●リプレイ本文
そんなわけで実況はあっし、天の声です。
「とっても格好いいお姉さまなの。変身してキメラをやっつけるの」
「そうそう。魔弾少女フレイム・バレット! ってね!」
以前の依頼で茜さんと会ったことのあるファリス(
gb9339)さんと潮彩 ろまん(
ga3425)さんが、報告書を読んできたと言う立花 零次(
gc6227)さんからの質問にきゃいきゃいと答えます。まだ会う前なので、本人いないのが一応の救いでしょうか。‥‥と、そんなこと言ってたら合流地点に到着です。
傭兵の皆さんを見つけると、茜さんはぺこりと頭を下げました。
「宜しくお願いします。UPC日本軍の和歌山‥‥二曹です」
あ、なんか名乗りが諦め悪い。どうにも軍曹と言う単語が引っかかるようで。
「二曹?」
聞きなれない階級にヘイル(
gc4085)さんが聞き返しました。ですよねー。
「あ‥‥ええと、曹長の、一個下」
「‥‥軍曹じゃないのか、それは」
「‥‥そうとも、言います」
堂々としていれば押しきれたかもしれないものを。自信なさげに言うからつっこまれるんですよー?
「こんにちは、茜お姉さん。お姉さんの力、ボク、凄く期待してるからっ!」
「茜姉様、お久しぶりなの。今回も宜しくお願いしますの」
そうして、前回お会いした二人の少女に見つめられると、姐さんの顔がはっきりとひきつるのが見えました。
「‥‥私は、その、今回は案内だから‥‥」
ますます言い辛そうにして、ごにょごにょと茜さんは覚醒する気がないことを告げます。
少女二人は不思議そうに首をかしげました。
問いかけようとするろまんさんを、ファリスさんがくいくい引っ張りました。
「‥‥きっと‥‥変身ヒロインは正体を明かしたがらないの‥‥」
「‥‥そっか‥‥じゃあそのときがきたらきっと変身してくれるね‥‥」
ぼそぼそと話し合い納得する少女二人。‥‥うん、この子たち100%悪気なしに「フレイム・バレットは格好いい」って思ってるっぽいんすよね。
「それが軍曹‥‥二曹の判断なら、結構です」
そんな二人をさておいて、言ったのは沖田 護(
gc0208)さん。階級を言いなおしたあたりに優しさが垣間見えます。彼をはじめ、あらかじめ茜さんの話を聞いていた他の面々は、覚醒したがらないことには納得の模様。沙玖(
gc4538)さんなんかは、なんか自分の痛いところでも探られたかのようにちょっと遠い目をしています。
「(まぁ、アレではしょうがない、か? ‥‥いや。どうもそれだけでも無い様だ)」
ヘイルさんは、なんかちょっと気になることがあるみたいですね。
「戦闘時は守りますので、まずは案内に専念してください」
再び護さんが言うと、一同同意するように頷きました。
護さんの言葉は、気遣うようで、結構突き放した言い方でもありました。迷いを抱えたまま戦場に居てもらっても危険、ってわけですかね。
「(軍曹、何か前向きなきっかけはないのかなあ‥‥)」
まあ結局、いい人ではあるんですが。
そんなわけで。
「じゃあ‥‥情報と、ここの案内、始めさせてもらいます」
申し訳なさそうに顔を曇らせて、その顔を逸らすようにして茜さんは歩きはじめたのでした。
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事前情報と、おおよその足取りを茜さんが説明しながら一行は進んでいきます。
その道行を警戒するのは主にヘイルさんと立花 零次(
gc6227)さん。ミリハナク(
gc4008)さんも一応きょろきょろと周りを見てはいますが、どうにも適当感漂います。どうせ他の人がちゃんとやるだろうとか、襲われた方が手っ取り早いとかそういう考えみたいですね。いや実際道や枝の痕跡を追ったりなんかは零次さんがかなり丁寧にやってるんでどうにかはなってるみたいですけど。他の方はどちらかというといつ戦闘が起きてもいいように警戒してる感じ。沙玖さんは‥‥なんか、ぎりぎりまで覚醒したくないご様子です。
