●リプレイ本文
かくして、なんらかに導かれて集結した魔法少女たち。
「‥‥ここね」
面倒くさいのでもう問題のUPC軍駐留地にいます。
「うむ。ここだな、間違いない」
茜さんの呟きに答えたのはアルジェ(
gb4812)さん。見つめたその先はどよーんとした紫のオーラがグラデーションで舞い降りて、ばっちり何かあったぞオーラを漂わせているので間違いないでしょう。
『働きにきたんですか‥‥?』
『働くんですね‥‥?』
『それではどうぞ、翌日といわず今からでもどうぞ‥‥』
そして奥からぞろぞろと湧き出す死んだ目をした軍人さんたち。
「あ、いえ。ちょっと見学に来ただけなんで‥‥あは‥‥」
働け、という単語に反応し、引きつった笑みを浮かべながら後ずさりするのは天道 桃華(
gb0097)さん。
『あ、逃げるぞ!』
『逃がすな! 捕らえろ! 捕らえた奴には1時間の仮眠を許す!』
『『アイアイサー!』』
勿論この期に及んでそんなことがゆるされるわけもなく、怒涛のように襲い掛かります。
「これは中尉さん大変なると思ました! 図星ね!」
そんな兵士達の、仕事に止んだ様子を見て、夏 炎西(
ga4178)さんが‥‥炎西さん? そこのチャイナ娘が? あのー。何か今のご自身の姿に疑問は。‥‥ないんですか。そっすか。
「‥‥陽星兄様がこのままおかしくなったら姉様が悲しむの。だから、早く正気に戻して姉様を安心させるの!」
迫り来る兵士達を睨みつけ、叫ぶのはファリス(
gb9339)さん。茜さんに同行するのはいつものことですが、どうやら孫中尉の婚約者さんと小隊仲間のようで。いつも以上に意気込みを感じますが、あっし個人としては婚約者さんのためを思うならいっそ奴の呆れさせるのも一手だと思います。やだなあ嫉妬とかじゃねえっすよ。けっ。
「皆、変身なの!」
ファリスさんが叫び、応、と答える皆。
こうして一触即発、兵士迫ってますなうなこの状況ですが変身シーンです。
「ニートストーン・シャイン!」
桃華さんが手にした石を掲げると共に、眩い光の彼方からやってきます。バッタを模した感じのそれ。それから回転する変身ベルト。‥‥や、あの、それは魔法少女とは別ジャンルのような。
「輝け太陽! 日曜日の光!」
‥‥うんまあ、日曜日ではあるけどさ。まあ、中身が少女だからいいんでしょう、きっと。
「太陽(日曜日)の戦士 マジカル☆桃華!!」
ナレーション:
そう、マジカル☆桃華は、月曜日の力に対抗するニート‥‥じゃなかった、『日曜日の魔法少女』だったのである!
‥‥ってやっぱりニートか。冒頭のはあっしの聞き間違いじゃなかったのか。
「変身アルヨ!」
炎西さん‥‥だった何か‥‥は、手にした中華なべをやはり手にしたお玉で一まわし。
とたんに鍋から炎のよーなオーラが立ち上り少女の身体を包みます。
燃え上がる炎が風に散らされるようにゆっくりと後方に流れていくその後には、真っ赤にきらめくチャイナ服。
右手に持ったお玉が。左手に持った中華なべがキラン、キランと順に輝き、腰にしゅるん、とエプロンが巻きついて。
「朝粥昼定夜鳴き麺! お電話無くても即参上! 魔鍋傭兵マジカル・チャイナあるよ!」
火曜日の戦士だけに、火力が基本のようです。
「世界を覆う闇のヴェールを、光の弾丸が穿つ!」
で、おなじみ茜さん。
天に向けて放った銃口から赤いエネルギーがほとばしり、上空ではじけ散ると流星のように降り注ぎます。
降り注いだ光が手袋、ブーツへと変化して、肩から流れ落ちる光がワンピースをかたどっていくと、スカートがふわりと揺れます。
