●リプレイ本文
ただの警戒中の緊張ではない、微妙な空気の漂うセンター内で、幾人かの傭兵が兵士たちに声をかけて回っている。
「きつい戦いとなるが‥‥諦めなければ、必ず光明が見えてくる。敵に惑わされず、必ず勝つという意思を貫き通せ。それが、勝利への第一歩だ」
鹿島 綾(
gb4549)は、一人一人にそう声をかけて回っていた。
夏 炎西(
ga4178)は、夕食時を見計らって、ありあわせのものですいとんを作って配り歩いていた。
ありあわせ、とはいうが、消化と腹もちが良く適度な塩分水分の取れるものをという気遣いがそこにある。
「必ず何とかして見せます。だからどうか、諦めないで下さい」
渡すさなか、落ち着かない様子の者がいれば穏やかに肩をたたき、語りかけ、話を聞く。
「お! 炎西サンそれうまそーッスね! なァ折角だし‥‥あっちで皆でメシ食わねッスか?」
そんな炎西を見て、ちょうどいいとばかりに声を上げたのは赤槻 空也(
gc2336)だった。
炎西から幾つかの椀を受け取ると、さりげなく兵士たちを誘導するようにしながら配っていく。
「空にぃ♪ ボクも手伝うっ」
そういってぴょこぴょこと近づいて行くのは火霧里 星威(
gc3597)だ。
「はいどーぞ♪」
と少年ににこにこと渡されれば、余計に無碍にもできないだろう。自然と、一つの輪が出来ていく。
「‥‥なぁ、皆なんで兵士になったんスか?」
そうして、皆で食事を進めながら、タイミングを見計らって空也が口を開いた。
自分はバグアに家族や友人、皆殺されたと、先に空也は己の胸の内を明かす。
兵士たちの反応は様々、そして複雑なものだった。兵士たちには、何故戦うのか? といえば、徴兵されたから、命令だから、という答えしかない者もいるのだ。そんな者たちには、空也の告白には、どう答えたらいいか分からない。
「ね、ね! おじさんタチは子供トカいるのー?」
星威は、何人かの兵士にそう問いかける。苦笑して、いると答えた兵士には、「あはっ♪ じゃー絶対勝って帰らなきゃ♪」と励ましていた。
星威の無邪気な態度に、微笑ましさを覚える直後に、彼が傭兵としてここにきていることに痛ましさを覚えた者もいるのだろう。僅かに、気遣う視線が向けられる。
「‥‥怖くないのって? ‥‥ううん、ホントはすっごく怖いの‥‥。手ぇ‥‥ずっと震えちゃう‥‥でも‥‥戦わなきゃ‥‥皆死んじゃうもん‥‥!」
そんな相手には、少しだけ弱気を見せて、でも最後は気丈にふるまう。
何人かの兵士は、星威に、まだどこかぎこちないながらも笑顔を見せ、時に軽く頭を撫でていた。
(見た目の効果、っていうのはあるわよね。私も、子供でも頑張っている、という姿を見せるのがいいかしら)
お茶を配りながらそんなことを思うのはエヴァ・アグレル(
gc7155)である。
(エヴァは子供じゃないけど)
もっとも、見た目はともかく心は立派なレディのつもりで、そんなませたことを思っていたりもするのだが。
ともあれ。
「エヴァは逃げないわ。一時の雇われ傭兵なんて無責任な事は言わない。この戦線に命を賭ける」
お茶を渡しながら、しっかりとそう声をかけて回り。
「沢山の人がこの場所に積み上げてきた想い、犠牲‥‥労力‥‥絶対、無駄に終わらせないんだから」
放つ言葉、それ自身は、打算も何もない、紛れもないエヴァの本音の強い意志。
「こんなにも動揺するかぁ、抜け殻の言葉に」
一方、まだ反応の重い兵士たちに、不思議そうに呟くのはヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)だ。その傍には、彼の妻である流叶・デュノフガリオ(
gb6275)が座っている。
兵士たちの何人かが、聞きとがめて怒りを込めた視線をヴァレスに送る。
「少尉みたいに激昂するものだと思ったけど。自分らの尊敬する人、その「姿」が体よく利用されてるんだから。どれだけ同じだろうと、心が根本的に違うなら、別人だと俺は思う」
初めから挑発して発破をかける目論見もあったのだろう。怒気に構うことなくヴァレスは続ける。そして、例えば、だけどね、と前置きして。
「流叶がヨリシロにされたら、俺が必ず手に掛ける。何を捨てても、世界が許さなくとも、流叶の尊厳だけは守り抜く」
