タイトル:最恐の戦場マスター:望月誠司

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/13 12:22

●オープニング本文


 オーストラリア、南半球に浮かぶ暗黒の大地。バグアによって完全に占領されてしまった地域だ。
 街はバグアによって破壊され、人々は虫けらのように殺される。
 だがそんな場所にあっても未だに不屈の旗を掲げ、森に拠りバグアに対してゲリラ活動を行っている男達がいた。
 彼らは巧みにバグアの追撃の手をかわしつつ、異星人達の活動を探っていた。奴等は街で何をしているのか、何を狙っているのか、それを知ることが出来れば、今後の戦略に大きなプラスとなる。
 正面からの激突は避け、情報を集めることに腐心している。だがバグア達のガードは固く、これといった戦果をあげられていないのが現状だ。
「くそっ‥‥今回の作戦でも、結局何も解らなかったな」
「ぼやくな」
「ぼやきたくもなるぜ。俺達は偵察を始めてから何年になるんだ? 街の様子は掴めはしたが、それ以上は‥‥肝心なことは何も解らない。とんだ有能どもの集まりだぜ」
「焦るな。機会は必ず訪れる」
「だと良いんだがな」
「そろそろ、ラストホープからの援軍が到着する筈だ。ULTの傭兵達と協力すれば何か打開策が生まれるかもしれん」
「うむ、そうだな。自由なる傭兵達なら俺達が思いつかない案も思いつくかもしれん」
 三人の男達はそんな会話をかわしながら森の奥にあるアジトに辿り着く。
 そこには男の仲間達が待っている筈だった。
 しかし‥‥男達が帰った時、そこに待っていたものは血の海だった。
「な‥‥!」
「バグアの襲撃か!」
 激しい戦闘があったのだろう。木々にカモフラージュしてあった小屋は破壊され、炎がくすぶり煙をあげている。
「スミス! スミス! しっかりしろ!」
 男は血溜まりに四肢を投げ出している男に駆け寄ると声をかけた。
「コ、コンホヴィルか‥‥」
「しっかりしろ! 何があった!」
「敵が、キメラが、襲ってきて‥‥あ、悪夢だ」
「‥‥キメラだとっ?!」
「恐ろしい、こんなっ、死に方だけは、したく、なかった‥‥のに」
「なんだ、何があった! キメラってのは一体どんなヤツだ!」
「こ、こ‥‥」
「こ‥‥‥‥?」
 スミスは言った。
「こ‥‥‥‥あ‥‥‥‥ら‥‥」
 ごふり、と吐血し息絶える。
「‥‥」
「‥‥」
 沈黙。
「‥‥‥‥こあら、だと?」
「コンホヴィル!」
 仲間の一人が叫び声をあげた。刹那、背後に生まれる殺気。熟練の戦士であるコンホヴィルは振り返る間すらも惜しみ横転する。
 電撃の槍がコンホヴィルがいた宙を貫いてゆき、大木にぶちあたり、その表面を焦がした。
 コンホヴィルはホルスターから拳銃を引き抜き遮蔽物の陰に隠れると雷撃の発射点へと視線を走らせる。
 そこに、地獄からの使者がいた。
 木々が作る薄闇の中、蒼く輝くつぶらな瞳、まるい鼻、ふわふわした灰色の毛並みと、天地を貫く愛らしさ。
「‥‥瞳の色を除けば、まさに、これは、コアラアアアアアッ?!」
 コアラはちょこんと首を傾げると、その両眼から閃光を撃ち出した。
「ぐおああああああああっ!」
「スコぉおおおおおおットォオオオオオ!!」
 屈強なゲリラ戦士が灰色獣が撃ち出した電撃によって吹き飛ばされ、地に転がる。
「スコット、スコット! しっかりしろッ!」
「な、なんて、こった‥‥まさか、この俺が、コアラなんかに、やられる‥‥とは」
 ふっとスコットの瞳から光が消える。
 ガサリ、ガサリ、木々の葉が揺れた。
 周囲の木々の間から、のそり、のそりとコアラ達が這い出てくる。
「くっ、アジトの中へ!」
「お、おうっ!!」
 コンホヴィル達は踵を返し、未だ炎のくすぶっている小屋の中へと飛び込む。
「ビーン、俺は、お、恐ろしい‥‥っ!」
 コンホヴィルは壁に背をつけ入り口から外の様子を窺いながら唯一生き残っている仲間に言った。
「お前が、恐ろしいだと?!」
 コンホヴィルとは逆サイドに回っている無骨なるビーンが言う。
「ああ、お、俺は今、生まれて初めて腹の底から震え上がるほどの恐怖を感じている‥‥! バ、バグア相手に戦って死ぬなら良い。俺は戦士だ、それも運命と納得がゆく。キメラ相手に戦って死ぬのもまぁ良しとしよう。だが『閃光のコンホヴィル』が「こあら」相手に殺されるなんて、ありえない‥‥!」
「た、確かに、戦死したら、否、戦死しても、笑い話にもならん‥‥! 洒落にならんというか、洒落にもならん。なんだ、この微妙過ぎる悲壮感‥‥っ! これがバグアの‥‥いや、現実というものの恐ろしさなのか‥‥!」
 恐怖におののくゲリラ戦士達の心境を感じ取っているのかいないのか、コアラ型キメラ達は小首を傾げると、一斉に瞳から閃光を発して小屋へと電撃をふりそそがせた。

