タイトル:【RoKW】不破分隊の戦記マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/20 12:59

●オープニング本文


●Record of Kalimantan War
 二十一世紀初頭、東南アジア、カリマンタン島。
 ボルネオ島とも呼ばれるこの島はグリーンランド、ニューギニア島に次いで世界で三番目に大きな島と言われている。場合によっては四番目と言われることもあるが、ともかく島としては最大級のものだ。
 島の面積はおよそ725,500平方キロメートル。西と北西を南シナ海に面し、北東をスールー海、東をセレベス海とマカッサル海峡、南をジャワ海とカリマタ海峡に接する。
 カリマンタン島を領有しているのは主にインドネシア、マレーシア、ブルネイの三国である。
 地球人類とバグアの戦いにおいて、島の北部は比較的落ち着きをみせているが、南部へと視線を転じれば、UPC軍とバグア軍が激しい抗争を繰り広げている激戦区である。
 カリマンタンを領有する国の一つ、インドネシア軍の数は少なくなかったが大部分はニューギニア島やオーストラリアからの攻撃を防いでいる。全力を傾ける事は不可能だ。またカリマンタン島軍に配備されている兵器は旧式のものが多く、超科学によって生み出されたバグア側の兵器とは質において差があり過ぎた。
 島の戦況は悪いの一言に尽きた。
 戦線は押され徐々に後退していっている状況であり、じり貧だった。全土の解放など夢のまた夢。バグアが支配する南部四都市は揺ぎ無いものに見えた。
 二〇〇八年に入り、旧インドネシア軍、旧マレーシア軍を主軸とするカリマンタン島のUPC軍はこの状況を打開すべく上層部に増援を要請した。紆余曲折の折衝の末、アジア軍は一部に難色を示しつつもこれを部分的に受け入れた。各地方で増援の準備が進められ海を越えて援軍が送り出される事となる。
 カリマンタン島に各地から兵が終結し、混成軍が編成された。その数二十五万強。対するバグア側は親バグアの兵十五万、および夥しい数のキメラとそして数々のワームを備えていた。地球側とは戦力の質が違う。数の上では勝っていても、実質な戦力は同等以上だった。
 古来より城を囲むならば十倍の戦力を以ってせよという。攻勢をかけるには到底十分な戦力とはいえなかった。
 しかし、他の地域も厳しい状況である。これ以上の増援は望めそうもない。
 カリマンタン島軍はなんとしてもこの兵力で南部バグア軍を一掃し、島の全土を人類の手に取り戻さなければならなかった。
 ――後の記録において、混成軍が編成されてよりの一連の戦いは「カリマンタン島の戦い」と記される事になる。
 二〇〇八年の初夏、カリマンタン島の地球人類において、その未来を決定づける戦いの火蓋が今、切って落とされようとしていた。

●アジュラム師団
 カリマンタン島の軍団は五つある。各軍団はさらに幾つかの師団で構成されている。
 そのうちの一つに各地からの増援や傭兵達を主力とした師団がある。第十六師団、率いている将の名はアジュラム・アシュラフ・アッラシード、階級は少将。旧インドネシア軍の出身だ。
 アジュラム少将は齢六十を越える老人だが、エミタに適正があった。その力を用いて軍籍に留まり、今も前線で指揮を取っている。儂が軍を退くのはこの星からバグアを叩き出した時と死ぬ時だけよ、と老齢ながらに気を吐いている。
