●リプレイ本文
冬の日の朝。
冷気に起こされる形で若山 望(
gc4533)は身体を起こす。ぐーっと身体を伸ばすと、奥の方に淀んだ疲れがたまっているのを感じていた。
久々にラストホープへ帰って来てから、KVを新調して、ややこしい手続きが終わったらその慣熱飛行に‥‥と、なんだかんだで忙しい日々を送っていたのだ。
そろそろのんびり休んで――と、思っていたところに、舞い込んできた手紙。
窓の外には、雪。丁度手紙の景色に重ねるように。
雪が降っている日――とのことだが、昨晩、世界を白く彩った雪は、今は‥‥。
ちらり。
と、そこでまた、名残のようにまた、空から降りてくる。
あれ? 降った? と見上げて確認すると、またちらり、ちらり、と。
まるで誘っているみたいだ、と望は思わず微笑んだ。
「何もせずに過ごすくらいなら、利用させていただきましょう」
ぽっかり空いた休日に、ちょうどいい手紙と、タイミング。彼女は決心して、出かける準備を始めていく。
「ふーん、半額なぁ? ま、どーせやるコトねーし、アイツでも誘ってみっか」
恋・サンダーソン(
gc7095)は、手紙を受け取って直後、なぜかごく自然に葵・乙姫(
gc3755)のことを思い出していた。
「急に呼び出して、何かと思ったら‥‥ま、付き合ってやるよ。どーせオレもヒマだしな」
そうして合流して、乙姫から最初に出てきたのは悪態。
だが恋は腹が立つ気がしなかった。こう見えて、なんだかんだで嬉しいんじゃないかという気が、したからだ。
多分間違っていない。互いに互いのことが他人と思えないほどに、良く似た二人。少年のような荒い口調であるとか、戦闘中の突撃好きであることとか、ピンチでテンションが上がるところとか‥‥個別に上げていくこともできるが、つまり気が合うということである。
何となく一緒にいることが多いから‥‥だから、今日誘った理由も、何となく。
特別な意味があるわけではなく、いつものように、二人は連れ立って出かけていく。
「あれ? ここって‥‥1年くらい前に、ノエルさんと一緒に行った‥‥?」
ティリア=シルフィード(
gb4903)には、ダイレクトメールを受け取ると共によみがえる記憶があった。
(そっか‥‥あの時告白して、もう1年以上経つんだ‥‥)
その時のことが、景色まで鮮明に思い出されて‥‥ティリアは、急に行きたい想いにかられる。深呼吸をひとつして、ティリアはノエル・アレノア(
ga0237)へと連絡を取っていた。
『え? 今日時間ですか? はい。偶々暇ですけど‥‥えっ? ティリアさんと温泉? もちろんいいですよっ!』
時間が空いているか、問いと、誘いへの答えは、明るく弾む声で返ってきた。
ティリアは、ほっとすると同時に、へなへなと力が抜けるのを感じた。断られたらどうしようかと思っていたのに。事情があったら仕方ないとは思いつつも、そうなったときの落胆は大きいだろうなあと覚悟していただけに、あっけなく望みがかなったことに多少拍子抜けするのは感じていた。ああ、自分一人浮かれていたらどうしよう‥‥。
ティリアが落ち込んだり舞い上がったりしているその時。
ノエルも実は、期待に高鳴る鼓動と熱を帯びていく頬をそっと抑えていた。
大好きな人と、休暇を過ごす。
記憶の底から、施設の設備を思い出す。どこへ行こうか‥‥――。
そろって、同じ場所を想い浮かべていたことを、まだ、慌てて出かける支度をする二人は、知らない。
「リュウナ! イン! 温泉付きリゾート施設! にゃー!」
施設入口で、リュウナ・セルフィン(
gb4746)が拳を高くあげて宣言する。
「はい♪ リュウナ様、温泉ですよ♪ 楽しみですね♪」
その一歩後ろで、東青 龍牙(
gb5019)がにこにこと微笑んでつき従っていた。
(雪ではしゃぐリュウナ様、何て可愛らしいのだろう♪)
リュウナのテンションに、龍牙はそんなことを考えていたりする。というか、小声で漏らしている。
今すぐにでも突撃しそうな勢いだが、彼女たちはその場から動かない。どころか彼女たちは今施設を背にして立って、向こう側を見つめていた。地平のかなたを見つめ、何かを待っている――そう、もう一人の待ち合わせ相手。
「‥‥さて、ゆっくり出来るか‥‥な?」