空中に浮かんだ軍帽を手にしてきゅっとかぶれば完成。
「フレイム・バレット‥‥さぁじぇんと・ぷりずむ♪」
水曜日の力をもらったということになっていますが基本、代わり映えしません。
「リフトアップ」
淡々としたこの声はアルジェさんっすね。
ここで背景が宇宙になります。空の中心でアルジェさんが胸を張り、手足を伸ばすとゴスロリ服がはじけとび、ボディラインをなめるように光が流れて黒レオタードが実体化。
そこへ宇宙の彼方から飛来したナイトフォーゲルA−0が分解し、足、手、胸と順に装着されて行きます。
両肩にコンテナが接続、そして最後には光の粒子と共に頭飾りがかたどられていくと、カッと目を見開いて決めポーズ。
「魔爪少女アルジェ・ブレード 悪の現場にただいま到着」
無表情のまま手首をきらっと翻し。正しくKV少女の参戦です。
「闇に覆われしこの世界を貫く、正義の光の一閃!」
ファリスさんも槍を掲げて変身です。舞い降りるような眩い光のヴェールと共に、エプロンドレスが戦闘仕様に変わっていきます。
ゆっくりと優雅に回転しながら、背中から天使の翼が生えていき。羽ばたくと同時に停止、その眼前に輝く光が集まり、そして光の中からナイト・ゴールドマスクが現れます。
「光に導かれ、新たな力を得た正義の味方がここに爆誕!」
槍を再び手にすると、ここから槍が更に一段階進化。刃が金色に輝き一回り大きくなると装飾も華美になっていきます。
「真魔槍少女ファリス・ノイエ、ここに参上なの! 立ち塞がる敵はこの槍で一撃必滅なの!」
そんなわけで、特別版ということでノーカット変身シーンでした。どこにそんな余裕があったんすかね?
「魔法少女、ね‥‥。【日曜日】の管轄かと思っていたけれど、皆なかなか頑張るじゃないか」
おや?
彼女達を見つめながら、物陰でこっそりつぶやくのは謎のメアリー・エッセンバル(
ga0194)さん。じゃなかった謎の紳士。初登場時には名前とIDを出すという報告書ルールにより正体は謎じゃなくなりましたがまだ色々と謎はありますのでもう暫く謎の紳士でお願いします。
「さぁ、パーティーの始まりですよ!」
ひそりと声にして、ぱちんと指を弾いたこれがなんなのかは、後ほど。
「突撃ー!」
フレイム・バレットの号令と共に、魔法少女一行と洗脳軍人集団がぶつかる!
「フレイム・バレット! いつも通りフォローはファリスに任せて、思う存分に戦って欲しいの!」
声を上げながらファリスが死角に回り、軍人の攻撃を2、3人分纏めて槍ではじき返し、そのまま薙いで吹き飛ばします。背中合わせにフレイム・バレットさんは二丁拳銃を次々と撃ちまくります。ああうん、謎エネルギーですよ。殺傷したりはしませんよ? 壁にたたきつけて一撃で動けなくしてるだけです。‥‥無事なんだろうか、それ。
『怯むなー! 新たな労働力だぞー!』
『あいつらが加われば‥‥少しは楽になる‥‥』
5人10人倒したぐらいじゃあ次々と湧いてくるご一行様。ゾンビのような目つきは畏れを知る様子はありません。
「頭、冷やせ。コンテナハッチオープン オールターゲットロック マジ刈るフルバースト!」
アルジェさんの淡々とした声音から、放たれるのは大量のK−02ミサイル。魔爪少女の必殺技、K02マジ刈るミサイルだ☆
どごーんという音と共に吹っ飛んでいく兵隊さんたち。‥‥基地内部ってこんなに広かったっけか?
まあ、そんな感じで第一波は軽く蹴散らされ、基地の廊下を進んでいく一行。しかし、すぐさま新手が!