●参加者一覧

間 空海(ga0178
17歳・♀・SN
伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
御影・朔夜(ga0240
17歳・♂・JG
フェブ・ル・アール(ga0655
26歳・♀・FT
鷹司 小雛(ga1008
18歳・♀・AA
白鴉(ga1240
16歳・♂・FT
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN

●リプレイ本文

 ラストホープ――希望の島から暗黒の大地へと上陸した一行は高台に立ち森を見下ろしていた。
「かくして‥‥我々ラスホプ探検隊はオーストラリア大陸へと上陸し、木々が生い茂る密林の大地へと、今まさに足を踏み入れようとしているのであった!」
 蒼空を仰ぎ、ギャガーンとナレーションを入れるのはフェブ・ル・アール(ga0655)である。
 それにラルス・フェルセン(ga5133)がスローな口調で所感を述べた。
「初オーストラリアです〜バグア占領地という事でー、極めて危険な地ですが‥そこにも『希望』は残っているのですね〜」
 オーストラリアにもバグアに反抗しているゲリラ達がいるのだという。
「今回の任務はゲリラ活動の助勢か‥‥緊張するけど精一杯頑張らないとね!」
 白鴉(ga1240)が気合を入れている。
「私も〜彼らのお役に立てるようー、頑張りたいと思います〜」
 とラルス。
 一同がそんな事を述べあっている時、不意に白鴉が呟いた。
「あれ‥‥」
「どうかしましたか?」
 間 空海(ga0178)が問いかける。
「煙が上がってる?」
 森の一点を指して白鴉が言った。
「‥‥煙が出てる場所ってー‥『例の場所』付近、ですよね〜?」
 ――例の場所、情報によればゲリラ達のアジトがある場所である。
「何かあったんじゃ!」
 切迫した声をあげる白鴉。場に緊張と沈黙がおりた。
「‥‥急ごうか」
 御影・朔夜(ga0240)が金属音をあげ小銃をリロードし呟く。
 一同はそれに頷くと決意を胸に歩き出し、暗く影差す魔の森へと入って行った。