例え話にもかかわらず、そこには真に迫る凄みがあった。気圧されて、兵士たちは結局何も言えなくなる。
「ま、絶対死なせないけどね♪」
だが、ヴァレスはすぐにそう言っていつもの空気に戻ってしまった。兵士たちに、否定も、肯定も言わせないまま。
「‥‥馮少佐って人はどんな人だったのか。聞いても、いいかな」
微妙な空気が漂う中、それでもヨリシロの話が出たのは一つの機会とみて、美崎 瑠璃(
gb0339)が側にいた兵士の一人に問いかけた。これまでの戦いで知り合った兵の一人だ。瑠璃の顔を認めると、躊躇いがちにだが少し話を聞くことが出来た。
「生き残ることを諦めることは、人類の勝利を諦めるのと同じってその人は言ったんだよね? それならさ、以前の馮少佐がさっきのあの場に立ち会ってたら‥‥きっと、孫少尉と同じ反応、してたんじゃないのかな?」
ぽつりと、瑠璃は言った。
話を聞いて改めて、彼らにとって大きな存在だったのだろうなということが分かる。
それでも、諦めないでほしかった。
「それに、あたしも往生際悪い方だからさ。簡単に諦めるよりは、1分1秒でも粘る方を選びたいかな、なんて。――あー。我ながらあたし、こーゆーセリフ絶望的に似合わないなぁ‥‥」
想いを、上手く言葉に出来なくて、最後はただ、誤魔化すように笑うしかできない。
立ち直ってほしいのに。
自分たちだけでは勝てない、一緒に戦ってほしいから。
瑠璃がそう思った時、ふらりと現れたのが沙玖(
gc4538)だった。
「あー‥‥」
どことなく居心地悪そうにしながら、兵士たちを見渡して、口を開く。
「その、いつも戦闘でフォローを頼んでいるがありがとう、助かっている」
慣れていないのだろう。人前で話すことも、素直に礼を言うことも。
ひどくぎこちない言葉だった。
「また援軍も来る予定だし頼りにして‥‥いる」
言うだけ言うと、またふらりと立ち去ってしまう。ここにいない、別の兵へとまた声をかけるために。
不器用な態度はしかし、だからこそ真実味もあった。あれはきっと、本音だからこそ生じる照れ。任務の為にと演技で言っているなら、もっと上手くやるだろうから。
「役に、立ってるのか」
一人の兵士が、ぼそりと応えた。
「俺たちでも‥‥役に、立つのか」
声を出した兵に、そこを始点として全員の兵士に向けて、その場にいたすべての傭兵が兵士たちに笑顔を向ける。
ようやく、兵士たちの中に顔を上げるものが現れ始めた。
「‥‥俺‥‥元ぁただのクソガキなんで‥‥性根は弱っちぃんスよ」
沙玖の、同じ小隊で戦う頼もしい仲間の背を見送りながら、再び口を開いたのは空也だった。
「だから俺ぁ常にヒトの世界に居たいんス。だから‥‥ヒトを裏切らねェ。結構そんな傭兵‥‥多いッス」
空也の最後の言葉は、これまでの会話の流れでがぜん、説得力を増したことだろう。
「所属は違っても…背中預ける仲ッス。<ヒト>の勝利! 掴み取ろうぜ‥‥!」
まだ、空也の言葉に力強く応えられるものは少ない。
だが、傭兵と兵士が作る輪、そこから、抜け出そうとする者も目を伏せようとするものも気がつけば一人もおらず、まだ危うさを残しながらも温かい食事の光景はしばらく続いていた。
「――謝副長。相談があるのですが」
そのころ。孫小隊の副隊長である謝 雷峰に相談を持ちかけていたのは、秋月 祐介(
ga6378)だ。
あえて、馮元少佐の内応に応じ交渉を要求する策を取りたい、と。
受けねば内応が罠であり、次からこの手が使えなくなる。
心理的分断を狙うなら、交渉を受ける筈だというのが祐介の考えだった。
「もし、この手を打つなら、一時的にでも味方を抑えられますか?」
この策の最大の問題は、援軍に来たはずの傭兵たちが降伏すると言うその状況が兵に与える動揺だろう。策のはずが、現実に裏切りに走る兵が出てしまっては元も子もない。
副長の答えは‥‥
「僕に言われてもなあ」
という、えらい投げやりなものだった。ずっこけそうになるほどあっさりだった。
「まず一つ。現状ここには僕らを含めて3個小隊が詰めてます。とりあえず、ここの3隊に上下関係はなくて、別個に指揮官がいる状態。つまり、別の隊の人まで僕らは原則口出しにくいし、どんな人がいるかもちゃんと把握してないからそこは本当、分からないっていうか無理だと思っといた方が無難です」