 第四軍に所属する第十六師団は今回の戦いにおいて島の南西へと投入された。バグアの主な拠点となっている四都市は島の南東に固まっており、一軍および二軍と三軍が北より南下し圧力をかけている間に、四軍と五軍が回り込んで南西部および南部の戦線を押し返し、占領下にある大小の街や村を開放せんとする作戦であった。

●村上大隊
 カリマンタン島南部方面軍隷下、第十六師団所属、第三○六独立大隊は島の南部にある某街で敵と睨みあっていた。
「喜べトンチキども、攻撃命令だ」
 くたびれた軍服に身を包んだ男が禁煙パイプを咥えながら無線に向かって言った。
 男の名は村上顕家。日本の九州軍より援軍として送り出された者の一人だ。小部隊での前線指揮に定評があり、五分以上の状況ならば必ず勝つ男と言われている。
「大尉――ではなく、少佐。共に戦う者に対してトンチキは無いと思いますが。昔の中隊じゃないんですよ」
 無線から生真面目そうな若者の声が帰ってきた。声の主の名を不破真治という。階級は少尉だ。
「似たようなもんだろ。どいつもこいつも、妙な連中ばかり集めやがって、アジュラムの爺は何考えてやがる」
「トンチキやら妙やら、相変わらず御挨拶ですね、村上少佐は」
 無線から嘆息でも聞こえそうな調子でソプラノの声が響く。名をディアドラ=マクワリスという。インド軍から来た。階級は中尉。
「我が隊に多少癖があるのは認めますがな。その分、強さには自信がありますぞ」
 野太い声が無線に響いた。名をハラザーフ=ホスローと言う。パキスタン軍に居た。階級は大尉。
「多少ねぇ? 扱う俺の身にもなってみよ」
「大概な上官に扱われる方の身にもなるとよろしいかと」
「これだよ」
 村上は肩を竦めると言った。
「まぁ大概なのはお互い様か。街の東から敵の増援が向かってきている。不破分隊はこれを討て。ディアドラ小隊、持ち場を堅守、援護を続行しろ。ハラザーフ中隊、大通りの敵を正面から押せ」
 無線から了解、との声が返ってくる。
「勝てますかね?」
 村上の傍らの下士官が問いかけた。
「俺は負ける戦はやらねぇ、必ず勝つ。が‥‥」
「が?」
「何人死ぬかは解らん」
 村上顕家は不味そうにパイプを吐き出した。

●不破分隊
 街の東部、草原の中に伸びる道。
 地平の彼方より長剣と大楯、肩に二門の大砲を持つゴーレムが五機、街に向かって突進してきていた。
「あれを街にやる訳にはいかん」
 KVのコクピットの中で不破真治が無線に向かって言った。
「手筈通りに迎え撃つ。KV隊、行くぞッ!!」
 十一機のKVがゴーレムを迎え撃つべく大地を揺るがし東へと駆けた。

●参加者一覧

獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166
15歳・♀・ST
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
セラ・インフィールド(ga1889
23歳・♂・AA
不破 梓(ga3236
28歳・♀・PN
シーヴ・王(ga5638
19歳・♀・AA
ヴァシュカ(ga7064
20歳・♀・EL
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
シェスチ(ga7729
22歳・♂・SN
魔宗・琢磨(ga8475
25歳・♂・JG
音影 一葉(ga9077
18歳・♀・ER

●リプレイ本文

「いくぜ‥‥相棒ッ!」
 魔宗・琢磨(ga8475)は精神集中を完了させ、ディアブロを疾走させる。街の東の平野、十一機のKVが迫りくる五体のゴーレムを迎え撃つべく装輪走行で駆けていた。