そうして、待ちかまえる相手の気合いなどつゆ知らず、西島 百白(
ga2123)が呟きながらゆっくりと現れる。彼の姿を認めるなり、リュウナは地を蹴って駆けつけて‥‥飛びこんでいく。
「にゃ! ひゃくしろにゃ! ひゃくしろー! にゃー! ギュッ!」
ぎゅ、とわざわざ声に出して抱きつくリュウナ。なお彼の名は『びゃくはく』と読むということは一応注記しておく。
「‥‥久しいな‥‥セルフィン‥‥」
この反応は予想済みだったのだろう。百白はリュウナを優しく受け止めると、そのまま後ろにいる龍牙にも軽く会釈する。
「東青‥‥久しいな‥‥元気に‥‥してたか‥‥」
「西島さん、お久しぶりです♪」
微笑み合い、挨拶を交わす二人。視線を合わせたのは一瞬で、二人ともすぐに視線を今日の目的、温泉施設へと向ける。
「さ、それじゃあリュウナ様、まいりましょうか♪ リュウナ様?」
それから、龍牙がリュウナに向き直ると、リュウナは龍牙と百白を交互に見ながら少し不満そうな顔をしていた。が、直後、何かとてもいいことを思いついた、とばかりに瞳を輝かせる。
「にゃ! どうもしないにゃ! まずは流水プールで遊ぶのにゃ〜♪」
そうしてリュウナは二人を中へ引っ張っていく。
「その‥‥この前のお礼に‥‥温泉とか‥‥どう?」
キョーコ・クルック(
ga4770)はそう言ってもじもじと、恋人である狭間 久志(
ga9021)にお誘いをかけていた。
この前に誘ってくれたのは――告白してくれたのは、彼から。その、お礼、という気持ちからだった。
二人が待ち合わせたのは、施設の内部ロビー。そうして、一緒に回るために水着を準備して待っていた久志の前に現れたキョーコの姿は。
「ちょっと‥‥大胆だったかな‥‥?」
ビキニ水着、だった。マリンブルーの美しい生地。
「凄い綺麗だよ? カノジョの水着姿が冬に見れるとはツイてるな」
綺麗な金の髪にも、きめ細やかな肌にも、青い水着によく映えて、眩しい。紛れもない久志自身の、本心からの想いだった。
「あんまり褒められると‥‥照れる‥‥」
キョーコは思わず、真っ赤になって俯いて‥‥久志はそんな彼女に、手を差し伸べて。
「それじゃ、行こうか『キョーコ』?」
呼びかけに、キョーコがうつむいていた顔をばっと上げる。今、なんて呼ばれた?
「どうかした? 『キョーコ』」
少し、言葉に力が入っているのを久志は自覚していた。まだ慣れない、だけど喜んで欲しいから‥‥意識して、呼び捨てをして。
さあ行こうか、と彼女の手を取ろうとして。
「いえ〜い♪ ぜんそくぜんし〜ん♪」
そして、その前に、テンションだだ上がりになったキョーコに首に思い切り抱きつかれて。そのまま引きずられるように奥へと進んで行った。
「何だか、デートの時、よく、此方に、きます、ね‥‥」
ダイレクトメールを手に、ルノア・アラバスター(
gb5133)。隣を歩くのはサヴィーネ=シュルツ(
ga7445)。手にはルノアが持参したサンドイッチ。手作りのそれを、齧りながら歩く。
「‥‥た、食べられるでしょう?」
少し自信なさげにルノアが尋ねる。まだ自分は手をつけていないサンドイッチに視線を落とす。包丁が上手く使えなくて、トマトはちょっとつぶれていて。スクランブルエッグは数か所、焼き過ぎて茶色くなっている。ベーコンとレタスのはみ出し方がちょっと豪快で‥‥まあ、見た目はちょっといまいちかもしれないけど。でもちゃんと、自分で味見した限りはそんなに変じゃなかったと思うのだけど。‥‥少なくとも、これまで作ってきたものと比較すれば。
「‥‥ちゃんと美味しい。うん、美味しいよ。料理の腕は順調に上がっているね」
素敵だね、とサヴィーネは言った。
「素敵、ですか?」
料理の出来を褒める言葉としては少し微妙な気がして、ルノアは何気なく問い返す。
「うん。素敵だ。成長できるというのは素晴らしい。未完成というのはなんて――」
‥‥ふと。思いつくことがあって、サヴィーネは言葉を途切れさせた。ルノアが、その先を問うようにじっと視線を向けると、サヴィーネはただふっ、と綺麗な笑みを浮かべるだけ。
そうして。
「ああ、着いたね」
いつの間にか見えてきた目的地に、サヴィーネはそういうと、先に歩きだす。
ルノアは、問いただそうとは思わなかった。ひとまずは二人で温泉をゆっくりと楽しみたいから。だから今は聞かない、けど。