そんなわけで、茜さんが言うこともなくなると途中からは零次さん中心に進んでいき。
そうこうするうちに、ギャアギャアと威嚇する声とともに周囲の木々がざわつきはじめます。
顔を上げると、猿っぽい生き物が凶悪な目つきで木々の合間を縫って来襲してくるのが見えました。
一同覚醒すると、ノリノリのテンションで少女二人が突撃していきます。その際にちらりと茜さんに熱視線。変身してともに戦ってくれると疑ってないようです。
とはいえ突出は危険。前衛にて警戒してた片山 琢磨(
gc5322)がフォローに回ります。好き勝手に暴れる少女たちが敵に囲まれることのないよう、一撃離脱を繰り返したり注意をひいたりして敵を分断にかかってます。
「ふ‥‥獣の分際でこの俺に牙をむこうなどと、浅はかな‥‥!」
沙玖さんが自信に満ちた呟きとともに前に出ます。ってあれ? 沙玖さんそういうキャラですっけ。
「とはいえ‥‥長引くと危険だな、俺が。くっ‥‥この手‥‥おとなしく言うこと聞いててくれよ?」
ああ、そういうキャラですか。覚醒すると。うん、貴方も大変ですね。
その横で。
「じぇのじぇのじぇのさいど〜♪ さあ皆で遊びましょう」
ミリハナクさんがノリノリで鎖を振り回してます。実に楽しそうに戦ってますがこれは多分覚醒の影響とかじゃなく素です。その楽しさを、見せつけるように戦ってます。ただ、彼女は少女二人のごとく全開で暴れまわっているかというとそうでもなく。
「そっちに行った、任す」
前線の司令塔を務める琢磨さんが最低限の言葉で伝えてくると、ミリハナクさんは即座に反応、ちゃんと周りを見ています。沙玖さんも台詞はともかく上手く盾を使って立ち回ってますね。
んでもって後ろに控えるのがヘイルさんと護さんと零次さん。何せ相手は猿。木々を使って三次元的な動きで攻めてくるんですな。後列とはいえ油断できません、ともすれば上空から背後を取ろうとしてくる相手を、ヘイルさんが二本の槍で牽制します。護さんは後方から全体を見ることで皆の指示に集中。ある時は守りを固めまたある時は攻めの陣形を作り上げます。零次さんは銃での援護。うん、なんだかんだで皆さんいいバランスです。
‥‥そんな中、茜さんは覚醒せずにそのままですけど。
「フレイム・バレット! ファリス達と一緒に戦って欲しいの!」
ファリスさんの呼びかけにも、弱弱しく首を振ります。
(「味方がピンチになれば、覚醒してくださるかな? とも考えていましたが、難しいですかね」)
零次さんが内心で呟き、ちらりと茜さんを見ます。‥‥いやまあ、ピンチじゃないですしね、貴方がた。一方的なまでに勝ってますけどね。
‥‥そんでもって、上手く連携が機能しているからこそ、それを壊したくなくて動けないんですけどね、茜さんは。
「‥‥茜お姉さん?」
ろまんさんが振り返って声をかけました。猿たちは一旦全部倒されてます。聞いてた数よりは少ないからこれで終わりじゃないっすけど。順調に倒しまくるもんだから集まりきる前に相手の先発隊を殲滅しちゃったんですな。
ってなわけでちょっと余裕が出来たので。ろまんさんはかなしそうな目で茜さんを見てます。
茜さんは‥‥まあ、自分にあこがれる少女相手に弱さも見せにくいんでしょう。ただ泣きそうな顔で苦笑を浮かべて佇むだけです。
「どうしたの? 茜お姉さんなら大丈夫だよ! 茜お姉さんのその力で、助けられてる人って沢山いるんだよ、ボク、頼りにしてるもん」
にぱっと笑顔でろまんさんが言うと、茜さんは‥‥なんというか、とうとう目をそらしちゃいます。