「一糸乱れぬ行軍‥‥気持ちの良いものですね」音影 一葉(ga9077)がディスタンのコクピットの中で笑みを溢した「後は、計算通りの手でやってのけるだけ‥‥楽ではありませんが、勝算は十二分です」
「突撃してくるゴーレム五機の突破阻止か」
 ハヤブサに搭乗する須佐 武流(ga1461)が彼方の敵を見据え言った。
「悪いが、もうお前たちに苦戦したくない。俺の機体はお前たちよりももっと上の存在を倒すために鍛えている。ここでお前たち如きに負けるわけにはいかないんだよ!」
 一方、ディスタンを駆るセラ・インフィールド(ga1889)もゴーレムを見据え胸中で呟いていた。
(「ファームライドには力負けしましたが、ゴーレム相手ならそんなこともないはずです‥‥!」)
 しかし相手の性能も上がってきている。須佐のハヤブサ、セラのディスタン、両機はその力を示せるか否か。
「これ以上先に進ませるわけにはいかん‥‥この場で叩き潰す!」
 不破 梓(ga3236)が無線に声を洩らした。
「真正面からのぶつかり合い‥‥抜かせないよ‥‥絶対」
 シェスチ(ga7729)が静かに頷く。
「‥‥ええ、ボクらの背中には街の皆の命が掛かっている」
 ヴァシュカ(ga7064)もまた頷いて言った。
「Urの炎星は軍神の星、絶対ぇ街にゃ届かせねぇです」
 決意を込めてシーヴ・フェルセン(ga5638)が言う。背後の街では他ならぬ彼女の兄が戦っていた。
「おう、ここから先は行き止まりだ! 一歩も進ませてやらねぇ!!」
 その言葉に砕牙 九郎(ga7366)が答える。
「光が無くとも、自身が照らし出してみせる! 我々がラストホープたる所以をバグアに見せつけてくれるんだよー!」
 獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166)が言ってバイパーを走らせる。激突の時が迫っていた。


 不破隊に対しゴーレムは足を止め横一線に散開した。一同はゴーレムを左端からナンバリングする。各機距離二百まで詰めると通常機動から戦闘機動へと切り替えた。
 まず最左翼に展開したシーヴ、砕牙の両機がスナイパーライフルを発砲した。弾丸が銃声と共に飛ぶ。ゴーレムは盾をかざして回避した。両機ともにリロードする。さらに砕牙は位置を変える為に移動した。
 前衛、須佐、シェスチ、ヴァシュカ、魔宗、不破真治の五機と中衛、セラ、不破梓、獄門、音影の四機が駆ける。
 五機のゴーレムは両肩の大砲を構えるとヴァシュカ機へと狙いを定め、百程の距離で一斉に撃ち放った。砲門から焔が膨れ上がり巨大な火球がヴァシュカ機へと向かって飛ぶ。総じて二十発。
 ヴァシュカ、コクピットから覗く視界が全て紅蓮の色に染まった。焔の壁が唸りをあげて押し寄せてくる。避けきれるものではない。長剣を翳し盾にする。瞬後、凄まじい数の火球が炸裂し大地を焼き尽くす程の爆熱の嵐が荒れ狂った。圧倒的な破壊の衝撃にアンジェリカが吹き飛ばされる。
 が、機体を捌いて足から着地、炎を裂いて再び駆けだす。損傷率五割五分。耐えきった。恐ろしい装甲だ。しかし、もうワンセットは厳しいか。
 不破真治がブーストとスタビライザーを発動させて射線上に出た。爆裂二十連。バイパーが紅蓮の爆風に呑まれ斜め前方へと独楽のように回転し破片を撒き散らして吹き飛ぶ。瞬後、大地に叩きつけられて大破した。
 その間に前衛の各機がゴーレムとの距離を詰める。シェスチ機はマイクロブーストを発動させ、ゴーレム1へとミサイルとレーザーを撒き散らしつつ剣持つ北側へと抜けんとする。ミサイルの嵐がゴーレムの盾をすり抜けて炸裂し、三条のレーザーが装甲を削り取った。