と、そこでガーンガーンと妙な金属音が響きます。
マジカル・チャイナさんでした。お玉で、中華なべを叩いている模様。そして「おーひーーる!」と高らかに主張します。
『ひ、昼‥‥?』
何故か脚を止めて、不思議そうに顔を見合わせる兵士達。
「食べないと働けない! もりもり食べるね!」
がんがんと打ち鳴らされる中華なべに、ハメルンの笛よろしく付いていく兵士さんたち。向かった食堂には、いつの間にか人数分のチャーハンが。
‥‥いや、疑問に思わないのかあんたら。
『月曜とはいえ昼休みはしっかりあるからな、うん』
『ふぁ‥‥あー‥‥ねむ‥‥』
いいのか。まあ、疲れきった状態で腹いっぱいなればそりゃ、眠くなりますわな。机の上で突っ伏す人多数。よくあるお昼休みの光景です。
「この隙に進むアル!」
「よし! 行こう!」
よしじゃねえ。
『はっ!? しまった、あいつらが先に行くぞ!?』
今更しまったじゃねえよあんたらも。
「光の杖、ニートゲイン!」
ここでマジカル☆桃華が輝く杖を掲げます。追撃してくる兵士に――
「必殺! ニート・クラッシュ!」
掲げた杖を容赦なく叩き込むと、吹き飛ばされ、そのままへなへなと崩れ落ちていきます。
説明しよう! ニート・クラッシュとは、光の杖「ニートゲイン」のエネルギーを相手の体に叩き込み労働意欲を粉砕するという危険極まりない技なのだ!
「働いたら負けかなって思ってる」
ヒデェ決め台詞だ。ってか、硬そうな杖を豪快に脇腹に叩き込まれたら勤労意欲以前の問題な気もするっすけどね。
まあそんな感じで、マジカル・チャイナとのコンボでそのまま昼休みの睡魔から帰ってこれない方たちが多数。
かくして――
『間違いありません! この気配!』
なんだか重厚な扉の前で、水曜日が騒ぎ出します。
「ふむ、この向こうに‥‥」
「月曜日、そして月曜日に取り付かれたワーカホリックが‥‥ああ、働きたくない」
「これまでの敵とは比べ物にならないだろう。覚悟してかかれ」
「どんな相手でも、ワタシのご飯でイチコロアルネ!」
「皆で力を合わせて、正義を取り戻すの!」
それぞれに声を合わせ、手を重ねて意を決すると、最終決戦への扉が開かれます。
『来ましたか、魔法少女たち‥‥』
ゆらり、と病的な表情で出迎える孫中尉。
『働かないのであれば用は手短に済ませてください‥‥私は、忙しいんです!』
叫ぶとともにばぁんとはじけるなんかオーラ。
「くっ‥‥なんて邪悪なオーラなの?」
邪悪っつーかどっちかっつーと陰気ッすけどね。まあお近づきになりたくないのは間違いない。
「毎日を月曜日に変えるなんて野望は間違ってるの! 早く目を覚ますの!」
ファリスさんが叫び、フレイム・バレットと同時に攻撃を仕掛けます。前ダッシュしながらビームを撃つバレットの攻撃を、軽く身体をひねって避けつつ向こうもなんかオーラを撃ち出して反撃、ファリスさんの槍はつかんで止めて振り回し。
「くっ‥‥!」
「きゃあっ!」
「魔弾。魔槍の。くっ‥‥援護する」
吹っ飛ばされる二人に、アルジェさんが抑揚ない声に僅かに焦りをにじませつつ、援護に向かいます。
『ミサイル来ます! 総員、迎撃準備!』
だがアルジェさんが動くとともに、中尉も鋭く反応します。
K−02ミサイルは、兵士達の迎撃方とぶつかり合い途中で激しく煙幕を張り。
『中々の火力ですが‥‥たった一人では、弾幕薄いですよ!』
そしていつの間にか回り込んでいた中尉が、容赦なく周り蹴りを叩き込む!
アルジェさんがやられたあと、再びガーンと響く中華なべの音色。
「お昼アルヨー!」
再び中華なべをかき鳴らし、魔法料理に巻き込もうとするマジカル・チャイナ。だが孫中尉は動かない!
軽く手を振るとこれまたオーラでマジカル・チャイナを吹き飛ばします!