「茜お姉さんのバカッ! 今ここで迷ってたって、みんなの危険が増えるだけ‥‥失敗を恐れているだけだよ。自分が持つ可能性を、お姉さん自身がちゃんと信じなくちゃ」
ろまんさんが続けていいますが、答えられない茜さん。
「覚醒したくないという気持ちもわかる」
次に口を開いたのは沙玖さんでした。その表情には先ほどまでの言動に対する押し寄せる後悔が見られます。大丈夫大丈夫。魔法少女だのジェノサイドだの言ってる横では大して目立ってなかったよ。あっしがフォローしても聞こえませんけど。
「だが、力を持ってて使わない、っていうのも‥‥辛いだろ。それで目の前で誰かが傷付いたら、俺は絶対に後悔する‥‥」
その言葉にはびくりと、茜さんの肩が震えます。
立ち尽くす一行の周囲に、再び気配が生まれたのはその時でした。咄嗟に、茜さんが一歩前に踏み出しかけて。
「和歌山。貴女の悩みは貴女だけのものだ。答えが出るまでは動かないことだな」
それを遮るようにすっと手を差し伸べて、守るような位置に立つとヘイルさんが言いました。
「敢て言わせて貰うなら。貴女はなぜ能力者になった?
軍人だから? 適正があったから? 何かを守る為? 何かと戦う為?
‥‥何度でも自身に問い直せ。
そしてもし、貴女の中に『戦う』理由があるのなら。覚醒や周りの評価などは二の次にしろ。何をはばかる必要もない。前を向き、胸を張れ。それを蔑み、疎む奴などいないのだから」
槍を振るいながらヘイルさんが滔々と語ります。
多分真剣にやってくれてるんだろうけど、手前で魔法少女だの破壊の女神だのが暴れまわってる状況だと、「あ、いるよね魔法少女ものにこういう。助言してくイケメン助っ人」みたいな感想を抱かなくもない。うん、ちょっぴり思っただけなんだ。失礼。
「あんたら‥‥本当‥‥知らないから‥‥」
そんなこんなで、やがて茜さんの唇からそんな呻きが漏れます。
直後。
茜さんが逃走しました。
「――!?」
さすがにこれは一同予想外だった模様。守るとは言っても逃げ出すのを警戒してた人はいませんでしたからねー。離脱を許し‥‥追いかけようにもキメラがそれを許しません。
おっと、どうなる? どうなっちゃうのー!?
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てれってってれー
=魔弾少女隊 まじかる☆リボルバー=
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てれってってれー
=魔弾少女隊 まじかる☆リボルバー=
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冗談はさておき。
まあそんなわけで動揺が走った一行、さすがに動きに乱れが生じます。どうする? 追いかけないと。誰が? 咄嗟には判断できません。ですよねー。この状況で下手な人が追いかけると逆効果になりかねませんよ。とはいえ集まってるキメラがこれで全部とは限らない以上、ほっとくわけにもいかないですし?
足並み乱れた一行に戦況はだんだん乱戦となってきます。唯一、初めから黙々と仕事をこなしていた琢磨さんなんかは、一番初めに立ち直りましたが。あとは、囲まれるのはどうにか避けたものの、一対一、ないし敵二体という、連携が取れないやや苦しい状況に持ち込まれてます。そういえばこいつら毒なんてのももってました。今のところ皆さん抵抗しているようですが、長引けば分かりません。
「きゃっ!」
悲鳴を上げたのは前に出ていたファリスさん。顔に焦りと疲労‥‥それから、期待が叶わぬ絶望でしょうか? そんなものがにじみ始めて――
ファリスさんの目の前の一体に、銃弾が撃ち込まれました。
‥‥を?