 須佐機はゴーレム2へとガトリング砲で射撃しながら前進、ゴーレムは盾を翳して弾丸を受け止める。須佐は接近すると注意深く敵の行動を見据え反撃に備えた。
 魔宗機はシールドを構えガトリング砲をゴーレム3へと猛射しながら前進する。ゴーレムは横にスライドして弾丸を回避した。
 ヴァシュカ機は二十程度まで間合いを詰めるとSESエンハンサーを発動させスパークワイヤーを放った。鋼線がゴーレムへと絡み付き、猛烈な電撃を流し込む。
 中衛各機は前進中。バイパーを駆る獄門はブーストして間合いを詰めると、ゴーレム5へと長剣で打ち込みをかけた。轟音と共に盾と刃が激突し、その狭間で火花が散った。
 後衛、シーヴ、砕牙、慎重に狙いをつける。位置的に下手をしなくても味方の背中に当たる。一瞬の射線が通っても前衛は激しく動いて機動している。当てない為には敵味方の動きの先を読み、針の穴を通すような狙撃が必要だ。可能か? 百パーセントを求めるのは不可能に近い。が、例外はある。シェスチ機のワイバーンは四足だ。高さは低い。両機はゴーレム1の上半身をスコープに収め引き鉄を引く。
 岩竜とS‐01のライフルから回転する弾丸が飛び出した。ゴーレム1はシェスチ機の攻撃に処理を集中させている。乱戦の最中にこの距離で撃ってくるとは思っていないようだった。ゴーレム1は回避運動をとらなかった。二発の弾丸が肩部に命中し、装甲を穿ち、衝撃を与えた。
 ゴーレム1の側面を取ったシェスチ機は、その隙にスパークワイヤーを放って絡め電撃を流し込んだ。マイクロブーストを発動させて懐に飛び込み、背に備えられたディフェンダーで体当たりをかける。ゴーレム1の身が揺らぐ。が、地響きをあげて踏みとどまった。ゴーレムは振り向きざま長剣で薙ぎ払う。速い。四足のワイバーンは素早く伏せ背に備えたディフェンダーに剣を当て受け止める。衝撃に機体が下方へと押され、火花が弾け、轟音が鳴り響く。さらにゴーレムは剣を引き戻すと、嵐の如き三連斬を浴びせかけた。振り下ろされる鉄塊がシェスチ機の頭部を強打し、破片をまき散らした。続く二撃目を機体を振ってディフェンダーで止め、横薙ぎの三撃目もディフェンダーの角度を合わせて止める。大半はディフェンダーで止めたが衝撃にかなりやられている。損傷率四割五分。
「まだ‥保つ‥‥そう簡単には退けない‥‥!」
 シェスチは衝撃が突きぬけてゆくコクピットの中で、操縦管を握りしめ、交戦を継続する。
 一方、ゴーレム2は地を揺るがして踏み込むと、長剣を振りかざし須佐機へと向けて四条の閃光を放っていた。雷光の如き斬撃を須佐機は、上体を逸らして避け、一歩横に動いて避け、後退しながら避け、機体を沈ませ掻い潜る。シーヴ機のジャミング中和の支援を受け、回避重視の機動を取っている須佐機の反応は極めて速かった。須佐機は懐に飛び込むと、チタンファングでカウンターの二連撃を叩き込んだ。ゴーレムの装甲とファングの間で火花が散る。大打撃には遠いが、そこそこの手応えだ。須佐機は間髪入れずに後退し防御を固める。
 ゴーレム3が魔宗機へと襲いかかる。魔宗機は盾を構えて全力で防御を固める。ゴーレムの長剣が竜巻の如く振り回され、魔宗機を乱打した。重い衝撃と共に盾と長剣が激突し火花を散らす。魔宗は衝撃を受け流すように集中して盾を使っているので被害は通常よりも抑えられているが、それでも衝撃が抜けてくる。損傷率一割五分。
 ヴァシュカ機は突進してくるゴーレム4へと向けてレーザー砲を構えた。
「弾幕はパワーです。派手に行きますよっ!」
