●リプレイ本文
【本仕事の陣形】
1 2
5
7 8
6
3 4
1:ヨネモトタケシ(
gb0843)
2:須佐 武流(
ga1461)
3:カルマ・シュタット(
ga6302)
4:九条院つばめ(
ga6530)
5:緑川 安則(
ga0157)
6:鳴神 伊織(
ga0421)
7:暁・N・リトヴァク(
ga6931)
8:鐘依 委員(
ga7864)
・1〜4:近接班(須佐、シュタット、ヨネモト、九条院)
・5〜6:射撃班・銃(緑川、伊織)
・7〜8:射撃班・弓(リトヴァク、鐘依)
・遊撃(清総水)
●助っ人
「一時はどうなるかと思いましたが‥こんな場所にこれ程の武の御仁が居るとは‥」
ヨネモトはそう言いながら、隣を歩いている栄流に笑いかけた。栄流は苦笑しつつ、首を横に振る。
「私なんてまだまだよ、さっきのは相手が油断してくれていただけ。本当ならあんなに簡単に倒せないわ」
そう言った後、彼女は少し歩行速度を緩め、シュタットの隣に移動する。
「お久しぶり‥というほどではないかしら」
そう言い、笑いかけた。
「ええ。今日は他の二人とは別行動なんですね」
シュタットも思わず口元をほころばせながら返答した。
「私たちが同じ仕事を請けている方がが珍しいのよ。休日は一緒だけどね‥咲以外とだけど」
最後の「咲」の部分で少し険が含まれていたが、気にしないことにした。
少し離れて、鳴神達後衛チーム。
「彼女は随分強い方の様です・・世界は広いと言う事でしょうか」
そう言いながら、鳴神は月詠を少し鞘から引き抜き、刃を煌めかせる。それはまだまだ強く輝けると刀が意思を持っているようであり、彼女の一層精進しようと言う気持ちを代弁したかのようだった。
「彼女は女神‥いや、ワルキューレかな?」
暁は、弓の調子を見ながらそう呟いた。彼女とは勿論栄流のことだ。
それを聞き取った鐘依は、同じく草薙の弦を調整しながら微笑む。
「‥戦乙女、か。美しいですね」
どうやら、彼女も暁と同意見のようだ。
しかし、またも少し離れて最前列。
一人だけ、栄流を忌々しげに睨んでいる人物がいた。
高レベルグラップラーの須佐だ。
(「突然割って入って余計なことしてくれちゃって‥困るんだよねぇ、そういうのさ?」)
その心情に気付いているものは、誰もいなかった。
●余計
「全方位防御円形陣! 銃器持ちは内部に入り弾幕展開! 弓持ちは翼を狙撃! 白兵担当は外周部に周り、弾幕で落とされたものを仕留めて欲しい! 栄流嬢は遊撃を担当してもらいたい!」
緑川の的確な指令が、辺りに響き渡った。
しばらく山を登り、再びハーピーキメラの群れと遭遇した。
今度の数は五、一行を取り囲んでいる。大した数ではないが、ハーピーキメラは固体が弱いわけではないので油断出来ない。
「行きますよ! 弾幕展開!」
暁の復唱と共に、後衛四人が一斉に得物を使用する。
隙を見て襲い掛かろうとしていたハーピーが慌てて回避行動に移行する、が、
「銃はあまり得意ではありませんが‥致し方ありませんね」
鳴神のその言葉と共に、一匹が避けきれずに羽を撃ち抜かれ落下してきた。
「そこです! きっちり退治させてもらいますよ」
そう叫び、九条院はルピネススピアを構えて突撃した。目標は当然、たった今落下してきたハーピーである。
バランスを取ろうと奮闘していたハーピーは、彼女の接近にギリギリまで気付けなかった。滑らかに肋骨をすり抜け、切っ先は心臓を貫き、背中に突き抜けた。当然、致命傷である。
だが、あまりに滑らかに突き刺さった為、九条院はグラリとバランスを崩した。
それを、回避行動を取っていた一匹のハーピーが目ざとく見つけ、槍を突き出してきた。
と、その槍が誰かに掴まれる。
助けに駆け寄ってきたシュタットだった。
先ほど、栄流がやっていた事を出来ないかとチャレンジして見たのだが、どうやら成功したようである。
「出来た‥けど、ガラじゃないな」
苦笑しながらも、そのまま槍を引き寄せ、カウンター気味にショットガンを押し付ける。
そして発砲。
散弾は見事にハーピーの頭部を爆砕し、命を断たせた。