「うひゃあわぁっ!?」
突如背中を伝った冷気に、サヴィーネが、背筋を伸ばしてびくりと身体を硬直させる。
慌てて振り向くと、そこらで掬ったのだろう、雪を手に悪戯っぽく笑うルノア。
「悪戯か。ふふふ。だが悪戯をしていいのは悪戯される覚悟のある者だけだ」
状況を理解するとサヴィーネはくるりと向き直ってルノアの身体を引きよせる。腕の中に収めて、がっちりとホールドして。
「きゃっ!? ひゃ、あははははははっ!? くすぐったっ! ‥‥あんっ。や、そこダメっ‥‥!」
そのままルノアを、あちこちまさぐるようにくすぐり倒すサヴィーネ。
そうして二人はお互い、笑いながら、抱き合いながら、もつれ込むように入口へと向かっていく。
湊 獅子鷹(
gc0233)は腕組みしてぶつぶつと呟きながら待ち人の到着を待っていた。
「誘ったはいいが、コレで機嫌直してくれるとは限らねよな‥‥つーかむしろくるのか?」
脳裏をよぎるのは昨年のクリスマス。しこたま叱責する言葉と‥‥泣き顔。
少しでも機嫌を直してもらえれば、と誘ったのだが。
「にゃはは、やっほー♪」
誘った相手であるエリス・ランパード(
gc1229)は、これまで見せていた不機嫌は何だったのだ、といいたくなるような、存外軽い調子で現れたのだった。
といって、ここに来るまでその内心がずっと穏やかだったのかと言えばそうでもない。
(‥‥告白されちゃった)
やはり思い出すのはクリスマスの時のこと。
どう返答すればいいのか。クリスマス以降、ずっとそのことで悩んでいた。不機嫌に見えたのはそのためだ。‥‥いや、その前からだって。悪戯に怒っていたわけじゃない、気に入らないのは、彼がいつも無茶をすること、だ。
会うのは、あれ以来。どんな顔をすればいいのか、とか、顔を合わせたら思わずまた説教を始めてしまうかも、という不安も、あったけど。
(彼からのお誘いだし、向こうに行ってから考えよーっと)
結局、そう考えることにして、彼女はここへ来た。
そうして、改めて獅子鷹を見る。今日は大きな怪我はないみたいだ。ふっと笑みが浮かぶ。
「で、これからどうしよう?」
エリスが問うと、獅子鷹は一瞬、困ったように視線をそむけた。具体的に考えてはいなかったらしい。いなかったが‥‥。
「なんにも考えてなかったんだが、プールがあるらしい」
とりあえず、施設を確認してそう答える。
「それだった一緒に泳がない?」
気分転換したいな、とエリスが言うと、獅子鷹もそれを了承。館内で、改めて水着に着替えて合流する。
「おまたせー☆」
背後から抱きついてきたエリスに獅子鷹が振り向く。彼女は、競泳用の水着姿だった。こんなことなら魅せるようのを買っておけばよかったかと思うが、これはこれで、健康的な魅力がある。
「馬子にも衣装か、まあ似合ってるっじゃねえの?」
どうかな、という態度のエリスに、獅子鷹はついそんな口をきく。だが彼女が「うにゅ‥‥」と、まともにしょんぼりとした様子を見せると、「あー冗談だ、正直に言えば可愛いし綺麗だし、よく似合っている」などと慌てて、少し恥ずかしそうにそう言いなおす。
「えへへっ、ありがとー♪」
あっさりとエリスは機嫌を直して‥‥そうして、二人もまたプールがあるゾーンへと向かっていく。
‥‥etc、etc。こんな感じで。一人で、友人と、恋人と――あるいは、まだ不確定の、新たな関係に期待を膨らませつつ。
雪の日のイベントに集まった人々は、それなりの人数になっていた。
●
賑やかに、あるいはゆっくりと、施設を楽しむ人たち。
國盛(
gc4513)は水着ゾーンで、はしゃぐLetia Bar(
ga6313)を見守っていた。
二人の関係は、他の人にはどういうふうに映るだろう? 何も知らずに、不躾なものがいたら例えばこう尋ねるかもしれない、「親子ですか?」など。言われてもやむを得ないと思うほどに、年の離れた二人。
だが答えは‥‥恋人、だ。何の遠慮も疑いもなく、互いにそう思っている。レティアは楽しそうにくるくると歩きまわっては、その度に國盛の腕の中に戻ってくる。寄り添って歩く二人は、本当に嬉しくて、幸せそうだった。
そうして、二人で水着での温泉コースを回るうちに、ふとあるものが目に留まって、國盛は悪戯っぽく言った。
