●リプレイ本文
●七人のほにゃらら
ヨーロッパの某地点にてキメラ掃討の援助願いを出した、シスター・カラテカ。その声に応えて、吾妻 大和(
ga0175)、雪ノ下正和(
ga0219)、鳴神 伊織(
ga0421)、露木 狼貴(
ga1018)、田中エリック(
ga1083)、ユリス・フリーク(
ga1841)の6人の改造人間傭兵が洋上のラストホープから高速輸送機で姿を現した。
「行くぜ? クサナギ、アメノムラクモ」
如何にも軽薄なオーラを出しながら、大和は自分のエミタ、それに愛刀と、それに付随するAIに呼びかける───返事が返ってこないのは承知の上で。
彼は本部に今回のキメラ騒動を収める為にワイヤーネットの支給を要請したが、あくまで彼らの身は傭兵。損傷を前提とした高めの装備が沸いて出るという事はなかった。
その為、高速船内部にいる内にワイヤーネットを編んで作ろうと試みるものの、はかがゆかなかった。
東京都新宿区生まれ在住であった江戸っ子の正和は高校2年生。
剣道部員だったが、北辰一刀流に入門して古流剣術に転向した身である。
アニメとゲームとオカルトと文学、ついでに古典芸能オタクという重度の病に冒されており、往路の船内でも関係在りそうな話題が出ると食いつき、特に話がなければ、日課の昼寝と、食事はもっぱら麺類を好んで食べていた。
同じく伊織は日本生まれの学生であり、両親とは死別、今は祖父と暮らしている。
両親の形見として懐中時計を持ち、神経質に握っていたが食事の時に手を離した時にでさえ他人が触れるのを極端に嫌がる。
小柄な肉体を普段から着物に好んで包み込み、その雰囲気から連想される様に静かな場所で過ごすことが多い。
「初陣か?」
そんな伊織に声をかけるのは狼貴であった。
彼───あえて戸籍上の性別に則って、彼女と呼ばない───は、顔の右半分を仮面のような眼帯で隠した謎の人物であり、さまざまなトレーニングにより一見男性にしか見えない。
「蟹か‥‥バグアの手に落ちたものじゃあ‥‥食う気はせんな‥‥」
別に狼貴は伊織を笑わせようとしている訳ではない。真摯なだけであった。
「今回のミッションはまず第一にシスターの護衛第一だ。
できれば傷一つ負わせたくないものだ。
蟹退治はあくまでそのついでだ‥‥人命に勝るものはない」
エリックは───。
「空手ですか。そんなもので戦うなんて物好きですねぇ。‥‥‥‥まぁ、釘バットが本当に空手かどうかはさておき。
一応、日本人でグラップラーですけど、その感覚はわかりませんよ。私はエミタを埋め込む前から傭兵見習いやってたんで、そのころの習慣っていうのもあるんでしょうが。何でわざわざ空手なんかやってるのか理解できないなぁ。近づかせずに戦った方が安全じゃないですか。もっとスマートに戦いましょうよ」
と、そこでエリックは一呼吸入れ。
「だって‥‥銃のほうが強いじゃないですか」
礼儀正しく、落ち着いて返す。いつも笑っており、頭を掻くのが彼の癖であった。
とはいえ、良家に生まれたが両親とそりが合わず、傭兵になった。現在も親との連絡は取っていないが、生業に傭兵を選んだのは試練のつもりだった。しかし2006年の敗北で民間人のために戦う意識が芽生えたのである。
少しトロそうに見えるユリスはそのエリックの言を傍目にはゆっくりと吟味しながら───そうだね〜と言葉を返す。
ユリスは実に犬のような性格で、邪険にされるとしょぼくれるが、お呼びがかかれば尻尾振ってついて行くタチであった(無論尻尾が現実についているわけではないが)。
そして、時間はまた先に飛ばされ、シスター・カラテカことアナスタシア・ルイスと対面できたのであった。
「雪ノ下正和です。宜しくお願いします」
「こちらこそよろしく頼むわ」
と、シスター・カラテカ。
「戦いが終わって時間があったら、是非ともあなたから空手を学びたいものです」
「傭兵はお忙しいのでしょう?」
「‥‥ええ、まあ」
伊織も折り目正しく。
「本日は宜しくお願いします」
と優雅に腰を折る。