そうなのだ。今ここにいるのは孫小隊だけではない。やるのならば相当きちんとした根回しが必要だろうが、一人でそれをするだけの時間的余裕があるかどうか。次の敵襲がいつあるか分からないのだから。
「そんで、うちの小隊にしたってですね。っていうか本来、うちの小隊が一番問題ですよ。いつか言いませんでしたっけ? 僕らは基本的に寄せ集めです。使いにくいって言われ続けて、じゃあ辞めますって言えば能力者ってだけで人格批判や脅迫まがいのこと言って繋ぎとめようとする上官だってざらでしたよ。一般兵だって敗走部隊の生き残りをかき集めたってのが始まりで、全員死ぬような目にあっててもう戦いたくないって思ってるのに、易々とそれを許せないほどの人材難が立ちはだかるわけです」
この際だからこれまでの鬱憤をぶちまけてやれとばかりに謝副長は語る。
「こんな状況じゃなくても。普段から僕らが一致団結して困難に立ち向かう、なんて無茶振りなんです。僕だってね。ちょっとでも優しい顔する上官が現れたら隙をついて泣きついて辞めてやろうって常々狙ってるんです」
そこまで聞いて、祐介は、おや? と思ったが、あえて何も言わないことにする。
「――僕に言われても、無理です」
最後にもう一度、きっぱりと謝副長が言うと、祐介はただ成程、と頷いた。
「‥‥すると結局、彼らのことは彼次第、ですか」
呟いて祐介は、視線をいずこへかと向ける。
●
頭を冷やす、と言っても何か明確にすべきことが思いつくでもなく、ただ彷徨うように施設内を歩いていた孫少尉に、最初にはっきりと話しかけてきたのは白鐘剣一郎(
ga0184)だった。
「前回の時でもしやと思ったが、あれは知り合いか。詳しい事を聞いても?」
「かつて、軍でお世話になった方です‥‥でした」
まっすぐ問いかけてきた相手に、ひとまず答えられたのはそれだけだった。
「なるほど。それならあの反応も頷ける」
それでもこちらの口の重さから感じられてしまうものはあったのだろう。剣一郎は鷹揚に頷く。
指揮官として取り乱すのは頂けないが‥‥と苦笑して、それから、一言だけ残して立ち去っていく。
「あら、孫少尉。お散歩かしら。ご機嫌いかが?」
そう言って、スカートの裾をつまんで優雅に礼をしながら声をかけてきたのはエヴァだ。
ぎこちなくも笑みを浮かべて挨拶を返すと、それがまずかったのか。
少女に強くは出られないだろう、とみなされたのか、その後ずけずけと色々言われた。
内容が内容なら、責任を知らない子供の意見だ、と流されてしまう態度でもあったのだろうけど。そうしてしまう気にはなれなかった。
言うだけ言ってパタパタと走り去る彼女を、しばらく見送り、また歩き出す。
その次に近づいてきたのは流叶。
「随分と‥‥似合わない大声だったね」
大人びた口調は覚醒しているからか。今彼女がそうする理由は何なのだろう。
傭兵にも心配を広げてはいけないと、誤魔化そうと口を開いた矢先、広がる甘い味に、喉元まで上がっていた言葉が霧散する。
「思いを押さえ付けていた‥‥か。そうだろうとも‥‥だから此れ程、皆、困惑しているのだろう」
チョコレートの味だ、とようやく認識した時には、再び流叶に先に話しはじめられていた。
「慕われる者、だったのだろうね」
誰のことなのか、固有名詞はあえて口に出さない。だが誰のことを言っているのかはあからさまだったし、返す言葉が出てこないのは口の中に残るチョコのかけらのせいではないだろう。
そのまま暫く、流叶が一方的に話す形になる。
「――失礼、‥‥小娘の戯言と思うかも知れませんが」
そうして、最後には覚醒を解いた口調でそう言って。
「必要だと、思いましたので」
礼と共に、背を向けて歩きだしていった。
少しだけ外の空気を吸おう、と、建物から一歩踏み出したところで、風が煙草の香りを運んできた。記憶に残るのとは別の香りだが、思わず孫少尉はそちらに顔を向ける。
紫煙を燻らすのは杠葉 凛生(
gb6638)だった。
「どうだ落ち着いたか」
かけられた言葉に、ごまかしがきく相手ではないだろうとすぐに諦めて、ただ申し訳なさに視線を下げる。
そうしていると、
「お前も吸うか?」
すっ‥‥と、目の前に煙草が差し出される。
渇望に、喉が痛いくらいにひきつるのを感じた。そのせいで、しばらく、声も、手も出ない。
「なんだ禁煙中か? 女にでも言われたか」