「レティア。日本酒風呂へ行ってみようか?」
彼の言葉に、レティアは少し恨めしそうに國盛を見上げた。彼女は今禁酒中、だ。だが、だからこそ酔うとどうなるのか、ちょっと見てみたい気持ちが國盛にはあった。
だが、飲むわけではないし、肌にいい、と言われれば女の子は弱い。何より‥‥あまり広くはない樽型の浴槽に、恋人と寄り添って入りたい‥‥と言われて、そうそう断るなどできようものか。
まあ、実際、ほんのり香りつけ程度に混ぜられているだけで、酔うほどアルコールがきついわけではないのだと‥‥思う。ボーっとしてくるのは単純に体が温まっているのと‥‥傍に、何よりも大切な人がいるせいだと。
レティアは、そっと國盛の肩に体重を預ける。大丈夫? と視線で問うと、返ってきたのはとても穏やかな瞳。
「俺は果報者だな」
呟くように國盛が言うと、レティアも浸るように目を閉じた。
「ふふ‥‥たまにはゆっくり羽を伸ばしたいからな」
ルーガ・バルハザード(
gc8043)はそう言って、手始めにといった感じで水着ゾーンの変わり湯を次から次へと渡り歩いていた。ゆっくり、というが実際にはかなりのハイペースで歩き回っていた。
なんだかんだで、風呂に浸かるというのは結構体力を消耗するわけで。あまり出たり入ったりを繰り返すと‥‥
「はぅ‥‥あ、あの、頭がくらくらするの‥‥ちょ、ちょっと休もうよ?」
普通は、付き合わされるエルレーン(
gc8086)のように軽く湯あたりを起こす。
初めこそ、「おんせん? ‥‥うーん、最近寒いし、ちょうどいいかもねえ。ルーガは本当に温泉が好きだねえ」などといって気軽についてきたエルレーン。ルーガはもうもう母ともいえるほど心酔している師匠だが、たまらずここでギブアップを申告する。
が。
「‥‥ん? なんだ、だらしないな。まだ半分もいっていないぞ?」
師匠は無情だった。全種類制覇は諦めるつもりはないらしい。水分補給と休憩の時間は与えられたが、すぐまた移動を開始するのだろうことは容易に想像がついた。
そうして、また幾つもの温泉やらプールやらを堪能して、その先は。
「う‥‥み、みずぎ、ダメなの?」
男女別の本格的な温泉ゾーンにつれてこられて、エルレーンはたじろいだ。自然と、腕が己の胸を庇うように動き、視線は師匠の、存在感ある胸へと流れてしまう。
「馬鹿だな、そんなふうに無駄に恥ずかしがっているからこそ余計に意識するんだ。こっちのほうは男女別なんだから、気にする必要などないぞ」
何をためらっているのかはあからさまで、ルーガは呆れてそう声をかける。
さっさと歩きだす師匠に、置いて行かれるのはやっぱり嫌で。慌てて追いかけながら。
(‥‥そりゃ、ルーガはいいよ‥‥お胸たゆたゆでおっきいもん! お胸の小っちゃい私の気持ちなんか、わかんないんだ‥‥!)
エルレーンはまだ、いじけていた。
刃霧零奈(
gc6291)は、気合いを入れて己の水着姿を確認する。深紅のビキニ、お気に入りの一品である。そうして、誘った相手であるリュウセイ(
ga8181)の元へと赴くと‥‥逆に、零奈が彼のその逞しい身体に一度見とれてしまっていた。
「ふぇ‥‥凄いねぇ、流石、戦う男性って感じ‥‥」
思わず、呆然と零奈が呟くと、リュウセイはまんざらでもないという笑顔を浮かべ、そして。
「ありがとうな。零奈の水着もよく似合ってる」
さりげなく言い返すと、零奈はテレながら「あ‥‥ありがと‥‥♪」とどうにか礼を述べた。
‥‥だが、こんな言葉は序の口、で。
例えばプールのスライダーで抱きかかえられて一緒に滑ったり。
例えば人ごみの中、さりげなく腕を引かれて絡められたり。
ふとした拍子での触れ合いに、零奈はいちいち反応してしまう。ただ、身体がこわばってしまうのは嫌なわけではなくて。むしろ‥‥
(‥‥恥ずかしいけど、嬉しい‥‥ね)
零奈は、己の気持ちを改めて認識する。
気になる人だった。
一緒に楽しんで、そして‥‥色々知りたいし、知ってほしいと思った。
誘いを受けてくれて、嬉しかったけど、不安だった。
そうして今日、一緒に過ごして‥‥――
一つの確信を得ながら、ひとまず、零奈は今この時を精一杯楽しむ。
見れば、あちこちで傭兵たちは温泉を堪能し、その身体を休め、あるいはその心をリフレッシュしている。