「うう‥‥何故私の魔法料理効かないあるか?」
『生憎と‥‥半端に管理職の立場にあると、食堂行く時間すらなくなるんですよ! 私の昼休みは2分です!』
いいながらカロリーブロックを取り出す中尉。
「アイヤー! 三食カロリーブロックとか有り得ないね! 味オンチ以前の問題ね!」
打ちひしがれ、横すわりでヨヨヨ‥‥と崩れ落ちるマジカル・チャイナ。
『ふ、魔法少女などこの程度ですか‥‥ん‥‥?』
ふとちらりと視線をやると、叩きのめされた魔法少女たちがよろよろと、それでも立ち上がろうとしています。孫中尉、ふむ、と何か呟いた後、突然誰もいない方向に向けて手にしたマシンガンを乱射! ‥‥と。
「ふ。やるね【月曜日】。ばれていたのか」
ジワリと影から滲み出すのは謎のメアr‥‥謎の紳士さん。
『無駄に騒がしいと思ったら‥‥やはり貴様の仕業か、【土曜日】!』
「‥‥やれやれ。相変らず君は僕が嫌いみたいだね。ふふ、しかしこの状況は面白い」
ぐるりと周囲を見渡す【土曜日】。
「魔法少女諸君! 君たちの力はその程度では尽きないはずだ! 特に‥‥ボクの【サイデーナイトフィーバー】の影響下とあれば、ね‥‥」
終電がすぎても遊び倒せる程の気力を与える、これが土曜日の必殺技。但し代償として翌日昼間で爆酔ですが。
「ボクのエネルギーの元は、人が「土曜日キターー!!」で得る幸せパワー。君の野望は止めさせてもらう‥‥「世界全土曜日化計画」のためにもね!」
‥‥結局、あんたもやろうとしてることは同じかい。
「毎日が土曜日となった時の事を考えてごらん‥‥? 明日が仕事という恐怖に怯える事もなく、己の楽しみを一日中感じられる日が永遠に続く。素晴らしいと思わないかい?」
うんうんと頷いているのはマジカル☆桃華さん。ニートは黙ってろ。
『そうやって‥‥土曜日に無計画にはしゃぐから‥‥月曜日になっても影響が抜けずにだるいんでしょうが‥‥っ!』
そして土曜日の言い分に、わなわなと怒りを振るわせる孫中尉。の中の【月曜日】
『毎日が土曜日‥‥? 笑わせますね。いつまでも、連日連夜遊び倒せる体力気力があると思ったら大間違いですっ!』
「ぐはぁっ!? な、何だこの、内部を直接抉られたような痛みはっ!」
中尉の言葉に、身に覚えでもあるのかなんか身悶える【土曜日】。
「うむ。確かに、油断して鍛錬を怠ると、特に女性は30代に近づくと一気に」
「「黙れ!!!」」
言ったよ。はっきり言いかけたよアルジェさん。そこにしびれる憧れる。
そして【土曜日】こと謎のメアr‥‥謎の紳士さんとフレイム・バレットが慌ててさえぎります。
『ふっ‥‥仲間割れですか‥‥醜いですね』
「くっ‥‥【月曜日】‥‥まさかこれほどの力をつけていようとは‥‥」
恐れるべきは月曜日よりもっと他の何かだった気もしますが。
「どこかに‥‥どこかに奴の隙はないの!? このニート・ゲインさえ叩き込めれば、仕事に取り付かれた中尉を解放できるはずなのに!」
‥‥極端から極端に走るな。あんたら。
「‥‥そんなバカなことをしていたら婚約者さんが陽星兄様に愛想を尽かしても仕方ないの。今ならまだ間に合うの。仕事のことはしばらく忘れて婚約者さんのことをきちんと考えるの!」
ここで、ファリスさんがようやっとまともな説得っぽいことを叫びます。
『う‥‥!? い、いや、駄目だ‥‥休んだら‥‥』
そして明らかなピンポイントワードに動揺する中尉さん。
「ここだーっ!」
マジカル☆桃華さんがそこで、一気に中尉に肉薄、ニートゲインを思い切り脳天からどごーんと行きました。行っちゃいました。
「有給使ってもいいじゃない社会人なんだもの てつを」
『有給‥‥有給‥‥は‥‥』
暗転。
