タイトル:【嘆戦士】狂・凶マスター:中路 歩

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/18 17:04

●オープニング本文


「‥これで、七件目ね」

 たった今、下士官の男が持ってきた書類に目を通した上官の女は、神妙な顔でため息をついた。
 
「はい、今回もまた、UPCの傭兵達が現地に到着する前に、キメラ達は一掃されていました。そしてその死体を傭兵達が軽く検分したところ‥」

「また、全て斧と思われる殺傷痕、か」

 彼女はもう一つ深いため息をつき、傍らのコーヒーを一口啜る。

 以前、LHの能力者達が関与した『キメラが既に全滅していた』という一件以来、同じような事が度々起こるようになっていた。
 いずれもキメラ絡みであり、大小に関わらず全てが駆逐されているのである。
 だが、別にキメラが駆逐されているのならば、歓迎こそすれ拒否をする理由は無い。なので、上層部の一部などはこの件を黙認しようと案を出すものまで出始めた。
 しかし、そう提案した彼らは重要な事を忘れている。

 能力者が、襲われた経緯があるのだ。そして、一人は重傷を負わされている。

 一番危惧すべき事は、キメラに向けられた刃が人間に向けられる事だ。能力者が二人がかりでやっと手傷を負わせられた相手だ、『男』がキメラなのか人間なのかは不明だが、フォースフィールドがあろうと無かろうと、一般人ではまず太刀打ちできないだろう。

 その一方で、一般人には危害を加えないという可能性も無いことは無い。

 能力者が襲われた一件の時、その男は街の人間をキメラから救っている。そして、脅すでもなく謝礼代わりとして住民達に『隠れているように』と協力を要請していたのだ。
 ただキメラを倒すために、結果論としてそうなったのならば納得できるとして。『隠れているように』と言ったのは自分と能力者との戦いに巻き込まないためだと言う。

 単に殺戮を求める狂戦士か。
 殺戮を求めつつも人々を守る凶戦士か。

 今のところ、それはなんとも言えない。

「いずれにしろ、この存在を看過しておくことは出来ないわ」

 上官の女は、そう言いながら引き出しから地図を取り出した。そして、赤ペンを使ってなにやら書き込み始める。下士官の男は黙ってそれを見つめていた。

 やがて、複数の点と、七つの丸が書き込まれた。

「良い? この丸が、今まで男が現れた場所。なにか気づく事は?」

「‥あれ、そういえば範囲が限られているような」

 彼の言うとおり、その七つの円は一つの地図に収まるほどの範囲にしか書かれていない。それはつまり、彼が遠距離まで移動する手段を持っていないということになる。
 それでも、この地図は決して狭くは無い。一応バイクや車などは持っているのかもしれないが。

「次に、この点。この点は少なからず人が住んでいるところよ。一軒家から街まで全てね。そして、そこにはリアルタイムで軍に報告が出来るように通信機を置いているの。その通信機からSOSが発信されたら、私の携帯電話とLHに直接伝わるようになっているわ」

 つまり、依頼された日時と実際にLHに公開される日時のズレが短いほど、男より先に現場に到着できる可能性が高くなる。リアルタイムで依頼されるのならば尚更だ。
 ちなみにこの配置は、以前取った男の行動から察するに、少なくとも民間人を守る意思をあると言う前提のモノである。

「え‥それって、やっちゃいけないことなんじゃ」

 軍に直通の通信機、敵に渡ればとんでもない事になる。
 
「大丈夫よ、ちゃんとそれの警備に一人つけているからね。いざとなったら破壊しても構わないと言って置いて‥」

 その時、上官の携帯電話が鳴った。

●参加者一覧

金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC
神無 戒路(ga6003
21歳・♂・SN
リュウセイ(ga8181
24歳・♂・PN
月村・心(ga8293
25歳・♂・DF
サルファ(ga9419
22歳・♂・DF
神無月 るな(ga9580
16歳・♀・SN
米本 剛(gb0843
29歳・♂・GD
シヴァー・JS(gb1398
29歳・♂・FT

●リプレイ本文

●戦闘開始
 恐怖で動けない男に斧を振り下ろそうとしていたケンタウロス類似キメラは、それを振り下ろす前に後方に飛びずさる。そしてたった今キメラがいた位置を銃弾が貫いていった。
 キメラは、ほとんど人間と同じ頭部をその射出場所に向け、改めて武器を構えなおす。
 神無 戒路(ga6003)は銃弾が外れたことに舌打ちする間も無く、すぐにライフルをキメラに向けた。今の一撃は住民から注意を逸らす意図もあったので、その点に関しては成功だろう。

