずに閃光に打たれる。二連の電撃が青年の身を焦がし、内臓を焼いていった。
「コアラにしては働くなぁ‥‥ッ!」
 草壁は塹壕の中で血をぺっと吐き出すと己への電撃が止んだ隙を狙って、再び顔を出す。ふわもこは強いゼ、と言わんばかりに両眼から電撃光線をまき散らしているコアラへとサブマシンガンを向けフルオートで発砲。猛射される弾丸の嵐が灰色の獣へと次々に突き刺さる。
 エスターは強弾撃を発動させると単射モードで別のコアラの眉間に狙いをつけた。
 針の先のように精神を研ぎ澄ませ引き金をひく。回転するライフル弾が空を切り裂いて飛び、コアラの眉間から入って後方へと抜けた。ヘッドショット。灰色の獣の後頭部から脳漿が爆ぜ飛び、青い瞳から電撃を放ちつつ仰向けに倒れてゆく。
 別のコアラの首が横にちょこんと傾げられる。その瞳が青く輝いた。比留間に向かって爆雷が飛ぶ。
 比留間トナリノは咄嗟に塹壕の中に頭をひっこめる。間一髪、宙を焼きる唸りと共にすぐ上を雷撃が通りぬけていった。再び塹壕の上に顔を出しサブマシンガンを発砲、コアラに鉛玉を叩き込む。
「手当してやる、白衣の天使と呼べ」
 風巻は練成治療を二連で発動させて草壁の傷を回復させとエネルギーガンを宙へと向ける。眩い閃光が解き放たれ兜蟲へ突き刺さる。爆光がその甲殻を爆ぜさせ体液を噴出させた。
 その間にアグレアーブルは諫早とタイミングを合わせて前進し、バッタ人の脇を瞬天即ですり抜けコアラに肉薄していた。練力を解放するとコアラの目を狙って神速の三連撃を繰り出す。真紅の爪のラッシュに灰色の獣が瞬く間に切り裂かれ吹き飛び絶命する。
 瞬速縮地でバッタ人の脇をすり抜け一拍遅れて飛びこんだ諫早はファングを用いて二連撃を浴びせる。コアラは避けることが出来ずに引き切られる。
 ヨシュアは洋弓を引き絞ると天空へと狙いをつけた。蒼天を背に降下してくる巨大兜蟲へと矢を放つ。兜蟲は前進しながら横に一回転し錐揉み機動をしてかわした。そしてそのままヨシュア目がけて体当たりを仕掛けてくる。
 ヨシュアは洋弓を放り捨てると、背から長さニメートルを誇る巨大剣を引き抜いた。練力を開放すると肉厚の刃を掲げ、兜虫を迎え撃つように斬撃を放つ。昆虫は紙一重で刃をかいくぐるとヨシュアの腹に角を叩き込んだ。猛烈な衝撃に男の口から鮮血が飛ぶ。
 もう一匹の兜蟲型キメラは八神が迎え撃っていた。
「この基地を襲撃したこと、後悔させてやる‥‥」
 風巻目がけて飛来する昆虫の進路に立ちふさがると、宙へと跳躍し左右の月詠を振振った。兜蟲は急上昇して避ける。上空で一度旋回すると、八神の背後、斜め上から角を突き出し突撃する。角が炸裂し、八神を衝撃が貫く。男の身が勢い良く大地に叩きつけられた。兜蟲が急降下し追撃に迫る。八神は素早く跳ね起きる。タフだ。堪えていない。前傾の姿勢を取り双剣をクロスさせて構える。兜蟲が突撃し、角と刃が激突し火花が散った。
 その間に先手必勝で加速した増田がバッタ人へと斬りかかっていた。バッタ人は甲殻に包まれた左腕でヴィアを受け止めると、カウンターの手刀を増田へと向かって放つ。
「チョップはやめろ!」
 増田はバックラーで受け止める。重い。腕が痺れた。右の掌が顔面目がけて飛んでくる。間一髪でヴィアで弾く。間合いが近い。踏み込んでカールセルのショルダーをぶち当てる。赤壁が展開するが衝撃は通る。バッタ人がよろめいた瞬間を狙って直刀に赤光を宿し、脇をすり抜けざま流し斬った。バッタの甲殻との間で火花が散り、その甲殻が陥没する。
 六堂源治は増田が格闘しているものとは別のバッタ人へと練力を全開にして突撃をかけた。日本刀を脇に構え紅蓮の光を巻き起こし、裂帛の気合と共に踏み込んで敵の脇へと流し斬りを放つ。バッタ人は跳躍して回避した。宙で身を捻りざま後ろ回し蹴りを放つ。空を切り裂いて甲殻の踵が六堂の顔面へと襲いかかった。避けられない。当たる。硬い踵が炸裂し、六堂の額を叩き割り鮮血を迸らせる。衝撃に目眩がした。着地した蜥蜴人は沈みこむように踏み込み、六堂の水月へと突きあげるようにして拳をねじこんだ。