●
「こ‥‥ここは‥‥?」
「あ、あれ!」
皆が暗闇にきょろきょろと視線を彷徨わせる中、誰かが指差した先には暗黒オーラにとらわれる中尉さんが。
「休みたい‥‥あの人に‥‥会わなきゃ‥‥」
『休むのか? 休むなら‥‥他のやつに取り付いてやる‥‥!』
「っ‥‥! それはっ‥‥!」
『そうだ‥‥お前が休んだら他のやつがもっと苦労するんだ‥‥それなのに一人休むのか‥‥それで平気だと思うなら、休めばいいじゃないか‥‥』
「う‥‥うぅ‥‥やらなきゃ‥‥せめてこれが終わるまで‥‥」
「こ、これはっ‥‥!」
「同じ現場の人を人質に、まるで休むことが罪悪であるかの言い草っ!」
「どうしてこうなっちゃったの? 中尉さんが悪かったの? ファリス、そうは思えないの」
「いや。仕事が終わらないのは、現場の人間の能力よりも無茶な仕事とってくる上が悪い場合が多い」
「聞いた事アルヨ。こうやって責任感ある人追い詰めて逃げられなくするネ」
「そうか‥‥暗黒月曜日‥‥毎日が月曜日になる、その計画の正体はっ‥‥」
「「「「「ブラック企業だーーーーー!!??」」」」」
※ネタです。特定の企業や業種を批判する意図は無いからね(はぁと)
「だ、駄目っ。どうにかして、あんなところから救い出さなきゃっ!」
「で、でも、中尉さん、完全に自分を追い詰めてるアル! どうやって助けるアルか!?」
「‥‥皆で呼びかけるの! あなたは悪くない、皆で支えるって呼びかければっ‥‥」
「そうだとも! まだやり直せる若さだ! ‥‥男性なら40代までは働き盛りって言われるもんね。うん」
いやまあ、人それぞれ事情はあるし、中々迂闊なことはいえない感じのあれですが、とにかく必死で呼びかける一行に、ゆっくりと顔を上げる中尉さん。
そこへマジカル☆桃華さんが駆け出していきます!
「中尉、その月曜日の力をあたしに!」
「‥‥!? ですが、この力を取り込んだら、貴女も‥‥!」
中尉の言葉に、マジカル☆桃華さんは穏やかに微笑みます。
「分かってる。上手くいかないかもしれない。けど‥‥貴方も私も、戦わなきゃ‥‥現実とっ!」
「あ、ああ‥‥それじゃあ、貴女は‥‥」
【一緒に行こう‥‥? ハロワに】
●
ここで、景色が再びUPC軍駐留所に戻‥‥いや、冷静に考えたら本当にここも駐留所なんすかね。まあいいや。戻ります。
『ぐ、ぐう‥‥何だこの光は‥‥!』
戻ってきた皆さんの眼前に広がっていたのは、中尉の周囲を完全に包む暗黒のオーラ。
「そんな! 闇がより濃くなってる!?」
「違う。あれは、中尉の中にいた暗黒月曜日が排出されているんだ。みろ」
アルジェさんが淡々と指摘した先に、小さな輝きが見えます。
そして、闇に中心から閃光のようにそれが舞い上がり‥‥。
――‥‥皆さん、有難うございます‥‥
光の中から、柔らかな声が響きます。
――‥‥皆さんの声で‥‥私は目覚めました‥‥
そして、ゆっくりと何か象っていく光。
そして!
「ここに復活! 月宮殿のプリンセス! シャイニング◎サンスター☆」
ぺカーンと現れる魔法少女。
いやまて。プリンセス基調のひらひらした格好は外見幼くなってるからぎりぎりありっちゃーありだが、ぴったりした上半身はつるぺただしスカート下にショートパンツが見えるしでなんか男の娘疑惑が。
じゃなくて。
「どうしてかな? なんだか余計に婚約者さんに申し訳ないことになった気がするの」
唇に指を当てながらしょんぼり呟くファリスさん。いや、お嬢さんは悪くない。一ミリたりとも。
いやでもね。ほら。ちゃんと解説したじゃないですか。【戦闘に参加した人員は】全て魔法少女になりますよって。一人くらいはこの展開は予想してた‥‥よね?
