●リプレイ本文
カンパネラの運動場に蛮声が響く。
「本講習に参加した貴様らはよく訓練された糞だ!」
満足げに一同を見渡す大佐だが、メンバーの中に目をキラキラさせた子供(夢姫(
gb5094))が居るのを見つけ、小猫を扱う様に持ち上げ副官に渡す。
「いえ、受講生ですってば」
彼女は姫をよしよしとあやした後列に戻した。
「俺がお前ら雌豚共の教官を務めるハーケン大佐だ。いいか! お前らは等しく価値がない。選ばれた能力者? そんな糞みたいなプライドは、今すぐその場で小便と共に垂れ流せ。 もう一度言う、お前らは戦場ではウジ虫以下だ。糞を拭く紙の方がまだ値打ちがある! 俺がお前ら糞共を人間にしてやろう! 戦場で戦士として死ねるようにな!」
「大佐」
ノってる所になによ? と不機嫌顔で副官を振りむく。受講生が一人足りないという。
早くもピクピク来ちゃう彼の前で、姿勢をビシッと正し、大声を張り上げたフル装備の女性兵士(フェブ・ル・アール(
ga0655))。
「サー! 大佐殿! サー!」
「なんだ、そこのビッチ!」
「サー! アレではないでしょうか! サー!」
示された方角には、ウンコ座りの植松カルマ(
ga8288)君。
大佐は手にした教鞭をメキメキ言わせ、副官が本日の目玉になりそうな男子拉致に向かう。
「チョリッス」
チャライ返事を返すふてぶてしい男子生徒、地味に大佐に似てません? そう思った副官は笑みを堪えつつ、襟首掴んで問答無用の搬送。マネキンを並べるように整列させ、終始ダルそうに欠伸噛み殺し、女子をニヤニヤ眺める彼の首を、グキ! と前向かせる。
開始早々雷の落ちそうな帯電した空気を、威勢の良い声が切り裂く!
「サー! 大佐殿! サー!」
「またお前か、ビッチ!」
「兵隊は走る事と色々な所を掘るのが仕事と考えております!」
「だからどうした、ビッチ!」
非常に近い距離で大声張り上げ合う二人。ポっと赤面するフェブ。
「自主的な走り込みを提案したく思います!」
「そこのポークビーンズに倣い装備を整えよ!」
指さされたミスティ・K・ブランド(
gb2310)を見れば、アーマーまでガッチリ着込んだフル装備である。視線を集めた彼女、何となくセクシーポーズを決めてみた。
ガッチャガッチャと校庭を走る謎の集団。
『ロッタに魅せられ日々散財〜♪ (ロッタに魅せられ日々散財〜♪)』
『染み付いた! (染み付いた!)』
『幼女趣味! (幼女趣味!)』
『俺だけの! (俺だけの!)』
『パラダイス! (パラダイス!)』
『伯爵達には内緒だぞ〜♪ (伯爵達には内緒だぞ〜♪)』
ノリノリなのは赤崎羽矢子(
gb2140)。自ら進んで第一声を張り上げる作詞作曲者である。
周囲の生徒達から怪異の視線が向けられる中、完璧な口パクでやり過ごす今給黎 伽織(
gb5215)。
『俺だけの!』の部分だけ声を張り上げる植松。
副官、一人タイムを計るフリしてスタート地点で待つ。
「しかし女五人でこれは笑えるな」
ミスティは苦笑しつつ、膝をあげ走る。
「ほらそこ、声が小さいっ!」
叱咤を飛ばすのは赤崎。
「俺だけの!」
さらに声を張り上げる植松。
『ふざけるな大声出せ! タマを拾え!』
地味に立場を奪われ、頑張って怒鳴ろうと焦る大佐だが、絞り出した台詞がばっちりフェブと被っていてしょんぼりとなる。
意味が分からなく、突如落ちてるボールを探し出す夢姫。
「貴様! 足を休めるな!」
「ふぇ‥‥ごめんなさい。でも、球を拾えって」
幼女にかける言葉を失い、あの台詞言ったのチミだったよね? とフェブを手招きする。
「意味教えておくように」