「ううっ! 武者震いしてくるぜ‥‥」

 その傍らでフロスティアを構えているリュウセイ(ga8181)は、明言したとおり恐怖とは性質の違う震えを体に帯びていた。言いながら、先ほど調達したロープを懐から取り出す。
 一瞬そのロープにキメラは目が行ったが、すぐに無視して、馬独特の特攻の構えを取る。そして、その構えの通りに突撃してきた。

 神無は当初の予定通り、機動力を奪うべく脚部を中心に銃撃する。だが、それを見越していたようにギザギザにこちらに向かってくる事で全て回避された。
 そこでリュウセイがカウボーイの如くロープの先に輪を作り投擲する。銃弾の回避に全力を注いでいたキメラはそれに気付けず、左腕にロープを絡められた。
 
「‥もらった」

 神無はその隙を見逃さない。素早く「影撃ち」を発動させ、キメラの頭部を狙う。しかしそれでも、的確に反応し、リュウセイに突撃する形で銃弾を回避した。
 リュウセイはロープを捨て、両手でフロスティアを構える。

「今日の俺の攻撃は痛いぜぇぇっ!」

 そして、二人がすれ違う。

 リュウセイの得物が弾け飛び、地に刺さる。そして腕を押さえて蹲った。骨にひび位入っているかもしれない。
 だが、キメラの方はもっと重傷だ。武器を持っていた右腕は完全に千切れ飛び、胸には裂傷が刻まれている。
 そこに三度目と言わんばかりに、神無が銃撃を行った。
 今度は的確に頭部に命中し、キメラ一匹の駆除に成功する。

 一方こちらは、サルファ(ga9419)。
 彼は住民の避難をさせている味方の援護を行いながら、一人で戦っていた。

「ちいっ、ちょこまかとっ!」

 彼もまた、神無と同じく脚部に銃撃を集中させているのだが、やはり全て避けられてしまう。撃ち始めの頃は大分距離が離れていたキメラも、ギザギザ移動で徐々にこちらに近づいてきていた。
 場所を移動して距離をとるのは簡単だが、それをしてしまうと住民の方へ注意が向くかもしれない。サルファは頑張ってその場に踏みとどまり、銃撃を続ける。
 しかし、努力の甲斐なく、キメラは既に前方6メートルの位置まで近づいていた。
 サルファは意を決し、エネルギーガンを懐にしまい、血桜を両手で構えた。

 そして、自らキメラに飛び掛る。
 
 虚を突かれたキメラは一瞬驚くも、すぐに長斧を突き出してきた。
 キメラの斧はサルファの肩を掠め、サルファの切っ先は深々とキメラの腹腔を貫く。

「射撃は苦手だが、この距離ならば‥!!」

 貫き、キメラの体に縫いとめた血桜を離さずにしがみ付く。そして、零距離で銃を付き付けた。

 発砲、発砲、発砲。

 連続して響いた銃声は、キメラの命と共に静かに消えていった。


●男参戦

 そして、キメラ殲滅班四人の内の最後の一人、月村・心(ga8293)もまた、一人で戦闘を行っていた。
 彼は一人で三匹のキメラを相手にしている、普通ならばまず苦戦するだろうが、彼には策があった。
 一定の距離を保ちつつ、アサルトライフルを発砲する。その銃口は明らかにキメラを捉えておらず、わざと外れていた。そしてこちらに注意を向けながら、ある方向へと走る。
 キメラは相手がただの下手糞だと判断したのか、銃弾を気にせず真直ぐに爆走してきた。
 だが月村は、舌打ちどころかニヤリと笑い、懸命に逃げる。

「馬鹿めが‥わざとやっていることに気づかないか? 所詮キメラはキメラだな?」

 そう呟き、更に逃げる。キメラが更に追う。
 距離を保つ為、定期的に発砲し、更に逃げる。
 
 やがて、その『策』の正体が見えてくる。
 広大な水溜りが作ってあり、その端には民家から引いたと思われる電線があった。つまり、電気トラップである。
 月村は素早く水溜りを横断、停止、そしてスイッチを握る。
 水溜りには気付いたものの、トラップがあるとは夢にも思っていないキメラはひたすら突き進んできた。
 
 水溜りまであと‥20メートル‥10メートル‥5メートル‥2メートル‥。

 キメラが水溜りに、足を踏み入れた。
 同時に月村がスイッチを押す。
 
 三匹のキメラの体に、強烈な電流が走る。普通の生物ならばまず致死量だ。

 だが‥‥月村は致命的なことを忘れている。
 相手はキメラ‥‥そう、フォースフィールドがあるのだ。

 長斧はボロボロになり地に落ちたが、キメラ自体には殆どダメージが無い。
 キメラは全く意に介さず、真直ぐ月村へと突き進んだ。
 その距離、2メートル。
 アサルトライフルを構え直す暇も無い。