残り、三匹。
最前列のヨネモトは、器用に突き出される槍を捌く。
ハーピーは自分が相手の射程外にいることが分かっているのか、弾幕を回避しながらも黙々と槍を突き出してくる。
ヨネモトもまた、黙って隙をうかがっていた。
そして、鐘依の放った槍が、見事に槍を持つ腕に突き立った。それを見届け、彼女は満足げにフッと微笑する。
だが、ハーピーは腕を押さえつつも後退する、どうやら得物を失った事で一時撤退するようだ。
「攻撃範囲を見誤った其方が甘かったですねぇ」
そう言い、ヨネモトは蛍火を一閃、その軌跡は長く伸び上がり、背を向けたハーピーの頚椎を見事に刈り取った。
残り二匹‥だが、それらももうすぐ命を絶やす。
「空を飛んでるからって、接近戦が出来ないなんて思われたくないんだよ!」
須佐が、飛ぶ。
限界突破を使用し。その後、疾風脚で脚力強化、棍棒を地面に突き立て棒高跳びの要領で空中に跳躍したのだ。
流石に、これには味方も含め全員が唖然となる。
その隙を逃さず、落下する速度を利用して、一匹に飛び蹴りを喰らわせる。それは正確に頭部を潰し、ハーピーは地面に激突する前に息を引き取っていた。
そして残り一匹も、暁や鳴神の放った攻撃で地面に落ちた所を、栄流が薙ぎ払っていた。
「皆強いのね、私は必要なかったかしら?」
栄流は刃についた血糊を拭いながら、微笑する。
それに答えたのは、たった今着地した須佐だった。
「あぁ、必要なかった。困るんだよね、そういうのさ」
冷たく、言い放つ。だが、他のメンバーには聞こえていなかったようだ、皆それぞれの治療などを行っている。
「あんたはジッとして置いてくれ、俺が攻撃を受けてやるから」
そう言い残し、皆の下へと戻っていく。
栄流は、怒りもせず、ただ微笑してその背を見つめていた。
●休息
「ここが、敵の拠点のようね」
少し開けた場所を見ながら栄流はそう言い、皆を振り返る。
「連戦だから錬力が少ない。時間の戦闘は無理か」
相変わらず、的確に状況を分析する緑川はそう呟いた。
その通りである。
最初の戦いから、今に至るまで、皆かなりの錬力を消費している。そろそろ、決着を付けなければ危ういだろう。
栄流は途中参加と、普段山で修行をしているだけあって平気そうだが、彼女一人では如何せん荷が重いだろう。
シュタットは心配げな彼女に微笑み。
「もし良かったらこのあと一緒に訓練してもらえませんか? どんな訓練しているかも興味ありますしね」
それを聞いた九条院も。
「あ、私も。槍使いの端くれとして清総水さんの槍技、じっくりと拝見したいものです」
彼女もまた、微笑む。
栄流は苦笑し。
「では、体力が残っていたら、少し一緒に動きましょうか」
と約束した。
●闘
一行が拠点に飛び込んだ時、八匹のハーピーは予見していたかのように襲い掛かってきた。
「陣形は先のまま、行くぞ!」
緑川の号令と共に皆が各々の位置につく。
そして、再び弾幕を展開した。
「呼吸を合わせて‥リズムはこっち‥撃つ時は、相手が回避することを読んで‥」
自らの陣地という事もあるのか、ハーピーは先程よりも軽快な動きで一行を包囲する。その素早い動きを、暁は冷静に追っていた。持っているのは、小銃「S−01」
「そして‥撃つ!」
放たれた銃弾は、完璧に計算尽くされた軌道を飛び。一匹の脳天を穿つ。
「ふふ‥やりますね」
暁を賞賛した鐘依は、いつの間にか頭上で槍を振りかぶっていたハーピーを冷静に見つめ。そして同じく冷静に反応。
槍が振り下ろされる前に、弓を番え、放つ。
この至近距離では回避どころか反応も出来ず、ハーピーは地に落ちた。
一方、鳴神と九条院。彼女達は三匹のキメラに包囲されていた。いつの間にか、陣形から誘い出されていたようである。
「うぅ、ちょっと無茶しすぎちゃいましたか?」
槍を振りながら、ハーピーを牽制する九条院は横目で鳴神を見る。
少し焦り気味の彼女と違い、鳴神は冷静に笑う。
「大丈夫ですよ、多少無茶をしなければこの状況は打開できませんから」