そうして、逡巡するうちに差し出されたそれは手の届かない所へしまわれてしまった。
禁煙の理由を問われ、お預けを食らった欲求を抑え込むためにと、己に言い聞かせるために答えを口にする。
聞き終えた凛生から返ってきたのは呆れ気味の苦笑。
それから、短いやり取りの後に立ち去る凛生に。
「すみません‥‥そちらは、以前お会いした時と‥‥変わられましたか?」
孫少尉がそう言うと、凛生は一度振り向いて、口元にかすかな笑みを浮かべた。
「こちらにいらっしゃいましたか、少尉」
すいとんが入った椀を手に、炎西は孫少尉の元へも訪れていた。
「一晩食べないと力が出ません。どうか少しでも」
渡された椀を手に、どうにか、「ええ、ありがとうございます」と応える。
それでもすぐ手を付ける気にはならなくて、徒に椀の中身を軽く箸でかき回していると、その様子を見て、というわけではないのだろうが炎西が話しかけてくる。
「憎しみも悲しみも怒りも、人の内から湧くものは練れば大きな力になると私の師匠は言ってました。ただ、正しき方向に定めてやらねば心を壊してしまうと」
視線を落とす。何とはなしに、椀の中でくるくると回るすいとんを見つめる。今の己の気持ちは、どのように練り上げればいいのだろう。迷いを察するかのように炎西が再び口を開いた。
言葉と共に、料理を咀嚼しはじめると、炎西は満足したように微笑む。
優しい味だった。
「‥‥孫少尉」
戦いが始まる前。最後に孫少尉と会話したのは小鳥遊神楽(
ga3319)だった。彼女は、あらかじめ二人で話し合いが出来るようあらかじめ頼んでいたのだ。気は重いままだったが、時間が来ると少尉は律義に約束の場所へと向かっていた。
「‥‥馮少佐の事は聞いたわ。動揺するな、逃げるな、なんて奇麗事を言うつもりはないわ。でも――」
会話は、それほど長くも多くもなかった――と、思う。
もっとも少尉にとっては、あとからこの時のことをじっくり思い返す余裕はなかったので、正確なところは自信がないようだが。
やりとりのあと、神楽の言葉に、少し考えるように視線を逸らした孫少尉に、神楽は更に近づくように体を伸ばした。
そうして。
「‥‥勝利のお呪いよ」
微かな囁きと共に。
――頬に、柔らかく温かい感触が残された。
●
翌昼。敵影発見の報がもたらされる。
援軍到着は、まだだった。
まだ、準備には若干不安が残る。それでも、やるしかなかった。
編成を組んで迫ってくるキメラに、傭兵たちもチームを組んで相対する。
A班、前に出るのは綾、ヴァレス、流叶。後衛は祐介とエヴァ。
前のマスドライバーをめぐる戦いでもトリオを組んだ三人が再びここで連携する。
敵は陣形から想像がつく通り、パワー型キメラが前を塞ぐ形で立ちはだかり、鳥が一撃離脱による遊撃、離脱を援護するかのようにトカゲ型が細かい砲撃を繰り返してくる、という、覚悟と対策がなければかなりうっとおしいものだった。
だが、ヴァレスと流叶が、その機敏さを持って人型を撹乱すると、隙間をこじ開ける。
トカゲが援護射撃に来ると読んでいたエヴァが、開いた隙間を縫って弓でトカゲを攻撃、その動きをけん制する。
そして、
「はっ!」
気迫と共に突き出した綾の槍から放たれた衝撃波が、鳥型の羽の根元を正確に打つ。狙い通りそれは鳥型キメラを地に叩き伏せた。バランスを崩した敵が体勢を立て直す前にもう片方の槍で貫く。飛行というアドバンテージを生かす間もなくあっという間に鳥型は討ち取られていた。
そして、チーム全体を祐介がスキルで援護し、治療する。
B班。前衛が空也と沙玖。後衛が瑠璃、凛生、星威。
トカゲから狙いたい沙玖だったが、予想はしていたが人型に阻まれて難しかった。空也が動き回り撹乱する形で、沙玖が一撃を狙う隙を作ろうとする。
敵の数が多いうちは、凛生が適宜制圧射撃を放つことで被害を抑え、瑠璃がこまめに強化と治療を施す。
A班よりは若干、こちらのチームの方が苦戦が見られた。
だが突破を許すほどではない。
傭兵たちは善戦し、また戦いのさなかも声を上げ、兵たちに想いを伝え続けた。
声だけではない、直接的な援護もある。
「今行く、十秒持ち堪えてくれ」
剣一郎と神楽は遊撃班として、戦場のあちこちを駆け巡っていた。バイクにタンデムし、現場に急行しては乗り捨て、突破されそうな点を瞬間的に補強する。