「西島さん、その‥‥私、あんまり泳ぐ機会が無いので、その‥‥少ししか泳げないんです」
龍牙は、百白に少し緊張しながら訓練をお願いする。
「泳げないなら‥‥教える‥‥それだけだ」
百白はそう言って、流水プールで龍牙の手を取って沈まないよう気遣っていた。
「ちょ! 沈む! 沈む! 錆びる! 溺れる!」
「ちょ、ちょっと大丈夫っ!?」
エリスと獅子鷹はスライダーを楽しんで、プールの周りでふざけ合っている。
キョーコと久志は、ある程度遊んだ後に水着の温泉ゾーンで身を寄せ合って浸かっていた。
「そのうち、水着なしで二人だけで入れるといいな」
耳元で、くすぐるように囁く久志の言葉に、キョーコはまたも真っ赤になって俯く。微かに震えるその反応が、たまらなく可愛い。
「他の奴にキョーコの肌見せたくないし、今はこれでいいけど」
再び、声をもう一段階落として、囁く。愛するからこその独占欲。恥ずかしさが限界に来たのか、湯船の中で軽く抓られた。
「お、タッキューあんじゃん、やろーぜ!」
「おっけー、良いぜ。オレに挑んだ事を後悔させてやる‥‥」
恋と乙姫の二人は、一通り温泉とプールを堪能した後、何故か卓球勝負を始めていた。温泉上がりのお約束である。ちなみにここの卓球、昨年も能力者がピンポン球を粉砕しているので、以降きっちりと『覚醒禁止』『スキル使えません』の張り紙が貼られているのであった。実力勝負である。が、まあ二人には望むところかもしれない。
その後も、携帯ゲームを取り出したり。似た者同士の二人は、似たようなハイテンションではしゃぎ続ける。
「ピュアホワイト、いい機体ですね‥‥あとは宇宙用のリンクスが出てくれれば‥‥」
望は、水着ゾーンの、比較的広い温泉ドームに身を鎮めながらぼーっと呟いていた。
一応アイドル活動もする身、自意識過剰と思いつつ盗撮等に気を使いながらの休日だったが、暫く湯につかっているとだんだんと心も緩んできたようだ。
‥‥が、その呟きの内容に、はっと我に返る。
「今日はお仕事お休みです‥‥」
こんなときに出てくるのがKVのことなのか、と、望は自分で自分に苦笑していた。
「はふ〜ぅ」
葛城・観琴(
ga8227)は、一人、温泉にゆっくりとつかると思わずそんな声を漏らしていた。
肩まで浸かると凝っているのがよく分かる。‥‥何せ、小柄な体には明らかにバランスの取れていない質量がその胸からかけられているのだ。意識していなくても、常に地味に負担がかかっている。
温泉でゆっくり温まって疲れが解されていく――そして質量ある物体は今はその表面積から浮力を受けて大分軽くなっている――この時はまさに至福であった。
いや。今こんなにも幸せなのは、温泉の効果だけではない。
のぼせてはいけないと、極楽の湯からゆっくりと身体を上げて。洗い上げたばかりの髪を、丁寧に整えて身支度する。
名残惜しさは少なかった。お風呂の後は‥‥恋人が、和食処で個室を予約していたと聞いているから。急いで‥‥でも、きちんと支度して、いかないと。
●
と、言うわけで、堪能した後はめいめい、食事タイムである。
獅子鷹とエリスはバイキングを選択していた。のんびりとパスタをつつくエリスの前で、獅子鷹は意外というか、しっかりとしたテーブルマナーで食事をしていた。これで、教育はしっかりと受けているらしい。が。
「獅子鷹く〜ん、お野菜だけ綺麗に残ってるんだけど?」
エリスの指摘に、ぐっと獅子鷹は喉を詰まらせる。
「スイマセン、マジスイマセン‥‥野菜苦手なんだ」
素直に白状して許しを乞う獅子鷹。だがエリスはただ、にっこりと笑ったままピクリとも視線を外さない。
「‥‥食べさせてくれるなら考えるが」
試しに、といった感じでもちかけた提案は。
「こらっ、甘えないの」
でこピンで、あえなく却下されていた。
同時期。バイキングで、同じように偏食が指摘されていたのがもう一人。
「リュウナ様? お野菜もちゃんと食べないといけませんよ?」
魚類を中心に黙々と食べる百白の横で、龍牙が甲斐甲斐しくリュウナの世話を焼いている。
「にゃ! 龍ちゃん! リュウナは野菜が嫌いなり!」
いやがるリュウナに、百白も「ほら‥‥」と促す。
しばらくためらっていたリュウナだが。
(にゅ〜‥‥これも作戦のためにゃ!)
