タイトル:【埼玉】悪のお約束マスター:凪池 シリル

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/07/02 06:36

●オープニング本文


 お久しぶりです天の声です。なんか最近挨拶の度にお久しぶりって言ってる気がするっすね。明らかに出番が少ねえです。待遇の改善を要求するっす。
 しかしまあ、今はとりあえず。あっしが出てきているということは、ねえさん事件です。
 今日もまだバグアとの小競り合い続く埼玉は松伏町からお届けします。

「ど、どうして‥‥」
 エプロンをつけたお姉さんが、近くで泣き叫ぶ子供を抱きしめながら震えます。その抱きしめられている子どもというのが、黄色い帽子にかわいらしい水色のスモック、肩から下げる黄色い鞄。いわゆる一つの幼稚園児。そんな子が沢山、バスの中で泣き叫んでいます。つまり通園中の幼稚園バス。声を上げたのは保育士のお姉さんっすね。
 その保育士のお姉さんが視線を向けた先には青年。白スーツ姿でぴしっと背筋を伸ばし笑顔を浮かべてますが、これがまたものすっげえ「胡散臭い爽やかさ」オーラをいい感じで醸し出しております。
「そんな‥‥まだバグア支配下にあるこの町に、突如現れてこの幼稚園の為に援助を申し出てくれたあなたが何故‥‥このバスだって、あなたの援助で走らせることが出来て、おかげで多くの子供たちがこうして幼稚園に通えるようになったのに‥‥!」
 あの、おねーさん。誰に説明してるんすか。察するにこっちの胡散臭え兄さんとは顔見知りなんすよね。
「ふっ‥‥その幼稚園への援助‥‥それも全て、この日の為のものだったのですよ。そう、全てはこの、園児バスジャックを敢行せんがためっ!」

 ‥‥ぱーどぅん?

「あの‥‥なんで‥‥そんなこと‥‥?」
 あっしの声が届いたのか、保育士のおねーさんがもう一度きいてくれました。もう一度というか、さっきまでの「あなたが何故こんなひどいことを」って感じじゃなくて、「何言ってるのこの人」ってトーンに変わってますけど。
「だから、私は園児バスジャックをしなければならないのですよ。なぜなら悪の組織とはそういうものらしいからです。だが私がこの地に来た時、この町には園児バスがなかった‥‥! だから用意する必要があった、それだけのこと!」
 ああ‥‥また、変な知識仕入れたバグアさんの暴走っすか‥‥。おかしな話のようで、だんだんよくあることのようなこともしてきたっす。
「あの、それなら。満足していただけたならもう、帰ってもらえますか。あの、子供たちも泣いてますし」
 保育士のおねーさん以外と度胸あるっすね。いや、言いてえ気持ちはすげえ分かるっすけど。
「いえまあ。せっかく準備したのですし。この地を支配する主が最近、戦力補強を望んでいますからね。キメラや強化人間の素材となりうるものはきちんといただいて行きましょうか」
 ‥‥うわ、アホバグアのくせに邪悪なところはきちんと邪悪でやんのっ!?
「ふふ‥‥まあ悪の組織の作法として、きちんとヒーローが来るまではお待ちしましょう。調べは付いているのですよ。さあ来なさい、魔弾軍曹フレイム・バレット!」
 そしてここでまさかの茜さん御指名‥‥だと‥‥?



 そんな会話はつゆ知らず。こちら現場急行中のUPC軍とULTの皆さんです。
「上空から確認した情報では、バス周辺にキメラが展開、その後に、二人の人影‥‥バグアか強化人間化は確認できないけど、が、バスに乗り込んでいったそう。以降の状況は‥‥不明。あたしたちは即座にバスに乗り込んで、これを抑え込むと共に、無事な人間がいれば早急に確保する必要があるわ」
 移動しながら説明する茜さん。深刻な声ですがそれはそれとして、なんでシーツにくるまっとん?
「だああっ! 気になるのは分かるけどマジマジと見ないでよ! しょうがないでしょ状況が一刻を争うんだからっ! 覚醒後にいちいち着替えさせてたり脱がせてる暇ないでしょ!」
 あー‥‥つまりその下、すでに魔弾軍曹の服装っすか‥‥。苦労がしのばれると言うべきか、だんだん手慣れてきてると言うべきか。
「突入時や、保護対象がいた場合のバックアップとして軍が展開するからっ! あたしは例によって突っ込んでくと思うから、まずは同時に中の奴の抑えとあたしのフォローに回る人員と、無事な対象の避難に回る人員に分かれるってことでお願いっ!」
 やけ気味に叫ぶ茜さん。
「頼むわよ‥‥あたしだって、子供のキメラなんてそう見たくはないし撃ちたくないんだから‥‥そんなことは絶対に阻止しなきゃ」
 こっちはこっちで、アホ覚醒だけど真面目なところはちゃんと真面目な茜さんです。
 それではみなさん、頑張ってください。