「サー! 了解であります! サー! タマというのはだな、こちらにある大佐殿の立派な‥‥」
ダイレクトに大佐の股間を指さし説明が始まる。純真な視線をソコに集約させる幼女。
「‥‥もういい」
ランニングを終え全員を整列させ、事前に設問として配られたプリントに目を通した大佐は、顔面を紅潮させていく。
怒りをむき出しに顔をあげ、怒鳴ろうとして停止。サッ、と顔写真付きの参加者名簿を見せる副官。大佐再起動して、二枚目かつ涼しげな顔貌の今給黎を呼び出す。
「アジエンス! 何故呼ばれたかわかるな?」
「大佐殿は雲の上の英雄であります! そのお考え、私にわかるはずもありません!」
褒められちゃった、と副官へ振り向く。無表情のまま手先を動かし、お説教の続きを促す彼女。
「昨晩掘られまくって頭に豚の精液が回ったか!」
刺激的な言葉に、ピュアなレミィ・バートン(
gb2575)が頬染めて反応する。ピュア過ぎてわかってない夢姫は不思議そうにそれを見上げる。ピュアじゃないミスティは、心の中で結構妄想した。
吊るしあげの理由は、設問解答にあった。
「このような場合、どのように対処すればよろしいのでしょうか。御教授願えれば幸いです、大佐」
参加者の傾向を知ると共に、彼等の持つ個人の思想など全てを完全否定する目的の設問である。兵士は自らの考えを捨て、上の命令に従うのみを地で行く優秀な答えにイジリ所を失う大佐。
「腕立て百回!」
今給黎は隙を見せず、苦し紛れに指示された理不尽な罰を手早くこなす。
大佐に促され、重しとして彼の上に座った副官は、ボソッと耳打ちする。
「大佐、馬鹿なんであんまり苛めないで上げてください。お気持ちはわかりますが」
欲求不満な大佐は次の獲物を狙う。
「ポークビーンズ!」
自然と目立つミスティに白羽の矢が立つ。
「戦場は養豚場ではないぞ! 勘違いするな!」
ムッとした顔で大佐をにらむミスティ。
「カンパネラは傭兵だと? 仕事ができればいいだと? 軍人としての規律も知らぬガキに仕事ができると思うな!」
「そんなに心配しなくても、いざとなれば私が尻を叩いてやるさ。私とて子供が死ぬのは見たくないからね」
「だ、誰がポークの心配などするものか! 戦場でマスかいて死んでこい!」
中年のツンデレってどーよ。
さらに欲求不満となった大佐は次の獲物を慎重に狙う。
「オイ! そこの間抜け顔!」
「レンジャー!」
名指しされた綿貫 衛司(
ga0056)は、カツ! と踵を鳴らし揃え、直立不動となる。
小気味いいリアクションに、大佐のテンションも上がる!
「貴様、一個小隊を相手に突破できるだと?」
「レンジャー!」
「脳まで糞になったか? それともお前の相手は新生児か?」
「レンジャー!」
「戦場では貴様のような間抜けから死んでいくのだ!」
「レンジャー!」
エキサイトする詰問に、速射砲の如くレンジャー! を返す精鋭。仕舞には大佐が咬んで咽て、トコトコとお水を飲みに行って戻ってくる。違うのにしよ、と名簿を眺めてニヤリと笑った。
「そこのチェリー!」
標的となったのは植松。まさかの白紙解答だったのである。
「炙り出しッス炙り出し」
言われるがまま素直にジッポであぶってみる大佐。そのまま数分経過。ピクピクしてる大佐の手元で答案は燃え落ちる。
「この雌豚が!」
怒りのあまり青ざめつつ、生徒の首に両手をかける大佐。
「落ち着いて下さい」
副官は両名の後頭部を掴み、寄せてぶちゅとキスさせた。
二人が嗽から戻ってきて再開される演習。
重装備のままトラップコースを匍匐前進で進む訓練である。
線は細いが素早さと共に意外な体力を併せ持つ赤崎がトップ行く。ミスティ、フェブ、綿貫、レミィ、夢姫、今給黎、そしてダントツビリの植松と続く。