と、目を閉じてもぐもぐと口に入れる。偉い偉い、という目で己を見つめる百白と龍牙に、リュウナはよし、作戦開始にゃ! と目を輝かせた。そして。
「ところでひゃくしろ、戦争が終わったら、その後どうするなりか?」
リュウナが口にした言葉に、百白は咄嗟に答えを返せない。
「あてが無いならリュウナのお家で働くのら! そうすれば、一緒にいられるのら!」
続く言葉に‥‥百白と、それから龍牙は、思わず顔を見合わせていた。
その反応を見て、リュウナは、どうだいい考えだろう、と、へへんと胸を張っていた。
リュウナの不満。それは、龍牙が中々百白にアタックできずにいることだった。
何気ない提案。沈黙を肯定と受け取ったのか、リュウナは満足げに食事を再開する。そのまま、どこかうやむやな空気のまま、和やかな食事が続けられる‥‥
キョーコと久志は、互いに着替えて再集合。
「じゃ〜ん♪ 浴衣着てみたんだ♪ ここだけ春の香りってね♪」
まだ若干、遊びの時からテンションが戻り切っていないのか、ひらひらと見せながらキョーコはやってきた。
「うんうん、風呂上りったら浴衣だよな」
久志は満足げにそういうと、手にしたフルーツ牛乳を手渡した。
定番だろ、と笑う久志に、キョーコは美味しい、と喉を鳴らす。まだほてりが残る体に冷えたフルーツ牛乳は確かに美味しかった‥‥が、さすがにそれでお腹いっぱい、とはいかない。むしろそれで胃袋が起こされて、遊び疲れた身体がますます空腹を訴える。
どちらともなく、食事処に向かっていた。
選んだのは広告にも出ていた雪見鍋のコース。
「冬大根は甘味があって食べやすいし、いいね」
そう言って鍋に手を伸ばそうとする久志をキョーコが制する。慣れた手つきで、器用に小鉢に取り上げていくキョーコに、久志は戸惑いつつも甘えることにした。
そうして、渡されたのは小鉢ではなく。
「はい、あ〜ん♪」
ふーふーとさましてから、箸をすっと久志に近づける。久志は、少し恥ずかしそうに一口いただいてから、
「キョーコも食べなよ? ほら、あーんして?」
照れ隠しに、お返しする。
熱燗を手にホロい酔いも手伝って、じゃれあうようにゆっくりと食事して。
「熱燗冷めちゃったね、ちょっとだけ温めようか?」
幾度目か、猪口を口にしたキョーコが、ふとそんなことを言う。
温めるといってもどうするのか――問おうと、久志がキョーコに顔を向けた時。彼女の顔が、やけに近くにあった。
あ、と思う間もなく、唇が、重ねられる。
人肌に温められた液体が、流し込まれる。
喉を、灼ける感触が伝っていく――
「‥‥美味しい?」
「酒よりもキョーコに酔う‥‥でも、」
――もう少し、貰っちゃっていい?
久志はそう言ってキョーコを引き寄せる。
骨抜きに、されてる。
自覚せざるを得なかった。
「ほら、ここの所一緒に居られる時間も少なかったし、少しはのんびりと贅沢してもいいんじゃないっかってさ‥‥」
秋月 祐介(
ga6378)はそう言って、観琴を予約席まで案内する。二人用には広めのテーブルに、横に並んで座る。
気になったものをあれこれと注文していると次々と料理と酒が運ばれてくる。コースではなく、あえて単品で気に入ったものを頼む作戦。お値段は張るが、こんな時間を過ごせる機会がどれほどあるかを想えば、高いとは思わない。
「あーん」
そう言って観琴が差し出した箸は、微かに震えていた。かなり恥ずかしいのに耐えて挑戦したことがうかがえて‥‥幸せに、浸る。
自然とわき上がってくる、温かな気持ち。一度は放棄した日常という現実に、つなぎとめてくれる存在。だけど‥‥
「綺麗だな‥‥これがそのままの現実なら‥‥ね‥‥」
窓の外の雪景色に、祐介は呟いた。それは、己の中に、もう一つの現実が紛れもなく存在し続けていることも意味している。ちぐはぐな、二つの現実、その境界。
無意識に、床の上に置かれた手に、そっと手を重ねる。
足りない――渇望が、彼を駆り立てて、彼女を半ば強引に引き寄せる――
●
それぞれの休日は、やがて、収束へと向かっていく。
ノエルとティリアは、自然と、中庭へと足を運んでいた。
「雪の降り積もる様も、綺麗ですね‥‥」
記憶とは異なる景色。だけど、褪せることなくよみがえってくる思い出。あの時のことを思い出していた、というティリアに、ノエルも、僕もですよ、と応える。
「ボク、ごめんなさいって言われたらどうしようって、そればっかり考えていたんですよ?」
苦笑しつつ零れる言葉。でも、あの日勇気を出したから、今がある。
‥‥少し先を歩くノエルを、不意に、ティリアは後ろから抱き締める。