 月村は、大きな衝撃を受け、吹き飛んだ。

 一瞬意識が途切れ、地に叩きつけられる事ですぐに戻る。
 追撃に備え、素早く起き上がりナイフを構えた。
 だが、その必要は無かったらしい。
 
 そこに立っていたのは長い銀髪の男。
 振りぬかれた二対の大斧は既に三匹のキメラの体を裂断している。
 月村はすぐに確信した。
 この男が、「イレギュラー」だと。

「お前、なぜ俺を助けた!?」

 月村は立ち上がりながら、アーミーナイフを構えた。
 先の強い衝撃、アレはキメラのものではない。男が彼を突き飛ばしたものだったのだ。
 だが、男は月村を一瞥しただけで、立ち去ろうとする。能力者を襲った経緯があるにしては、腑に落ちない行動だ。

「お前は何故戦う?」

 しかし、その月村の言葉に、男は立ち止まった。

「俺は、上からの命令だ。所詮はサラリーマンと同じようなもの。結果を出さねばならん。‥だからお前のような予測がつかないイレギュラーは邪魔なんだよ!」

 何かに突き動かされるように一気に喋り終えた後、月村は緊張を高める。
 この最凶の男に罵倒を浴びせる、これがどういうことかは理解しているからだ。

 だが、当の男は。怒りも笑いもせず、半身だけ振り返り、言った。

「俺にとって、貴様は邪魔ですらない。自らの策に溺れるような奴はな」
 
 そして、姿を消す。
 月村は悔しげに呻き、足元にナイフをたたきつけた。


●護衛班
「‥彼なら‥きっと、こうしますから‥」

 金城 エンタ(ga4154)は周辺のキメラを仲間と共に片付けた後、呟いた。
 避難している住民達には、まだ大事を取ってまだ隠れていて欲しいと伝えてある。
 これは、以前「男」が取った行動と同様である。
 
 そして、護衛班である金城とヨネモトタケシ(gb0843)は、キメラ殲滅班の援護に行く事にした。勿論、住民の救護にはシヴァー・JS(gb1398)と神無月 るな(ga9580)を残している。これで、一先ずは住人の安全は確保できたと言えるだろう。

 走り始めたヨネモトと金城。暫くしてヨネモトが通信機を起動させ、サルファに連絡を取る。

「住民の避難は完了、其方は如何ですかなぁ?」

 暫くの沈黙。
 よく聞くと、その向こうで銃声やら断末魔の悲鳴やらが聞こえる。
 サルファも何とかキメラを撃破できているようだ。
 
 そして数秒。

「ヨネモトか? そっちの状況はどうだ」

 少し息遣いの荒いサルファの返事が返ってきた。
 ヨネモトは苦笑しながらも、再び避難を完了した事を伝える。

 と、そこで金城の通信機からも声が聞こえてきた。
 どうやら、リュウセイからの通信らしい。

「エンタ、今の所例の男は見当たらねぇ。そっちはどうだ?」

 金城は「そうですか」と小声で呟き。

「こちらも見当たりません。もしかして今回は現れないのでしょうか?」

 この金城とリュウセイは、以前男と遭遇した唯一の人物である。
 そして、オープニングにて話に上がっていた「襲われた二人の能力者」とは、この二人のことなのだ。
 彼らは復讐をしようとは思っていない。だが、次に遭遇した時には色々情報を聞き出そうと誓っていたのだった。

 暫くして、ヨネモトと金城の前に二匹のキメラが現れる。やはり、まだ残っているようだ。

 出会い頭に、ヨネモトはいきなりソニックブームを発動させる。狙いは勿論脚部、機動力を奪う事を考えるのは皆同じなようだ。
 そしてキメラは不意を突かれたのと、銃弾より明らかに有効範囲が広い攻撃に対処できなかったらしい。
 二匹とも前足を切断され、その場に転げた。
 そこに間髪いれず金城が二丁拳銃を向ける。
 
 銃声は二つ。

 それらは狂い無く頭部を吹き飛ばし、命の灯火を消した。

●遭遇
「以前に男が町の住民全てを避難させたのは、町を訪れた能力者を散らす為だったと考えています」

 シヴァーは周辺の警護を行いつつ、傍らの神無月に自らの考察を語りかけていた。

「何故なら男は我々が町を訪れた際に即襲撃を仕掛けず、更には戦闘中照明銃を優先的に破壊していた」

 神無月も「男」には興味があるので、真剣な表情で聞いている。

「つまり彼は多数の能力者との戦闘を避けている可能性があるのです。となれば、男が出没した場合接触する可能性が高いのは‥‥」

「‥私たち、という事になりますわね」

 キメラ殲滅班四人は、ある程度の距離を取っているものの直ぐに駆けつけられる程度の距離。そして、金城とヨネモトはその殲滅班の援護に行ってしまった。
 と、言う事は。自然と少数孤立しているのはシヴァーと神無月ということになるのだ。