兵たちは善戦はしていた。数だけが頼りの銃撃でも、きちんと合わせれば敵の照準を阻み、羽ばたきを邪魔することが出来る。だが人型キメラにだけは、ただの銃弾では豆鉄砲にもならない。
ここだけは能力者兵に頼らざるを得ず、その能力者兵が負傷した瞬間が一気に危うくなる。
炎西は、あらかじめ傭兵と兵士、双方に頼んで兵士側に混ざって参戦していた。要請を受け、主に人型キメラの抑え込みに回りながら、適宜兵士側の状況を傭兵たちに伝える。
A、B各班が、一つのユニットを撃破する度に、状況を受け適切な敵を選ぶ。移動の隙などは遊撃班が埋める形で、どうにか前線を保ち続けてはいた。だが若干、戦力の偏りがあることは否めない。特に鳥キメラの毒が地味に厄介で、一部傭兵や能力者兵の体力をじりじり削っていた。そして兵は、一度突破を許せば総崩れになる――常に危うさを感じながらの戦い。動きに、焦りを見せる者も現れ始めて。
「援軍にきました! 安心してください!」
希望を与えようと、腹の底から張り上げた、大きな大きな声が響いてくる。
援軍。
声に振り向く一同の、真っ先に目に留まったのは――
●
☆よくないおとなのきぐるみげきじょう な〜が君(※1)とな〜がちゃん(※2)☆
りゅうじんのな〜が君とな〜がちゃん、今日はたのしいピクニック。
おや? キメラがたくさんいるね。
「みぎゃ」
「みぎゃ」
これなら血の花をいっぱい咲かせられるね。な〜が君とな〜がちゃん、とってもうれしそう。
ちかよってきたキメラに、な〜が君がほのおを吐いて(※3)、けしずみにします。
そのうしろでな〜がちゃんがこっそりとゆみをうつと、とりきめらのどてっぱらにおおあながあいて、せいだいに血のあめがふりました(※4)。
「ちょっ‥‥なんだこれっ! ふざけんなぁっ!?」
あら? こえをあげておそってくるのは、もしかしてな〜が君とな〜がちゃんがだいこうぶつのきょうかにんげんかな?
「みぎゃっ♪」
な〜が君が、光る爪(※5)をのばして、けいかいなすてっぷでほんろうします。
そのすきに、な〜がちゃんがおのをふりあげて(※6)おそいかかります。
こんなにたのしいピクニック。
でもな〜が君とな〜がちゃんはしゅごしんだから、じんるいのみかたはぜったいにおそわないよ。あんしんしてね。
※1【ZOO】竜のきぐるみ装備のUNKNOWN(
ga4276)
※2【ZOO】竜のきぐるみ装備のミリハナク(
gc4008)
※3 口に仕込んだ超機械「カルブンクルス」
※4 両断剣・断を使ってます
※5 ライトニングクロ―
※6 滅斧「ゲヘナ」
●
‥
‥‥
‥‥‥え。
突如迷い込んできた異世界に、展開に付いていけなくなるものが多数。
以下立ち直れた順。
1.同行していた後発組
2.知能がないので驚きも少ないキメラ
3.異常事態にはある程度慣れっこの先発組傭兵 ←イマココ
4.元々いっぱいいっぱいで戦っていた兵士たち
5.アレに狙われる強化人間ズ
「な、なんだぁああ!?」
兵士の一人が悲鳴を上げると同時に、混乱が伝播していく。
銃撃が乱れ、そして鳥キメラの一匹が兵士たちの群れに突っ込んでいく。
『な‥‥なんだあれは! 味方なのか!?』
対処に悩む指揮官の一人が通信を入れてくる。
「味方です! 落ち着いて!」
孫少尉が慌てて応えるが、
『ふざけているのか!? 戦場をなんだと思っている! 我らが命をかけている横でも、彼らにとっては腕試しの遊び場でしかないというのかね!?』
「そうではなくて‥‥とにかく、戦線を支え直します! 今援護に向かいますから、どうにか防衛と負傷者の撤退をお願いします!」
八つ当たり気味の通信を一度切ると、周囲に視線を巡らせる。幸い、最も混乱が広がるのは強化人間だ。抑えることは決して不可能ではない。
後発組からまっさきに飛び出してきたのは、ジーザリオを駆る崔 南斗(
ga4407)だ。
「すまない! 俺は負傷兵の搬送の手伝いに行く! 手近な班に合流してくれ! 夏、状況よこせ!」
南斗はそう言って同行する西島 百白(
ga2123)と不破 炬烏介(
gc4206)に声をかけてから、先発する知り合いに状況を尋ねる。
百白と炬烏介の二人は、無言で頷いて車から降りると、とにかく一人でも多くの敵を殲滅すべく駆け出していく。