●参加者一覧

キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
フェリア(ga9011
10歳・♀・AA
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN
紫翠 瀬良(gc1079
16歳・♂・DF
ビリティス・カニンガム(gc6900
10歳・♀・AA
村雨 紫狼(gc7632
27歳・♂・AA
ルーガ・バルハザード(gc8043
28歳・♀・AA

●リプレイ本文

「茜姐さんさー、覚醒でコスチュームも錬成すりゃいーじゃん俺みたいに〜」
 移動中の車内で茜さんにそう声をかけるのは村雨 紫狼(gc7632)さん。
「‥‥そう言われて覚醒変化が自分で変えられるものでもないでしょ‥‥って言うか変えられるならそもそも性格変化自体抑える‥‥」
 もぞもぞしながら答える茜さん。
「まあなんちゃってロリな年増の生着替えも捨てが」ボゴスッ
 ぼこす?
 いい感じの炸裂音がしましたな。何大したことじゃありません、紫狼さんの顔の横でペットボトルが爆ぜただけです。
っていうか、なんちゃってロリも何も。茜さんの覚醒そこまで若返るわけじゃねえっすけどね。つーかそちらの国ではロリは合意のうえでも犯罪だった気がします。気がしますがどうなのでしょう、先ほどから紫狼さんとラブラブオーラ全開のビリティス・カニンガム(gc6900)さん。
「これは一応ヒーローっぽい格好するのが礼儀って奴かねえ?」
 そしてこちらは龍深城・我斬(ga8283)さん。別に本依頼にそんな要件はねえっすけど。
「こういう形でまたガ・ザーンの格好する事になるとは思わんかったがまあ良い」
 若干ノリノリのような気がしねえでもないですが多分気のせいっすね。
(羞恥心が残ってるとか、和歌山可愛いな〜)
 一方31歳の茜さんに対しそんなふうにほわほわしてるのはキョーコ・クルック(ga4770)さん。
「あたしもいずれ母親になるんだし、子供はしっかり守ってあげないとね」
 何でも彼女、最近彼氏にプロポーズっぽいこともしたそうで。
 子供達と聞けばゆくゆくは自分と旦那との子供なんかが‥‥とか考えちゃうリア充ときたら、黙っているわけにはいきません。
 まったくもってけしからんですね。やっちまってくださいそこで気合十分のルーガ・バルハザード(gc8043)先生。
「ちっ、園児たちで満載のバスごと人質にとるだと?! 外道が‥‥踏みにじってくれよう!」
 ああうん、勿論やっちまってくださいってバグアをですよ。リア充をじゃないですよ。
「小さな子供達を人質に取るなんて、バグアはやっぱり悪逆非道なの。ファリスも全力でバグア退治して、子供達を救い出すの!」
 これは茜さんにはそろそろおなじみのファリス(gb9339)さん。‥‥いやまあ、園児バスジャックって戦隊物ではよくみるっすけど実際にやられると想像以上に対処にこまるっすよね。
「悪については理解できませんが、何がどうあれ、人を傷つけるというのは見過ごせません。しかも悪事のために善意を踏み台にするとは‥‥なんでしょうかこの感じは」
 その隣では紫翠 瀬良(gc1079)さんが無表情で淡々と、でもちょっと不思議そうに呟きます。憤怒に燃える己の気持ちに気付いていないという感じでしょうか。
「往くぞ我が愛機、グリム・クリーパー<スケイス>よ!」
 そして、現場に急行する軍用車の隣をフェリア(ga9011)さんのバイクが併走しております。やがて見えてきましたバスとそれを取り囲むクモ怪人。フェリアさん、一気にバイクを加速させ、敵に接近。
「颯爽登場! 銀河美妖精! フェリッ‥‥アーン!」
 真正面から格好良く名乗りを上げ、二刀の国士無双を抜き放ちます。‥‥いや、身長に対してでかすぎねえ? どうやってバイク乗ってたんだこれ。