そういうと同時に半歩下がる、その前をハーピーが槍を振り切った状態で通り過ぎようとしていた、当然見過ごすはずは無い。
すれ違い様に月詠をつき立て、言う。
「終わりですね‥さようなら」
骸骨の指輪で増幅された攻撃力は、ハーピーを突き刺した胸元から一気に股間まで掻っ捌く事を可能にした。
それに度肝を抜かれたのか、二匹のハーピーも若干怯む。
そこに飛来する、銃弾。緑川が隙を見てこちらにも弾幕を広げてきたのだった。
「ようし、じゃあ私も」
先ほどのシュタットの真似、引いては栄流の真似を彼女も実行する。
流石に栄流みたいに片手で槍を扱うのは不可能なので、一時地面に突き刺し、だらりと下ろされていた古槍を掴み、そして引き摺り下ろした。
油断していた二匹はアッサリと地面に落ち、九条院が再び手に取った槍で、絶命した。
そして前衛班。
「その隙‥見過ごせませんねぇ」
居合いの体勢から放たれた流し切りは、ヨネモトの怒涛の攻めに槍を取り落としたハーピーの首を人形のように吹き飛ばす。
「残り一体」
彼はそう呟き、辺りを見回す。
最後の敵の前には、須佐の姿があった。彼は再び、先ほどの手段で敵を倒そうとしているらしい。
再び限界突破を使用、棍棒を突き立て上空へ‥そこで須佐の身体に変化が起きた。
錬力切れ、である。
空中でバランスを崩し、隙だらけとなる。そこに突き入れられる槍。
血の飛沫が舞う。
須佐はなすすべも無く地面に激突し、痛みに呻きながらも素早く立ち上がり、傷を確認。だが、彼には傷一つ無い。血は服に飛び散っているのにだ。
答えは、ハーピーを踏みつけ、槍を突き入れている状態で立っている栄流だ。彼女の脇からは血が滴っている。
「全く‥最近のレザー製品は質が落ちたわね」
傷口に触れながら、栄流は不満げに呟く。
当然分かる事だが、彼女が須佐を庇ったのだ。
栄流は須佐と同じ方法で跳躍し、須佐を押しのけ我が身を晒し、受けた傷を気にせずハーピーに槍を突き入れたのだった。
「‥努力の結晶、ですか」
鐘依は、その様を見ながら亡羊と呟いた。
だが、やはりダメージは少なくなかったのか、栄流は脇を抑えてその場に膝を付いた。
と、そこに飛来する槍!
見ると、一匹のハーピーが急所を外れていたのか、残る力を振り絞り槍を投擲したのだった。
彼女は避けようとしたが、足に力が入らないらしい。確かに、あんな無茶をやったら錬力も体力も尽きて当然だ。
だが、その槍が彼女に届く事は無い。
一人の男が、彼女を抱え上げ跳躍。その着地した先にはあのハーピーが横たわっており、その頭を踏み潰しながら着地した。
「言ったろ? 俺があんたの攻撃を受けてやるってな。これで貸し借り無しだ」
須佐はニヤリと笑いながら、腕の中の栄流に話しかけた。彼自身も錬力が尽き掛けているはずなのに、無茶をしたものだ。
栄流はニッコリと笑い。
「えぇ、そうね」
●その後
流石に、もう訓練する余裕は誰にも無く、栄流も含め、山から降りることにした。
「御助力感謝致します、これで麓の街にも平安が訪れますねぇ」
最初と同じく、ヨネモトは隣を歩いている栄流に笑いかけた、
「あなたのおかげで助かりました。ありがとうございます」
緑川も笑い、ついでに手の甲にキスでもしようと思ったが、栄流の手は血で塗れており、流石に失礼かと思い止めておいた。
栄流はそれぞれに笑いかけ、先頭を歩いている須佐に追いついた。
「今回は、私も助けられたわね。このお礼はいずれさせてもらうわ」
その屈託の無い言葉に、須佐は少し頬を赤らめる。実は照れ屋らしい。
「俺が負けたら麓の村の人達の平和が脅かされるから戦っただけだ。勿論、あんたもその一人だがな」
「あら、私は村の人間じゃないわよ」
栄流はアッサリとそう言う。
そして、素早く須佐の前に回り、手を差し出した。
「私は何でも屋『紅の獣』所属の清総水栄流、改めてよろしくね?」
『紅の獣』の単語を聞いて、彼は僅かに仰け反った。
以前、その何でも屋所属の『リリス』という子に思い切りぶん殴られた事があるからである。
「あ、あぁ。よろしくな」
照れと困惑で返答したのを、栄流を含め皆が笑った。