同時に、謝副長に一時指揮を任せ、混乱する兵の元へ飛び出そうとする孫少尉を、制するように駆け抜けていく一団があった。ソウマ(
gc0505)、蒼唯 雛菊(
gc4693)、鍋島 直人(
gc7516)のチームだ。
「ソウマさん、頼りにさせてもらいますの」
後衛に声をかけて追い抜いて行く雛菊に一瞬、足止めを食らうように立ち止った孫少尉に、直人が丁度、とばかりに一声、かけていく。
「状況は簡単にですが聞いています。‥‥孫少尉、煙草は何時だって諦められます。でも。生きる事だけは諦めないでください。皆の為にも」
その言葉に、本当に一瞬、孫少尉は動きを止めた。図星。今の己の全てを懸けても叶わない困難が立ち向かったら、一番最初に諦められるものはなんだろうと、微かによぎった答え。初対面の、人づてに話を聞いただけの青年に、見事に言い当てられた。
ほんの一瞬だけ立ちつくした、その時に。
『‥‥なにやってんだテメェら』
誘惑の声は、再びもたらされた。
『もう一度。聞くぜ。無駄に死人が出る前に、ここ明け渡す気がある奴はいねェか。もういい、ここまでよく頑張った。必死こいて弱い奴が命かけなくたっていいじゃねえか。こっちきて、命なんて呼ぶ必要ねえ強い駒を使いたい奴はいねえか?』
その方が楽だし、よほど兵としての、指揮官としての才能を遠慮なく発揮できる。声は告げる。
「それは違う! ここで裏切れば残るのは後悔しかない! あの言葉には裏切った後に俺たち人間が抱く感情なんてまるで含まれていない!」
カルマ・シュタット(
ga6302)が必死で叫ぶ。
「‥‥バグアは人の尊厳を踏み躙るのがよっぽど好きなようですね」
ソウマが、クールな彼が珍しく嫌悪感をあらわにして呟いた。
こんな誘惑に負けるなんて、あっていいはずが――
「馮少佐‥‥」
応えるように呟いたのは、孫少尉だった。
「正直に言えば、私は辛いです。命を掌に乗せることも、他の命を奪うことも」
志願したわけでもなければ指揮官としての正規の教育を受けたわけでもない、普通の青年だったのだから。
どうして自分が、と思う。
どうせ自分など、と思う。
なのに。
なのに、どうして。
「‥‥守りたいものさえなかったら! 戦争なんてしたいものか!」
どうして、ここにいる者たちは、自分などを気にかけ、声をかけるのだろう。
どうして、こんな思いまでして、自分はここで戦い続けるのか。
――見知った相手の声と言葉で甘言を並べる。そこに迷いを感じるなとは言わない。
しかし、ここで連中へと降るなら、今まで戦って来たのは何の為か‥‥。
自分の戦う理由を忘れないでいて欲しいと、俺は思っている
「バグア側には行かない‥‥行けるわけがない! 壊すだけの勝利になんて意味がないのに戦い続けるなんて、それこそ地獄でしかないでしょう!」
それでも、消しきれない想いを叫ぶとともに、キメラに向けてSMGを向けて放つ。
――相手は借り物で戦ってるに過ぎないわ。
直接の教えを受けた貴方の方がずっと上だとエヴァは信じてる。
‥‥弟子は師匠の教えに泥を塗っちゃ行けないのよ?
「戦わねばならないのならば私はこちらで戦い続けます。馮少佐、貴方に言われたとおり、最後の最後まで諦めず、こちら側で‥‥」
あらためて、与えられてきたものを思い出す。その想いを。
『俺の‥‥なあ。例えば最後に、俺がなにを思ってたか、教えてやろうか?』
惑わすように、あるいは挑発するように、重ねた記憶と同じ声が返ってくる。
――だが、踏み躙られているだろうか?
その言葉は、別の言の葉だ、別の矜持の言の葉だ
君が慕っていた者の矜持は、その言の葉と同じかい?
違うだろう、そうじゃないだろう、違うなら
違うと叫べ、その矜持を貫き通せ、通す限り、それは
‥‥誰にも、神にも、踏み躙れはしない
「勘違いするな。貴様の言葉など必要ない――貴様に言ってるんじゃ、ない!」
呼び掛けた名は、伝えるべき相手は今声を発するソレではないと、預けられた言葉の力を借りて、偽りの言葉をはねのけて。
――いつまでも上官に憧れている部下気分でいいのか
お前の部下には誰が指針を示してやるんだ?
今、あいつらはお前と馮、どちらについて行くべきか秤にかけている
お前、バグアに部下の信頼を奪われてどうする
部下の命を救えるのはお前だけだ
馮を越えてみせろよ
そして己の殻を破れ‥‥できるだろ?