「ぬぅっ!?」
 そんなわけで立ちはだかるフェリアさんに反応するバグアさんたち。ですが現れたのは彼女一人じゃありません。
「魔弾少女隊、マジカル☆リボルバー!」
 はい。バグアさんご指名の茜さんですよと。
「天空を貫く隕石弾! 星空の妖精・スターフェアリィ・メテオ! だぜ!」
 ビリティスさん、名乗るとともに鉄槌「メテオライト」を大地に振り下ろしゴスンっと重い振動を響かせます。‥‥ああうん、星空の妖精。隕石的な意味で。
「闇に覆われしこの世界を貫く、正義の光の一閃! 光に導かれ、魔槍少女ファリス、ここに参上なの! 立ち塞がる敵はこの槍で一撃必滅なの!」
 というわけでファリスさんが続きます。ナイト・ゴールドマスクを装着の後覚醒。その背に羽根が生える様は正しく魔法少女の変身シーンを思わせます。
「正義の戦士、メイド・ゴールド推参っ!」
 そして同じくナイト・ゴールドマスクのメイド姿、キョーコさん。5人そろった光の戦士が、びしっと決めポーズ(但し統一性皆無)。
「お前らの相手は、こっちだっ!」
 キョーコさんが叫ぶとともに全身から発せられる気迫。思わずひきつけられるクモ怪人たち。【仁王咆哮】の効果っすね。
「ふっ‥‥来たな魔法少女達! ゆけえ! バグア怪人はぐはぐ熊男!」
 ‥‥そんなネーミングなんだこいつ。念のため言っときますが可愛さ皆無です。
 というわけで胡散臭い白スーツの指示の元、魔法少女’sに向かう熊怪人。そしてその後ろをゆっくりとついてくるバグアさん‥‥て、え?
「‥‥なんか敵さんバスから出てきたんだけど。まあこっちにとってはありがたいか」
 突っ込むのは我斬さん。うん、人質とってるアドバンテージを自ら手放してどーすんだ。
 ということで、これ幸いにとひそひそとバスに近づいていくのは我斬さんに、瀬良さん、紫狼さん。って我斬さん、こっそり近づくならますますコスプレの意味なくね? ‥‥まあさておき、3名がバスに近づいていきます。
 どうやら魔法少女’sが派手に敵を引き付け、その隙に他の人員がバス内部の救出に向かうことにした模様。
 では、まず外の先頭の様子から行きましょう。
「フレイム・バレット! フォローはファリスに任せて、思う存分に戦って欲しいの!」
「良いだろう! 自分が正面から行く! ついて来いっ!」
 まずはファリスさんと茜さん。一見茜さんのほうが軍曹として男気溢れる台詞言ってるようですが、実際には脳筋ヨロシクキメラに突っ込んでいく茜さんをファリスさんが気を使ってる形になります。包囲されないように側面を警戒したり、流れ弾がバスに行かない位置取りをそれとなく誘導したり‥‥手馴れてるというか、けなげというか‥‥。
「弱い者を狙う卑怯者どもが! 一刀両断してくれよう!」
 ルーガさんもまた、一体のクモ怪人に突撃、紅蓮衝撃と強刃を乗せ、エースアサルトの一撃が一気にキメラに大ダメージを与え‥‥るのはいいんすけど、のっけからそんなに飛ばして大丈夫っすかね‥‥。錬力的にこのコンボ、一発で打ち止めっすよね‥‥。とはいえいきなりど派手に行ったのも完全に無意味ということでなく、一撃のやばさにびびった強化人間がキメラに命を下します。かくて2体のキメラがルーガさんの元へ。怪光線やら手足の攻撃やらを受け、弾きつつ、ここからは地道な攻防です。
 しかし防衛戦といえば一番苦労しているのはやはりキョーコさん。何せ序盤で3体の敵をひきつけつつ、以降もなるべく多くのキメラから、あえて敵射程に入る位置に立って己を攻撃するようひきつけています。襲い掛かる怪光線。捕縛糸。からんだクモの糸を伝い、背中から生える足の一本が鋭くキョーコさんに突き立てられ‥‥るけど、あんま効いてねえ。そう言えばこの人めちゃめちゃ防御高かったっすね。まあ、だからこそこんな作戦に出られるのでしょうが。