「一般人を守り、キメラを倒す「謎の男」‥強さを求め能力者に戦闘を挑むのでしょうか‥」

 神無月も色々と思うところはあるのだが、結局は謎に包まれている。
 やはり、男自身に聞くのが一番だろう。答えてくれるかは別として。

「肝心なのは、その考察が正しいとしても男が来る可能性が絶対では無いのですわね。困りましたわ」

「いえ‥」

 神無月の独白に、シヴァーが唐突に足を止める。
 神無月も一瞬遅れて、足を止めた。

「どうやら、私の考察力も捨てたものではないですね」

 二人の目の前に現れた人物。
 イレギュラーは無言で双大斧を構えた。

 それを見越し、神無月が素早く進み出る。

「貴方は何故能力者を攻撃するのかしら? 手段は違えど目的は一緒じゃない‥手を組む必要はないけれど、邪魔しないで頂きたいわね」

 そう言い切った神無月の隣にシヴァーも並ぶ。
 二人とも男が答えてくれることに期待はしていない、冷や汗をかきつつも、各々の武器を手に取る。
 だが、意外にも男は返事をした。

「もうキメラは残っていない。いらぬ心配はしないことだ」

 そう言い残し、殺気を二人にぶつける。
 もはや話し合いの余地は無い。
 シヴァーは防御を捨てて蛍火を構えて突撃し、神無月はロングボウに矢を番える。
 最初は呼笛で仲間を呼ぼうと思った神無月だが、シヴァーの考察の中の「照明銃を破壊していた」という部分を思い出し、思いとどまったのだ。

 ロングボウから発せられた矢は真直ぐ男へと向かう、そこに寸分置かず叩き込まれるのは蛍火。
 避けられるタイミングではない、絶妙なコンビネーションだ。

 だが、男は捌いた。
 
 左手の斧で矢を叩き落し、右手の斧で蛍火を防ぐ。
 左右の腕で全く違う事を行うのはかなりの難しさだ、両手で鉛筆を持って別々の絵を描くのを想像してみればわかるだろう。

 シヴァーは素早く状況を判断し、後ろに飛びずさる。
 だが、それに密着するかのように男も間合いを詰めてきた。
 
 速い!

 だが、シヴァーに一撃が入る前に、男は踏みとどまり、斧を一閃した。
 救援のために神無月が連射した三本の矢は、ただの一振りで全て地に落ちる。

「そんなものに頼るか! 軟弱者がぁ!」
 
 一喝と同時に左手の斧を投擲。
 神無月は慌ててロングボウを仕舞い、サーベルに持ち替えた。
 弾け飛ぶのは人間。
 神無月はその威力を受けきれず、衝撃のまま吹き飛んでいった。

 今ならば、左右のバランスが取れないはず。

 そう悟ったシヴァーは、豪破斬撃、流し斬り、紅蓮衝撃。全てのスキルを発動し、男に強襲を掛けた。

 しかし‥。

「良い判断だ‥だが、俺には通用しない」

 シヴァーは寸前で『腕を掴まれ』、切っ先は男の頬を掠めただけだった。
 そして、その傷はシヴァーの目の前で見る見るうちに塞がっていく。

「ふむ‥貴方、やはり人間ではありませんね?」

 相変わらずの態度のシヴァーに、男はニヤリと笑った。
 シヴァーの意識は、強い衝撃と共に、途切れた。

●その後
 三十分後、リュウセイの前には「男」の姿があった。

「やっぱりくるのか、あんたの名前くらい今日は聞かせてもらうぜ!」

 リュウセイは、片腕をダラリと下ろしながらも、武器を構える。その傍らには、援護に来ていた金城とサルファの姿があった。
 それ以外のメンバーは、連絡の無い月村の様子を見に行っている。彼は無線機を持っていなかったのだ。
 
 金城とサルファは、負傷しているリュウセイを庇うように進み出る。
 初めて対峙するサルファの目には一種の理解が広がっている。一目見ただけで、自分より強い事を悟ったのだ。

「聞きたい事はありますが‥『渇き』を癒せる者にしか‥語らないのでしょう?」

 金城は武器を手に取りつつ、聞く。
 今回は絶対にただでは逃がさない、その決意がこもっていた。

 男は、双大斧を背に、静かに三人を見つめている。そして、口を開いた。

「今回の渇きは潤った‥‥貴様ら二人のことは認めているが、弱っている時に仕掛けるほど堕ちてはいない」

 サルファがその二人に入っていないのは‥まぁ、戦った事が無いのだから仕方が無いだろう。
 と言うより、普通に会話が出来る事にリュウセイと金城は少し驚きを覚えていた。
 男は背を向けた。

「俺の名前は‥‥ラセツ‥。今度会うときを、楽しみに待っている」

 そう言って、男‥ラセツは立ち去った。