『ぐ‥‥今更一人増えたくらいで‥‥憎まれ、蔑まれ続けた僕の恨みが‥‥この程度で、たかが銃使いが一人増えたところで負けるものかー!』
「銃‥‥違いますね。私の武器は‥‥、私を信じてくれる皆さんの心! 軍師系魔法少女の力、見せてあげます! ひらめけムーンシャイニー軍配!」
サンスターが‥‥っていうか月なのか星なのか太陽なのかはっきりしろ‥‥手にした軍配を振り回すと、魔法少女たちの傷が言え、新たな力がわきあがってきます。そして兵士さんたちも次々と魔法少女に! だから戦闘に参加した人員は(略)。
「ここは私たちが時間を稼ぎます! 皆で力を合わせて、止めを!」
駆け抜け、戦い始める兵士達。
その中で魔法少女たちが、マジカル☆桃華さんを中心に集まります。
「この力‥‥私に、どうしたら‥‥」
「月曜日さんに教えてあげるネ。月曜日、嫌われるだけないね。月曜日と、貴女の日曜日の力。掛け合わせれば新しい力生まれるネ‥‥それは‥‥振替休日ね!」
「はっ‥‥そうか! そうだね! 皆、いくよ!」
叫ぶとともにマジカル☆桃華の体が新たな輝きに包まれていきます。
「マジカル☆桃華RX! 連休、スペシャルエナジー!」
練り上げたパワーボールみたいなもんを、ポンッと謎の紳士に放り投げ。
「ふ‥‥月曜日すら休みならば‥‥もはや恐れるものは何もない‥‥受け取れ! 【サタデーナイトスペシャル! リミットブレイク!】」
更に土曜日の力を注がれ輝きを増したエナジーボールが、今度はマジカル・チャイナの元へ。
「時間あれば、凝った料理たくさん作れるネ。皆、いっぱい食べて活力にするネ」
中華なべで受け取って、一回しするとアルジェさんの下へ。
「召還。マジ駆る☆KV」
淡々とした声音の元。受け取ったエナジーボールが巨大ロボへと変化していきます。
コックピットにアルジェさんが座ると、それぞれの肩にファリスと、フレイム・バレットが立ち。
「ブレードネイルプラズマコーティング 乱れ氷月華!」
「フレイム・バレット☆脳天ぶち抜きシューーート!」
「断罪の嵐(シュトゥルム・デア・リュヒテン)!」
三位一体の必殺技が、暗黒月曜日の胸をぶち抜き‥‥!
――‥‥ああ、ボクは、結局ずっと嫌われて過ごすんだ‥‥どうせこんな、ボクなんか‥‥
『忘れないで欲しいの』
――‥‥何だ、この輝き‥‥あったかい? それに、この光景‥‥学校?
「おはよー!」
「おはよー! 久しぶりー!」
それは朝の登校風景。笑顔で挨拶し、友人に飛びつく生徒達。
『‥‥【月曜日】はお休みの後のお友達と再会出来る日なの』
――‥‥ボクを、待っててくれてる人が、いる‥‥?
光の中、月曜日の暗黒オーラが弱まっていきます。そして、最後に残った一欠けらを、水曜日が優しく受け止めました。
――‥‥これで大丈夫。間もなく月曜日も、いつもどおりの姿を取戻すでしょう。魔法少女の皆さん、本当に有難う!
「土日祝日働く人にとって、月曜日は特別な日ではない‥‥仕事があるから、休みがあるんだ」
アルジェさんが淡々と言うと、水曜日はゆっくりと頷き。そして、世界に七つの光が駆け巡り、それぞれの曜日はそれぞれの場所に帰って行くのでした。
●
こうして世界は救われ。
「次の戦場が呼んでいるわ、行かなくっちゃ」
月曜日の力を手に入れニートの宿命を終えた桃華さんは、今日もハロワへ面接に。
「僕が美味しい野菜を作ってあげるから、君はその鍋で美味しい料理を作ってくれないか。僕の為に、毎土曜日‥‥」
「素敵御方、私これからは貴方の為に御飯つくるある」
土曜日の紳士さんは、なんかマジカル・チャイナさんを口説いてました。
「フレイム☆バレットさんにも幸せ来るとイイねv」
それぞれの日常に歩み始めた一行。チャイナが放り投げたブーケが空を舞い、そして空にENDの文字が浮かぶのでした。
めでたい‥‥かなあ?