●カンガルーでもなくワラビーでもなく
 薄暗い森の中を進む一行、
「てゆうかこんな格好でどう戦闘しろと?」
 張り出された枝や森の泥に眉をしかめつつセーラー服姿の熊谷真帆(ga3826)がUPCの支給品に文句をつけていた。どうもスカートが気になるらしい。
「ヴィアに制服に銃‥‥どう見ても漫画の世界です。本当に有難う御座いました」
 とはいいつつも、わざわざそれを着込んでかつ動物のストラップをヴィアにつけているあたり意外と気に入っているのかもしれない。
 そんな時、前をゆく鷹司 小雛(ga1008)が不意に片手をあげた。
 一同はそれを見て素早くブッシュ――茂みの中に分け入る。
「‥‥どうした?」
 フェブ・ル・アールが息を殺して問いかける。
「今、何か‥‥遠目に、灰色のものが木陰の間から」
 見えましたわ、と鷹司。
「‥‥偵察してくる」
 言って伊佐美 希明(ga0214)が位置を移動する。
 森の中を静謐に移動することしばし、伊佐美は本来の進行方向に対して側面から回り込み様子を探る。
「あれは‥‥!」
 驚愕に双眼鏡を覗き込み、その姿を確認する。間違いない。
「‥‥これがカンガルー‥ いや、ワラビーだったなら、私は負けていたかもしれない‥」
 森に吹く風に前髪を揺らしながら伊佐美は呟きを洩らしたのだった。
 