 叫びつつSESエンハンサーとスタビライザーを発動させフルバースト。リロードしつつ、猛烈な破壊力を秘めた十二連の閃光を撃ち放つ。光の嵐を浴びてゴーレムの装甲が次々に吹き飛ばされてゆく。が、ゴーレムはその身をから焔を噴き上げながらも盾を構えて突進し、地を揺るがしてアンジェリカへと斬りかかる。剛剣の三連。ヴァシュカ機はディフェンダーを立てて受けとめる。剣と剣が激突し轟音をあげた。損傷率六割二分。
 一方、ゴーレム5は長剣を振り上げ獄門機へと連撃を繰り出す。バイパーはディフェンダーを掲げて斬撃を受け止め、受け流す。反撃、至近距離から滑腔砲を撃ち放った。ゴーレムが盾をかざす。砲弾が盾に炸裂して爆裂を巻き起こした。獄門機は後退しつつ砲弾を連射し、次々と爆炎の嵐を巻き起こす。
 しかしゴーレムは盾を構え、炎と煙を裂いて飛びだした。巨体が迫る。ゴーレムが連撃を繰り出す。受け損ねた。肉厚の刃がバイパーの肩を叩き割り、腕部を強打する。損傷率三割八分。
 中衛、セラ、不破梓、音影のディスタン三機、前衛に合流しようと前進中。ディスタンの足では遠い。
 シーヴ機と砕牙機はシェスチ機と格闘するゴーレム1へと向けてスナイパーライフルを発砲する。狙撃が来るのはもうばれている。この距離ではキツイ。ゴーレムは大盾をかざして難なく受け止めた。が、一瞬でも注意は向く。その隙を狙ってシェスチ機が猛攻を仕掛けた。マイクロブーストで加速し、背に負うディフェンダーの切っ先を向けて突撃する。剣がゴーレムの胴に激突し火花を散らした。
 ゴーレムが反撃の四連撃を放つ。シェスチはディフェンダーで凌ぐ。乱打する。猛烈な衝撃がコクピットを揺るがし、突き抜けてゆく。損傷率九割、レッドランプだ。
 ゴーレム2が須佐機へと迫る。袈裟斬り、逆袈裟、二段突き、高速で猛攻を仕掛ける。その攻撃をハヤブサは、避けた避けた避けた避けた。
「当たる気がしねぇなッ!!」
 須佐は機体を踏みこませ、至近距離からレーザー砲を撃ち放つ。閃光がゴーレムの表面装甲を焼いた。
 魔宗機と交戦するゴーレム3、至近距離から二連の火球を打ち放つ。ディアブロは咄嗟に盾をかざし、火球が激突し爆炎を巻き起こした。魔宗はコクピットから焔の彼方に目を凝らす。前方――いない?
 直感に従って右方へと機体を向ける。ゴーレムが眼前で長剣を振りかぶっていた。落雷の如く鉄塊が襲い来る。
 魔宗、咄嗟に後退しながら盾をかざす。激突。衝撃が機体の左腕に伝わる。盾と剣が噛み合っている。寸での所で受け止めた。連撃が襲い来る。捌く。じりじりと損傷度が上がってゆく。
 ヴァシュカ機。再び機体能力を全開にしゴーレム4へと閃光の嵐を解き放っていた。閃光の渦がゴーレム4へと迫る。さしものゴーレムも今度は耐えきれない。凶悪な光に穿たれ、大爆発を巻き起こして倒れた。
 獄門機とゴーレム5、激しく火花を散らし斬り合っている。ゴーレムの長剣がバイパーの胴を突き、脚部を強打する。ディフェンダーが連撃を払い、受け流す。バイパーが踏み込み、ゴーレムの頭部を強打し、肩部装甲を陥没させ、胴を薙ぎ、吹き飛ばす。獄門、命中打では押しているが、威力と手数と耐久力で負けている。損傷率七割六分、大破が見えてきた。
 狙撃組、シーヴと砕牙、狙いをつけんと試みる。中衛が接近している。射線が通っていない。移動する。
「今まで抑えていた分、暴れさせてもらうぞっ!!」