「あの時、ノエルさんはボクの生まれのことなんか関係ない、全て含めて支えたいって言ってくれましたよね。あの言葉は、今でも涙が出るくらい嬉しかった‥‥」
背中から、震えが伝わってくる。ノエルは、あ‥‥と声を漏らして‥‥出発前のものより、さらに高なっていく鼓動を、深呼吸して押さえつける。
「‥‥この先もずっとそのつもりです。そこに生まれも経緯も関係無く、優しい貴女は只一人だから。‥‥今もこんなに胸が熱い‥‥きっと身も心も貴女に惚れています‥‥」
己を抱きしめる手に、そっと掌を重ねて、答える。
また、背中越しに、ティリアが小さく震えて‥‥それから、小さく首を横に振るのが、伝わってくる。
「でも、支えられてるばかりじゃ、ダメだと思うから‥‥」
そのまま彼女は、震える声で、だけどしっかりと、語る。これまでの時間をかけて、決意したことを
「ボクがノエルさんに支えられているように‥‥ノエルさんの全てを、ボクは受け止めて、支えたい――貴方の、一番近くで」
ぎゅ、と、無意識に、抱きしめる手に力がこもる。
返事が返ってくるまでの時間。きっと短かったけど‥‥ティリアには、やたらと永く感じて。
「‥‥嬉しい」
聞こえてきた言葉を、証明するように。ノエルはそっと、背中に体重をかける。丁度、お互いの体重を預け合うように。
「‥‥ティリアさん‥‥大好きです」
想いを確かめ合った場所。また一つ思い出を刻んで‥‥そうして、雪景色に冷えた身体を温めるよう、また二人で、温泉に向かった。
「‥‥さて」
湯ざましに、小道を歩みながら、サヴィーネは声をかける。
「今朝の話の、続きをしようか」
そうして彼女は、ルノアを引き離すように、数歩先へと足を踏み出す。少し道をそれて、うっすらと雪が積もるその場所に。
数mの距離。詰めようとするルノアを手で制して、このままの距離でサヴィーネは問いかける。
「ノア。君は、これから‥‥そうだな。戦争が終わって、銃を持たなくていい人生を選べる世界で、君はどうしたい?」
何をしたいのか。
何になりたいのか。
今朝の話。素晴らしい、未完成の君。
「私は、銃を持たない私を知らない。想像できない。だからきっと、これからも銃を持つのだろう。変われないとは言わない。でも、きっと時間という名のエネルギーがいる」
自分はもう完成している。何にでもなれる君と違って、自分には、可能性が、ない。
――私に付き合って道を歩んで、君は幸せになれるかい?
――私は君を、幸せに出来るかい?
「まだ選べる君には、選んで欲しい。自分で、ね」
視線を落とす。その先に、サヴィーネが雪に付けた、足跡。新雪を踏みにじって、泥が露出している。
ここまで君は、歩いてこようと思うだろうか。手招きは、しない。彼女に自分で、選んでほしい。
「私は‥‥」
さくり。
雪を踏む、音がした。
「私は貴女と一緒に居たいです、居て欲しいです」
ああ、彼女が歩いてくる。同じように、雪を踏んで。
「貴女が望んで下さる限り、ずっと、何処までも」
その足を、その足元を、泥で汚しながら、自分の元へと歩み寄ってくる。
動けない。動けるわけがない。ただ‥‥泣きそうになる。
抵抗もできないまま‥‥二つの影が、重なり合う。
祐介は、観琴のことをきつく抱きしめていた。すがりついて、体重を預けて‥‥とん、と、観琴の背中が壁に追い詰められる。
「あの時は、半分って言ったけど、やっぱり半分じゃ駄目みたいだ‥‥」
肩に顔をうずめるようにして、祐介は、低く、囁く。
あの時、というのは、アフリカ奪還作戦で祈念をしたあの時のことだろう。何も言われずとも理解して‥‥耳たぶをくすぐる声に、観琴はピクリと身体を震わせる。
「観琴と同じ日常にいて、同じ景色を見ていきたいから‥‥僕は観琴の全てが欲しい‥‥」
奪うように、唇を重ねた。満たされていくと同時に‥‥紛れもなく、狂気も、そこにある。
唇を滑らせて、首筋に顔を埋める。ぐ、と、押し倒すように、さらに体重をかけて――
‥‥次に祐介が感じたのは、浮遊感だった。
観琴が軽く身体を引いて。するりと重心をずらされて、あえなく祐介の頭は観琴の身体の表面を滑るようにしてずり落ちていく。
そうして、ぽん、と観琴の膝の上へとおさまった。
呆然とする祐介の肩を、観琴があやすように優しく、ぽすぽすと叩く。
「祐介さん、耳掃除してあげますね♪」
そして振ってきたのは、そんな天然極まりない明るい声だった。
‥‥毒気が抜かれる、というのはまさにこういうことなのだなあ、と、まだどこか呆然とした頭で祐介は考える。
だけど、こしょこしょと、耳元の髪をかきわける感触が気持ちよくて――なんだかもう、どうでもよくなって祐介はそのまま身を委ねることにした。
窓の外には、雪。