●つぶらな瞳は伊達じゃない
 伊佐美の偵察により一行は状況を掴んだ。やはりゲリラ達のアジトはキメラの襲撃を受けているようだ。
 そこで一行は二手に分かれた。ゲリラの小屋を南方から凹形に包囲しているキメラに対して、一名を西へと回し、残りの七名を以って東側から接近する。
 茂みの陰から接近し、小屋へと雷撃を降り注がせている灰色獣の姿を目の当たりにした白鴉は衝撃に打たれた様子で呟いた。
「こ、これは‥‥キモカワイイじゃないか!」
 愛らしいのだか恐ろしいのだか良く解らないそれに対して間空海もまた言う。
「‥え、あ、恐ろしい‥敵? はっ、まさかコレは可愛いものに手を出し辛い人間の習性を逆手に取った、バグアの策略!?」
 その敵とは――
「コアラだな」
「コアラよ」
「コアラだなぁ」
 オーストラリアに棲息するというユーカリ的生物だった。
 一同の間になんともいえぬ空気が広がる。
 そんな中で黒コートの男が言った。
「ふむ、中々シュールではあるが――あぁ、そうだったな。この敵とは既に戦った事がある」
 本当か? 思わず誰かが胸中で呟いた。御影朔夜、色んな意味で恐ろしい男。
「外見がどうだろうとキメラには違いがないだろう。ゲリラ達が攻撃を受けている。行くぞ」
 黒コートの男は両手に銃を携え戦場へと躍り出た。一同もそれぞれの得物を手にそれに続く。
「無駄に時間もかけていられないのでな‥‥手早く片付けさせて貰う」
 御影朔夜は練力を全開にすると爆音と共に二丁の銃で猛攻をかけた。シエルクラインからフルオートで弾丸が発射され、ブラッディローズから散弾がまき散らされる。
 小首を傾げて電撃を放っていたコアラの頭部に次々に弾丸が抉り込み、肉片と鮮血をまき散らす。先制の一撃でコアラの一匹がどうっと横倒しに倒れた。御影はさらにシエルクラインを猛射してもう一匹も蜂の巣にする。
「GO! GO! GO! GO!」
 フェブ・ル・アールがスコーピオンを構えて突撃する。小銃が焔を吹き、御影の攻撃で弱ったコアラへとトドメの弾丸を叩きこんだ。大胆な動きだが、彼女の役目は囮を兼ねた前衛である。攻撃をひきつけるならば目立った方が良い。
 だが攻撃をひきつけるということは、当然、攻撃が集中するということである。
 コアラが一斉にフェブ・ル・アールの方へと振り向いた。
 射線の通っているコアラ達の首がちょこんと傾げられ、その蒼く輝く両眼から、薄暗い森を真っ白に染め上げるほどの電撃の嵐がフェブに向かって襲いかかる。直截的に表現するならば雷条合計八本。
「にゃー!!」
 電撃の槍に打たれまくりながらも、なんとか木の陰に伏せて何本かをやりすごし九死に一生を得るフェブ。木が燃え上がり、めきめきと音を立てて折れてゆく。一気に半死半生だ。頑丈な彼女でなければ、または遮蔽物のことを念頭においてなかったら、東から向かっていなければ、または速度を落とさず全速で突っ込んでいたら、死んでいた。
 電撃竜というのが少し前にインドにいたが、それの吐くプラズマブレスよりもこのコアラ達の方が数がある分合計の火力は高い。
 コアラ達の目はなおも輝き――今度は片目だけだ。4条の電撃光線が御影を打ち抜いた。激烈な攻撃に生命力をごっそりと削り取られる。
 コアラ相手に戦死、の恐怖が一同の心をかすめつつも、雷撃が止んだ隙をついて前衛組が森の中を走る。だが木の根が邪魔で常のようには接近できない。それでも白鴉はスコーピオンで射撃しながら走った。
 一方、狙撃組は隠密潜行で気配を断ち何処かへと消えていた。
「‥コアラ、何でしょう、この胸の高鳴りは。まさか、これが萌え‥‥?」
 空海が事務的口調の中にもどこか陶酔を混ぜて呟いた。コアラの愛らしさやら恐怖やらの色々が合わせ混じり、彼女の胸を激しく高鳴らせていたのだ。
「でも撃ちます」
 コアラの頭が吹っ飛んだ。
 正確には衝撃で倒れた。それでもキメラはすぐに起き上がり、動き始める。空海はブッシュの陰から伏せ撃ちの態勢でライフルを連射する。
「‥‥敵なんていない。戦う相手は常に、自分自身のイメージ‥」
 張り巡らされた木の枝の上に登った伊佐美は長弓に弾頭矢を番えながら呟いた。
 枝の上で射法八節を踏むのはちと厳しいが、彼女の腕なら射撃自体はできないこともない。膝立ちの状態で長大な和弓を月が満ちるように引き絞り、人差し指を伸ばして狙いをつける。狙いは空海の攻撃で弱っているキメラの頭部。
 爆音。
 狙い違わず弾頭矢が炸裂し今度は文字通り吹っ飛ばした。
 爆炎が森を焼き、雷撃が宙を焼き、戦場が死闘の色に燃え上がる。そんな中、西側に回り込んでいたラルス・フェルセンは密かに小屋の中へと突入していた。
「何者だ!」
 ゲリラ兵が低く鋭く誰何の声をあげる。
「LHの者です。ご無事ですか?」
 覚醒中のラルスは淡々とした口調で述べる。
「む、LHの‥‥これは失礼をした」
「現在仲間達が東手から包囲の一角へ強襲を加えています。この隙に脱出してください。私が先導します」
「すまんな。了解した」
 一同は素早く行動に移る。
「しかし‥‥」
 小屋の壁を壊して脱出する前にラルスが真顔で言った。
「あのキメラ‥チラっと見た瞬間、何じゃこあらぁ!? と思いました」
「‥‥」
 閃光のコンホヴィルは黙して発さず、無骨なるビーンは言った。
「シュールだ」
 その言葉にラルスは「ん?」と外のコアラのごとく小首をかしげていた。