「お手柔らかに───これは敵対者に向かって言うフレーズでしたわね。ひょっとして初陣? 堅さが取れていないみたい」
と、脇に置いてあったAI制御の釘バットを手に取り、大和が偵察に行ったのを待ちわびる様に自身の肩を叩く。
フォーメーションを決めるのにエリックはコイントスでも何でも構わないでしょう、と主張し、ユリスもそうだね〜と、賛同する。
「いや〜やっぱり、ふたり一組の3班行動の方が合理的だよね〜」
と、誰も想定していない事を言い出したりもしたが、3人一組の2班行動の方が根強く、ユリスは膝を折らざるを得なかった。
色々と難の有りそうな、班分けであったが、大和、狼貴、正和がシスター・カラテカの護衛をしたいと言い出したので、半ば崩れる様にシスター・カラテカ班とその他の班に分かれた。
大和が戻ってくると、街は半ば廃墟と化しており、無事な部分も少なからず存在するという事の報告があり、ワイヤーネットの不備もあり、それぞれの班が想定した地形へと、蟹Aと蟹Bを誘い出す事となった。
「では、私が囮役ですね?」
と、シスター・カラテカ。
エリック、伊織、ユリスは結局コイントスで囮役を決め、見事ユリスが貧乏くじを引く羽目となった、というより争うのが嫌なユリスが折れたと行った方が近いだろうか?
シスター・カラテカ班であったが、大和の誘導で廃墟に侵入し、シスター・カラテカが釘バット片手に歩くのを注意しながら、3人は気配を伺う。
地面を擦る様にしてシスター・カラテカに近づく影があった。
狭い路地へと誘導し、蟹Bが襲おうとしたその刹那!
エミタを解放し、超人と化した一同の猛攻が始まる。豪力発現で黒い髪を更に闇の如く染め抜いた大和が蟹Bの動きを止める。
カニBが反応するより早く狼貴が牽制に移る。
廃墟の一角に硝煙の香りが立ちこめた。
「‥‥侵略者が‥‥奈落の底へ落ちろっ!」
「俺の刀は、天をぶった斬る刀だ!!」
正和が飛び交う銃弾を恐れず───エミタが覚醒した彼は正義のヒーローになりきっているのだ、正義のヒーローに弾が当たる訳がない!───豪破斬撃をぶちかます!
続けて、八相の構えを取り、そこから───。
「一足一刀、快刀乱麻気合斬りっっ!!」
と喉を振るわせ、蟹Bを袈裟斬り!
で攻撃する。超キチン質に罅が入った所で。
「やっちまえ、シスター・カラテカ」
と大和がけしかける。
シスター・カラテカが上段からの踵落としと、続いて、なぎ払った釘バットの一撃で蟹Bを沈める。
一方、蟹Aはユリスがペイント弾を撃ち放って、後々再発見しやすい様にと心配りを見せるが、蟹Aはそんな心遣いを理解する様には造られて居らず、横走りにユリスとの距離を詰めてくる。それでもユリスの髪は黒く光り、茶色の目も薄く光っていた。これがユリスには少々不満な様であったが、エリックのアサルトライフルによる火力支援もあって、ようやく一同と合流する。目つきが悪くなり、むっつりと黙り込んだエリックであるが、地の性格ではなく覚醒した事による影響であった。
「伊織は?」
「回り込んでいる」
「大丈夫かな?」
「なら、撃て」
ふたつの銃口がデュエットを奏でる中、伊織は蟹の後ろに迷い込んでいた。
全身が青白く光り、髪と瞳の輝きは一際まぶしかった。
「ツーハンドソードと懐中時計は一緒に持てない、ならば戦うしか?」
自分の位置が発光により確認され、釘付けにしているエリックとユリスの銃弾には限りがあるのは判っていた。
「そう判っていたはず、思い出と武器は同じ手には持てないと───」
決意した伊織は懐中時計を懐にしまうと、ツーハンドソードのスチムソン機関のAIを起動。周囲の水素をイオン化させる。
「これで終わりです」
銃火がやんだ瞬間に飛び出した伊織のツーハンドソードが蟹Aの甲殻をたたき割る。
こうして、2匹のキメラは仕留められ、シスター・カラテカと一同は別れを惜しんで、ラスト・ホープへの帰路を辿るのであった。
「‥‥‥当分蟹は‥‥‥見たくない‥‥」
───という狼貴の呟きを残して。
アクション1エンド!