「私は‥‥命を守るために戦うのだと、己に言い聞かせてきました。時には選びながら、ただ一つでも多くの命をと。でもそれだけじゃない‥‥どうあっても戦う以上苦しまなければならないのなら、その先に、笑顔があると信じて戦いたい」
発破をかける言葉に己を奮い立たせて、過去よりも先へ。
――大切な人から受け取った大切な想いを、
今度は少尉の御言葉で私達に、皆さんに伝えて下さい。
きっと伝わります。孫陽星少尉殿。我等に檄を
「だからどうか! 皆で生き延びましょう! 弱い己が苦しんだ分、幸せを作れなかったら苦しむ甲斐がないでしょう! だから! 守ったものの命を、貴方の死で、絶望で翳らすことのないように! 我らは、最後まで顔を上げて戦いましょう!」
そうして、言葉は、今はここにいない恩人から、今共に闘うものへと受け渡されて。
『‥‥くだらねえ』
殻を剥されたヨリシロは、心底つまらなそうに吐き捨てる。
『どれだけ飾ろうが、テメェが言ってんのは所詮、戯言だ! 絶対兵が死なねぇ戦争なんてあるか! 無駄なあがきだ‥‥大口は余計にテメェの首絞めるだけだってのがわかんねェか!』
それは容赦のない事実でもあった。死に抗おうと努力すれば、抗いきれなかった時の重みはのしかかり続ける。これまでの重みは決して消えず、きっとこれからも増える。
それでも。
――あたしは少尉の事を信頼しているわ。
だから、少尉もあたしを信頼てほしいわね。
必ずその信頼に応えるから
「それでもまだ‥‥私は、信じられるものがありますから‥‥」
血と後悔にまみれる覚悟で、それでも希望を目指していく。
‥‥傲慢だろうか。無責任だろうか。それで天秤にかけられるのは、己の命だけではないのに。
迷いを振り切るように、前に出た孫少尉はSMGの引き金を引き続けた。多くのキメラを巻き込むよう狙いながらも、弾丸と共に想いをすべて吐き出すように、撃って撃って撃ちまくる。
だがいつしか、背後の兵が呼応して射線を重ねていた。やはり、思いの丈を吐きだすように。重ねるように。
硝煙が立ち込める。視界が煙る。
――Smokin’Here.
「‥‥それでいいとおもうぞ、孫少尉」
リロードの隙を埋めるように、一つの影が割り込んでくる。
「この言い方が正しいのかは分からないが。貴方はいつまでも何かに遠慮している必要はないと思う。許せない事があるのなら叫べば良いし、成し遂げたい事が在るのなら声を上げるべきだ。貴方がどんな人間だろうと今更それで離れていく部下や仲間はいないと思うぞ。全てを忘れて、ではなく。今までの全てが形作る一人の人間として。
――遠慮はいらない。貴方は存分に『孫 陽星』として在ればいいんだ」
差し伸べられる腕は、言葉は、ヘイル(
gc4085)のもの。
『‥‥くだらねえ! なら後悔しろ! テメェらの命ごと、くだらねえ理想なんざ叩き潰す! 茶番は終わりだ!』
宣告と共に、奥から無数のキメラの気配が生まれる。
「聞きましたか! あれが‥‥今のアイツの正体です! どうか惑わされないでください! ヨリシロに、前の姿を期待して近づけば必ず後悔する!」
カルマが、逆にチャンスとばかりに声を張り上げた。
「裏切るなら、後は気にする事は無い? 寧ろ、そんな事を気にするのが人間だろう?」
次いで祐介が、ヨリシロの致命的な勘違いを指摘する。
「‥‥ふむ、失礼しようかね」
静かに声を滑り込ませたのは錦織・長郎(
ga8268)。
「君は自らの陣営優位を客観的に評価しえてると自覚してるのかね?」
いまだ姿を現さぬ敵将に向け静かに問いかける。すぐに答えがないのは、はたして相手にする価値なしとみなされただけなのか。
「足元が脆いのを気付いてるならばいっそこちらへ来たまえよ。深き本心に引きずられるのも良いのではないかね。是非とも歓迎しようね」
からかうような言葉にも、返事はなかった。逆にそれに、声音から何かを読みとられるのを恐れるような気配を感じ取る。
UNKNOWNとミリハナクが起こした混乱を、単純にチャンスだけと捉えて揺さぶりに来たのではない。それを置いてなお二人の破壊力が脅威であったからこそ、揺さぶりに出ざるを得なかった――おそらく彼はそこまで読んでいる。
だが長郎の呼びかけを無視すればもはやこれで双方降伏の道はない。ここからは、ただ戦力のぶつかり合いとなる。
「私だって死ぬのは怖いし嫌だ」
大剣を掲げ、撤退する負傷兵たちの壁になるようにキメラに対峙する雛菊。
「でも、まだ生きている。ならやれるだけのことはしておかないと‥‥!」
覚醒により現れた氷の耳としっぽが、ミキミキと音をたて鋭くなっていく。感情の高ぶりに合わせ冷気を増していく。
その後ろで、ソウマが高らかにうたっていた。優雅に心強く演奏し歌う曲は、味方には勇気を、そしてエミタを介した音は敵に混乱の効果をもたらしていく。
直人は、まず己が守りたいものを思い出すように大事なお守りを握りしめる。
「マウル少佐。センターは僕が守り切る。貴方に悲しい思いは絶対にさせない‥‥」
盾を掲げ、雛菊と共に闘いながら、周囲の兵に向けて声を張り上げる。
「貴方の言葉、それは悪魔の囁き。それは地獄への道標。僕ら人間は、剣折れ盾破れ
ようとも、心は決して折れはしない!