●電撃コアラはユーカリの夢を見るか
 コアラに接近した熊谷はヴィアに陽光を反射させて目を眩ませようと試みたが、木々の枝が張り巡らされた密林でそれは難しく、次善の手を打つ。
「八つぁんに謝りなさいよ〜」
 言いつつスカートの裾をふりふりとふってコアラの目を欺こうとする。
 しかしコアラはコアラであって牛でもなければ中年オヤジでもない。それではキメラの目は欺けない。
「うわお?!」
 もろに直撃コースで光線の嵐が熊谷に襲いかかる。強烈な電撃が少女を打ち、一気に瀕死の状態まで追い込まれる。
 それでもなんとか気合で斬りかかりコアラを袈裟斬り、逆袈裟に叩き斬る。本来なら流し斬りといきたいところだったが、前の依頼の消耗が残っておりスキルを使う余力がない。
 しかし、斬られつつもヴィアの連撃に耐えきったコアラが、眼前の熊谷へと向けて小首を傾げた。
 閃光が、走った。
 コアラの身が横へとずれ、あらぬ方向へ電撃を放ちながら崩れ落ちる。
「高飛車で気侭我侭、されど華麗にして強烈‥‥」
 鷹司小雛が大剣を振り抜いた姿勢のまま呟いた。
「クリスティーナの華麗な美しさをその身に刻んで差し上げますわ!」
 少女はクリスティーナ(グレートソード)を一振りして昂然と言い放つと、残りのコアラに向かって駆ける。
 コアラの視線が鷹司へと向く。戦いの初期よりキメラの動きを観察し、電撃を放つ時には小首を傾げるという予備動作があることを見切った彼女は、精密に撃たれるその閃光を紙一重ですり抜けるようにかわした。足場が悪かったがなんとかバランスを維持し流し斬りからの連撃を叩き込む。
 そこへ白鴉が裂帛の気合と共に跳躍し全体重を込めて蛍火を豪快に叩き込んだ。
「コアラ型キメラか‥‥けど、動きはどこぞのマスコットよりも遅いね!」
 横倒しに倒れるコアラを尻目に片手でスコーピオンを操って他方のキメラを撃つ。
 それに空海の狙撃が止めをさし、最後の一匹はフェブが射撃したところを小屋から出てきたラルスが鬼灯で撃ち抜いた。
 灰色の獣が森に倒れる。
「初こあら‥‥恐ろしい敵でした」
 一同の視線が集まる中、ラルスがうんうんと感慨深げに言ったのだった。

●戦い終わって
 スコップを肩に担いだ少年が木の根に腰を降ろし、包帯を巻いた黒コートの男が大木に背を預けて煙草を吹かしている。
「ふわふわしてた‥俺、かわいそうなことしちゃったかな?」
 白鴉が自らの手の平を見つめながらそう呟いた。
 一同はフェブ・ル・アールの提案によって戦死者達の弔いを行い、それと共にコンホヴィル達はコアラの死骸も埋めていた。死ねば全ては土に還るだけだそうだ。
「先も言ったが‥‥」
 御影が紫煙を吐き出しながら言う。
「如何な姿であれ、キメラはキメラだ。死人も出てる」
「‥‥そうだね」
 木の枝で立てられた十字架を見やり少年は呟いた。
「線香の昆布汁、これからどうするんだ?」
 伊佐美が心配そうに言った。ゲリラ達のアジトは焼かれ、メンバーの大半も倒れてしまった。
「閃光のコンホヴィルだ」
 空海からもらった煙草を吹かしつつコンホヴィルが言う。
「俺達は諦めはしない。この星からバグアを叩き出すその日まで戦い続ける」
 巨漢である無骨なるビーンがイカツイ顔でそう答えた。
「そうか、頑張れよビーン、昆布汁」
 伊佐美が笑顔を見せていった。
「だからコンホヴィルだと」
「ああ、とりあえずは新しいアジトを作ってメンバーを集めるところから始めるさ、なぁ昆布汁」
「ビーン、お前もか‥‥」
 歴戦のゲリラ戦士ががっくり項垂れる。
「すまん、うつった」
 ビーンは頭を掻きながらそう言ったのだった。
 
 かくて南の大陸での灰色獣との戦いは一端の決着となり、ゲリラ達は森に隠れ、傭兵達は希望の島へと帰還した。
 ゲリラ達に不屈の闘志がある限り、いつかまたこの地に戦いが起こるだろう。
 何故なら、オーストラリアに住む生物はコアラだけではないのだから。
 しかし今回の物語はこれにて一巻の終わりであり、別の戦いはまた別のお話とさせていただこう。

 了。