「どうした痴女! その程度で敵指揮官の首を取るだと? 味方を救出するだと?」
これはあくまで鼓舞なのだが、皆から見れば罵詈雑言であろう。先頭である赤崎を容赦なく罵る大佐。
「はいっ!」
彼女、意外と体育会系らしく、声を上げて歯を食いしばる。
「戦場で他人を気遣える余裕などあるものか! お前死ぬぞ! 友軍を喜ばせるのはベッドの中だけにしておけ!」
セクハラ現場に迫るミスティ。大佐のイジリはダイナマイトボディの彼女へと移る。
「ポーク!」
ややおっかなびっくりに爪先で背中をツンツン。無視して進む彼女。ならばと進行方向に回り込み、芋虫になって待ち受ける大佐。
「ポーーーークッ!」
ミスティ、華麗に迂回して回避。
相手してもらえない大佐、ダッシュして再び先回りし、這って来た彼女のサングラスを取って顔を見る。
「身体は大人、お顔は子供。ポーーーーーク!」
囃し立てる姿は小学生並であった。
フェブは自ら全力で試練に臨む。ペース配分など頭にない。チンタラやってる植松君との対比が凄い。
その姿勢は非常に好ましく、大佐は彼女の尻を踏み、更なる荷重をかける。
「これは見事な農耕馬だ! ケツの馬力が違う!」
M気を持ち合わせた彼女、見て見てと言わんばかりに腰を振る。
グキっと音がして大佐は足首を挫いた。
綿貫は機械のような動きで、障害を越えていく。中群を正確にキープし、周囲を把握しつつ進む彼は、正規の訓練を受けた者であろう。
「なかなかやるな間抜け顔! お前の前世は芋虫か!」
「レンジャー!」
お願いだから他に何か言って、と悲しくなる大佐だった。
この手の相手は副官を利用して攻めるに限る、と部下を呼び、不快感露に寄って来た彼女に、男性の罵倒を命じた。
匍匐運動を続ける綿貫を見下ろし、しばし考え込む。
「項が可愛いですね」
「れ、レンジャー‥‥」
地面にはタイヤ跡よろしく胸の轍があり、それを辿った先にはレミィの姿。
「貴様、友軍を囮に奇襲をかけるとかヌかしていたな、牛の糞の方がまだ早い! 父親とファックしてる時の方が気合いが入っていたぞ!」
「え!? そ、そんな事してな‥‥」
当然のリアクションを返し、しまった! と口元を覆うレミィ。
「何が違うか! この雌豚が!」
「はっ、はいっ!」
「お前に名前を付けてやろう。ランプ(豚の尻)だ! どうだ? 嬉しいか!」
「は〜いっ!」
羞恥に真っ赤になりつつそれを認める彼女は、ひぃ〜んっと泣く。
久しぶりに良いリアクションを貰い、サドな笑みを浮かべる大佐の隣、副官同伴でズリズリと過ぎゆく夢姫。
「副官さん‥‥大佐さんは、パパとママの愛情が足りなかったから、こんなひねくれてしまったの?」
「はい。変態だったからパパもママも大佐を犬小屋の隣に寝かせていたのです」
「大佐さん可哀想‥‥」
「お前ら‥‥」
訓練はさらに過酷なものとなる。立ち上がってのダッシュも加わり、全員に疲労の色が浮かぶ。こうなってくると俄然元気になるのが大佐である。
「アジエンス! 苦しそうじゃないか」
俳優からの華麗なる転身、基礎体力はあるものの、汗を流し呼吸を乱すハンサムを苛めようと、副官を呼びつけ、正面からの抱っこを命じる。ジロリとにらむ彼女に、だって訓練だしぃ〜と空とぼける大人げないおじさん。
副官を抱え、全力で走り、ようやく許され彼女を下ろす同士の姿を見ていた隣の爺さんならぬ植松君、急に苦しそうに演技を始める。
「チェリー! 苦しそうじゃないか」
よっしゃ来た! と心の中でガッツポーズしたが、抱き合わせになったのは綿貫だった。
「二人で交互に往復してこい」
「うげえぇえええ!」