皆、剣を持て! 弾を込めよ! 人類のソラは、人類の希望は、僕らの手で守るんだ!!」
百白と炬烏介は、前に出て、キメラの群れに積極的に切り込んでいく。
「‥‥人型‥‥か‥‥」
敵の姿を認めた百白の目が、青色に変化する。
「‥‥喰い殺す‥‥それだけだ‥‥」
獣のような方向を上げ、首元を狙い剣を突き出す。
炬烏介は、脳に響く『予言』に従い拳を振るう。
「ソラノコエ‥‥言う‥‥『奴ラハ敵。裁ク者‥‥罪ニハ罰ヲ‥‥人ニハ救イヲ』
‥‥殺す‥‥殺す。殺し尽くす‥‥俺は、俺達は‥‥敵対者、だ‥‥!」
呟きながら、人型キメラに拳を打ちこんでいく。
まるで悪魔のごとき力を見せる二人。それでも。
「今ここで‥‥逃げたら‥‥『逃げた距離』だけ‥‥守りたい者に‥‥それを‥‥『近づけて』しまう‥‥それを阻止するのが‥‥『俺達』の‥‥仕事‥‥だろ?」
「オマエ。ら‥‥は。ヒトの、様な。怪物‥‥だ、が‥‥俺‥‥は。怪物、の‥‥様な‥‥ヒトの、側‥‥だ‥‥!」
百白が零し、炬烏介が叫ぶ。破壊の衝動に身を任せながらも、その矜持はあくまで人類の側にある。
「終わりの見えない戦いなんて、そんなもの今までだって同じようなものだったでしょう。どこへ行ったところで生きていれば戦いは続きます」
立花 零次(
gc6227)は、いっそ軽やかにそう言った。
前に立つ仲間を援護するように、敵の連携を断つように、超機械で竜巻を起こし敵陣をかき乱す。
「私は足掻いて、たとえ無様でも戦い抜いてみせますよ。最後まで」
ヘイルの槍と合わせた一撃が、人型キメラの一体を潰した。
「裏切りの条件としては、最低でも世界の半分ですよね〜」
おどけて言うのは住吉(
gc6879)だ。
「ふふふ、正義の騎兵隊の参上ですね〜!」
遊撃として動く彼女は、ピンチの部隊を目ざとく見つけては駆けつけていく。その理由は「こう、味方の危機を救援する作戦って何だかカッコいいですね〜」という気軽なものだったが
住吉と共に翔けるトゥリム(
gc6022)が。
「助けさせてください!」
口数の少ない彼女が、短いながらに真摯な想いをこめて切望し、戦線に加われば、迷惑に思うものもいない。
あちこちで、声が上がり続けていた。
「A地点クリアぁあ! イケる! ‥‥勝てるぞ! 皆勢いに乗っちまえ!」
「新手が来たか、向こうのチームと挟むぞ」
「今のうちに立て直しを。頼むぞ」
「心配するな。勝つ為に俺達がいる。だろ?」
「運命の女神は勇者に味方する、最後の最後まで屈さなければ必ず機会が訪れます‥‥必ずね」
「もう‥‥少し。だ‥‥生き残る、ぞ‥‥! 死なせ、は‥‥しない」
「絶対に負けないんだから‥‥!!」
仲間に、己に、語りかける言葉が力となって、脆い心を支え続ける。
「敵指揮官の情報を持っているなら敵の動きを予測して指示をくれ。俺達なら多少の無理なら効くからな、遠慮は無用だ」
ヘイルが、孫少尉に話しかける。
言われ少尉ははっとして周囲を見渡した。
「強化人間の動きに注意できますか! この状況なら‥‥攻撃的な言葉はハッタリです! 少佐なら‥‥言葉で相手を警戒させて、撤退の準備をしている! 多数のキメラもそのための囮です!」
気付いたそのことを、声を上げて周囲に伝えると。
「みぎゃっ♪」
――愛らしくも凶悪な声が、この上なく頼もしく応えた。
●
やがて、戦場に静けさが訪れる。
しばしの静寂。そして。
「ね! ね! これってスゴくない!? ボクらが掴んだんだよこれ!」
最初に勝利を認識し声を上げたのは、星威だった。
それをきっかけに、あちこちで勝鬨が上がる。
喜びの声だけあげられる訳ではなかった。深く傷つくものをいたし、多くのものが、体力、錬力限界まで使って、やっとつかんだ勝利だった。
敵将は逃がした。目にした強化人間も、全てが倒せたわけでもない。
それでも、誇るべき成果はある。
心は、誰ひとりとして離れなかったこと。
宙への道は、こうして――今回も、守られたのだ。