「こんなのに、負けるかっての!」
 吐き捨てるように言って、絡んだ糸は豪力発現でぶちぶちと引きちぎり放り捨てます。
 そして熊怪人にはまずフェリアさんが突撃。
「往くぞバグアー! 覚悟しろッ! とぉぅ!」
 叫びながら国士無双を振るいながら熊怪人を切り裂かんと襲いかかります。
「クマー!」
 熊怪人もそう鳴き声を上げつつ‥‥いや違うか。熊の鳴き声ってこうじゃねえっすよね‥‥腕を振り上げフェリアさんに襲い掛かります。フェリアさん、刀を掲げ受け流しつつ対応しようとしますが、その作戦だと体ごと直接、力づくで距離を詰めようとする相手には厳しい。熊怪人、己が傷を負うのもかまわずに、刀を押さえ込み懐に入ると小柄なフェリアさんの身体を締め上げに行きます。
「ぐおー、やめろバグアー、ぶっとばすじょー!」
 もがくように暴れると小柄な体がするりと抜けました。そのまま蹴り入れ、反動で離脱。間合いを計り一撃のタイミングを狙います。
 一方、バグアの元へはビリティスさんが。
「おら! スカしたツラしてねえでかかってきな悪党共! 早く戦い終わらせてカレー食いたいんだよ!」
 そう叫んで怪しいスーツの元へと走っていきます。‥‥黄色ポジション狙いでしょうか。
「む? こちらに来るのか?」
 意外そうなバグア。‥‥いやなんで、戦場にのこのこいて狙われないと思うか。確かにこの手の幹部役って、戦闘中はえらそうにしてるだけだけどさあ。
「メテオアタック!」
 必殺技名とともに鉄槌が唸りをあげます。普通に殴打してるだけですけどね! 豪快な攻撃をバグアはひょい、と避けます。
「ふむ、中々派手でよい」
 めり込む一撃の威力は確かに大したもんです。それがむしろ楽しそうなバグア。
「ならばここは、『少々遊んであげよう』といえばよかったかな?」
 そうして、再度槌を振るうビリティスさんの側面に回りこみ、手にしたステッキの一撃がわき腹に叩き込まれます。
「ぐ、は」
「なんだ。吹っ飛ばされて木にたたきつけられるとかしてくれたまえよ」
 どうにかその場で踏ん張るビリティスさんに、バグアは不満気味。‥‥付き合えるかそんなもん。普通死ぬわ。
 めげずに槌を構えなおすビリティスさん。速度では負けているため、何とか味方との連携で隙をつきたいところっすけど‥‥ちと、格上相手には詰めが甘い。戦ってる皆さんは基本的に、バスに攻撃が行かないことを主眼にしてるっす。積極的にバグアさんの隙を作りに行くものも、ビリティスさんが作った隙を狙いに行くのも今は手が回らない状態。
 が、そこでブロロロロッと低い唸りが起こりました。バスのエンジン音。
「おっさん! 敵は仲間たちがひきつけてる! 今のうちに安全な場所に移動だ!」
 ここでバスの車内。紫狼さんが運転手に呼びかけバスを移動させようとしています。確かに前方にいたキメラはキョーコさんがひきつけてたっすね。
 ただ、車内はまだパニック状態、子供たちは阿鼻叫喚の地獄絵図、それが大人の動揺も誘って運転手さんも決して心情穏やかじゃねえっす。エンジンをかけなおしたは良いものの、移動はそろそろとしたものです。
「――む?」
 異変に気付き横を向くバグアさん。
「メテオストライク!」
 そこへビリティスさんの一撃。ちなみに技名違ってるっすけどやってることは変わってません。鉄槌で殴打です。
「おっと」
 これは避ける暇がなかったか咄嗟にステッキで受け止めるバグアさん。ですが、バスが動き出したのを理解すると即、距離をとりに動きます。そしてそのまま、バスの前面に‥‥。
「なりは色物だが性根はバグアか、だが思い通りにはさせんよ!」