一緒に災難を浴びたバディの目には「お前余計なことすんなよ」と云わんばかりの怪しい光が灯っていた。
「よく訓練に耐えた。自信を持て、お前達はただの糞から立派な糞になった!」
「立派な?」
姫が純粋に小首を傾げ、それに答えてあげる優しいフェブ。
「たぶん色艶が良く、健康で消化状態も良好なものだろう」
最後まで話の腰を折られつつ、解散を宣言しようとした所、意外にも一番やる気の無かった生徒が前に歩み出る。
「実によく出来た教官殿である所のハーケン大佐のご好意に預かり肉食いに行きたいッスね」
不出来な生徒ほど可愛い。
兵士としての体を作るため、肉を食わせる、これもまた教育である。
あと純粋におじさんとしては若い者との交流が嬉しかったりするのは内緒。
「よかろう! 卑しい豚め! タマが潰れるほど食え!」
そんな年寄りに生徒達が反逆の牙を向く。
「では僕が店に予約を入れておきましょう」
「え‥‥ここちょっと高くない?」
高級店の座敷に連れ込まれ、不安に正座する大佐。
皆ワイワイと肉を注文し、お酒もガンガン頼む。
「いやぁ、感服致しました大佐殿。人心掌握術とはかくありたいですな」
あまり予算がないぞと釘を刺そうにも、綿貫に褒め殺しされて黙る。
「おぶ‥‥!」
口一杯に肉を頬張り、栗鼠のように頬を膨らませた植松が気道を詰まらせ悶え、そんな彼にお水を手渡す夢姫。
「ほらほら、大佐もぐぐっと!」
赤崎はその肩にしなだれかかって矢継ぎ早にお酌攻撃。
「すご〜い!」
レミィが男らしいと持ち上げる。ご機嫌になった彼は日常モードでしゃべり出す。
「ふっ‥‥おうお前ら、拷問に耐えるとか寝言いってたアホは手を挙げろ」
『ハーイ』
お肉もぐもぐしつつ手を挙げた赤崎、ミスティに向かい、お説教開始。
「ガキが、身の程をしっとけ。お前らじゃ素人フェラにも耐えれんとな!」
「ええー!? 大佐は拷問された経験があるの?」
レミィが食いつく。待ってましたと上着を脱ぐ大佐。筋骨逞しい体一面に生々しい傷跡が刻まれている。さあ褒めておくれ。
「えいっ!」
ザクっとレミィの貫手が脇腹に突き刺さる。おふっ、となる大佐。
「あ、すごーい! 全然痛くなさそう」
いいえ。内臓に大ダメージ来てます。
「じゃあこれは?」
ビール瓶で脛を強打。耐える大佐。これは面白いと皆が乗り出す。足の小指を痛打するレミィ。首をくすぐる夢姫。
「失礼します! レンジャー部隊伝統の根性試しです!」
煙草に火をつけ、丁寧に大佐の社会の窓に投下する非情な男。
「誰が子供だ、誰が」
腋をライターであぶるミスティ。
「流石大佐♪」
そんな最中にも赤崎はお酌攻撃を辞めない。
新たな肉を注文し財布を攻める植松。
「大佐! 私もお供します!」
酒の勢いで共に拷問を受けると言い出したのは副官ではなくフェブ。徐に脱いで彼の隣に横たわる。
「止めないでいいんですか?」
微笑を湛え、クールにその場を見守る元俳優は副官に尋ねる。
「面白いですし、このままで」
「おぶっ!」
維持と根性で生徒の仕返しを耐えていた大佐だったが、鼻からお酒流してリバース。
以後、一部で彼はリバース大佐と呼ばれるようになった。
「お客さん、お客さん」
額に肉と書かれ、化粧までされてる中年を気味悪そうに起こす店員。
「んあ?」
「閉店です。お勘定を‥‥」
携帯の着信音が鳴る。
バスローブに身を包んだ副官は、着信相手名を見て無視するが、あまりにシツコイので通話に出た。
『ボクだけど、お金持ってきてくれないかなー、なんて』
皿洗った後は掃除もな、そんな怒声が後ろで響いてる。
「今から会議で忙しいので。通信終わります」
パクン、と携帯を畳みテーブルの上に戻すと、TVを付けて寛ぐのだった。