「良い子を惑わす悪いキメラも! 黙らせちまえば皆よい子! 今宵、熱い鉛玉の教育を受けたいのはどいつだぁー!?」
そして朗々と響く声。
誰だ‥‥ってまあ今さら言う気にもなりませんけど。
「粛清と輪廻の鬼教官! フレイム・バレット‥‥さあじぇんと・ぷりずむー♪」
「「「「‥‥‥‥」」」」
沈黙する一行。そりゃそうだ。うん、今一度聞きたいんだけど、あんたら本当にこいつ覚醒させてよかったですか。
「フレイム・バレット!」
「フレイム・バレット!!」
ああうん。約二名には良かったみたいです。いいのかそれ。
「待たせたねマジカルろまん! 魔槍少女ファリス! さあ一緒に行こう!」
「「うん!」」
茜さん‥‥いやフレイムバレットの呼び掛けに、お二人ともノリノリで応えます。どれくらいノリノリかっていうと一旦覚醒といて再覚醒したくらい。演出の為に。
ろまんさんは髪がするする伸びて勝手に三つ編みが出来ていき、最後に黄色いリボンがしゅるん、と止まります。
「魔剣少女マジカルろまんA(エース)‥‥銀河連峰遥かに超えて、光と共に只今参上!」
‥‥どうやら彼女も二期に突入してる模様。ですが別に転職したとかあまつさえ上級職になったとかありません。
ファリスさんは全身が光で包まれ、その背にふわりと羽が現れます。そして装着される【ナイト・ゴールドマスク】。
「魔槍少女ファリス、ここに参上なの!」
彼女は元のまんまですね。いや、人気だからこそのロングランかもしれません。‥‥彼女の中で。
ちなみにこの間キメラは大丈夫なのかって? 大丈夫なわけありません。他の皆さんが一生懸命戦ってます。実際のアニメじゃあるまいし、変身シーンに敵が一々待っててくれる道理はありませんね。
まあでも。
なんだかんだで、茜さんが無事戻ってきたことに安堵して、他の方々も調子取り戻しまして。
こっから先はいちいち説明する必要もないというか、そんな気力もないというか‥‥。
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で、無事にキメラを殲滅したそのあとに。
相変わらず、体を隠すようにしゃがみこむ茜さんの姿があるわけですが。
「‥‥あの」
誰かが声をかけようとして。
「うん。待ってて。なにはともあれ着替えに行かせてくれる武士の情けがあるのなら」
「ああはい、どうぞ」
そうなんです。結局茜さんがあの時なんで逃げ出したかって、以前ファリスさんに見立ててもらった魔法少女服に着替えに行ってたのでした。うん、やっぱり実際のアニメじゃあるまいし、着替えようと思ったら自力で着替えるしかないわけで。人前で着替えるのはまずいという判断力がアレにあったのはむしろ奇跡。
そんなこんなでしばらくお待ちください、の後。
「えっと‥‥覚醒状態がどんなだろうと、足手纏いにはならないだろう。連携さえきちんと出来ていればお前の好戦的な戦闘スタイルは武器になると思うぞ?」
沙玖さんがちょっと躊躇ってから声をかけました。
「‥‥どうかしらね‥‥」
まだ顔が赤いまま、茜さんはぽそりと返します。ただその声音は、先ほどまでの後ろ向きなだけではないようです。
「‥‥なんにせよ、自分の意思で覚醒したんだ。何らかの答えは見えたのか?」
ヘイルさんが、微笑んで言いました。
「‥‥。いや。分からない。正直まだ、分からないわ‥‥」
ぽつぽつと茜さんは答えます。ただ、何か一つ、考えてることはあるみたいですね。
ひとまずはそれでいいさ、とヘイルさんがなんか分かったような口調で言いました。
ま。なんにせよ。
今回も無事、キメラ退治完了です。
ではフレイム・バレットさんのセリフをリフレインして〆としましょう。
「来世はいい子になれるといーね☆」
‥‥相変わらず、戦場ヶ原の理屈は最悪だ。