全てを、白く、覆い被せる。
狂気は消えなくても、彼女がくるんでくれる――
休憩室。
遊び疲れたのだろうリュウナは、すっかり眠りこけてしまっている。龍牙は、そっと毛布をかけてやると、百白にお茶を淹れていた。
「‥‥熱!?」
受け取って一口。百白が小さく悲鳴を上げて、龍牙が慌てる。すみません、といいながら水を差し出して‥‥そうして、気がつけば、すぐ傍まで寄っていた。
「あの、西島さん? 戦争が終わったら、その、一緒に‥‥」
思わず弾む胸に‥‥勢いで、そう、口にしてしまう。
「すいません! 何でもありません! 忘れて下さい!」
はっと我に返り、慌てて龍牙は俯き身体を離す。
‥‥沈黙は、どれほど続いたのだろう。
「東青‥‥セルフィンの提案だが‥‥」
百白が口にしたのは、食事中、リュウナが宣言していたこと。その返事。
「俺の獲物‥‥仇のキメラを狩った後でも‥‥かまわないか?」
覚悟に身を固める龍牙に聞こえてきたのは‥‥控えめだけど、でも紛れもない、前向きな返事だった――
「ちょっと飲みすぎちゃったかな?」
キョーコと久志も。遊び疲れて食事も終えて、襲ってくる眠気に逆らおうとせず、休憩室で一つの毛布にくるまってまどろんでいる。
「ずっと一緒に居ような‥‥」
眠りに落ちる直前、久志の声は、夢ではなく紛れもなく聞こえたと、思う。
レティアは今、國盛の腕の中にすっぽりと収まるように抱きしめられている。
多分、何か他愛のない会話をしているのだと、思う。‥‥意識がはっきりしていなかった。はしゃぎ過ぎたのだろう‥‥もう、夢現の狭間に居た。
会話の内容なんてどうでもよかった。ただその声を聞いていたい。傍にいたい。優しい瞳を‥‥ずっと、見ていたい。レティアがぽつぽつと紡ぐ言葉に、國盛は静かに応える。
「あったかい、なぁ‥‥」
ああ、もう。心地よすぎる――眠ってしまう――まだずっと、彼を感じていたいのに――
「レティア‥‥いつだって、何処に居たって‥‥愛してる‥‥」
交わされる睦言の中で。その言葉だけは、はっきりと聞こえた。
安心しきって。そしてそれが、抗いがたい睡魔への、最後のひと押しになった。
「言い損ねてたけど」
同じように、休憩室でまったりしていた獅子鷹が、ふと思い出したように口を開く。
「怪我ばかりして心配掛けてすまない、だけどこれから先のことは分からんし、保証もできないが、この先もエリスと一緒に居たいし居て欲しいと思うのは迷惑だろうか?」
ぴたりと、一度エリスの動きが止まった。
先日の告白の、続き。それから。
ああ‥‥分かってたのか。分かってくれたのか。自分が、何に怒っていたのか。
それでも、きっと無茶はやめてくれないだろう。彼と関われば、自分はまたこれからも、心配に涙することになるだろう、だけど‥‥その言葉を、嬉しく思う気持ちに、間違いはなかった。
「‥‥いいえ、私の方こそ傍に居させてね」
だから。クリスマスの時は返せなかった返事を、今度こそ。
「好きですわよ」
そう言って、エリスは獅子鷹に顔を近づけて言って。
柔らかな感触が、彼の額に押し当てられた。
「今日は楽しかったぜ。他の奴からはカップルにでも見えたのかなぁ? 俺らもよ」
ひとしきり遊んだ後、リュウセイはやっぱり、何気なく、そんなふうに言ってきていた。
カマをかけるような、意味深なそれに、零奈はとん、と勢いをつけて前に出ると、くるりとリュウセイの正面に立ちはだかる。
決意を秘めた瞳を、リュウセイは愉しむように受け止めていた。
零奈は、やがて決意と共に口を、開く。今日確かめた、その想いを。
「あ、あの‥‥あたしが寂しかった時に支えてくれたり、凄く嬉しかったし、今日もすっごい楽しかった‥‥やっぱりね‥‥異性として好き‥‥なの。よかったら‥‥か、彼女になりたい‥‥な‥‥」
真っ直ぐにリュウセイを見つめて、言えた。そうして返ってきた言葉は‥‥。
ぱちくりと瞳を瞬かせて、零奈はその意味を確認する。
もう一度、リュウセイが口を開いて、返した言葉は。
「OKってことだ。他にどう受け取れるってんだ?」
ようやく満足するほど浸ったのだろう、ルーガは今、喫茶室で静かに、ただゆっくりと雪を眺めていた。
エルレーンも、同じように。
何もかも白く染まっていく世界を、ただ見ている。
満足したか、不満だったか。師匠は何も聞かなかった。
弟子も。あえて自分から何も言うことはしなかった。
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短い休日が、雪の中静かに終わる。
また、戦いの中の日常が始まる――その狭間の日に、安息は、得られただろうか?