 青年の口から鮮血が吐き出される。
「っとおだッ!、こらぁあああッ!!」
 口端から血を滴らせつつ六堂はバッタ人の首を左脇に抱え込むと、右の刀を回転させて切っ先を下方へと向ける。渾身の力を込め、その背へと突き降ろした。装甲の隙間を縫って刃が差しこまれる。
 バッタ人が六堂の脇腹に鉄塊の如きフックを叩き込んだ。ハンマーで殴りつけられたが如き衝撃が貫く。肋骨が数本折れて内臓に刺さった。六堂は血を吐きつつ突き刺した日本刀を捻り掻き回す。バッタ人の背から体液が噴き上がった。甲殻と刃が鈍い音を立てる。
 諫早は連撃を浴びせてコアラに止めを刺し、踵を返す。射撃組は前衛が近接戦闘に入っているのでちょっと射線が通らない。狙いをつけつつチャンスを待つ。
「ええいチクショウ、どいつもこいつも無茶しやがる。人を便利な救急箱みたいなモンと思ってないかっ?」
 煙草を噛みしめつつ風巻が練成治療を飛ばす。ヨシュアに一重、六堂に二重だ。
 増田がヴィアで連撃を仕掛ける。バッタ人は胸部に打撃を受け、脛の甲殻で受け止め、跳躍してかわした。宙で身を捻りざま後ろ回し蹴りを放ち、連撃を仕掛ける。増田はバックラーで受けた、ヴィアで止めた、後退してバックラーで受け流した。
 八神は押し合いの状況から大きくステップして飛び退く。狙いをつけていたスナイパー達が一斉に弾幕を集中させた。羽に弾丸があたり兜蟲が地に落ちる。双剣士は月詠を振り上げ、踏み込み、振り下ろした。研ぎ澄まされた刃が甲殻を突き破り、体液を噴出させる。さらに左の月詠を突き出して大地と縫い止めトドメを刺した。
 兜蟲が旋回してヨシュアの回りを飛び回り次々に体当たりを仕掛ける。男は大剣をかざしながら膝をついた。
 膝下から光を発しつつアグレアーブルが六堂と組みあっているバッタ人に自身の間合いまで接近すると、後背からその腰骨に爪による連撃を叩き込んだ。バッタ人の膝が折れ、崩れる。
 六堂は左脇からバッタ人を離すと、太刀を火炎の位に構え直し落雷の如く打ちおろした。バッタ人の頭部が砕け、仰向けに倒れる。
 旋回する兜蟲へと向けスナイパー達が射撃を集中させる。羽を削られ兜蟲が地に落ちる。
 風巻は再び練成治療を発動させて怪我人を回復させる。
 ヨシュアが立ち上がり、大剣を兜蟲へと振り下ろした。肉厚の刃が昆虫を破砕する。
 増田はバッタ人の右ストレートをバックラーで受け流すと、下段から巻き上げるように斬り上げた。バッタ人はスウェーしてかわす。後背に忍び寄った諫早がファングで後頭部へと連撃を浴びせかけた。バッタ人の身が揺らぐ。
 増田は、よろめいたバッタ人の頭部めがけて直刀を叩き降ろした。唸りを上げて振り下ろされた刃はバッタ人の頭部を破砕しその身を地面にたたきつける。増田はヴィアを逆手に持ち直すと全体重を込めて突き降ろした。渾身の刃はバッタ人の甲殻を突き破り大地に縫い止めた。
「‥‥さすがに、くたばったか」
 増田が深く息を吐く。言葉通りバッタ人はその動きを止めていた。

「アザーッス」と六堂がアグレアーブルに援護の礼を言っている。比留間は海兵の歌をうたいながら怪我人の手当てをしている。戻ってきた工兵達が陣地の再建を開始し、ヨシュア、草壁、増田、諫早の四名はそれを手伝う事にした。
 草壁曰く「自分達が命を賭ける場所ですからね‥完璧を目指すに越した事はないですよ」との事。
 BN26陣の軍曹と兵士のやりとりを耳にして「あれはコントか何かなのか?」とヨシュアが神妙な顔をして呟いている。無論、本人たちは大真面目だ。
 かくて、キメラの襲来があったが傭兵達の活躍もありそれらは無事に撃退された。バグア軍の北上を目前に控えつつ陣地の設置が急ピッチで進められてゆく。
 バグア軍の北上の前にはなんとか陣を完成させられるだろう、というのが現在の司令部の予測だ。
 はたしてブジャノバクの地球側勢力は街道から来るマケドニア・バグア軍の北上を押し留める事が出来るのだろうか?

 ――未来を予測する者は多けれど、その結果は、この時においては、まだ出ていない。

 了