 ここで、バスとバグアの軍勢の間に割り込む位置に、フォローのために待機していた我斬さんが動きます。バスに向かい移動を開始したバグアに迅雷で割り込み。手にした槍で猛撃を仕掛けます。
「悪役なら悪役らしく適当な所で成敗されちまえっての」
「ふむ。だが私にもプライドはあってね。果たして君には倒されてよいの腕前かな?」
 かち合わされる槍とステッキ。飛び散る火花。ビリティスさんも追いついてきて2対1ですが、それでも決定的に捕らえるには至りません。バスが狙われないか、気をつけながら戦わねばならないのがまた、厳しい原因。
 ですがバスはその間、ゆっくりとですが着実に前進できています。そう、紫狼さんがフォローをお願いし、事前に潜伏してもらっていた兵士の処まで。後は順次下ろして保護してもらうだけっす。
「大丈夫、おじさんたちがきっと助ける、だから安心して欲しい」
 怯える園児たちに紫狼さんが声をかけ、
「それじゃあ、こっちもお約束だ‥‥獣猛装!! 俺は正義の戦士、紫電騎士‥‥ゼオンッ!」
 声とともに覚醒。甲冑姿に変化(なお、覚醒による外見変化なので防御効果はありません)し、バスの前に立ちはだかります。
「ほほう! 良いな、実に正義だ! ‥‥熊怪人!」
「クマァアアア!」
 バグアさん、すごい楽しそうに声を上げます。そして‥‥フェリアさん一人では抑えきれなかった強化人間が、バグアの元へ駆けつけ‥‥そしてバグアの姿が、二人の前から掻き消える! 出現先はバスの前!
「すみませんが、子供達を頼みます」
 だがバスの中で、この事態に備えて待機していた瀬良さんが慌てず騒がず‥‥まあこの方元々感情表現が気迫なのもあるっすけど‥‥前に出ます。
「――まずは吹っ飛べ」
 両手に持った雪洞型の槌でバグアに襲い掛かります。滑らかな動きで敵の側面に回りこみ、流し斬り! ‥‥いやまあ、槌なんで斬ってねえっすけどね。
「ふん!」
 しかしこれまた、バグアは反応してステッキで止めます。瀬良さん、錬力を惜しまず、そのまま流し斬りで攻撃を重ねますが‥‥いまひとつ、押し切れない。
「はっはっは! いいぞ! 実に正しい姿だ!」
 そしてバグアさんは、気に入ったのか、子供たちを庇うようにして思うように動けない紫狼さんを集中攻撃。シチュエーションに酔ってます。絶賛悪役プレイ中。
 ――が。
「力と技の刀が廻る‥‥風の唸りに血が叫ぶ! 力の限りぶち切り裂けぇッ!」
 ここで声を上げたのは‥‥フェリアさん!
 結果的に我斬とビリティスさんと協力して強化人間を相手取ることになったため、生まれた好機に両手の刀での同時攻撃が決まります。
「クマァアアアア‥‥!」
 体が傾いたところに我斬さんとビリティスさんからの追撃が入り、血の海に沈む熊怪人。
「むぅ、熊怪人!? ‥‥よかろう、ここは貴様らの勝ちだ」
 え。あ。ここで引いてくれるんだバグアさん。‥‥確かに序盤は幹部は怪人がやられたら去ってくもんだけど‥‥あんた今二人相手に押してるっすよね‥‥。そこもお約束に従っちゃうんだ‥‥。
「深追いはやめておこう。子供たちの安全が優先だ」
 我斬の呼びかけ。この段階で、クモ怪人もあらかた退治されてます。
 キョーコさんの敵の引きつけと紫狼さんの手配のかいあって避難自体はスムーズに行きました。釈然としない部分もあるかもしれませんが、依頼としては十分な結果っす。
「ふはははは! 楽しかったぞ魔弾軍曹たち! また会おうっ!」
 バグアの声が最後にこだましますが、リベンジはまた別の機会――
「いやまてえ! だから何であたし指名するっ!?」
 ‥‥まあ、秋葉原から先、この辺りで変に暴れてたせいではないでしょうか。半端な知名度をえた魔弾軍曹は今後どこへ行くのか。
「‥‥茜姉さま?」
 ってファリスさんどうしました? あれ? 茜さん、結構マジで凹んでる?

 ――まあその辺は、また次回に。なるようなならんような。