 前線に不破梓機が到着した。シェスチと格闘するゴーレム1へとガトリング砲をまき散らしながら突っ込む。ヒートディフェンダーを振りかざし、爆炎と共に叩き斬る。ゴーレム1が衝撃によろめく。その隙にシェスチ機は後退する。が、ここまで追いつめて逃がす道理はない。ゴーレム1は後退しながら宙へと跳躍すると大砲をワイバーンへと向け、四連の火球を撃ち放った。もう受けられない。シェスチ機は回避動作を取る。避けられない。火球の嵐が迫る。大爆発を巻き起こし、爆焔に呑まれた。ワイバーンが吹き飛び、地に転がる。大破。
 同じくセラ機も到着していた。獄門と格闘中のゴーレム5へと突撃をかける。猛然と突進し、交差ざま鋼鉄の翼で斬り裂く。インパクトの瞬間、猛烈な衝撃が発生しゴーレムの装甲が削り取られる。その巨体が揺らいだ。獄門、レッドランプが点灯しているが前に出た。スタビライザーを発動させ加速。一気に踏み込むと閃光の如き四連斬を放った。長剣がゴーレムを叩き斬り、切っ先が胴を貫通する。ゴーレムの身から茨の如き電流が発生する。瞬後、猛烈な爆発が巻き起こった。剣を引き抜く、倒れた。
 音影機。魔宗機へと攻撃を加えているゴーレム3へと肉薄する。その頭部めがけヒートディフェンダーを振り降ろす。ゴーレムが首を振る。長剣は肩に食い込んだ。爆炎が巻き起こり、爆圧が装甲を押し潰した。
 魔宗機はその隙に方向を転じていた。須佐機と格闘しているゴーレム2の後背へと回り込む。須佐機は攻撃を回避しつつファングで押している。
「さぁ、お待ちかねのタイムサービスだッ!」
 魔宗はアグレッシブ・フォースを発動させ、ディフェンダーをゴーレムの背へと振り降ろす。極限までエネルギーが付与された刃が唸りをあげ、袈裟斬りに叩き斬った。返す刀で水平に振るう。胴の半ばまで喰い込んだ。引き斬る。爆裂が巻き起こった。ゴーレム2が倒れる。
 ゴーレム3は一歩後退すると宙へと跳躍した。魔宗機へと狙いをつける。火球四連。炸裂。ゴーレムの残骸もろとも、ディアブロが爆熱の渦に飲み込まれる。凄まじい衝撃がコクピット内の魔宗を襲い、灼熱の世界が回転し、再度衝撃が襲った。コクピットから一斉に光が消える。動かない。大破だ。
 ヴァシュカ機は再びエンハンサーを発動させた。宙のゴーレム3へと狙いをつけレーザー砲を撃ち放つ。ゴーレムは慣性制御で翻る。避けきれない。閃光の嵐が装甲を穿つ。
 シーヴ機、砕牙機、同様にゴーレム1へとライフルを発砲する。ゴーレムはバーニアを吹かせて宙でスライドし回避した。須佐機もまたゴーレム1へとガトリング砲をまき散らす。ゴーレムは急降下し盾をかざす。弾丸は盾をすり抜け装甲を穿った。不破梓機が迫る。ヒートディフェンダーを振り上げ、踏み込み、振り下ろす。ゴーレムが剣をかざす。激突。押しきった。剛速で振り下ろされた刃は、長剣ごとゴーレムの胴に食い込み、爆裂を巻き起こしてその装甲を消し飛ばした。崩れ落ちるようにゴーレムが膝をつき、大地に転がって動かなくなる。
 セラ機が振りむきざま、宙のゴーレム3へとスパークワイヤーを撃ち放った。ゴーレムが宙でスライドする。逃さない。鋼線が大砲と胴の間に絡みつく。セラ機はSES機関を全開にし、電撃を流し込みながらワイヤーを引き降ろした。激しく明滅スパークするゴーレムが天より引きづり降ろされ、轟音をと共に大地に叩きつけられる。地が揺らいだ。慣性制御のエネルギーも尽きたらしい。
 音葉機が間髪入れずに駆け寄る。ヒートディフェンダーを振り上げ、ゴーレムの胴へと突き降ろした。切っ先が胴を貫き、大地もろとも串刺しにする。
「最初の一機が落ちた時に、そちらの負けは決まった様な物だったんですよ」
 熱剣から爆炎が巻き起こった。ゴーレムは激しく電流を洩らしもがいていたが、やがてその動きを止めた。